BitterChocolateBeans内検索 / 「ss001」で検索した結果

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  • ss001
    欲情だけしか見えない夜 押し殺しきれない喘ぎ声と、きしみ音が暗闇に響いていた。 広すぎる寝室に天蓋付の立派なベッドがおかれて、サイドテーブルに乗るひとつきりの照明が、怪しく天蓋の中を透かし映す。 細くしなる若い二人が抱き合う姿は、照明の橙色に黒い影絵になって、部屋壁のタピストリとなっていた。 「あぅ…ルル…もう……」 荒々しく組み敷かれ、喘いでいた一人が、乱れた息で苦しげに訴えかけた。 「もう、なんだ?まさかイキたいと?」 上に被さり相手を翻弄するもう一人は、激しく打ち付ける腰とは裏腹に、ひどく優しく左手の指をもう一人のそれと絡めた。 互いの左の薬指には、意匠の異なるアメジストのリングがはまっていた。 「相変わらず敏感な奴だな、スザク。ランスロットをイジめたのはそんなに感じたのか?」 後半を耳元で囁きかければ、吐息...
  • ss004
     スザクが捕虜として船に乗せられ、船の主に『騎士になってほしい』、と誘われて数日。  船内で、色々な検査を受けながら、誘いに乗るか乗らないか、悶々と考え込む日々だったが、それも唐突に終わる。  事後処理を一通り済ませた一行がブリタニアに向け飛び立つこととなるからだ。  それは、晴れない彼の心を見透かすような、雨の日だった。 旅立ちに灰色の雨 「面、会?」  なにもないことをいいことに、部屋に閉じこもっていたスザクをひっぱりだしたのは、赤髪の騎士カレンだった。 「ブリタニアに旅立つ前に、スザクに会いたいんですって。元軍部のひとだっていうから、私は断りたいんだけど、殿下が許すって・・・」  カレンがスザクに好意をもっていないらしいことは、数日の付き合いでわかっていた。  一目で皇子の気をひいた自分を気に入っていない、女性の先輩。...
  • ss009
    「心配するな。お前の腕なら勝てる」  貴賓席に付くまで俺を送ると、視線をランスロットと交わし、護衛役を任せてスザクは立ち去った。  不安そうにそわそわするランスロットが、彼の心をうつしているとおもうと、ルルーシュは心のなかで軽く微笑んだ。 重なる心の重ならない場所 「勝負あり!」  高らかに審判の言葉が響く。  膝をつき、肩で息をする相手。  剣を納め、軽く乱れた息を整えるスザク。  高鳴る胸は自身の興奮か、オリジナルがもたらす軽い運動の動悸か、ランスロットにはわかりかねた。 「スザクの剣の腕は、ブリタニアでも十指に入るだろうな」  当然の事実を述べる口調。  ランスロットは神と崇める主人を振りかえる。 「スザクが…ですか?」 「あぁ。お前たちパペットを抜けば、の話だ」  ほっと...
  • ss003
    抗戦を訴える父を殺せば、戦争は起こらないと思っていた。 血染めの供物 豊かだった国土がほとんど一方的に破壊されるまで、ほとんど時間は要らなかった。 毎年のように長い時間をかけて作られる田畑の実りは、あっけなく焼き尽くされた。 一部の魔法の使える移民たちが立ち上がってくれたが、強大なブリタニアの物量を前にしては、足止めにすらならずに蹴散らされた。 降伏の条件は、魔法を使う血族縁者の全員の引渡しと、行政権の完全譲渡。 周囲の大人が抵抗を彼に求めたが、スザクはそれに従わなかった。 彼らはスザクを憎んだ。国が荒らされるのを見過ごした愚鈍な王子として。 「ルルーシュ殿下が謁見に応じられるそうです」 待機していた客間に現れた赤髪の少女が、あっさりとそう告げた。 謁見という言葉が上下の立場を意識させたが、スザクはそれを頭の隅に...
  • ss005
    『騎士になってはいただけないだろうか?』  らしくもない、演技めいた謙遜の言葉。  この国から騎士が必要だ。そう思ってはいたが、別に彼でなくても良かった。  しかし、そんなあいまいな願いは、呆気なく打ち破られる。 旅立ちに黒い雨 《殿下ぁ~、絶対この子ほしいです。ください》  通信機越しに久々に対面した男は、どこか胡散臭い笑顔で年下で上司のルルーシュにねだりつく。 「どうしたロイド。枢木がどうかしたか?」  ロイド・アスプルント。  公爵位ももつが、ルルーシュが支援するパペット研究室の室長でもある。  たしか昨夜、枢木スザクのフィジカルデータを本国で待つロイドに送ったはずだったが・・・ 《どうもこうもないですよぉ! この子がいたら、例の実験ができそうなんです!!》 「例のというと、まさかランスロットか...
  • ss008
    ※※※ このSSはR2本編で痛々しいほどの関係の二人を、スザクサイドで慰める…やっぱり捏造SSです。 時間軸としては、1話より前になりますが、タイミングとしては1ヶ月前くらいと思ってください。 ◆本編との違い 基本現在はジノスザ。 ラウンズ第2席にオリジのにょたっぽい子あり。 前提でルルスザかスザルル(まだ決めてない(死)) スザクはルル本人が死んだ、もしくは、もう関わることもできない場所に隔離されていると思い込んでいる(皇帝のギアス?) ルルスザくさいところはほとんどない、100%スザクの一人称系SSですが、それでも読むという人はスクロールをしてください。  ジノ・ヴァインベルグ。  帝国最強の12騎士、ナイトオブラウンズの中でも、ナイトオブスリーを拝命する若き騎士。  枢木スザクが過去に手合わせした...
  • ss002
    敗戦の責任。一見重苦しくて、見栄えのいい理由。 スザクがブリタニアに送りつけられたのは、そんなことがきっかけだった。 嵐の前の静けさ スザクが生まれ育った国は、小さいがそれなりに豊かな人間の国だった。そこで純真な少年としてまっすぐに育てられた彼は、強国ブリタニアの軍が近づいてくる少し前に、父親が国王であることを知る。 相続権のある男子に恵まれなかった国王の、庶子ながら唯一の男子として、スザクは国民に紹介された。それが、もう若くは無い国王の世継ぎを立てることで、ブリタニアへの抗戦意欲を国民から引き出す目的であるとは知らされずに。 ブリタニアが彼の国に迫ったとき、スザクは徹底抗戦を主張する父を殺した。 平和的解決を訴えた国王代理のスザクだったが、国は半ば蹂躙され、スザク自身は、『敗戦』の責任を問われて、ブリタニアへ人質として出されることとなった。 ...
  • ss006
     どうしてか、失望したいほど酷く抱かれた日に限って、あの日のことを夢に見る。  ルルーシュのことを、信じようと決めたあの日を。 Sword Lily  ブリタニアにきて、もう3年がたつ。  少年の抜け殻を着ていたような年月は、主人と決めた彼によって打ち捨てられた。  好きだった。本音を言えば、愛していたのかもしれない。  そうでなければ、ほとんど一生を捧げるような騎士を志願しなかったし、異性型のパペットを持つ実験だって、了承しなかった。  本当のところを言えば・・・・・・、ランスロットとの行為を見てみぬふりをしようと決めたことだって、彼が・・・・・・・・・ 「・・・ザク、ちょっと!」 「ふぇっ・・・」  間抜けな声を出して上半身を起こすと、そこには呆れ顔のカレンがいた。  黒い礼服に、鮮やかなフラムル...
  • ss007
     閲兵式を皮切りに、皇位継承権を持つ者たちの集まり、武芸会、茶会、披露会…等々。  数えればきりがない公式行事の数々が始まると、主人のいたずらもぴたりと止んだ。  それを喜ばしく思う反面…寂しく感じる。 背反二律  去年騎士の位を得た自分は、初めて参加する公式行事ばかりだった。  明るい庭に集まる大勢の皇族や貴族たち。  大輪の薔薇が咲き乱れるそこは、微笑みと嘲笑がさざめく。  今日の茶会は、パペットの同行を許されない、人間だけの場所。  特別な場所だからこそ警備は万全に、とカレンはナナリーの付き人となり、スザクは初めての会う人ばかりのそこで、ルルーシュの騎士としての仕事を一人でこなすことになった。  ルルーシュの背後に立ち、時折主人に紹介されて話に加わる以外は、黙って殺気を出さずに気配を探る。  至極気の張...
  • ss012
     やっぱりブリタニアは嫌いだ。  例外だった彼と、彼女は違う。 キライになれたらいいのに  休暇の2日目。  別邸で飼育されている馬に乗り、帝国最強の騎士である4人が行ったことは…… 「ジノ、右から追い込め! アーニャは北西で狙撃待機!」 「わかった」 「スザクは軌道を併走。川越えされたら厄介だ」 「了解した」 本気で野生動物狩りだった。  ライフル片手に、雄雄しく馬を片手で乗りこなす様子は、帝国貴族の極めつけの育ちを感じる。皇族として、帝王学を仕込まれた者の為せる技。  右斜め後方をかけてくる彼女を一瞥すると、指示通りに逃げ回る猪の左側へと馬を加速させる。  僕は、銃を持たなかった。  勧められたが、どうしてもその気になれなかった。 「君ってさ、ゲンキンだよね」 ...
  • ss014
    『償ってよ。君の全てで…僕を殺さないでよ?』 翡翠の瞳が、強く情欲に煌めく。 神根島の結末は、思わぬ形で二人にピリオドを与えた。 後悔の旅路 「うふぅ…ん…、っ」 狭いナイトメアのコクピットに、ぴちゃぴちゃと水音が響く。 夜間のわずかな文字盤などの光だけの暗い場所に、白い肌を露出して、二人交わる。 「スザクっ……やめっ…」 俺を座席に拘束服ごと縛り付けて。 顔を埋めるスザクに、されるがままだった。 「ん…イってよ、ルル。俺の奉仕、物足りない?」 「そうじゃ…」 「ならなに?もうイケない?相変わらず体力ないね。薬いる?」 「スザク!おま、ぁぁぁっ」 施された口での奉仕に反応し、一瞬のくいしばりの弛みから、精を吐き出してしまう。 朦朧とする意識の中で、スザクはそれを、切なげ...
  • ss010
    顔を背けたひまわり  深夜の執務室。  完全な人払いのされたそこに、元父と娘が対峙していた。  尋問のような父の問いに、娘であったヴィクトリアは淡々と答えを並べる。 「エリア11のあれは、未だ輝きを増す気配はない。間もなくお前の側の布陣は整うな?」 「枢木スザクとはどのような形にせよ、あちら側とよりはましな関係を築きつつあります。ジノ・ヴァインベルグの手綱も、変わりありません」 「枢木は、あれが信頼し、あれを裏切った、最も大切な存在だ。お前も空気でわかろう?ヴィクトリア。枢木があれをどう思っているのか、どうしたいのか…」 「はい…」  枢木スザクの、顔を合わせてから一週間の行動は、激しく裏表のある奴だということだった。  ジノに甘えがあるのは、ジノが刷り込んだことだろうから、問題にはならない。あれがひとを甘やかすのは一種の...
  • ss017
    殴り書き ※本編沿いで書くつもりなので、忘れないように殴り書き。  あとで組み込むかもしれないし、プロット変わって使えなくなるかも、、(汗 22話 sleepy lady  ルルーシュとともに、ペンドラゴン宮殿を占拠して半月がたつ。  やってきた当時、贅沢の限りをつくしていた宮殿も、貴族の出入りが無くなり、ルルーシュのものという色が濃くなれば成る程、豪華さが味気なくなっていった。  ジュレミア卿との打ち合わせをするルルーシュに、休むように言われてから、人の居ない廊下を歩いていく。  外廊は明るく、風が清清しい。  宮殿の主が物騒なことをしていても、世界が揺れ動いていても、ささやかなものは、そこにあった。  ふいに、廊下の先。曲がり角の影から、白い服の端が揺れているのが目に入る。 「ヴィクトリア?」  座っているのだろうか。ふわりと風にゆれるスカート。  返...
  • ss015
     昔、初めて聞いた音に似た、人々の響きが聞こえる中で、C.C.は思い出す。 “すまない…私は、お前の騎士には、なれない” 「私たちの息子は、ようやく望んだ騎士を手にするよ。マリアンヌ」 戦いの合間に 「まさか、そんな…」  開始20秒。  スザクは準決勝の相手、コーネリアの騎士ギルフォードの細剣をその手からはじき、喉元皮一枚のところで自らの刃を止めていた。  完璧な剣舞。  太刀筋は見事に型どおり。 「っ、勝者、枢木スザク、決勝進出!!」  行事の声に、どよめきと歓声があがる。 「よもや…ギルフォードが…」  ルルーシュの隣に座っていたコーネリアが、うめく。 「残念でしたね、姉上。猛将たる貴女が、戦力を見誤るとは」 「意地悪いな、ルルーシュ。こんなかくし球が二の騎士か…」 ...
  • ss011
    ヴィクトリアに、家名はない。 元皇族の現ラウンズ第2席。 彼女が何故皇族をやめたのか、何故ラウンズになろうと決意したのか、俺にも……いや、俺は、わからない。 捨てられた忠犬  二年ぶりの再会。  こういう例えは、遠距離恋愛のカップルみたいで嫌いじゃない。  今なら姫のピンチには、姫がどこへいても、トリスタンで駆けていける。  尤も…そんなピンチになることは、姫はないんだけれども。 「ジノ、余所見するなよ」  真後ろから、ハスキーな感じの声が、殺気と共に首に刺さる。  ミラー越しにも、スザクが呆れた様子で座っているのがわかった。 「大丈夫だって。俺の運転は不安か?」 「余所見が危ないだけ…」 「アーニャのいう通りだ。ちゃんと運転しろ、馬鹿騎士」  左後方と、左隣からも攻める声がす...
  • ss016
     キライになれないと自覚すればするほど、抱いてはいけない感情にのめりこむ。  対象が摩り替わり、アブノーマルな愛情が、ノーマルなそれになれば、もう、何の歯止めも存在しないとわかっていて。 醜い感情  4人での別荘での休暇が終わると、溜め込まれていただろう仕事が一斉にやってきた。ベアトリス特務総監からは、山のような書類が送られてきて、それを僕とアーニャが苦戦しながら片付けていく。  その傍らで、ジノとヴィクトリアは、さらりと書類を書き上げて、何度も書き直しを指示される自分たちを尻目に、二人でナイトメアの調整に出かけていた。  ジノのエスコートを当然のように受け入れるヴィクトリア。  傍らに立ち、リードすることを自分の立ち位置と自認するジノ。  その二人の姿を、廊下の端に見つける度に、もやもやとした納得できない感情が心を満たすのだった。 「やぁ、久しぶ...
  • ss018
     迷わずに生きることは難しい。  自分の役割を知っているからこそ、ブリタニアの行く末にかかる影が恐ろしい。  飲み込まれそうなそれがこわい。 確証の無い、それは違和感  手綱を取る。  人並みの恋すら知らない人間に、同時に二人の男を御せ、という。 「はぁ……」  常々父のやることは難題だとはおもうが、ここにきて進退窮まったところがある。  終着点のイメージは、ある。でも、そこまでたどり着くルートが思いつかない。  自分に一途なジノのような人間を二人ならともかくも、スザクのそれは若干複雑で扱いづらい。  会議室に向かい歩く自分と、並び歩くスザク。横目で見ると、熱っぽい視線を向けていた。  ため息に反応して、過剰とも思える過保護さで声をかけてくる。 「大丈夫? 具合が悪いなら、僕が…」 「いや...
  • ss019
    「前を歩かれるのは、皇帝陛下直属の秘書官、ベアトリクス様。後ろがあんたの相手、スリーのジノ・ヴァインベルグ卿よ」  小声でカレンが舞台に上がってくる二人について語る。  つむじ風のような威圧感が、そこに迫っていた。 永久の碧:上 「やぁ。今日の相手が君じゃないのが残念だよ。カレン」  第一声の明るさと、戦いを前にした武人の空気のギャップが、力量を推し量ろうとするこちらの視線を誤魔化す。 「久しぶりね、ジノ」  高位の方と聞いていたわりに、取り付く島も無いほどカレンの口調が刺々しい。 「つれないな。久々の逢瀬なのに」 「私は出来れば会いたくは無かったの。殿下の名代でもなければ、なんであんたなんかと…」 「ひどいな~、婚約者だろ?人前でくらいはもう少し言葉を包んでくれると助かるんだけど」  相手はカレンの態...
  • ss013
    『償ってよ。君の全てで…僕を殺さないでよ?』 組み敷いた紫が、激しく抵抗の光を放つ。 神根島の結末は、思わぬ形で二人にピリオドを与えた。 突き抜けた感情 「うふぅ…ん…、っ」 狭いナイトメアのコクピットに、ぴちゃぴちゃと水音が響く。 夜間のわずかな文字盤などの光だけの暗い場所に、白い姿が交わっている。 「スザクっ……やめっ…」 ルルーシュを座席に拘束服ごと縛り付けて。 彼の欲望を喉元までくわえて、甘える。 ただ、情欲に染まる瞳なのに、彼は果てることを拒絶するように声を殺していた。 「ん…イってよ、ルル。俺の奉仕、物足りない?」 「そうじゃ…」 一息で吐き出した言葉は、二人の現実への拒絶。 その姿に苛立ち、言葉で更に追い詰める。 「ならなに?もうイケない?相変わらず体力ないね...
  • ss023
    声に出ない押し殺した心の叫び。 聞こえるはずのないそれが、何度も耳を打つ。 受け流せていたそれが、苛立ちに替わり、ふつふつと黒い感情を生み出す。 我慢の限界はあっけなく訪れた。 鉄鎖の主  ブリタニア本土に着くまでの数時間。  何度も彼女に問いかけたが、一切彼女は口を利こうとはしなかった。  本土上空で迎えたアヴァロンに着艦してから、矢継ぎ早にいくつもの指示を与えてから、無言になってしまう。  一言も、口を利いてはくれない。自分には答えてくれない。  知りたいのに。今彼がどうしているのか。  知りたいのに。今彼が無事なのか。  何度も心の中で叫んでいた。  せっかく平和な場所に、もう仮面をかぶらなくてもいい場所に居るというのに、何故彼なのかと。  目の前で平然と座っている彼女に、その叫びを押し付けるこ...
  • ss025
    アイドル妖精ルルーシュ 第一話 アイドル  タラップに降り立つと、ムシムシとしたアジアの夏の空気がそこにあった。 「ぐっ…」  チャーター機で、早朝の到着とはいえ、暑いものは暑い。覚悟していたとはいえ、時差ぼけもあって余計に厳しいものだった。 「へばるな。すぐ記者会見と、移動して番組収録があるんだぞ」 「わかっている」  マネージャーのC.C.に毒つかれ、苛立ち紛れに返答をする。  そうはいっても、体が悲鳴を上げそうだった。 「大丈夫でしょうか?最初の取材会見だけでも、キャンセルの手配をいたしますか?」  背後で荷物を持ってきた咲世子が、恭しく伺いを立ててくる。  しかし、 「冗談じゃない、私を誰だと思っている!」 怒りをこめて睨みつけ、なけなしの気力を振り絞って立ち上がる。 「私は、ルルー...
  • ss022
    欧州の水の入口、ロッテルダム。 EU戦線で制海権を抑えたのは数年前だが、海岸沿いの防衛線を崩すことは未だ叶わず、神聖ブリタニア帝国にとって、この街を押さえて水路網を叩く足がかりにすることは、悲願であった。 飛燕  遠めにようやく街を点で確認できる距離。  幅の無いドーバー海峡。ナイトオブラウンズ第二席、元皇女ヴィクトリアの指揮する艦隊は、既に3日、海上に静かに展開したまま街を睨んでいた。  ブリタニア東海岸のニューアムステルダムを出港してから、途中プリマスに寄港する以外は、寄り道らしい寄り道もせず、悪天候にも関わらず、ここにたどり着くまでに10日とかかっていない。  それだけの速度で戦場を押さえたにも拘らず、彼女は動こうとはしなかった。  艦橋にいるわけでもなく、別命あるまでの待機を命じたまま、彼女は自室に閉じこもっていた。 「…...
  • ss024
    スザルルで真空のダイアモンドクレバス  雪にはまだ暖かすぎて、窓を叩くのは控えめな雨の音だった。 それでも、わずかに曇り始めた窓に舌打ちをして、キャビンを乱暴に開け放った。 「スザク?」  多忙な中、天候不順で公務がひとつキャンセルとなり、久々にゆとりというものに出会っていたルルーシュは、僕の急変に少し驚いているようだった。  相変わらず、自分のことには鈍いのだ。そう眉を寄せて、キャビンからケープをとりだして、彼の肩にかける。 「冷えてまいりましたので」 「あぁ。助かる」  控えめにそう言ってはいるものの、元々低体温のルルーシュだ。ケープ一枚で足りるとは思えない。  しかし、常よりはゆったりととはいえ、政務の最中。執務室をギアスのかけられた事務官が、何人も出入りしている。 「陛下」 「なんだ?」 ...
  • ss020
    「スザクっ」 舞台上の空気が変わる一瞬。 自分たちパペットが認識できるか否かのタイミングで、彼は立ち上がり叫んでいた。 永久の碧:下  一瞬とは、ときに人の思考を混乱させるものだとそのとき実感していた。  どれほどの時間がそこに実際は在ったのかはわからない。  でも、一瞬であった。それは前後の周りの表情を見れば推測はできることだった。  巨大な風が舞台の上で唸り、剣と共にスザクを粉砕しようとしていた。  それを防いだのは、よく知る少女だった。 「そこまでだ。ナイトオブラウンズ」  それが止んだとき、彼の腕が剣を砕いたその瞬間の角度のまま、剣が下ろされるのを片腕で留めさせる彼女がそこにいた。 「C.C.…」  碧の髪をいささかも乱さずに、彼の剣と腕の動きを彼女の腕と警棒が、僕にふりかかってくるのを...
  • ss021
    騎士にとっての剣は、獣にとっての牙に等しい。 決して高潔なものではなく、誰かを屠るための道具。 偽りの牙 「さすがにまだ、風が冷たいな」  洋上の戦艦。その甲板に出た彼女は、強い風に吹かれて、硬いコートをなびかせていた。  立てた襟は、重々しい禁色の紫。ナインのエニアグラム卿も紫だが、ヴィクトリアのそれは藍にも近い暗さだった。  はためくコートから、白い騎士服が見えるのが、くっきりとコントラストを演出している。 「滑らないように気をつけてね。ヴィクトリア」 「煩いな。子供じゃないんだぞ、私は」  そういう割に、時化の波しぶきを楽しげにみている様子は、やけに子供っぽい。 『そういえば、ルルーシュもこういう自然現象を前にすると楽しそうにしてたっけ…』  甲板の柵に捕まりながら、すいすいと歩いていくのを、おとな...
  • ss026
    「で…なんでこいつまでいるのよ!!!」  ささやかな祝勝会の冒頭、カレンは自分の隣で笑う男を指差し、絶叫した。 紫紺の宴 「いいじゃないか、カレン。俺が祝っちゃダメか?スザクの優勝」  肩を抱いて、至極自由奔放、フレンドリーに振舞うジノ・ヴァインベルグ。  今日の昼間、やっと元という言葉を付けることができた、親の決めた婚約者。勿論、だった男。 「あんたね、その決勝戦で負けたんでしょう?少しは悔しそうな顔とかしないわけ?」 「悔しいさ。でも、勝負は勝負。そこは潔く負けを認めて、次回以降気持ちよく再戦してもらわないとな」  同意を求められて、歯切れ悪く同意しているスザク。  普段から八方美人というか、誰に対しても反抗できないタイプだとは思っていたが、ジノをここまで自由にさせておく人間を見たのは初めてだった。 「そう怒る...
  • summer001
    7年前のあの日。 日本はブリタニアと戦った。 勝ったとも負けたともいえない中に。 沢山の屍と共に。 日本は生き残った。 夏を目の前に 1話  いずれあるであろうことを、唐突に、しかも断りようもない状況で持ち出されるということは、さすがに18歳なりたての男心を打ち砕くために十分すぎた。 「狂ってる……」  自分の性格がいいものじゃないってことは十分承知だ。  時々“お前は枢木じゃなくて黒るぎか狂う気だろ”って突っ込まれることだってある。  肩書きと、生まれのよさを醸し出す余所行きのスマイルに、打ち抜けない女は居ないだろう、なんて、悪友にいわれたこともある。  高校卒業までは自由に遊んでいられると思っていたのに。 「くそ親父。。。」  7年前から婚約者を軟禁している。  頭が真っ白になるかとおもった事実。  ふっとぶなんていう次元じゃないだ...
  • summer000
    ※※※注意事項※※※ 枢木誕生日記念で、書き始めることにした作品です。 半猫が多忙だったので、下準備は一ヶ月以上していたのに、うっかりアップ不可になるところでありました。。 話は、原作に沿いそうではありますが、ゲンブ首相は生きているし、ルルとナナリーは兄弟たちに生きていることはバレてるし、なんともおかしな展開になる予定です。 ジノスザ篇で創作したはずのにょたるるフレーバーこと、ヴィクトリアが今後普通に出てきたりしますが、彼女のジノスザ篇での設定(オープン、隠し問わず)はあまり引きずらない予定です。 スザクとヴィクトリアの話になりますが、、、普通のカップルに平然とルルをぶつけていきます(謎)。 ルルが暴走したら、たぶん普通のカップルから男を引き剥がして持っていくという、前代未聞の謎話になること請け合いです。。。 尚、原作沿いなので、ルル=ゼロですし、ギアスや黒...
  • BBS
    掲示板 名前 コメント すべてのコメントを見る こんばんは、つばき様。 こちらこそ更新がまばらで申し訳ないです。スザクの誕生日も祝えてないですし。。 せっかく注意...
  • BBS/コメントログ
    てすと -- (半猫) 2007-04-09 22 22 37 はじめまして半猫さん。楽しく読ませてもらってます。 -- (つばき) 2008-04-29 22 10 54 はじめまして、どこにもリンク張っていない辺境サイトにようこそ、つばき様! -- (半猫) 2008-05-04 18 13 51 (カキコミスで途切れ)R2に入って燃料一杯なので、放置せずにやっていければいいと思ってます(汗)。また読みにきてくださいね。 -- (半猫) 2008-05-04 18 15 34 こんにちは半猫様。「旅立ちの日に~」読みました。藤堂さん大人の貫禄出てますね。次は本国ですか?ロイドの登場期待してます。 -- (つばき) 2008-05-05 20 16 55 こんばんは、つばき様!更新した当日にも来ていただけるとは感激です。「旅立ちの日...
  • summer003
    僕は親友に殴られた。 ……全然痛くなかったことは、伏せておく。 夏を目の前に 3話 「馬鹿だろう、お前」  全く同じ響きで言われて、苦笑する。 「まぁ、君よりは馬鹿かもね」  切り替えしまで同じにするとつまらないので、軽く認めておく。そういう弱みを見せられるところが、ちょっとした関係性の違いだ。 「俺がせっかく身体を張ったのに、失敗した?ふざけているにも程がある」  彼が怒っているところは、自分が凹んでいる内容とは全く違う理由でなのだが、それは致し方ない。万が一それでなじり続けるようなら、本当は消していないデータが再び日の目を浴びることになる。 「だって、そんなに頑なだとはおもわなかったし…」 「そこをうまくやるのが、“あの”枢木スザクなんじゃないのか?」 「やめてよ、そんな言い方……」  学校の内外で浮名を流してきた過去を持ち上げられて、凹みが更に...
  • summer002
    「お前…それで俺の親友だと何年も言い張ってたのか?」  親友の嫌味な責め句に、曖昧に笑うしか出来なかった。 夏を目の前に 2話  僕、枢木スザクは学生だ。それもまだ、高校生。  一応今年で3年だけど、大学までエスカレーターで進めるから、自分を含め周囲も、受験を意識せずに伸び伸びと高校生活を謳歌している。 「知らなかったことは彼女にも謝ったし、謝罪する義務を感じたから君にもこうして話してるんじゃないか」  昼休みの屋上で、買い込んだ袋一杯のパンを親友と囲む。  無二の親友であるルルーシュ・ランペルージは、婚約者であるヴィクトリア・ヴィ・ブリタニアの異母兄でもある。8年前に皇室を飛び出してから、ランペルージ姓と名乗るようになり、今は学校を経営するアッシュフォード家の保護を受けている。訪日時以来の友達だ。 「…自分から聞くのは癪だが」 「なに?」 「ヴィーは……...
  • summer005
     ナリタでの敗北は、半月と経たず日本の中を不穏な空気一色に染め上げた。 夏を目の前に5話  元来国際色豊かで融和の象徴とも言うべきだったアッシュフォード学園の中でも、その空気は薄々と感じられ始めていた。 「ユフィ、久しぶり!」 「出てきて大丈夫なの?」  クラスの入り口で女子たちに囲まれ、質問攻めにあっているのは、ユーフェミア・リ・ブリタニア。  交流の名目で、半年前からこの学園に通いだした、ルルーシュの妹のひとりだった。 「体調が悪かったとか、そういうわけではないので大丈夫です。警備の問題で、皆さんにご迷惑をかけると思い、数日登校を控えていただけですから」  元々ブリタニア本国での貴族や資産家の子弟が数多く在籍する学校だ。警護体制に不備があるとは思えないが… 「本当に、困っちゃいました。お姉様が危ないから外には出るなって、登校...
  • summer004
     渡された白いそれは、置き去りにされた私を今へと至らせる鍵だった。 夏を目の前に4話  携帯電話には、非常に多くの機能がある。  電話に始まり、メール、テレビ、ネット、ラジオ、等々…  禁じられたはずの外との繋がりは、思わぬ形で自分の心に時を刻む。  情報の洪水に投げ出されて3日。  スザクは、戻ってこない。 「お前がいてくれて良かったよ、アーサー」  猫とつつく甘いものの大軍は、なかなかの強敵だった。  アーサーが逃げもせずに付き添っていてくれたおかげで、二人分の菓子をそこそこに食べきることができたわけで。  そして、一人なら、下せるはずも無い結論を出せてしまったわけで。 「スザクが来たら、ちゃんとご褒美を出すように言うからな。猫だから、魚とかな…」  手足に寄り添われ、甘えられる。それが少しうれしくて、少しくすぐったい。  寒々しかったこ...
  • summer007
    震えが止まらない。 何故か、わからない。 夏を目の前に 7話  腕の中の、ただ抱きしめられているだけだったアーサーが、顔をあげた。 「どうしたの?」  じっと外を見ている。 「何か、あるの?」  微動だにしないアーサーの視線。  不安になった。  そのとき、携帯が着信を告げる。  ディスプレイに映っていた通話の主は、非通知だった。 「…はい」 『ヴィクトリア・ヴィ・ブリタニアだな?』  聞き覚えのない、低い声が、自分の名を断定するように言った。 「そうですが、どなたでしょうか」 『私は……ゼロ』  携帯を落とさないでいられたのは、奇跡だった。 「ゼロ…!?」  うろたえている彼女の声。  元々高い声ではなかったが、アルトの落ち着いた声が不...
  • summer006
    ずっと、自分はこのまま祈りの中で死ぬのだろうと思っていた。 自分がこうしていることで、世界は少しばかりでも安らげると、信じていた。 夏を目の前に 6話  4度目の来訪は、大荷物と共にやってきた。 「何をもってきたんだ?」 「何って、僕の荷物です」  ドラムバック数個を軽々と運んできた彼は、どさりと玄関に下ろすと、靴を脱ぎ始める。 「荷物って、なんで…」 「しばらくここに、住まわせてください」 『あ、可愛い』  呆然と何もいえないで立ち尽くした姫に、笑顔でそう思っていた。  学園の寮からの帰省用の荷物を全部、本邸ではなくこの姫の離れにもちこんだのだ。驚くのも無理はない。  姫を預かる分家の者たちは、スザクの行動にうろたえていたが、スザクを無理に引きとめようとはしなかった。  ここは枢木家の...
  • summer005.5
     ひっそりと、計画は進むはずだった。  あいつのことさえ、耳に入らなければ。 夏を目の前に5.5話 「何を苛立っている」  隠しようも無い感情の乱れが、黒の騎士団の隠れ家の一室に雑音として響いていた。  戦略を立てる際に、癖として置くチェス盤。その上に戦略上の人物や集団を並べて、作戦を考えるのが常なのだが、今日はそれがちっとも進まなかった。  答えはわかっている。  あの女のせいだ。 「日本開放の前に、ひとつ仕事が増えた」 「…計画の練り直しが間に合わないか?」 「いや…」 「なら、片付ければいいだろう。いつものように」 「あぁ…そうだな」  魔女C.C.のいうことは、その通りだった。  何を躊躇う必要があるだろうか。  あの女は、ささやかな幸せをつかみかけていた自分やナナリーか...
  • 羽ペン部屋/コメントログ
    ほぼ、一ヶ月ぶりですがお久しぶりです半猫様。私は愛知県に住んでいるので不況の影響をモロに受けてしまいましたが年内に決まって待て良かったですw。ジノカレ婚約者カプは見ているとカレンがジノのせいで苦労するのでは?と心配になってしまいますが、ルルスザは愛憎入り混じって危なっかしい関係を見ていると微笑ましい組み合わせだと思いますね。色々と暗いニュースが多いですが、明るくいてください。ではまた。 -- (つばき) 2009-02-11 00 55 02
  • 羽ペン部屋
    羽ペン部屋 茶会のノリで結成☆された、羽ペン同盟。 参加条件 作品がスザ受けであること。 ユフィの遺品「羽ペン」でスザクをいじめちゃうこと☆ 以上二点! では、条件が守れる方は、以下から羽ペンバナーをお持ちください。 ほぼ、一ヶ月ぶりですがお久しぶりです半猫様。私は愛知県に住んでいるので不況の影響をモロに受けてしまいましたが年内に決まって待て良かったですw。ジノカレ婚約者カプは見ているとカレンがジノのせいで苦労するのでは?と心配になってしまいますが、ルルスザは愛憎入り混じって危なっかしい関係を見ていると微笑ましい組み合わせだと思いますね。色々と暗いニュースが多いですが、明るくいてください。ではまた。 -- (つばき) 2009-02-11 00 55 02 ...
  • 絵茶ネタ部屋
    絵茶ネタ部屋 半猫が参加した絵茶で、妄想してしまったモノたち。 ■20090515 スザルルでダイアモンドクレバス
  • プラグイン/ニュース
    ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 白夜極光攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 【カウンターサイド】リセマラ当たりランキング - カウサイ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ウィキペディアを作ったiMacが箱付きで競売に登場。予想落札価格は約96万円!(ギズモード・ジャパン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース メトロイド ドレッド攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【グランサガ】リセマラ当たりランキ...
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