第2章 荒野の戦士
「おい、出ろ!、伯爵様がお呼びだ!」
入ってきた兵士はブーンの顔を見るなり腰を抜かした。
「な、な、なんだお前は!」
「おのれが何であるか、それは俺自身にもわからぬのだ」
牢に捕らえられた者について何も知らされておらず
内藤の頭に驚いた兵士であったが、ブーンが人の姿をした獣なのではなく
ちゃんと会話が出来る人間であると知り、
また、その態度にどこか気品のようなものさえ感じたせいか
もう彼の中には驚きや恐怖といった感情はすっかり消え失せていた。
「驚いた…その頭は被り物ではないのか?悪い魔導師に呪いをかけられたとでも言うのか?
まるで伝説の半人半神の内藤ホライズンそのものではないか」
伯爵の間へ連行される間中その兵士はブーンに質問攻めであった。
ヤルスはこの隙に逃げ出そうとこっそり提案したが、ブーンに却下された。
「このまま伯爵のもとへ案内してもらおう、俺にいい考えがある」
伯爵の間へ通された3人を待ち受けていたのは、黒衣の鎧を着た人物だった。
大きな室の中央に巨大なテーブルがあり、反対側の椅子に腰掛けている。
「ほほう…本当にワロの真珠ではないか…この目で見るまで信じられなかったが
では、やはりワロには本当に一夜にして数千里を移動する秘術が存在するのか!」
伯爵の顔色は黒い鎧兜によって隠されていたが、
その奥で伯爵の眼光が鋭く光るのを感じてチンダは身震いした。
「そして、突如現れて二人を守ったという戦士…おお、本当に内藤の頭をしておる
どれ、近くに来てその顔をもっとよく見せよ」
しめた、とブーンは思った。
何とかして伯爵を人質に取れればこの城を支配できると思っていたのだ。
だが、妙だ。何故こんなに無防備でいられるのか?周りの兵士も止めようとはしない。
「フヒヒ、内藤の戦士よ、言っておくが貴様はこのワシに指一本触れることはかなわぬ」
「何だと!」
「ワシの体は黒死病という恐ろしい病に侵されておる
この鎧はその病魔を撒き散らさないためのものだ
もしワシの体に指一本でも触れようものなら、いかに貴様の体が屈強であろうとすぐにあぼんだ」
それが嘘でない事は、伯爵の余裕と周りの兵士の態度からすぐに分かった。
伯爵の手が伸びてきてブーンは硬直した。
剣と剣の戦いであれば伯爵のような小柄な男など一太刀で切り伏せる自信があったが
黒死病とあれば話は違う。
「なんと、本当に内藤なのか、その頭は
己が正体を隠すために仮面を被っているのかと思っていたが…
…何とすばらしく鍛え上げられた肉体だ、身長も2m以上あるな
貴様は一体何者なのだ」
「わからぬ」
「ふむ、まあよいわ、貴様には用は無い
…ただ殺すのも惜しいな…そうだ、いい余興を考えたぞ
先日捕まえた暴れ猿と戦わせてみようフヒヒ」
ヤバイ、ギャグが無い
つづく
最終更新:2008年12月11日 22:08