カチャカチャとベルトを外すような金属音が聞こえる。
「さあ、僕のも気持ち良くしてください」
髪を引っ張られ、顎を強く掴まれ、だらしなく開かれているだろうあたしの口にソレが押し込まれてくる。
口の中で更に堅く怒張を増して、口の中いっぱいに占領される。
「どうです、僕のは?」
……どうでもいい。
両手で髪を掴まれたまま、不作法に出し入れを続けられる。歯をたてやる気力もない。
「はうっ、んぐっ、ぐふっ……ぅあっ……ごふっ……」
喉元にヌラヌラした物が貼り付いて窒息しそうになる。
「朝比奈さん、少しは舌を使ってください」
……そんなの無理。
あたしは何度も込み上げる嗚咽に耐え続けた。止め処なく涙が溢れてくるだけだった。
「ふむ、まあ仕方ないですか。ちょっとした誤算でした。まあいいでしょう」
あたしの口からそれを抜き去ると、後ろにまわる。
「でも“ここ”は先程よりも溢れてるようです」
最後に残された一枚、その中心に指を突き立ててくる。
「ひぁっ」
身体が反応して声が出る。悔しい。
「白い下着がグショグショに濡れて、中身が手に取るように透けて見えますよ」
「…………」
「これももう、邪魔だから取ってしまいましょう」
……やめて。
ザク、と鋏の感触が伝わり、最後の一枚が無情に墜ちた。 ……見ないで。
「これはこれは、下の方も見事に栗色なんですね」
……先にキョン君に捧げておいて良かった。せめてもの慰め。
「まるで完熟メロンを切ったときのようにイヤラシイ汁が滴り落ちてますよ」
「…………」
「だんまり作戦ですか? そんな長門さんのような真似はあなたには似合いませんよ」
さっきの黒い箱の中から何かを取りだしたみたい。
ブゥゥゥゥン……
低いモーター音が室内に響く。何?
「はたしてこれでも黙ったままでいられるでしょうか」
音の主があたしの最も敏感な部分にあてられた。……!?
「ひぁっ? な、何なの? はうっ……んくぅっ……ひぐぅぅぅぅぅぅぅっ!」
なんの前触れもなく一瞬の閃光のように登り詰める絶頂感。
「これは家庭用電動マッサージャーなんですよ。本来の目的以外の用途でこれほど活躍するものも珍しいですね」
やたらと嬉しそうに語りながら押し当ててくる。
「はぁんっ、はぅっ、はっ、はっ、んぐっ……だ、だめっ、もう、もう、……んぅぅぅぅぅぅぅぅっ…………」
「おやおや、もう逝ってしまわれましたか。でも、お楽しみはこれからです」
下腹に手を回し、一時も離すことなく、更にそれを押しつけてくる。
「んぁぁぁぁぁぁっ、ダメぇ、ダメです、そんな、くぁっ、ひぃゃあぁぁぁっ……んぐふっ……」
容赦なく無感情に、冷徹に刺激が送り込まれてくる。頭の中で火花が何度も弾ける。
「ふぐぅぁぁあぁぁぁっ、ひぅぇえっ……も、もう、くひっ……許して、許してぇ……」
いくら逝っても逃れられない。いくら暴れても逃れられない。悪戯に手足に擦傷痕が増えるだけ。
「だめ! また逝くっ、またイっっ、グぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ、イヤぁぁぁああっっっ…………」
まるで大津波に飲み込まれて掻き回されてるみたい。息も出来ない。
「やめてっ、お願い! もう、もうやめてぇぇぇっ……」
数えるのもままならないほど、絶え間なく繰り返す絶頂。そして、
ピシャァァアア……
あたしのアソコから何かが噴き出した。慌てる声が聞こえる。振動が止まった。
「あ、朝比奈さん、お漏らしはいけませんね。……いや、ひょっとしてこれは潮吹きというやつですか?」
「ふぇぇ……んくっ……うぅぅっ」
泣くしかなかった。涙と涎と鼻水できっとあたしの顔なんてグシャグシャ。
「お見事です朝比奈さん。そんなに喜んでいただけるとは僕も甲斐があるというものです。僕はあなたの喜んでる
姿が好きですからね」
ハハハ、と心底楽しそうに笑ってる。
もう既に、どう見ても以前の古泉君と同じ人だとは到底思えない。
「お陰で僕もそろそろ、我慢できなくなってましたので」
荒い息遣い。両手でお尻を掴まれ、ソレがあたしの割れ目に押し付けられる。
「ひっ、嫌ぁああっ!」
次の瞬間、
バンッ!
重そうな鉄の扉が荒っぽく蹴開かれた音がして、黒いスーツの女性が何人か駆け込んできた。
全員黒いサングラスをかけて高圧な雰囲気。そして古泉君の慌てる声。
「な、何ですかあなた達はっ? いったいどうして……」
そのドアから一息遅れて入ってきた一人の女性。
「やあ、みくるっ、待たせてゴメンゴメン。ちょろーんと手間取っちゃってねっ」
「つ、鶴屋さぁん」
あたしは一気に安堵に包まれ、鶴屋さんの胸に抱かれながら、一際大粒の涙がボロボロ流れ出していた。
「大丈夫みくる? 怖かったねー、よしよしっ。あたしが来たからにはもう大安心だよっ。今外してあげるかんねっ」
「さあっ皆の衆! みくるを解放して、それと、そいつをふん縛っちまいなっ!」
号令一発、あたしは無事に下ろされ、古泉君は反抗する暇もなく鶴屋家の私兵団なのでしょうか? 黒スーツの
女性部隊に瞬く間に拘束され、憐れな姿を晒していました。
「僕としたことが、とんだ間抜けでしたね。あなたの存在をすっかり忘れていたとは……」
「さて古泉君」
鶴屋さんは極悪海賊が獲物を見つけたときのような不敵な笑みを浮かべ、
「よくもあたしのみくるを泣かせてくれたねっ! 誰が何と言おうとこの代償はめがっっっっさ高く付くよっ」
いえ、けっして笑ってない。鶴屋さんが笑ってない? こんな怖い顔をしてる鶴屋さんは初めて。
「あたしのお仕置きは厳しいよぉ!」
百メートル先まで凍り付くかと思うほどの冷徹な視線に古泉君も、その……縮み上がってたようです。
「んじゃ、そいつをしょっ引いてっちゃって。よっろしくっ」
─────
「さあ、みくる。少しは落ち着いたかな? アイツはあたしがとっちめておいてあげるからねっ」
手足が自由になったあたしは、改めて抱き付いて泣いていました。
「でも、よくここが……」
あたしの時代からさえも見捨てられたのに、と言おうとして慌てて止めました。
そう、鶴屋さんは知らないことなんですよね。
「ふふぅん、どうしてか訊きたいっ?」
いつもの明るい顔でニカッと笑って
「みちるちゃんがウチに来たのさっ。『助けてください』ってねっ。そいで勝手に鶴屋家情報網フル稼働さっ」
「み、みちるですかぁ?」
「うん、そいでね、『全て大丈夫だから……と伝えてください』って。あと“長門ちゃんにも何かお願いするから”
って言ってたけど……、どういう意味にょろ?」
みちる、そして長門さん──。そうですよね。……その時あたしは全て理解しました。
「ん、どした? みくる」
「あ、いえ、いいんです。わかりました」
それに、あたしは見捨てられた訳じゃなかった。ただ、立ち回っていたのがあたしと殆ど変わらない『あたし』
だったからちょっと手間取っただけ。
「さ、みくる、とりあえずあたしのウチへ連れてくよっ。お風呂入って、傷の手当てもして、それからそれから……
あたしが全部引き受けちゃおうっ」
「……うん、ありがとう鶴屋さん」
終わり。