- デンプン → (唾液アミラーゼ/膵アミラーゼ) → デキストリン → 麦芽糖 → (マルターゼ)
- スクロース(しょ糖) → (スクラーゼ) → グルコース+フルクトース
- 麦芽糖(マルトース) → (マルターゼ) → グルコース+グルコース
- ラクトース → (ラクターゼ) → グルコース+ガラクトース
アミラーゼ
可溶性デンプンやグリコーゲンなどを加水分解する酵素であり,その作用様式によって α‐アミラーゼと β‐アミラーゼとに区別される。α‐アミラーゼは動物の唾液(だえき)や膵液に含まれ,デンプンの消化に関与するほか,植物(麦芽,ワサビなど),微生物に広く分布する。α‐1,4グルコシド結合を無差別に切断する。最終産物としてグルコースやマルトースが生成するか,あるいはアミロペクチンなどの枝分れ構造を含む部分,あるいはまた α‐限界デキストリンとして未消化のままかなり残る。β‐アミラーゼは主として高等植物(大麦,小麦など)に見いだされ,α‐1,4グルカン鎖の末端から逐次マルトース単位を遊離する。ちなみに β‐アミラーゼは最適条件下では酵素1分子あたり1分間に約100万個のマルトースを遊離する。アミロースのように枝分れのないものは完全に消化するが,アミロペクチンやグリコーゲンのように枝分れのあるものではその直前で反応が停止する。なお,ジアスターゼという名前が以前デンプンの消化酵素として使用されていたが,現在ではこの名前は麦芽やコウジカビから調製された粗酵素標品すなわち各種の消化酵素の混合物に対して使われる。アミラーゼはジアスターゼの主成分である。
ヒトの血液,尿では一定レベルのアミラーゼ活性があるが,耳下腺炎,膵炎のときには活性値が上昇し,診断の大きな目安になる。唾液腺アミラーゼと膵アミラーゼとはアイソザイムであるので,別々に測定することも可能である。
デキストリン
デンプンを酸またはアミラーゼ類で加水分解すると,最終的にはグルコースとなるが,その途上で,さまざまな分子量の中間生成物が得られる。これらを総称してデキストリンという。そのうち,分子量1万程度のものをアミロデキストリン,分子量7000程度のものをエリスロデキストリン,分子量4000程度のものをアクロデキストリンと呼び,ヨード反応による呈色はそれぞれ青藍色,赤褐色,淡褐色である。デンプンを β‐アミラーゼで加水分解すると,デンプン分子の分枝点(1,6‐グルコシド結合点)で分解が止まってしまい,分子量15万程度の未分解物が残る。これを β‐リミットデキストリンという。最近注目されているものにシクロデキストリン(CD と略す)がある。これは,微生物が生産する CD 合成酵素をデンプンに作用させると生じる環状少糖類で,グルコースが6個から成る α‐CD,7個から成る β‐CD,8個から成る γ‐CD の3種が知られている。
デキストリン類は一般に水に溶けやすく,食品素材,微生物培地,糊料(こりよう),衣服の仕上げなど広範な用途をもっている。CD は種々の化合物とクラスレート化合物を形成し,これらが熱,光,酸素などによって分解するのを防ぐ能力をもつため,医薬品成分や食品成分の安定化剤として利用される一方,食品の呈味改良剤として活用される可能性も見いだされている
麦芽糖
マルトースともいう。グルコースが2分子結合した二糖類の一種で,デンプンに麦芽を作用させて得たところからこの名称がついた。麦芽の中には,デンプンを麦芽糖の単位に切る酵素(β‐アミラーゼ)が存在しており,デンプンを特異的に麦芽糖に分解する。麦芽糖の甘みは砂糖の30〜40%といわれるが,おだやかな丸みのある甘みは,糖類の中で最も美味な甘みとされている。
麦芽糖は従来,麦芽水あめの主成分として良質の甘みをもつことが知られていたが,最近になり,工業的に純粋なものが大量生産されるようになり,その用途も拡大してきている。砂糖の甘みを減らすことを目的として用いられるほかに,麦芽糖自身のもつ利用物性で次のような分野で使われている。食品としては,マシュマロ,バタークリーム,マーマレード,ジャム,あん,だんご,ゼリー,魚肉練製品,パン,みりんなどと広く,味の改善,色の保持,食品物性の改良などの目的で使われている。このほか医薬では,インシュリンを必要とせずに吸収消化され,かつグルコースの2倍濃度の等張液が作れることから,糖尿病患者用,手術中・手術後の患者の静脈注射用補糖液としても使われている。麦芽糖は,還元して還元麦芽糖(マルチトール)として低甘味剤としても広く使われている。純粋な麦芽糖の工業生産は,日本において初めて行われたものである
ショ糖(蔗糖)
サッカロース saccharose,スクロース sucrose ともいう。サトウキビ,サトウダイコン(テンサイ)などの多くの植物によって合成されるグルコースとフラクトースが1分子ずつ結合した二糖類。ショ糖を主体とする工業的製品を総称して砂糖と呼ぶ。ショ糖および砂糖という言葉は混同して使われることが多いが,化学物質として扱う場合はつねにショ糖の名称が用いられる。ショ糖は光合成能力のあるすべての植物体に見いだされ,人類には甘味料としてひじょうに古くから用いられていた歴史をもつ。ショ糖は酸あるいは酵素(インベルターゼ)によって,それぞれ1分子のグルコースとフラクトースに加水分解される。⇒多糖
ラクトース
乳糖ともいう。哺乳類の乳汁中に存在する糖で,乳汁中の糖のほとんどを占めている。人乳には約7%,牛乳には約4.5%含まれている。植物ではレンギョウの花粉やサポジラの実に含まれることがある。工業的にはチーズ製造の副産物であるホエーから調製される。ガラクトースとグルコースより成る二糖類で,甘みは弱く,ショ糖の16〜28%である。α および β の2種類の異性体があり,α‐乳糖には無水物と,結晶水1分子をもつ水和物が存在する。β‐乳糖は無水物で,93℃以上で水溶液から結晶化させると得られる。融点は α‐乳糖が無水物223℃,一水和物202℃,β‐乳糖が252℃。水溶液中では変旋光が起こり,α‐乳糖は β‐乳糖に,β‐乳糖は α‐乳糖にそれぞれ分子内転換し,α‐乳糖37.3%,β‐乳糖62.7%の割合になると平衡状態に達して変旋光が停止する。この状態の乳糖を平衡乳糖という。β‐乳糖は α‐乳糖に比べて溶解度が高く,甘みが強い。さらに消化吸収性も良好なので,調製粉乳への添加にはβ‐乳糖あるいは平衡乳糖が用いられる。そのほか,製菓,発酵用培地,錠剤賦形剤などに用いられる
たんぱく質の消化
たんぱく質の消化の第一段階は,胃で行われる。胃粘膜細胞のうちの壁細胞から分泌された胃酸(HCl)によってたんぱく質は変性を受けて消化酵素の作用を受けやすくなる。そして,同じく胃粘膜細胞の主細胞から分泌されたペプシノーゲンが胃酸によって活性をもったペプシンというたんぱく分解酵素に変化し,ペプシンによってペプチド結合が部分的に切断されて,アミノ酸数の少ないたんぱく質(プロテオースやペプトン)やポリペプチドに分解される。
十二指腸に移行すると内容物は膵液によって中和され,たんぱく質は膵液中のトリプシン,キモトリプシン,カルボキシエプチダーゼなどによってペプチド結合の切断が進んでオリゴペプチドとなる。
さらに,小腸粘膜の膜消化酵素であるアミノペプチダーゼやトリペプチダーゼによって分解されてアミノ酸やジペプチド,トリペプチドとなって吸収される。なお,アミノ酸まで分解されて吸収されるのが主体ではあるが,一部はジペプチドやトリペプチドなどで吸収される。
小腸粘膜でのアミノ酸の吸収は,ナトリウムイオンが関与した能動輸送(ナトリウムポンプ)によって行われ,ジペプチドやトリペプチドの吸収は,アミノ酸の経路とは異なる水素イオン(プロトン)が関与した能動輸送で吸収される。吸収されたアミノ酸は毛細血管に入り,門脈を経て肝臓に運ばれ,次のようなことに利用される。
①たんぱく質に再合成され,肝細胞のたんぱく質や血漿たんぱく質となる。なお,血漿たんぱく質の60%はアルブミンである。
②アミノ酸の一部は肝臓で分解され,アミノ基は尿素となって腎臓から排泄される。炭素骨格からは糖質またはケトン体が作られる。
③肝臓から血液中に入ったアミノ酸は,全身の組織に運ばれ,たんぱく質の合成などに利用される。
最終更新:2007年06月07日 00:32