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「おとめごころ」(2020/03/13 (金) 00:53:52) の最新版変更点
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<div class="main">
<div>
わたしが部室に行くと、今日も長門さんが来ていた。長門さんってホームルーム抜け出してるんじゃないかって思う程、ここに来るのが早いなぁ。<br>
「こんにちは、長門さん。あの……着替えていいですか?」<br>
「……いい」<br>
いつものやり取りだ。あ、キョンくん達が来る前に早く着替えなくちゃ。<br>
わたしはこの部室での制服、メイド服に着替えた。なんだか気に入っちゃったんですよね、これ。<br>
わたしが長門さんにお茶を淹れようとした時、大きな音でドアが開いた。<br>
「みくるちゃん!お茶!」<br>
涼宮さんとキョンくんと古泉くんが同時に入ってきた。なんか涼宮さん、不機嫌そう……。<br>
「は、はい!すぐに準備します!」<br>
わたしはそう答えて、お茶の準備に取り掛かった。<br>
お茶を淹れてみんなに配り、最後に涼宮さんに渡した。<br>
「遅いっ!!最初にあたしに持ってきなさいっ!!」<br>
「は、はいっ!すみません!」<br>
「……ぷはぁ!おいしかったからいいわ。じゃあ、あたしは帰るから」<br>
そう言い残すと、涼宮さんはさっさと部室を出て行った。……お茶を飲みに来たのかなぁ?<br>
「すいませんね朝比奈さん。あいつ岡部にグチグチ言われて機嫌悪かったんですよ」<br>
わたしに声をかけてくるのはキョンくん。たぶん、長門さんも涼宮さんも……そしてわたしも何かとお気に入りの人。<br>
「大丈夫ですよ?あ、ほら。お茶冷めたらおいしくないです」<br>
キョンくんにお茶を勧めると、一気に飲んでくれた。こういう仕草がかわいいんですよね……。<br>
「熱っ!!まったく……ハルヒの奴、よく一気に飲めるよな」<br>
</div>
<br>
<div>
その言葉を聞いた時、わたしは思いだしたようにちょっとした嫉妬心を抱いた。なんで涼宮さんだけ名前で呼んで、わたしは名前で呼んでくれないんだろう。<br>
……ちょっとだけ、困らせちゃおうかな?<br>
「ねぇ、キョンくん。あの……わたしのことを『みくる』って呼び捨てにしてくれませんか?今日だけでいいですから……ね?」<br>
わたしが言い終わると同時に、長門さんが椅子を立ってキョンくんの袖を摘んでいた。<br>
「……わたしも。今日だけ『有希』って呼んで」<br>
ですよねぇ、長門さん。わたし達だって名前で呼んで欲しいですよね。<br>
「おやおや、キョンくんが大人気のようですので僕は帰りますね?それではみくるさん、有希さん、失礼します」<br>
と古泉くんは冗談っぽく言って出ていった。<br>
冗談でも、下の名前で呼ばれるとうれしいかも。あ、今わたし少しだけ顔が赤い。<br>
「……いやぁ、長門だけなら呼べそうなんだけどな。なぁ……ゆ、有希」<br>
長門さんはキョンくんに名前を呼ばれると本を閉じた。<br>
「今日は満足した。帰る」<br>
長門さんも部室を出て、残ったのはわたしとキョンくんだけ。<br>
「早く呼んでくださいよぉ~」<br>
「う……み、みく…朝比奈さん。もうイタズラはやめてくださいよ。俺ってなんか年上の人は呼び捨て出来ないんですよ」<br>
む~……なかなかキョンくんはしぶとい。<br>
「じゃ、じゃあ呼んでくれたら、う~ん……キョンくんだけにお菓子作ってきます!」<br>
「あ~……それは捨てがたいですね。だけどやっぱりなんか抵抗があるな。……そもそもなんでそんなに名前で呼んで欲しいんですか?」<br>
……やっぱりキョンくんは鈍感だ。女の子の心をわかってない。<br>
「……もういいです。着替えるから出ててください…」<br></div>
<br>
<div>
「じゃあ一緒に帰りましょうか。ドアの外で待ってます」<br>
キョンくんはそう言うと外に出て行った。<br>
あ~あ、結局わたしだけ名前で呼んでもらえなかった。残念だなぁ……。<br>
「朝比奈さ~ん、まだですか?」<br>
「待って……もうちょっとです」<br>
キョンくんが待ってるから急がなくちゃ!……って思うと焦って着替えが遅くなっちゃう。<br>
「あさひ……みくるさん、俺帰りますよ!」<br>
「もう!待ってくだ……えっ!?今、キョンくん名前で呼んでくれましたか!?」<br>
わたしがドアを開けると、キョンくんがびっくりしていた。それもそのはず、わたしの上半身は制服を着ていなかったから。<br>
「ご、ご、ごめんなさいっ!」<br>
恥ずかしいよぉ……でも、うれしい。キョンくんがわたしの名前を呼んでくれたのは初めてじゃないかな?<br>
わたしはすぐに着替えをきちんと済ませて、キョンくんの待つ部室の外にでた。<br>
「えへへへ……恥ずかしい所をお見せしちゃいました」<br>
「いえ、良いものを見せて……じゃなくて、帰りましょう」<br>
キョンくんと並んで、他愛のない話をしながら靴箱まで歩いた。<br>
長門さんも今日は名前を呼ばれたけど、わたしの方が得した気分。<br>
上靴から外履きに履き替えて、またキョンくんと並んで歩いた。わたしの少し前に揺れるキョンくんの左手、意外に広い肩幅。<br>
こんなに暗いとなんだか頼れる人に見えちゃうな……。<br>
「あ、朝比奈さん!?どうしたんですかっ!」<br>
わたしはいつの間にか、キョンくんの左手に自分の右手を重ねて握っていた。<br>
どうしよう……なんて言い訳しようかな?<br>
「あ、えへへ……こうすると恋人同士みたいですね?……なんちゃって」<br>
キョンくんはすぐに笑ってくれた。<br></div>
<br>
<div>
「あははは!じゃ、今日だけ恋人気分で帰りましょうか!」<br>
そして、わたしの手を握り返して歩きだした。<br>
涼宮さんに見られたら大変なことになっちゃうけど、幸せだなぁ……。キョンくんって何気にわたし達が一番よろこぶことをしてくれたりするんだなぁ。<br>
わたしはあったかい左手にすがりついて、しばらくの幸せを満喫しながら歩いた。<br>
……また、名前で呼んでくれたらいいなぁ。<br></div>
<br>
<div>おわり<br></div>
</div>
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<div>わたしが部室に行くと、今日も長門さんが来ていた。長門さんってホームルーム抜け出してるんじゃないかって思う程、ここに来るのが早いなぁ。<br />
「こんにちは、長門さん。あの……着替えていいですか?」<br />
「……いい」<br />
いつものやり取りだ。あ、キョンくん達が来る前に早く着替えなくちゃ。<br />
わたしはこの部室での制服、メイド服に着替えた。なんだか気に入っちゃったんですよね、これ。<br />
わたしが長門さんにお茶を淹れようとした時、大きな音でドアが開いた。<br />
「みくるちゃん!お茶!」<br />
涼宮さんとキョンくんと古泉くんが同時に入ってきた。なんか涼宮さん、不機嫌そう……。<br />
「は、はい!すぐに準備します!」<br />
わたしはそう答えて、お茶の準備に取り掛かった。<br />
お茶を淹れてみんなに配り、最後に涼宮さんに渡した。<br />
「遅いっ!!最初にあたしに持ってきなさいっ!!」<br />
「は、はいっ!すみません!」<br />
「……ぷはぁ!おいしかったからいいわ。じゃあ、あたしは帰るから」<br />
そう言い残すと、涼宮さんはさっさと部室を出て行った。……お茶を飲みに来たのかなぁ?<br />
「すいませんね朝比奈さん。あいつ岡部にグチグチ言われて機嫌悪かったんですよ」<br />
わたしに声をかけてくるのはキョンくん。たぶん、長門さんも涼宮さんも……そしてわたしも何かとお気に入りの人。<br />
「大丈夫ですよ?あ、ほら。お茶冷めたらおいしくないです」<br />
キョンくんにお茶を勧めると、一気に飲んでくれた。こういう仕草がかわいいんですよね……。<br />
「熱っ!!まったく……ハルヒの奴、よく一気に飲めるよな」</div>
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その言葉を聞いた時、わたしは思いだしたようにちょっとした嫉妬心を抱いた。なんで涼宮さんだけ名前で呼んで、わたしは名前で呼んでくれないんだろう。<br />
……ちょっとだけ、困らせちゃおうかな?<br />
「ねぇ、キョンくん。あの……わたしのことを『みくる』って呼び捨てにしてくれませんか?今日だけでいいですから……ね?」<br />
わたしが言い終わると同時に、長門さんが椅子を立ってキョンくんの袖を摘んでいた。<br />
「……わたしも。今日だけ『有希』って呼んで」<br />
ですよねぇ、長門さん。わたし達だって名前で呼んで欲しいですよね。<br />
「おやおや、キョンくんが大人気のようですので僕は帰りますね?それではみくるさん、有希さん、失礼します」<br />
と古泉くんは冗談っぽく言って出ていった。<br />
冗談でも、下の名前で呼ばれるとうれしいかも。あ、今わたし少しだけ顔が赤い。<br />
「……いやぁ、長門だけなら呼べそうなんだけどな。なぁ……ゆ、有希」<br />
長門さんはキョンくんに名前を呼ばれると本を閉じた。<br />
「今日は満足した。帰る」<br />
長門さんも部室を出て、残ったのはわたしとキョンくんだけ。<br />
「早く呼んでくださいよぉ~」<br />
「う……み、みく…朝比奈さん。もうイタズラはやめてくださいよ。俺ってなんか年上の人は呼び捨て出来ないんですよ」<br />
む~……なかなかキョンくんはしぶとい。<br />
「じゃ、じゃあ呼んでくれたら、う~ん……キョンくんだけにお菓子作ってきます!」<br />
「あ~……それは捨てがたいですね。だけどやっぱりなんか抵抗があるな。……そもそもなんでそんなに名前で呼んで欲しいんですか?」<br />
……やっぱりキョンくんは鈍感だ。女の子の心をわかってない。<br />
「……もういいです。着替えるから出ててください…」</div>
<div>「じゃあ一緒に帰りましょうか。ドアの外で待ってます」<br />
キョンくんはそう言うと外に出て行った。<br />
あ~あ、結局わたしだけ名前で呼んでもらえなかった。残念だなぁ……。<br />
「朝比奈さ~ん、まだですか?」<br />
「待って……もうちょっとです」<br />
キョンくんが待ってるから急がなくちゃ!……って思うと焦って着替えが遅くなっちゃう。<br />
「あさひ……みくるさん、俺帰りますよ!」<br />
「もう!待ってくだ……えっ!?今、キョンくん名前で呼んでくれましたか!?」<br />
わたしがドアを開けると、キョンくんがびっくりしていた。それもそのはず、わたしの上半身は制服を着ていなかったから。<br />
「ご、ご、ごめんなさいっ!」<br />
恥ずかしいよぉ……でも、うれしい。キョンくんがわたしの名前を呼んでくれたのは初めてじゃないかな?<br />
わたしはすぐに着替えをきちんと済ませて、キョンくんの待つ部室の外にでた。<br />
「えへへへ……恥ずかしい所をお見せしちゃいました」<br />
「いえ、良いものを見せて……じゃなくて、帰りましょう」<br />
キョンくんと並んで、他愛のない話をしながら靴箱まで歩いた。<br />
長門さんも今日は名前を呼ばれたけど、わたしの方が得した気分。<br />
上靴から外履きに履き替えて、またキョンくんと並んで歩いた。わたしの少し前に揺れるキョンくんの左手、意外に広い肩幅。<br />
こんなに暗いとなんだか頼れる人に見えちゃうな……。<br />
「あ、朝比奈さん!?どうしたんですかっ!」<br />
わたしはいつの間にか、キョンくんの左手に自分の右手を重ねて握っていた。<br />
どうしよう……なんて言い訳しようかな?<br />
「あ、えへへ……こうすると恋人同士みたいですね?……なんちゃって」<br />
キョンくんはすぐに笑ってくれた。</div>
<div>「あははは!じゃ、今日だけ恋人気分で帰りましょうか!」<br />
そして、わたしの手を握り返して歩きだした。<br />
涼宮さんに見られたら大変なことになっちゃうけど、幸せだなぁ……。キョンくんって何気にわたし達が一番よろこぶことをしてくれたりするんだなぁ。<br />
わたしはあったかい左手にすがりついて、しばらくの幸せを満喫しながら歩いた。<br />
……また、名前で呼んでくれたらいいなぁ。</div>
<div>おわり</div>
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