昔々のお話です。その国は癒着、賄賂、裏金が横行し、腐り果てていました。民はそんな国に絶望し始めていましたが、国はそんな事はお構いなしにせっせと私服を肥やしています。「くっそー!この国はどうなってんだ!」「そうよそうよ!」「この怒りをどこへぶつければいいんだ!」民はみな怒り、反乱を画策する仕様とする者もいました。そんな時、彼女は現れたのです。
「あらあらぁ、みんなそんなにカリカリしちゃダメよぉ?乳酸菌摂ってるぅ?」
時に184年。水銀党誕生の瞬間です。みるみるうちに勢力を拡大しだした水銀党。党員はみな手に乳酸菌飲料を持ち、初めは乳酸菌飲料を勧めるだけの集団が、集団心理なのかなんなのか、末端の党員が無理やり飲ませて代金をせしめるというあくどい商売をし始めたのです。国はますます荒れはじめました。
当初は静観していた国も流石に重い腰をあげ、討伐を始めましたが党員の数は凄まじく、手こずっていました。とうとう国はあちこちに札を立てはじめます。水銀党討伐の有志を募る、と記されたものを。
みなが何事かと立札に群がる中に、憂国の美少女翠星石の姿もありました。「翠星石もこの国をなんとかしたいです…でも翠星石には力がない…力が欲しいです」そう、翠星石はただの美少女。戦う事はおろか、口げんかすらできないのです。しかしその凛とした姿を引き止めていた人間がいたのです。
数日後、ド田舎のローソン村に2人の少女が訪れました。どちらも手には大きな得物を持っています。「ちょっといい?この村に大きな桑の木がある家はある?」「あ、それならうちの事です」「そうなの?ちょうどよかった。アタシ達はそこにいる偉い人に会いに来たのよ」「?お父様の事ですか?ちょうどお茶を買ってきたところです。もてなしてやるです」「お父様?女だって聞いてたけど…」「わたしも女だって聞いたわ」不審に思いながらも、2人は翠星石の家にやってきました。「立派な木ねえ!」「ほんと、こんなに大きいなんて珍しいわ…」「お父様が育てたんですよ。お父様~お客様ですぅ」あまり広くない部屋のぼろっちい机には、1人男性が座っていました。翠星石のお父様です。翠星石は甲斐甲斐しくお茶を淹れに行き、残された2人は様子を窺うほかありません。「おや、わたしに何か御用ですか?」2人に気付いたお父様は声をかけますが、2人とも情けない事に言葉に詰まります。「いえあの…わたし達は翠星石っていう偉いお方に会いに来たんです」「何でもたいした気品と風格の持主で、何よりこの国を憂いているとか」それを聞いたお父様の顔が、不意に険しくなりました。「…そうか、ついにこの時が来たか…翠星石、ちょっとこっちに来なさい」2人は今度はみっともなく驚きます。「えっ?あのちっちゃい子が?」「うそでしょー?」「いやいや、あの子こそが翠星石だよ」翠星石が戻ってきます。「お父様呼んだですか?」「いや、それがな…」その時、外から声が聞こえてきました。「水銀党がきたぞーっ!」「なんですって!」「あいつらもうこんなところまで…アタシ行くわ!」「…す、翠星石もっ…」「待ちなさい翠星石」翠星石を呼びとめたお父様の手には、金色に輝く如雨露がありました。「これは…」「説明は後でする。とにかくあの2人と村の人を。如雨露にスイドリームと呼びかければ、力を使えるはずだ。 わたしは村の人を避難させるから」いつになく真剣なお父様の目に、翠星石は黙ってうなずき、2人の後を追いました。スイドリーム…なんだか懐かしい響きです…
一方、水銀党の迎撃に出た2人は…「ほらほら!ソニック・ブレイブの餌食になりたい奴はまだいるの?」「相変わらず凶暴ね!」「アンタもね!でもこう数来られちゃ、きりがないわ」「おめーら、そこをどくです!スイドリーム!」如雨露からこぼれた水からみるみるうちに植物が生えはじめ、党員を蹴散らします。「うわ、何このトンでも武器」「翠星石は妖術でも使うってえの?」ものの数分もしないうちに、水銀党は三々五々逃げ出しました。
「なんかずるいけど、さすがだわ」「その如雨露は何なのよ?」「そういえばまだ説明を聞いてないです。お父様に聞きに戻るです」
「やあ、無事でよかった。村の人達も平気なようだ。そこの方達の対応が早かったおかげかな? そういえばまだ名前を聞いてなかったね」「あ、これは失礼しました。アタシは飛鳥雲長と申します」「わたしは張飛翼徳よ」「翠星石玄徳です、よろしくしてやるです」「翠星石や、ついにこの時が来たんだ。君は志を立ててこの国を立て直すんだ」「え…でも翠星石はしがない女の子ですし…」謙虚な翠星石。でもガサツな2人にはこの深謀遠慮はわかりません。「あんなに派手に蹴散らしといて、しがない女の子ぉ?」「そうよね、アタシもあの如雨露欲しいわ」「翠星石。君はしがない女の子なんかじゃあない。あのローゼンに由縁があるんだ。」「「ロ、ローゼンですって!」」「あの伝説の人形師ローゼンですか?」伝説の人形師ローゼン。かつて国乱れし時に現れ、たちまち治めてしまったという、本当にいたのかいないのかさえわからない伝説の人物です。「そうだ。だからその如雨露は君にしか使えない。 覚えてないだろうけど、そこの桑の木は翠星石が小さい頃に育てたものなんだよ」「どおりで反則的に大きい木だと思ったわ…」流石の翠星石も急な事で少し混乱してしまいました。気がつくと、飛鳥と張飛が膝をついて頭を下げていました。「やはりあなた様こそがこの国を救えるお方!どうかお立ち下さい!」「面白そうだからわたしもついて行きます!」ここまで頼まれては断るわけにはいきません。もともと国を憂いてはいたわけですし、ついに翠星石は決意しました。「わかったです。飛鳥、張飛、よろしく頼むです!」2人の肩に手を置いてにっこりほほ笑む翠星石の微笑に、飛鳥も張飛も汚い顔して涙ぐんでます。「よく決意してくれた。さあ、裏に宴の準備がしてある。今日は存分に語り合うといい」
お父様に言われて家の裏に出てみると、今まで見た事のないようなごちそうが並べてありました。「お父様…」「わたしにはこれくらいしかできない。わたしも嬉しいのだ。そうそう、スイドリームで水を撒いてごらん」その通りにすると、あたりはすっかり桃の花が舞う林になりました。「きれい…」「素敵だわ」こうしてささやかながらも宴が始まりました。「そうだ、これからなんとお呼びすればいいでしょうか?」「え?翠星石はそのままでいいです」「そうはいかないわ、わたし達の主君なんだから」「でも、でも…」遠慮深い翠星石。どこまでも真っ直ぐないい女です。「それじゃあ、とりあえず義兄弟の盃を交わしましょう。それならいいでしょう?」「それなら喜んで受けるです」3人はジュースの入った盃を掲げます。「「「わたし達3人、生まれた時は違えども、死する時は共にあらんことを願いましょう!」」です!」後の世に語り継がれる桃園の誓いは、こうして行われたのでした。「さて、ようやく幕が上がるというわけです」それを見守るお父様の姿は、なんとウサギの姿に!果たしてお父様の正体とは?翠星石達の行く手にはどんな壁が立ちふさがるのでしょう?
次回へつづく
「あれ?わたしは?」何言ってんですかハル姉。おもっきり出てるですよ。「あー、これちょうひじゃなくてハルヒって読むんだ。確かに読めなくないわね」さすがアス姉、伊達に大学は出てないですね。「それ、バカにしてるわよね」「はあああああぁぁ?なんてこのわたしが一番下なのよ!」ハル姉が一番仁君には向いてないと思ったんです。「わたし一応団長やってんだけど!」だからこそ団員の苦労を見てそう思ったんじゃないですか。「どっちにしろ没よ、没!」「アタシもイヤよ。美髭公なんて言われるの」ぶー。またしてもダメですか…「ま、翠にしてはよく勉強したんじゃないの?…でもさ、あんたこれやっぱりわたしを張飛にしたかっただけでしょ!」いやまあ…出番がないうえに月イチ進行じゃあ暇でしょうがないんです…あ~あ、早く翠星石の出番来ないですかね~
おわり
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。