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『お隣にいます。レイ姉も帰ったらお隣に来てください』
 レイが家に帰ると、そんな書き置きが残されていた。
 お隣に何か用事でもあったかしら? と思いつつ、レイはハルヒ達の住む隣家に向かった。

 玄関のチャイムを押す。
「いらっしゃいですぅ」
 翠星石が栗色の可愛らしい髪をふわふわと揺らしながら出てきて、
「さ、こっちですよ」
 レイを家の中、そしてリビングへと招き入れた。

「いらっしゃい、レイ! 明日からの新しいスタートを祝って、今日はみんなでごはん食べましょ」
 満面の笑みで迎えたハルヒの横には、有希とルリがいた。
 さらに、
「あたしには特にファーストを祝う義理なんてないんだけど」
 アスカが不機嫌なオーラを出して、足を組みソファーに座っている。
「アスカ! そんなこと言わないの!」
「ほんとですぅ。ちっちぇー姉ですね」
「な、なによ。あたしだってそのうち出るんだから、どっちかっていうと祝われる側だわ」
 アスカは拗ねたように、レイとは別の方向を見つめたままだった。

「レイ姉おめでとうございます」
「晴れ舞台」
 妹たちの祝福を受けて、レイは少し照れくさそうにつぶやく。
「こんな時、どんな顔をすればいいかわからないの」
「……絶対言うと思ってました。でも、その台詞は今回一番の見所になりますかね」
 すると、わずかに顔をひきつらせて笑いをこらえているように見えなくもない表情で、
「笑えばいいと思う」長門が答えた。
「……それも絶対言うと思ってました」
「おめーら漫才はその辺にして、ごはんにするですよ」
 みんなで食卓を囲んでいると、ふとアスカが言った。
「気合入れなさいよ……しっかり、見とくから……」
 レイが目をやると、アスカはテーブルに視線を落としている。自分の方を見てはいないが、
自分に向けられたであろうその言葉に、レイは思わず微笑む。
「ありがとう」
「べっ、別にファーストのために言ったんじゃないわ! 関、係者? と、当事者だし!
それに、あたしが出るまでって意味よ! このあたしが出たらあんたの見せ場なんて……」
 そこにハルヒがにやつきながら口を挟む。
「アスカったら、そんなこと言ってるけど、ホントはレイのことすごく心配してたのよ」
「え?」
「『あたしがいなくて大丈夫かしら、上手くやれるかしら』なんて毎日不安そうな顔して。
ま、アンタがいなくてもレイならバッチリ決めるわよって言ってやったけど」
「ちょ、ちょっとハル姉! それは心配とかじゃなくて、その、言葉通りあたしがいないと……」
「いーえ。アス姉は『頑張りなさいよファースト』なんて夜空を見上げて独り言をもらしたりも
してたですぅ。たまにえらく乙女なやつですぅ」
「翠! 夜空を見上げたりなんかしてないわよ!」
 耳まで真っ赤にしたアスカを、ルリや有希までからかう。
「てことは、その独り言自体は言ったってことですか。アスカさん、レイ姉のこと大好きですね」
「んなわけないでしょ!」
「素直じゃないことで、逆に本音が伝わってくる」
「本音って! だからっ!!」
 そんなやりとりを、レイは微笑んだまま見つめている。
「そうね、頑張りましょう」
 その小さな声は喧騒にかき消されて、アスカには聞こえていないようだった。
 姉妹たちの食卓は賑わっている。