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「佐々木さんを飼ってみませんか?」
古泉に喫茶店に誘われた俺は、突然のその一言に思わず飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになった。
佐々木を?飼う?スマン、言っている意味が全くわからん。そう聞き返す俺に古泉は笑顔のまま説明を
始めた。
「我々の機関には、対立する立場の組織が複数存在する、これは以前お話したと思います。立場的には
我々が現在一番有利なんですが、これはあなたに感謝すべきでしょう。あなたがきっかけで涼宮さんが
SOS団を作った。それによって僕が涼宮さんにごく近い位置に身を置けるわけですから」
けったいな機関とやらに感謝される筋合いは無いね。それに、それと佐々木がどう関係あるんだ。
「ご存知のように佐々木さんは涼宮さんに代わる神になり得る人材です。橘京子の組織は幸い御本人の
意思を尊重する立場なので無茶な行動はしていないようですが、他の組織の中には彼女を手中に収めて
神となる力を涼宮さんから奪った上で自らの傀儡にしようと考える所が出てきています」
俺は自分の表情が硬くなるのを感じた。古泉の機関とやらが何らかの権力と結びついているのは今まで
折に触れて見え隠れしていた。もし他の組織も同様ならば、狙われた佐々木が逃げ切るのは無理だろう。
「機関としても、それは阻止しなければなりません。そこで様々な対応策が出されているわけですが、
一番簡単な案、佐々木さんに我々の機関に協力していただくと言うのには失敗しました。元々彼女は
神の力やそれに関わるいざこざに巻き込まれたくないようでして、もうこれ以上その話題に触れるのも
嫌と言うことでした」
まあ普通の人間はそう思うだろうな。
「そこで一部の強硬派は、奪われるくらいなら消してしまえと言い出しました。要は、佐々木さんに
亡き者になっていただくと言うことで」
ふざけるな!俺は目の前の自称超能力者をぶん殴ろうと思ったが、立ち上がることもできなかった。
「申し訳ありません。落ち着いて話を聞いていただきたかったのでコーヒーに細工をさせて頂きました」
悪びれもせずにそう言った古泉は俺の睨みつけるような視線を無視して話を進めた。
「しかしそれも却下されました。ああ、それについては佐々木さんがあなたに感謝すべきでしょうね」
どう言う事だ。怒りをかみ殺して俺は尋ねた。


「どう巧妙に細工しても、人間の浅知恵などは情報統合思念体には丸分かりです。そして、あなたには
長門有希がいる。彼女は恐らくあなたに事実を告げるでしょう。その場合、あなたはどうしますか?」
決まってるさ。ハルヒに全てを、あいつの持つ力とやらも含めて全部話してやる。そうすればおまえ等の
機関なんか消えて無くなっちまうさ。
「そうでしょうね。あなたなら迷わずそうするはずです。それはまずいと言うのが機関のお偉方の結論に
なりました。ただ、我々以外の組織がなんらかの形で佐々木さんに危害を加え、あなたがそれを知った時、
あなたは同じ行動を取るでしょう。それもまたまずいんです。それによって涼宮さんの力を彼女自身が
認識してしまえば世界のバランスは目茶苦茶なものになりますから」
「それでおまえらは俺と佐々木をどうしたいんだ?」
「あなたには、共犯者になっていただきたいんですよ」
古泉はそう言うとにっこりと微笑みやがった。誰が友人を窮地に落とすような話の共犯者になんかなるか。
「おや、そうですか。先程言った機関からあなたへの感謝の件、これはその御礼なんですけどね。正直な
所、あなたと涼宮さんを巧妙に引き離して、あなたが彼女の力を発動させないようにすると言う手段も
あるわけですから」
それを聞いて背筋が寒くなった。こいつや長門、朝比奈さんに囲まれ、常識離れした体験を続けていたので
忘れていたが、俺自身は佐々木以上の一般人であり、機関とやらに狙われた場合長門あたりに助けられない
限りどうしようもないだろう。
「ただ、涼宮さんが不審に思った場合のことを考えるとリスクが高くなります。彼女の勘は想像以上の物が
ありますからね。それならばあなたに佐々木さんを与えてあなたに服従させる。それによって佐々木さんが
他の組織の命令に従ったりしなくなれば結果オーライ、ってやつですよ」


「断る、と言ったらどうするんだ?」
「その場合仕方ありません。リスクは覚悟した上であなたと涼宮さんを引き離し、佐々木さんは・・・そう
ですね、他の組織に奪われないようにするのと、万一涼宮さんの身に何かがあった時のスペア用に機関の方で
監禁させて頂くことになるでしょう。機関にも様々な性癖を持った人間がいますから、忠誠を誓わせるために
彼女がどんな目に合わせられるか、それをお考えになった場合、あなたの答えは一つかと」
そこまで言われて、最早退路は絶たれていた。無言になった俺の様子を了承のサインと受け取った古泉は
「交渉成立のようですね。ここの支払いは済ませておきますので。あ、5分もすれば動けるようになりますよ」
と言い残して去って行った。
最終更新:2012年12月29日 06:34