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-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">『雪のきらめき』</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">二学期の期末試験も終わった、いろいろな意味で……。まぁいい、なるようにしかならないさ。</span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">試験休みになってもわざわざ登校したうえに部室にやってきているのは今さら言うまでもない。やはり同じように部室に集まってきた<span lang="en-us" xml:lang="en-us">SOS</span>団の面々、ヒマなんだね、結局のところ。</span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">今にも雨か雪が降りそうな、いかにも冬というどっしりと重たい雲に覆われている。そんな空が見える窓辺では、長門が厚い本を読書中だ。朝比奈さんはポットのお湯の温度をじっと気にしている。古泉は俺の目の前で、無駄に知恵を絞って次の一手を考えているが、どう転んでもあと数手で王手、詰みだ。</span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">張本人のハルヒだけがまだやってきていないが、そのことに対して文句を言うような奇特なやつはここにはいない。遅れてきたことを問い詰めたところで、逆に追い詰められるのがオチだからな。</span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「涼宮さん、遅いですね」</span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">やっとのことで歩を進めた古泉が盤面から顔を上げて切り出した。散々考えた挙句の予想通りの指し手だったので、俺は間髪をいれずに打ち返してやった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ん、いいじゃないか、平和でさ、その方が。だろ?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いやぁ、手厳しいですね、あいかわらず。将棋も、涼宮さんに対しても」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「やわな神経じゃ付き合っていられないからな」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いかがですか、このあたりで一息入れませんか」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ふと気がつくと、朝比奈さんが柔らかい香りを漂わせつつ、淹れたてのお茶を俺と古泉の前においてくれた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ありがとうございます、朝比奈さん」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いただきます」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「どうぞ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そう、この時のために用もないのに部室に来ているといっても言い過ぎではない。やはり朝比奈さんのお茶は素晴らしい。この至福のひとときを堪能しているときに限って、飛び込んでくるのがハルヒなんだが。頼むぜ、もうしばらく、このままで……、</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ひゃっほー、遅れてごっめーん!」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> やはり、俺のささやかな願いはささやかなままで終わってしまった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なに、その顔。不満でもあるわけ?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> がっくりと肩を落としている俺のことを一瞥しながら、ハルヒは定位置の椅子にどっかりと腰を下ろすと、</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「みくるちゃん、お茶ちょーだい」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「はーい」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そういえば朝比奈さんは受験だよなと、ふと思うわけだが、この時期にこんなところでこんなことをしていてもいいのだろうか。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 朝比奈さんは俺の心配をよそに、いつもの笑顔でハルヒの机にお茶を置いていた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「うーん、いい香りね、ありがと、みくるちゃん」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いいえー」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そういって振り返った朝比奈さんは、俺にも笑顔を投げかけてくれた。受験のことは触れないでおこう。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「それにしても、遅かったな。何かあったのか?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 結局、誰も触れないので、俺が猫の首に鈴をつけなければならない。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「駅前で阪中さんと一緒になっちゃって、少し話し込んだから」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ほー、そうか」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ルソーの一件以来、阪中とはすっかり打ち解けたような感じだ。駅前で女友達と出会って話し込むなってことは、過去のハルヒからすると信じられないような状況だ。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「で、何の話だったんだ?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ん、ま、いろいろとね。でも、キョン、女の子の会話の内容を詮索するものじゃないわよ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ふん、それはすまないな」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 女の子ねぇ。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なに? なによ、その態度。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なんでもないよ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「それはそうとさぁ……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> すでに話の矛先が変わったようだ。ハルヒは、長門の方に振り向きながら話を続けた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「変な話聞いたんだけど、有希のことを『宇宙人だ、アンドロイドだ』っていう噂があるんだって?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> な、な、な、なにぃ!?</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 思わず飲みかけていたお茶を吹き出すところだった。古泉も驚いて天井を見上げているし、朝比奈さんはおもわず両手を口に当てて目を見開いていらっしゃる。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 当の長門は、分厚い本からゆっくりと顔を上げて、俺のことをじっと見つめていた。</span></p>
-<p style="text-indent:12pt;" class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">こらこら、こんな時に俺のことを見つめるなって。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「有希って、勉強もできるし、いろんなこと知ってるし、小柄で運動神経はそれほどでもないかもしれないけど、それでも何でもできるって感じじゃない?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ハルヒは椅子から立ち上がると、長門の隣に立った。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「でも、無口というかほとんどしゃべらなくて、表情の変化がないから、っていって、きっと宇宙人の作ったアンドロイドだ、って噂が流れているらしいわ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そこでハルヒは、長門の肩に手を置くと、</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「失礼しちゃうわね、ホントに。有希ってこんなにいい子なのに」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> さらにハルヒは長門を後ろから抱きしめるようにして顔を寄せると頬ずりをはじめた。もちろん、そんなことをされても、長門は噂にたがわず無表情のままであったが。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「どう思う? キョン。ひどい話じゃない?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ん、い、いや、そうだな」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 急に話を振らないで欲しいな、答えに窮してしまった。だって、実際のところ噂で言われていることはおおむね真実だからな。その事実を知っているごく少ないメンバの一員として、このような事態に遭遇したときに、どのようなリアクションを取れば良いのかシミュレーションしておくべきだった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ねぇ、有希、前に笑ってたことあったわよね? また、あの時みたいに、笑ってみてよ。つまらない噂なんか笑い飛ばしてやって」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「お、おい、ハルヒ……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門が笑っているところを見たことがあったって? いったいハルヒはいつそんなものを見たというのだ? しかも今ここで長門に笑ってみて、とは。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 朝比奈さんはすっかり怖気づいたように小さくなっている。古泉はやや興味深げに長門とハルヒのことを見つめていた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なぁ、ハルヒ、笑え、って言われて笑えるもんじゃないぜ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「そぉ? 笑うことは健康にもいいらしいからね」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「そうかも知れないが、こう、無理やり笑うって言うのは……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ハルヒと俺があーだ、こーだと言い合いをしていると、突然、小さいけれどその場を和ますような柔らかい笑い声が聞こえてきた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「えっ?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「な、な、な?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> その笑い声の主は長門だった。思わず振り向いた四人の視線の先には、いつもより一センチ近く多めに首をかしげながら、目を細めて微笑んでいる長門の姿があった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ユニーク……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ほら、キョン、バカなこと言ってるから有希も呆れてしまって、心のそこから笑えないじゃない、ね」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門のことを覗き込むように話しかけるハルヒに向かって、長門は答えた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「大丈夫、わたしはこの状況を心のそこから楽しんでいるから」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「あはは、有希ったら」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そんなハルヒと長門のやり取りを俺たち三人は唖然と見つめるしかなかった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 三時を過ぎたところで、お茶でもして帰ろうかという話になり、俺たちは部室を後にして、いつもの坂道を歩いていた。 さっきよりさらに雲が低くなっている。のんびりしていると、雨に降られるかもしれない。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 先頭はハルヒと朝比奈さん。今日もハルヒが朝比奈さんのことをおもちゃにしているらしい。朝比奈さんが何か言いながらハルヒに手を振っている後姿が見える。そして、少し遅れて長門、さらにそのすぐ後ろに俺と古泉といういつもの順番だ。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なぁ、長門、お前さっき……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ハルヒとは少し距離があるから聞き取られることはなさそうだが、それでも少し声を落として俺は長門に話しかけた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「……確かに笑ってたよな。どうした、何かあったのか?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いやぁ、さすがの僕も驚きましたよ。長門さん、すごく自然に微笑んでいらっしゃったから」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「……実はわたしも驚いている」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門は少し歩みの速度を落として、俺の隣に並んだ。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ひょっとしてまたあれか、ハルヒの力が発動したのか?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> あの時ハルヒは、長門に対する宇宙人のアンドロイドと言う噂を否定し、普通の女の子に決まっているといって、長門に笑うように要求していた。それが例の力の発動に繋がったというのだろうか。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 俺の問いかけを聞きながら、隣で少しうつむき加減に歩く長門の横顔は、昔と変わらない無表情だった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「わたしもそのことを疑ったが、どうやら涼宮ハルヒの願望、すなわち『わたしを笑わせたい』という願いは、単なるきっかけの一つに過ぎないことがわかった」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「どういうことだ?」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「わたしおよび情報統合思念体が今回の事態に対して検討を行い導き出された結論は……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そこで長門は俺と古泉の方に振り向くと、わずかに口元を緩めてそっと微笑みながら、ゆっくりと続けた。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「わたし自身が進化したということ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> その時、ついに耐え切れなくなった空から白いものが舞い始めた。今シーズンの初雪だ。それは目の前の長門の笑顔のような控えめな降り始めだった。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「あっ、雪よ、雪! ちょっとキョン、有希! 降ってきたわよ!」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> いつの間にか少し開いてしまった距離など気にすることなく、前方からハルヒが駆け戻って来ると、あっという間に長門の手を引っ張って行ってしまった。その先にはうれしそうに空を見上げている朝比奈さんのお姿が。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ほら、有希も連れてきたわよ。三人でこの状況を喜びましょうよ!」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> おいおい、お前は小学生か、幼稚園児か、と思わなくもないが、雪が降ってくると俺だってなんとなくうれしくなってくる。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ふふふ、実は僕もなんですよ」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> お前はどうでもいいんだよ、古泉。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 坂道の少し下のほうでは、ハルヒと朝比奈さんと長門が丸く手を繋いでくるくる回りながら、雪が舞う空を見上げている。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> はじけるような笑顔のハルヒに、無邪気に笑う朝比奈さん、そして、まだ戸惑いを感じつつもうれしそうに微笑む長門……。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いいですね、長門さんの笑顔」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「そうだな……」</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門は『自ら進化した』と言っていたが、ひょっとすると神様がくれたクリスマスのプレゼントだったのかも知れない。できることなら少しずつでもいいから、このまま進化し続けて欲しいものだ。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 俺はきらきらと輝きながら舞い落ちてくる雪に負けないぐらいにきらめいている長門の微笑を見つめながら、来年はきっといい年になることを確信した。</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us">Fin.</span></p>
-<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">『雪のきらめき』</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">二学期の期末試験も終わった、いろいろな意味で……。まぁいい、なるようにしかならないさ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">試験休みになってもわざわざ登校したうえに部室にやってきているのは今さら言うまでもない。やはり同じように部室に集まってきた<span lang="en-us" xml:lang="en-us">SOS</span>団の面々、ヒマなんだね、結局のところ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">今にも雨か雪が降りそうな、いかにも冬というどっしりと重たい雲に覆われている。そんな空が見える窓辺では、長門が厚い本を読書中だ。朝比奈さんはポットのお湯の温度をじっと気にしている。古泉は俺の目の前で、無駄に知恵を絞って次の一手を考えているが、どう転んでもあと数手で王手、詰みだ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">張本人のハルヒだけがまだやってきていないが、そのことに対して文句を言うような奇特なやつはここにはいない。遅れてきたことを問い詰めたところで、逆に追い詰められるのがオチだからな。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「涼宮さん、遅いですね」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">やっとのことで歩を進めた古泉が盤面から顔を上げて切り出した。散々考えた挙句の予想通りの指し手だったので、俺は間髪をいれずに打ち返してやった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ん、いいじゃないか、平和でさ、その方が。だろ?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いやぁ、手厳しいですね、あいかわらず。将棋も、涼宮さんに対しても」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「やわな神経じゃ付き合っていられないからな」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いかがですか、このあたりで一息入れませんか」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ふと気がつくと、朝比奈さんが柔らかい香りを漂わせつつ、淹れたてのお茶を俺と古泉の前においてくれた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ありがとうございます、朝比奈さん」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いただきます」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「どうぞ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そう、この時のために用もないのに部室に来ているといっても言い過ぎではない。やはり朝比奈さんのお茶は素晴らしい。この至福のひとときを堪能しているときに限って、飛び込んでくるのがハルヒなんだが。頼むぜ、もうしばらく、このままで……、</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ひゃっほー、遅れてごっめーん!」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> やはり、俺のささやかな願いはささやかなままで終わってしまった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なに、その顔。不満でもあるわけ?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> がっくりと肩を落としている俺のことを一瞥しながら、ハルヒは定位置の椅子にどっかりと腰を下ろすと、</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「みくるちゃん、お茶ちょーだい」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「はーい」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そういえば朝比奈さんは受験だよなと、ふと思うわけだが、この時期にこんなところでこんなことをしていてもいいのだろうか。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 朝比奈さんは俺の心配をよそに、いつもの笑顔でハルヒの机にお茶を置いていた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「うーん、いい香りね、ありがと、みくるちゃん」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いいえー」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そういって振り返った朝比奈さんは、俺にも笑顔を投げかけてくれた。受験のことは触れないでおこう。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「それにしても、遅かったな。何かあったのか?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 結局、誰も触れないので、俺が猫の首に鈴をつけなければならない。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「駅前で阪中さんと一緒になっちゃって、少し話し込んだから」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ほー、そうか」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ルソーの一件以来、阪中とはすっかり打ち解けたような感じだ。駅前で女友達と出会って話し込むなってことは、過去のハルヒからすると信じられないような状況だ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「で、何の話だったんだ?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ん、ま、いろいろとね。でも、キョン、女の子の会話の内容を詮索するものじゃないわよ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ふん、それはすまないな」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 女の子ねぇ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なに? なによ、その態度。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なんでもないよ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「それはそうとさぁ……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> すでに話の矛先が変わったようだ。ハルヒは、長門の方に振り向きながら話を続けた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「変な話聞いたんだけど、有希のことを『宇宙人だ、アンドロイドだ』っていう噂があるんだって?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> な、な、な、なにぃ!?</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 思わず飲みかけていたお茶を吹き出すところだった。古泉も驚いて天井を見上げているし、朝比奈さんはおもわず両手を口に当てて目を見開いていらっしゃる。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 当の長門は、分厚い本からゆっくりと顔を上げて、俺のことをじっと見つめていた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal" style="text-indent:12pt;"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">こらこら、こんな時に俺のことを見つめるなって。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「有希って、勉強もできるし、いろんなこと知ってるし、小柄で運動神経はそれほどでもないかもしれないけど、それでも何でもできるって感じじゃない?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ハルヒは椅子から立ち上がると、長門の隣に立った。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「でも、無口というかほとんどしゃべらなくて、表情の変化がないから、っていって、きっと宇宙人の作ったアンドロイドだ、って噂が流れているらしいわ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そこでハルヒは、長門の肩に手を置くと、</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「失礼しちゃうわね、ホントに。有希ってこんなにいい子なのに」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> さらにハルヒは長門を後ろから抱きしめるようにして顔を寄せると頬ずりをはじめた。もちろん、そんなことをされても、長門は噂にたがわず無表情のままであったが。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「どう思う? キョン。ひどい話じゃない?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ん、い、いや、そうだな」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 急に話を振らないで欲しいな、答えに窮してしまった。だって、実際のところ噂で言われていることはおおむね真実だからな。その事実を知っているごく少ないメンバの一員として、このような事態に遭遇したときに、どのようなリアクションを取れば良いのかシミュレーションしておくべきだった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ねぇ、有希、前に笑ってたことあったわよね? また、あの時みたいに、笑ってみてよ。つまらない噂なんか笑い飛ばしてやって」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「お、おい、ハルヒ……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門が笑っているところを見たことがあったって? いったいハルヒはいつそんなものを見たというのだ? しかも今ここで長門に笑ってみて、とは。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 朝比奈さんはすっかり怖気づいたように小さくなっている。古泉はやや興味深げに長門とハルヒのことを見つめていた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なぁ、ハルヒ、笑え、って言われて笑えるもんじゃないぜ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「そぉ? 笑うことは健康にもいいらしいからね」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「そうかも知れないが、こう、無理やり笑うって言うのは……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ハルヒと俺があーだ、こーだと言い合いをしていると、突然、小さいけれどその場を和ますような柔らかい笑い声が聞こえてきた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「えっ?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「な、な、な?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> その笑い声の主は長門だった。思わず振り向いた四人の視線の先には、いつもより一センチ近く多めに首をかしげながら、目を細めて微笑んでいる長門の姿があった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ユニーク……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ほら、キョン、バカなこと言ってるから有希も呆れてしまって、心のそこから笑えないじゃない、ね」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門のことを覗き込むように話しかけるハルヒに向かって、長門は答えた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「大丈夫、わたしはこの状況を心のそこから楽しんでいるから」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「あはは、有希ったら」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そんなハルヒと長門のやり取りを俺たち三人は唖然と見つめるしかなかった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 三時を過ぎたところで、お茶でもして帰ろうかという話になり、俺たちは部室を後にして、いつもの坂道を歩いていた。 さっきよりさらに雲が低くなっている。のんびりしていると、雨に降られるかもしれない。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 先頭はハルヒと朝比奈さん。今日もハルヒが朝比奈さんのことをおもちゃにしているらしい。朝比奈さんが何か言いながらハルヒに手を振っている後姿が見える。そして、少し遅れて長門、さらにそのすぐ後ろに俺と古泉といういつもの順番だ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「なぁ、長門、お前さっき……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> ハルヒとは少し距離があるから聞き取られることはなさそうだが、それでも少し声を落として俺は長門に話しかけた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「……確かに笑ってたよな。どうした、何かあったのか?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いやぁ、さすがの僕も驚きましたよ。長門さん、すごく自然に微笑んでいらっしゃったから」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「……実はわたしも驚いている」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門は少し歩みの速度を落として、俺の隣に並んだ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ひょっとしてまたあれか、ハルヒの力が発動したのか?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> あの時ハルヒは、長門に対する宇宙人のアンドロイドと言う噂を否定し、普通の女の子に決まっているといって、長門に笑うように要求していた。それが例の力の発動に繋がったというのだろうか。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 俺の問いかけを聞きながら、隣で少しうつむき加減に歩く長門の横顔は、昔と変わらない無表情だった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「わたしもそのことを疑ったが、どうやら涼宮ハルヒの願望、すなわち『わたしを笑わせたい』という願いは、単なるきっかけの一つに過ぎないことがわかった」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「どういうことだ?」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「わたしおよび情報統合思念体が今回の事態に対して検討を行い導き出された結論は……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> そこで長門は俺と古泉の方に振り向くと、わずかに口元を緩めてそっと微笑みながら、ゆっくりと続けた。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「わたし自身が進化したということ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> その時、ついに耐え切れなくなった空から白いものが舞い始めた。今シーズンの初雪だ。それは目の前の長門の笑顔のような控えめな降り始めだった。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「あっ、雪よ、雪! ちょっとキョン、有希! 降ってきたわよ!」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> いつの間にか少し開いてしまった距離など気にすることなく、前方からハルヒが駆け戻って来ると、あっという間に長門の手を引っ張って行ってしまった。その先にはうれしそうに空を見上げている朝比奈さんのお姿が。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ほら、有希も連れてきたわよ。三人でこの状況を喜びましょうよ!」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> おいおい、お前は小学生か、幼稚園児か、と思わなくもないが、雪が降ってくると俺だってなんとなくうれしくなってくる。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「ふふふ、実は僕もなんですよ」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> お前はどうでもいいんだよ、古泉。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 坂道の少し下のほうでは、ハルヒと朝比奈さんと長門が丸く手を繋いでくるくる回りながら、雪が舞う空を見上げている。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> はじけるような笑顔のハルヒに、無邪気に笑う朝比奈さん、そして、まだ戸惑いを感じつつもうれしそうに微笑む長門……。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「いいですね、長門さんの笑顔」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">「そうだな……」</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 長門は『自ら進化した』と言っていたが、ひょっとすると神様がくれたクリスマスのプレゼントだったのかも知れない。できることなら少しずつでもいいから、このまま進化し続けて欲しいものだ。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> 俺はきらきらと輝きながら舞い落ちてくる雪に負けないぐらいにきらめいている長門の微笑を見つめながら、来年はきっといい年になることを確信した。</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><font size="2"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';">Fin.</span></font></p>
+<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" xml:lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'MS Pゴシック';"> </span></p>