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『長門有希の遅刻』」(2020/03/15 (日) 18:20:30) の最新版変更点

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<div class="main"> <div> 梅雨も明け、湿度の暑さから解放され、普通の猛暑に苛まれようとする現在。<br> 今日も懲りずに俺は元・文芸部室、現・SOS団部室で古泉とお茶を啜りながらカードゲームをする。<br> 現在、部室には俺、古泉、朝比奈さんが居る。<br> …珍しく長門が居ない。<br></div> <br> <div> 「やっほー!ごめんごめん、遅れちゃった!全員――有希は?」<br> いつもの如く、スーパーハイテンションでドアをぶち破るかの様に登場するハルヒ。<br> 長門が居ないコトにはすぐ気付いたようだ。<br> 「長門さんなら……」<br> 古泉が、カードを1枚山札から取りハルヒに会釈をし口を開けた。<br> 「職員室ですよ。」<br> クスッと軽く笑いながら答えた。<br></div> <br> <div>「あらそう。珍しいわね。」<br> 俺も思ったな。というか、古泉。俺達にも言わないか?普通。<br> 何で知ってるんだ?<br> 「今日は、日直でしてね。日誌を返しに言った時にすれ違いまして。<br>   理由は聞いてませんが、長くなる、とのコトで。」<br> 古泉は、弱々しい怪物カードを生け贄に、中級怪物をセットする。<br> 「へぇ。」<br> 俺は1枚引き、呪文カードでその怪物を破壊し、直接攻撃。<br> 俺の勝ち。無敗伝説更新中。<br> 古泉は、残念と思っているのか苦笑し、カードを集めてケースに入れる。<br> 「仕方無いわね。…と言っても、今日はオフにしようと思ってたから。解散!」<br> ……珍しいな。今日は、珍しさ2本立てか。<br> ハルヒはそれだけを告げて、我先と帰ってしまった。<br></div> <br> <div>「…それでは、僕達も帰りましょうか。」<br> しばらくの沈黙の後、古泉がそう言った。<br> そうするか。暇だしな。<br> 「あっ、それじゃあ長門さんには私から……」<br> 「いいですよ。俺が言いますよ。」<br> 朝比奈さんにわざわざ言わせなくても良いだろう。<br> 長門が職員室に行った理由も気になるしな。<br> 「え?…じゃあお願いしますね。」<br> 朝比奈さんが満面のスマイルを放ってそそくさと帰ってしまった。<br> ……今日メイド服見てなかったな…。<br> 俺は、くやしながらお茶を飲み干し、水洗いした後、盆の上に置いて古泉と職員室に向かった。<br> </div> <br> <br> <div>職員室前。<br> まだ長門って居るのか?<br> 「いるでしょう。僕達は部室への道を逆に来たのですから。」<br> ピルルルルル、<br> 携帯の音が鳴った。<br> 古泉のポケットからだ。<br> 「……」<br> 今さっきまでの笑いとは違い、真剣な表情になる。<br> 「"アルバイト"か。」<br> 「ええ、スミマセン。」<br> 手を垂直に立て、謝って古泉は帰った。<br> 「さて、俺も長門の様子を見るか。」<br> 扉に手を掛けようとした。<br></div> <br> <div>―――ん?<br> 扉と壁の間に、紐が垂れていた。<br> ギッ、と軽く扉を開けて確認するとソレは見覚えのある栞だった。<br> 栞にはワープロで打ったような書体を赤いインクで書かれていた。<br> 否、インクではない……血。<br> 所々血液が落ちた形跡がある。そして、これは確実に長門。<br> 文面は――――<br></div> <br> <div>『gymnasium back』<br></div> <br> <div>―――体育館裏。<br> 俺は、栞を握り締め体育館裏へ直行した。<br></div> <br> <br> <div>体育館裏。<br> 既に言葉にするのもシンドかった。<br> 職員室と体育館は正反対だからな。<br> ソコで俺が見たモノは……<br></div> <br> <div>違う高校の不良と思われる2人とボロボロの長門。<br> 唇に血が乾いた痕があった。<br></div> <br> <div>「なんだぁ!?テメェ!!」<br> 俺は唇を噛み締めていた。<br> 意識が別の意味で朦朧とする。<br> 頭の中を血液が音速で循環する。<br> 右拳を上げた。<br> 不良はファインティングポーズを取る。<br></div> <br> <div>ゴッ!<br></div> <br> <div>1回の跳躍で、1人の左頬を殴り飛ばした。<br> フェンスに直撃し、うつ伏せの侭動かなくなった。<br> 「テメェ!」<br> もう1人が後ろから殴りかかる。<br> ブンッ!<br> 横振りの拳を俺はしゃがんで180度回転。<br> 拳を上に上げアッパーで顎を直撃させた。<br></div> <br> <div> 不良2人は動かなくなり、俺は怒りが治まって来た。<br> 長門は無表情で、地面を見ていた。<br> 「長門…?」<br> 「………」<br> 読書をしている時のように無言で、俺と眼を合わせてもくれない。<br> ……俺は頭の中で最悪の状態を構築させていた。<br> ツゥと頬を水が伝った。<br></div> <br> <br> <div>パシャリ。<br> ジィー、<br></div> <br> <div> 壁に凭れている長門の右、長門を見ている俺の左からシャッター音が聞こえた。<br> …ん?、と見ると、ポラロイドカメラが、壁から飛び出していた。<br> 「ふっふーん♪キョンってバカねぇ。」<br> リボンの黄色が明るく見える。<br> …ちょっと待て。ピンクがかった髪のお方と、右分け茶髪の野郎、それに灰色の髪の人も居るぞ?<br> 「ごっ…ごめんなさい。」<br> 「素晴らしい出来でしょう?」<br> 「………」<br> どーみても、SOS団ご一行にしか見えません。<br></div> <br> <div> 俺の眼の前にいる長門の頬を触れてみる。……冷たいな。<br> 「僕の血縁に人形職人が居ましてね。先日のお礼に、と言われまして。」<br> 「それを古泉クンから聞いて閃いたの!」<br> いらんコトをしてくれたな。<br> ハルヒは右手に写真を持ってヒラヒラと風に当てていた。<br> 「乾いてきた乾いてきた♪キョンのバカ面ー。」<br></div> <br> <div>「おい!!ちょっと待て!!」<br> ハルヒを睨み付ける。<br> 横に居た朝比奈サンが驚いて、半泣きになってしまった。しまった。<br> 「なによ。」<br> 「何処から冗談だ。」<br> 「全部よ。私が入って来てから。あーそれと、有希が遅いのは今朝から頼んだの。」<br> なんてこった。<br> というか、バカ面言うな。必死なんだぞ。<br></div> <br> <div> 「それじゃあ、私達は本当に帰るから。有希人形よろしく。」<br> 手を振って、ハルヒは帰ってしまった。<br> 不良はなんだったんだ?<br> と、思ってると不良が目を覚ましてきた。<br> 「いっつ……こっちは芝居でやってたのにな。」<br> 「『機関』の俺達が精進不足だったんだよ。」<br> やっぱ『機関』か。古泉ばっかじゃないか。血縁も嘘だろう。<br> 「それじゃあ、俺達も帰ります。…えーと…キョンくんだっけ。」<br> お前もソレで呼ぶか。止めてくれ。<br> 「人形はこのゴミ袋で包んで、粗大ででもどうぞ。」<br> そりゃあ、ありがた……くねぇ。<br> とりあえず貰ったけど。<br> 1人は手を振りながら2人は帰った。<br></div> <br> <div> 俺はしばらく無言で立ち尽くした後、ゴミ袋に長門人形とやらを包んで持って帰った。<br> </div> <br> <div>粗大の日は2日後だった。<br> 下り坂が不幸中の幸いだったな。<br></div> <br> <div>歩いて、チャリを走らせ。<br> 俺は、黒いゴミ袋を担いで家に帰った。<br> 玄関で靴を脱いでいると、妹がシャミセンと現れた。<br> 「何コレー?」と聞きながら、ゴミ袋の中身を見る。<br> しまった、浅墓過ぎた。<br> 俺が、手を伸ばした時は既に遅し。<br> 中身を見て、俺の見て。もう1度中身を見て妹は去ろうとする。<br> 俺は、捕まえてウメボシをしながら「誰にも言うんじゃねぇぞ?」と脅しかけて了解させた。<br> </div> <br> <div> 妹が俺のサイフを削る糧の一部になったのは言うまでも無かった。<br> </div> </div> <!-- ad -->
<div class="main"> <div>梅雨も明け、湿度の暑さから解放され、普通の猛暑に苛まれようとする現在。<br /> 今日も懲りずに俺は元・文芸部室、現・SOS団部室で古泉とお茶を啜りながらカードゲームをする。<br /> 現在、部室には俺、古泉、朝比奈さんが居る。<br /> …珍しく長門が居ない。</div>   <div>「やっほー!ごめんごめん、遅れちゃった!全員――有希は?」<br /> いつもの如く、スーパーハイテンションでドアをぶち破るかの様に登場するハルヒ。<br /> 長門が居ないコトにはすぐ気付いたようだ。<br /> 「長門さんなら……」<br /> 古泉が、カードを1枚山札から取りハルヒに会釈をし口を開けた。<br /> 「職員室ですよ。」<br /> クスッと軽く笑いながら答えた。</div>   <div>「あらそう。珍しいわね。」<br /> 俺も思ったな。というか、古泉。俺達にも言わないか?普通。<br /> 何で知ってるんだ?<br /> 「今日は、日直でしてね。日誌を返しに言った時にすれ違いまして。<br />   理由は聞いてませんが、長くなる、とのコトで。」<br /> 古泉は、弱々しい怪物カードを生け贄に、中級怪物をセットする。<br /> 「へぇ。」<br /> 俺は1枚引き、呪文カードでその怪物を破壊し、直接攻撃。<br /> 俺の勝ち。無敗伝説更新中。<br /> 古泉は、残念と思っているのか苦笑し、カードを集めてケースに入れる。<br /> 「仕方無いわね。…と言っても、今日はオフにしようと思ってたから。解散!」<br /> ……珍しいな。今日は、珍しさ2本立てか。<br /> ハルヒはそれだけを告げて、我先と帰ってしまった。</div>   <div>「…それでは、僕達も帰りましょうか。」<br /> しばらくの沈黙の後、古泉がそう言った。<br /> そうするか。暇だしな。<br /> 「あっ、それじゃあ長門さんには私から……」<br /> 「いいですよ。俺が言いますよ。」<br /> 朝比奈さんにわざわざ言わせなくても良いだろう。<br /> 長門が職員室に行った理由も気になるしな。<br /> 「え?…じゃあお願いしますね。」<br /> 朝比奈さんが満面のスマイルを放ってそそくさと帰ってしまった。<br /> ……今日メイド服見てなかったな…。<br /> 俺は、くやしながらお茶を飲み干し、水洗いした後、盆の上に置いて古泉と職員室に向かった。</div>   <div>職員室前。<br /> まだ長門って居るのか?<br /> 「いるでしょう。僕達は部室への道を逆に来たのですから。」<br /> ピルルルルル、<br /> 携帯の音が鳴った。<br /> 古泉のポケットからだ。<br /> 「……」<br /> 今さっきまでの笑いとは違い、真剣な表情になる。<br /> 「"アルバイト"か。」<br /> 「ええ、スミマセン。」<br /> 手を垂直に立て、謝って古泉は帰った。<br /> 「さて、俺も長門の様子を見るか。」<br /> 扉に手を掛けようとした。</div>   <div>―――ん?<br /> 扉と壁の間に、紐が垂れていた。<br /> ギッ、と軽く扉を開けて確認するとソレは見覚えのある栞だった。<br /> 栞にはワープロで打ったような書体を赤いインクで書かれていた。<br /> 否、インクではない……血。<br /> 所々血液が落ちた形跡がある。そして、これは確実に長門。<br /> 文面は――――</div>   <div>『gymnasium back』</div>   <div>―――体育館裏。<br /> 俺は、栞を握り締め体育館裏へ直行した。</div>   <div>体育館裏。<br /> 既に言葉にするのもシンドかった。<br /> 職員室と体育館は正反対だからな。<br /> ソコで俺が見たモノは……</div>   <div>違う高校の不良と思われる2人とボロボロの長門。<br /> 唇に血が乾いた痕があった。</div>   <div>「なんだぁ!?テメェ!!」<br /> 俺は唇を噛み締めていた。<br /> 意識が別の意味で朦朧とする。<br /> 頭の中を血液が音速で循環する。<br /> 右拳を上げた。<br /> 不良はファインティングポーズを取る。</div>   <div>ゴッ!</div>   <div>1回の跳躍で、1人の左頬を殴り飛ばした。<br /> フェンスに直撃し、うつ伏せの侭動かなくなった。<br /> 「テメェ!」<br /> もう1人が後ろから殴りかかる。<br /> ブンッ!<br /> 横振りの拳を俺はしゃがんで180度回転。<br /> 拳を上に上げアッパーで顎を直撃させた。</div>   <div>不良2人は動かなくなり、俺は怒りが治まって来た。<br /> 長門は無表情で、地面を見ていた。<br /> 「長門…?」<br /> 「………」<br /> 読書をしている時のように無言で、俺と眼を合わせてもくれない。<br /> ……俺は頭の中で最悪の状態を構築させていた。<br /> ツゥと頬を水が伝った。</div>   <div>パシャリ。<br /> ジィー、</div>   <div>壁に凭れている長門の右、長門を見ている俺の左からシャッター音が聞こえた。<br /> …ん?、と見ると、ポラロイドカメラが、壁から飛び出していた。<br /> 「ふっふーん♪キョンってバカねぇ。」<br /> リボンの黄色が明るく見える。<br /> …ちょっと待て。ピンクがかった髪のお方と、右分け茶髪の野郎、それに灰色の髪の人も居るぞ?<br /> 「ごっ…ごめんなさい。」<br /> 「素晴らしい出来でしょう?」<br /> 「………」<br /> どーみても、SOS団ご一行にしか見えません。</div>   <div>俺の眼の前にいる長門の頬を触れてみる。……冷たいな。<br /> 「僕の血縁に人形職人が居ましてね。先日のお礼に、と言われまして。」<br /> 「それを古泉クンから聞いて閃いたの!」<br /> いらんコトをしてくれたな。<br /> ハルヒは右手に写真を持ってヒラヒラと風に当てていた。<br /> 「乾いてきた乾いてきた♪キョンのバカ面ー。」</div>   <div>「おい!!ちょっと待て!!」<br /> ハルヒを睨み付ける。<br /> 横に居た朝比奈サンが驚いて、半泣きになってしまった。しまった。<br /> 「なによ。」<br /> 「何処から冗談だ。」<br /> 「全部よ。私が入って来てから。あーそれと、有希が遅いのは今朝から頼んだの。」<br /> なんてこった。<br /> というか、バカ面言うな。必死なんだぞ。</div>   <div>「それじゃあ、私達は本当に帰るから。有希人形よろしく。」<br /> 手を振って、ハルヒは帰ってしまった。<br /> 不良はなんだったんだ?<br /> と、思ってると不良が目を覚ましてきた。<br /> 「いっつ……こっちは芝居でやってたのにな。」<br /> 「『機関』の俺達が精進不足だったんだよ。」<br /> やっぱ『機関』か。古泉ばっかじゃないか。血縁も嘘だろう。<br /> 「それじゃあ、俺達も帰ります。…えーと…キョンくんだっけ。」<br /> お前もソレで呼ぶか。止めてくれ。<br /> 「人形はこのゴミ袋で包んで、粗大ででもどうぞ。」<br /> そりゃあ、ありがた……くねぇ。<br /> とりあえず貰ったけど。<br /> 1人は手を振りながら2人は帰った。</div>   <div>俺はしばらく無言で立ち尽くした後、ゴミ袋に長門人形とやらを包んで持って帰った。</div>   <div>粗大の日は2日後だった。<br /> 下り坂が不幸中の幸いだったな。</div>   <div>歩いて、チャリを走らせ。<br /> 俺は、黒いゴミ袋を担いで家に帰った。<br /> 玄関で靴を脱いでいると、妹がシャミセンと現れた。<br /> 「何コレー?」と聞きながら、ゴミ袋の中身を見る。<br /> しまった、浅墓過ぎた。<br /> 俺が、手を伸ばした時は既に遅し。<br /> 中身を見て、俺の見て。もう1度中身を見て妹は去ろうとする。<br /> 俺は、捕まえてウメボシをしながら「誰にも言うんじゃねぇぞ?」と脅しかけて了解させた。</div>   <div>妹が俺のサイフを削る糧の一部になったのは言うまでも無かった。</div> </div>

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