<div class="main"> ━━━━━終業のチャイムが鳴ると、私は急ぎ足で部室棟へ向かいます。<br> なるべく、みんなよりも先に着いて、ストーブを灯けてからお湯を沸かして・・・<br> 別に、決められた事では無いのだけれど、ただなんとなく・・・<br> <br> そして、いつもの服に着替えて、みんなを待ちます。<br> <br> そんな私を見て「ミクルもよくやるねぇ~」と鶴屋さんは笑うけど、実は私・・・結構こういう感じが好きだったりします。<br> <br> 変・・・ですよね?━━━━━<br> <br> <br> 【朝比奈みくるの放課後@コーヒーふたつ】<br> <br> <br> <br> 部室に入ると、凉宮さんの机の上に置き手紙を見付けました。<br> <br> 『ちょっと、買い物に行ってくる』<br> <br> と、いう事は・・・おそらくキョン君も一緒ですね・・・。<br> 二人が連れ添って歩く姿を思うと少し羨ましくなるけど、最近は以前程切なさを感じなくなりました。<br> それに・・・私が存在する為には、二人にはこのまま寄り添っていて貰わなければならないし・・・あ!これは禁則事項ですっ!<br> 聞かなかった事に・・・・してくださいね?<br> <br> とりあえず私は、掃除でもしながらみんなを待つことにしました。<br> <br> 机の上を雑巾で拭いてから、床にモップをかけます。<br> 窓際から廊下の方へ、ゆっくりとゆっくりと・・・あれ?<br> モップの先に見慣れた上履きがコツンと当たって、見上げると・・・長門さんが立っていました。<br> <br> 長門さんは、少し部屋の中を見回した後、私の目をジーッと見つめます。<br> 「今は、私だけですよ?」と答えると、「そう・・・」と呟いて、いつもの場所に座りました。<br> そして、少し落ち着かない素振りを見せます。<br> そんな、長門さんの様子を見ながら、私はふと思います。<br> <br> (ああ・・・隣に遊びに行きたいんだな・・・)<br> <br> 知ってました?<br> 長門さんね、みんなが揃ってる時は一応気を使って、隣には遊びに行かないようにしているみたいなんですよ。<br> 今日は、ここには私しか居ない訳ですから、「遊びに行ってくれば良いと思いますよ?」と声をかけてみます。<br> すると、また私をジーッとみて少し首を傾げます。<br> 「私に気を使わずに、ね?」と促すと、コクッと頷いて少し嬉しそうに廊下へと出て行きました。<br> 長門さんの、こんな風に優しいところが私は大好きです。<br> <br> そして、部室には私一人になりました。<br> 足元にストーブを置いて、お茶を飲みながら少しゆっくりする事にします。<br> 窓の外を見ると、練習を終えたサッカー部が後片付けをしているのがみえます。<br> <br> (もう、そんな時間か・・・)<br> <br> そういえば以前、こんな風に私が一人で部室に居たら、古泉君がドライブに連れだしてくれたっけ・・・<br> あの時は、ただ突然の事に驚いてしまって、古泉君に余計な気を使わせてしまったかもしれないな・・・。<br> でも・・・もしも、また連れだしてくれるのなら、今度は・・・なんてね。そんなに都合の良い話は度々起こり・・・<br> <br> 「あれ?朝比奈さん!居たんですか?」<br> <br> ふぇぇええっ?こ、古泉君っ?目の前に古泉君がいますうっ!<br> <br> -ななななな何でもありませぇんっ!<br> <br> <br> 「えっ?何が、『なんでもない』んです?」<br> -いや・・・あの・・その・・<br> 「いえ、一応部室に入る前にノックはしたのですが、返事が無かったもので・・・。驚かせてしまって、申し訳ありません。」<br> -い、いえっ!大丈夫ですっ!<br> 「ところで、皆さんは?」<br> -ああ、凉宮さん達は買い物で、長門さんは隣に遊びに行きましたよ?<br> 「そうですか・・・。いや、残念だな。」<br> そう言うと、古泉君は手に持っていた包みを机の上に置きました。<br> -何ですか、それ。<br> 「いえ、先日は朝比奈さんに美味しいお菓子を御馳走になりましたので、今日は僕がみなさんに何か用意しようかと思いましてね?」<br> -お菓子・・・ですか?<br> 「はい。」<br> そう言いながら、古泉君は少し照れた様に包みを開けます。<br> すると、包みの中から出てきたのは・・・<br> -まあ!シュークリームですね?<br> 「ええ。『作りたて』だそうです。直ぐに皆さんに召しあがって頂きたくて、急いで馳せ参じたのですが・・・そうだ!折角ですから、朝比奈さんだけでも先に召し上がって頂けませんか?」<br> -いいんですか?<br> 「勿論ですよ。」<br> -では・・・古泉君も一緒に・・・あ!今、お茶を入れますね。<br> <br> 私はお茶を用意しながら、少しだけ小泉君の方を見て思います。<br> (古泉君って見掛けによらず、意外と甘い物が好きなのね・・・)<br> <br> 名前:朝比奈みくるの放課後@コーヒーふたつ ◆2xLpx6qEVE :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:26:10.98 ID:WXXoF+ZvO<br> 「ん?どうかしましたか?」<br> -えっ!?い、いや別にっ!<br> 「ははっ、僕がシュークリームを買うなんて、意外でした?」<br> -え?えええっ?<br> <br> 驚く私を見て、小泉君が笑いころげています。私は恥ずかしくて恥ずかしくて・・・思わず小泉君に訊いちゃいました。<br> <br> -な、なんで解っちゃうんですかぁっ?<br> 「ハハハッ・・・いや、失礼。笑いすぎました。・・・朝比奈さんは、本当に考えている事が顔に良く出るんですよ?解りやすいというかなんというか・・・でも、そんな貴女だからこそ、僕は朝比奈の事が大好きなのかもしれませんね。」<br> -はあ、そうですか・・・って、ええっ!?<br> <br> い、今!なんか、とんでもない事を言われた気がしますうっ!<br> だだだだだだ大好きって・・・何ですかぁっ?なんなんですかぁっ!友達としてですよねっ?ああっ・・・顔が・・・熱いですぅ・・・<br> <br> 「どうしました?食べませんか?シュークリーム・・・」<br> -あ・・・はい、い頂きます。<br> <br> 私は、動揺を隠せないままにシュークリームも頬張りました。<br> 古泉君も、私に合わせてシュークリームを頬張っています。<br> <br> -うんっ!美味しいです!<br> 「そう・・・ですか?」<br> -あれ?何か、気になる事でも?<br> 「いえ・・・お店で味見した時は、もう少し歯触りが良かったんだが・・・」<br> <br> 古泉君は、少し残念そうな顔をしながら、シュークリームを見つめます。私は、なんとなく申し訳なくなって・・・<br> <br> -本当に美味しいですよ?<br> <br> と笑って見せました。すると、古泉くんは突然顔を上げて、私に言うんです。<br> <br> 「そうだ!もし、お暇でしたら、これから出来立てを食べに行きませんか?お店は少し遠いけど、車を出しますよ?」<br> -え?<br> 「あ・・・都合が悪かったですか?」<br> <br> <br> -え・・・いいいいえっ!そんな事無いですっ!<br> <br> 驚きました・・・。<br> たった今、二度目のドライブに誘われました・・・<br> もう少し、嬉しそうな顔が出来たら良かったのに、突然だったものだから・・・私、驚いちゃって・・・<br> <br> 「では今、車を持って来ますね?この前のバス停で待ってて下さい。」<br> <br> そう言い残して、部室から出ていく古泉君の背中は、とても嬉しそうです。<br> そんな彼の姿を見て、ふと私は、さっきの「大好きですよ」と言う言葉を思い出してしまいました。<br> <br> 胸がドキドキします・・・<br> <br> あ!はやく支度しなくちゃ!<br> 私は『先に帰ります』と置き手紙をして、部室を後にしました。<br> <br> 本日の私のSOS団での活動は、これでおしまいです。<br> <br> <br> おわり・第8話へ続く</div> <!-- ad -->