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「にょろろろ~ん」

いつものようにスカした面構えで登校する鶴屋さん。そして、いつものような登校風景の中に不似合いな巨乳が双房浮いている。
まるで冷酷なジャングルの捕食者のように、にょろにょろと音もなく近づく鶴屋さん、小動物のように無防備なその巨乳の背後を抱き寄せて声を掛ける。
「おい~ッス!みくるぅ。今日はめがっさ天気いいネ!!」

「オハヨー!って…えぇ!?鶴屋さん、さっき学校の玄関に入ってくとこ見たのにアレ?アレ~?」
「何いってんの~?
私は今学校に着いたばかりさっ。それよりみくるぅ…めがっさ育ってるよネ♪ソレ」
鶴屋さんは制服に包まれたみくるの体に蛇のように両腕を這わせると、やおら胸を揉みしだいた。

ふざけ笑いで逃げる緑の黒髪をロリ巨乳が追いかける…
何も変わらない、いつもの北高の登校風景である。
キョンはいつもと変わらぬ朝の校舎を歩いていた。
「ハルヒがまた妙な事をしてはいまいか?」
朝を迎える度、昨日と変わらぬ平穏な日々を生きていられるか、いつも彼は不安だった。不安を少しでも和らげるために彼はこうして校舎を点検して回るのだ。唯一頼れるのは自分の記憶だけである。

ふと、前を歩く少女に気づく。腰まである緑の黒髪。
声を掛ける。きっと満面の笑みで応えてくれるだろう。
しかし、返事がない。もう一度呼び掛ける。
黒髪を翻し振り向いたその顔は確かに「鶴屋さん」だった。
「なんだ?お前…」
「あっ、いや…その~」
「フン…」
ハラリと髪を手ではねると、「鶴屋さん」は歩き去っていった。
鶴屋さんも生理の日は苛つくのか…キョンは唖然としながらも感心しながら、遠のいていく揺れる黒髪を見つめていた。

「私が歩いていたの見たって!?」
「うん…今朝見たの。ホントよ!!」
大きな乳房を揺らしながら興奮気味に話す朝比奈に向き合って座る鶴屋さん。
「アレきっとドッペルゲンガーよぉ…」
「不吉…だネッ♪」

こんな奇妙な現象をほっとけない人間が居る。
我らがSOS団団長、涼宮ハルヒである。
噂をすればホラ、ハルヒが二年生の教室に飛び込んできた。真っ直ぐ鶴屋さんの机に駆け寄ってくる。
「鶴屋さんのドッペルゲンガーが居るってんで、調べに来ましたッ!!
で?みくるちゃん、この鶴屋さんは本物なの?」
苦笑いするみくるの背後に人影が立った。
みくるとハルヒが振り向くとそこには鶴屋さんが立っていた。
「う"わぁ出たぁ!!ドッペルゲンガアッー!!」
ハルヒは歓声を上げ、みくるは悲鳴を上げた。
「久しぶりね。多笑子…」
「おっ久~!!静子!!」
放課後、SOS団の部室に二人の鶴屋さんが座っていた。
「私が鶴屋多笑子。んでっ、コイツが双子の妹の鶴屋静子。」

夢中に読んでいた本を内腿の上で畳むと、長門有希が独りごちた。
「………ユニーク。」

「双子の姉妹って事は一緒に暮らしているの?」
「んにゃ…コイツは一年の頃からフランスに留学してたのよ。
叔父さんのつてでね。
アンタ達っが入学する前の事よ
私の妹のことを知らないのは転入生のみくると涼宮達一年生だけさっ!!」
確かにこの件で騒いでいたのは、僕と僕のスイートハニー朝比奈さんとハルヒだけで、みんなは平然としていた。

「しっかし紛らわしいわねぇ…」
ハルヒはアヒルのように唇を尖らす。
いやいや、表情見れば判るだろ?
ニヤけてるのが鶴屋さんで、笑わないのが静子さん。
しかし、笑わない鶴屋さんがこんなに魅力的とは…
正確に言えば鶴屋さんの双子の妹、静子さんなんだが。
深い森の中の神苑の深淵のようにミステリアスな雰囲気。
たまらん…

「みくるちゃん、アレ持ってきて」
少し不安げな朝比奈さんのその柔らかそうな手に握られていたのは赤と黒の首輪だった。

「ちっ違うわよッ!!」
「あっ…やっぱり」という表情のみくるは申し訳なさそうに双子を見た。
「コレよコレッ♪」ハルヒはみくるの髪を束ねるヘアゴムをヒョイと引ったくると、静子にソレを押しつけた。
朝比奈さんはまるで中途半端に毛を残されたプードルのような髪型になっていたる。だが、それがいい。今の内にカメラに収めねば…
携帯を出そうとポケットをまさぐるキョン。

「付けなよ。」その声さえ無視し、ハルヒの手をサラリとのける静子。一瞬、怪訝な顔をして静子を睨むハルヒ。
「…アンタ!?」
まるでハルヒの事など「存在していないか」のような態度で、静子は窓枠に手を掛けた。
「この部活動は何?妙なコスプレをしたり、下らないテーブルゲームをしたり…オマケに部室は汚い!!」
窓サッシの隙間の黒ずみ(カビと埃)を指で摺ると、その人差し指をハルヒの鼻面に突き付けた。
「風紀委員を呼んで「ゴミ掃除」をしなくちゃね…」静子の端正な顔から放たれた言葉だからこそ、余計傲慢に見えたのだろう…ハルヒの顔はみるみる紅潮した。

「さっきからアンタ何様よ!」
ついにハルヒは声を荒立て、静子に掴み掛かろうとした。
並の女子高生ならハルヒに喧嘩を売っても売られても勝ち目はないだろう。
「なんせコイツは…っえ!?」
掴み掛かろうとしたハルヒの腕は静子の白い腕に返り討ちにされ、自分の背中に小手を背にして押さえつけられている。
所謂「小手返し」の体勢に決められ、ハルヒが必死にもがいていた。
「止めなよ静子!!」不安そうな鶴屋さん。
「ちょ…ッ放しなさいよ!!」言うか言い終わらぬ内にハルヒの躰は窓ガラスに向かって突き飛ばされた。
ベチャりと窓ガラスに張り付き、唸るハルヒ。グラウンドで練習に励む運動部員達の方から見ればきっと、無様な「涼宮ガエルの標本」を見学出来るであろう。
「帰るわよ。多笑子。こんな所にいたら阿呆が移るか日本脳炎になってしまうわ!!」
「待ちなさいよぉ~!!」怒りに肩を震わせる涼宮ハルヒ。
ヤバい、また世界が壊れる…
「そんなにこの部室が汚いならアンタ達黒髪双子姉妹を掃除婦に使ってあげるわ!!」
「この首輪をはめて、犬みたいに毎日四つん這いで雑巾掛けさせてやうんだから!!」
もはや呂律が回らないほど狼狽したハルヒに勝ち目はない。
冷たい肩頬笑いを見せる静子さんが震えるほど魅力的に見えるのは、僕が「阿呆で日本脳炎」に掛かっているからだろうか…
最終更新:2007年03月16日 12:38