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「流行語だなんて、くっだらないわねっ!」

テレビを見ていたハル姉が突然叫んだ。読んでいた雑誌から視線を少しずらすと、
ハル姉がこっちに向かってのっしのっし歩いてくる。なにこの緊張感。

「アスカもそう思うでしょ?思うわよね、思わないとアタシの妹を名乗る資格はないわ!」
アタシの頭の中にはクエスチョンマークがグルグル渦巻いていた。
ハル姉がなんか変だ。怒ってるのかしら?だとしたらアタシはなんかしたっけ?
翠に助け船を送るように顔向けると、あの性悪人形は必死に笑うのを抑えていた。
理由は知ってるがアタシを助けるつもりはないらしい。クソ、今度庭の花を全部スイカに植え替えてやる。

「悪いけどハル姉、アタシには何の事だか分かんないんだけど」
とりあえず正直にそう告げる。アタシも成長したのだ。むやみに腹を立てない。姉の振り見て我が振り直せってなもんよ。

「何聞いてたの?わたしの声を聞いてないなんて、妹の自覚が足りてない証拠だわ」
腹立ってきた。なぜ急にこんな事を言われなくてはいけないのか。郷に入れば郷に従え。こんな姉に我慢してちゃダメだわ。

「一体な「ハル姉!」
翠の声が割って入ってきた。見ると、翠は薄気味悪い笑顔を浮かべている。
この邪悪な笑みは白雪姫にリンゴを渡そうとする魔女さながらだわ。

「ハル姉、翠星石が代わってやってもいいですよ?」
「う、うるさいわね、演出よ演出!全て計算済みなの!」
「はぁそうですか」
演出…?どういう事?またハル姉は映画でも撮ってるの?

「アスカ、わたしは流行語なんてくだらないって言ったのよ。まさに愚か者の象徴よね。
 流行らせようとする奴、それにまんまと乗っかる奴…流行ってるからって使いだす奴…」
言ってる事は理解できるが話の流れが理解できない。アタシは黙っていた。

「まあいいわ、わたしはそういうの大嫌いなの。で、これからアスカ、アンタを表彰するわ。
 アンタは自分の言った言葉が一部で流行語になって、その後廃れても使い続けてる。アンタバカ?ってやつね。
 正しい言葉の使い方よ。だから、はいこれ」
今度は言ってる事も理解しかねた。アタシがシナプスをフル稼働させて解読を急がせている間に、
いつの間にかアタシの胸には小さな紙袋が押し付けられ、ハル姉はリビングを出て行ってしまった。

「やれやれ全く、ハル姉はしょーもない事をする時は度胸満点なのに、こういう時は腰が抜け作ですぅ。
 ほれ、翠星石からも表彰してやらんこともないですから、さっさとあそこにある粗品を受け取れです」
翠も言うだけ言ってそそくさと出て行ってしまった。さっき翠の指差した方にも紙袋が置いてある。
ていうか表彰なら取りに行かせるかフツー。なんかの悪戯だろうか。やられっぱなしで悔しいわ。
今度如雨露の中身をLCLに変えておいてやる。

紙袋も蹴っ飛ばしてやろうと思ったが思いとどまった。近づいた時に中身が見えたから。
花だ。開けてみると、植木鉢に植えられている。カードも土に刺さっていた。
『すいせい石があいじょうをこめてさかせた花です。からしたらしょうちしないですよ!』
メッセージの横にはアタシの似顔絵らしき絵があって、その下に小さな字で
『おたんじょう日おめでとう』
そうだ。明日はアタシの…
これじゃあ、庭の花をスイカに植え替えるわけにも、如雨露の水をLCLにするわけにはいかないわね…
怒られちゃうもの。

ハル姉の紙袋も開けてみる。
前から欲しかった香水が入っていた。もう1つ小さい包みがあって、メモが貼り付けられている。
『誕生日おめでとう!来年は北高に来なさい!
 副団長はふさがってるけど、団長補佐のポストを設けたから、必ずよ!アンタは私の妹なんだから』
包みの中には団長補佐の腕章が入っていた。自分がそれをつけているところを想像する。悪くないわよね。
だってちゃんと自覚してるもん、アタシはハル姉の妹だってね。

「全く」
思わずため息が出た。

「一体なんなのよ…」
さっき言えなかったセリフをようやく吐き出して、アタシは姉妹からのプレゼントを抱きしめた。


おわり