新米保父さん一樹は大童・五
時は西暦200X年。この平和な日本に、ただ一人の男の野望のためだけに結成された秘密組織があった。その組織は北高1年5組軍隊と呼ばれ、全身黒タイツの十五、六の少年少女型のチョッカーで構成されていた。その軍の最高指揮官、オ・カーベ(36歳独身)はハンドボール界のルールであり、彼そのものがハンドボールであった。オ・カーベはハンドボールをオリンピック競技とすべく、時たま幼い子をさらい、己の支配下に置き、ハンドボールプレイヤーとしてその子らに熱血指導を施していた。今日もまた、幼き天使に伸びるハンドボールバカの魔の手&その様な時代、地獄の底より囁かれる悪魔の声を断ち切るべく、一人の少女が立ち上がった!ハンドボール界の人々は彼女をこう呼ぶ、
「燃え盛る炎を纏いし究極戦士・朝比奈みくる」
と!!
さあ話を進めないと、と思った矢先、上のアホ過ぎるナレーションに先を越された。これも涼宮さんの力だと言うのか…言うんだろうなあ。では、気を取り直して。「少女が、少年が、私を呼んでいる……!」きりっ、とヒーローとして覚醒した朝比奈さんは闘志に燃える瞳で呟いた。「少女、少年とは、キョンくんとハルヒちゃんの事ですか?」正座を止めて立ち上がる。多分、彼女の言う少年少女とはこの二人で間違い無いのだろうが、もし全く関係の無い人々の事を言っているのだったら、森さん達に連絡して冒頭でチョッカーと呼ばれていた黒タイツ共を片付けて貰わないとならない。いや、あの森さんなら既にボッコボコのズッタズタにしているかもしれない。「ひえ!?」力強く結ばれていた朝比奈さんの唇は一気に緩み、驚きの声を発した。……何かまずいことを言ってしまったのだろうか。「どうしてわかっ……」そこまで言って朝比奈さんは、はっ!と両手で口を押さえた。そして何でもない、とでも言う様に首をぶんぶんと横に振る。「え?あ……ああー!そうですよね、ハルヒちゃんとキョンくんはお使いをしているんですから、道に迷いでもしない限り、助けなんて呼ぶ訳ありませんよね」そうか、『変身』ヒーローは覆面ヒーローと同義なのだから、正体を知られてはならないのか。「そう!そうなの。さっきのたすけをよんでいるってゆーのもね、みくる、あそんでただけなの。だれもみくるのこと、よんでないよぉ」朝比奈さんは今度は首を縦に振った。巧みに台詞を全て平仮名に戻していらっしゃる。それなら、と僕はダンボール箱の脇に置かれていたおんぶ紐を取り上げて、長門さんを抱き上げて台所へと向かう。「では、僕は有希ちゃんを背負ってヨーグルトぶちまけチキンライスの続きを作るので、みくるちゃんは出来るまで遊んでいて下さいね」「はあい!」朝比奈さんを部屋に独りきりにするため、素早く退室して扉を閉める。まな板には向かわず、そのまましゃがみ込んで扉に耳をくっつけて中の様子を伺った。「良かったあ…バレたかと思っちゃった……」心配しなくても、もろバレです。「普通の人だと思ってたのに……一樹先生って一体…?」空間限定エスパー、しかし今はその能力も消滅してしまって、いつ動物になるかと冷や冷やしている高校生……そんな所か。「うん、これで誰にも見られない」聞かれてはいます。「迸る情熱は少年少女の為に!究極戦士みくるっ」扉の向こうから籠った声が聞こえた。「へぇええーん…」バチバチバチィッ、と電気が走る不吉な音がする。「しんっ!」カッ、と扉の隙間から光が廊下に差し込んだ。「装着!『信』の闘神武甲胄バトルアーマー・ゼロ・ディフェクト…!」&&またえらく大層な名前の変身ス
説明しよう!バトルアーマー・ゼロ・ディフェクトとは、みくるがマッド・サイエンティスト・ディペット博士に頼み込み、世間一般には極秘で発明した、記憶形状型超特製銀メタンを異粒子状にまで分解し、みくるに秘められし未知のパワーを最大限に発揮できる効能を持ったバトルアーマーである!!
また乗っ取られたー!さっきから誰!?ついでにディペット博士も誰!「今日も放たれるSOSのサイン……どうして、どうして…っ……どうして人は同じ星に生まれた人を、動物を、木々を、仲間を、家族を!傷付けてしまうんだーー!!!」誰ーーーーーっ!?!?「その様な人々に必要な正しい道へのしるべ……それがお前じゃろうて」「ディペット博士!!」呼んでもないのに来た!「しかし…私は、私がしている事は……幼い子どもを傷付ける不届きな輩を、傷付けて成敗しているだけなのです……暴力を解決するのに暴力を振るう、これは誠の正義なのでしょうか…」「下らない事で愚図愚図するな!」博士のキャラ変わった!?「さあ。ゆけ、ゆくのだ!選ばれし究極戦士みくるよ。いじめっ子を懲らしめるには同じく、否、それ以上にいじめるしか無いのだ!お前もヒーローの端くれなら戦えぃ!!」「そんな、そんなの……」「甘えるな!!真の正義は綺麗事では済まされないのだ!」「くっ……!」「貴様が行かなくては誰が行くと言うのだ!貴様が行かなくては誰が――」
「誰 が 少 年 少 女 を 救 う と 言 う の だ!!」
「…………博士」「………」「私は甘えていました」「………」「しかし、もう甘えません、迷いません。何故なら私は――」
「私は彷徨える人々への唯一の道しるべなのですから!!」
「やっと解ったか」「はい」「今のお前は、とても良い目をしておる&」「はい。では、少年少女のもとへ、行って参ります!」突如、バリーン!と、窓ガラスが叩き割れる音がした。……ガラス!?「そうだ…みくるよ、お前はそれでいいのだ…思う存分、悪と戦って来い。そして、また一つ成長して帰って来」「突然ですが失礼しま、うわ!マジでガラス割れてる!」「ひしゃん」「下の道に人がいたらどうするつもりだったんですか!大怪我ですよ」「おお、これはこれは。君達は確か…いつもみくるがお世話にな」「そこのおじいさん、塵取りと箒とゴム手袋とゴミ袋を持って来て下さい。探せば直ぐに見つかりますから」「え?ワシが?この天才科学者ディペット博士が、こんなオスガキに命令されているじゃと?」「あ、こら、長門さん!危ないから窓に近付かないで下さい」「わかっちゃ」「いやいやいや、言った側から&ああもう、有希ちゃん、おんぶするから動かないで下さい」「ん」「えー…………ディペット博士、こんな紐でどうやったら子どもを背負えるんですか?」「全く、最近の若造はこれじゃから…ほれ、貸してみい」
いきなり現れた黒タイツ集団(確か冒頭の謎のナレーションではチョッカーと呼ばれていた)そいつらを片っ端からギッタギッタのメッタメッタにしていると、ド派手に赤いピチピチスーツを着て、戦隊もののレッドみたいなヘルメットを被った子どもが三輪車をキコキコ言わせながら公園の入口までやって来た。「ディペットの野郎、メンテナンスサボったな……あんのハゲちょろびんがぁ…なぁにが『お前もヒーローの端くれなら戦えぃ』だ…端くれどころか私が全ヒーローのドンだっつーの」怖がっていたのも長くは続かず、「ねーおじさーん、ひーろーはいつくるのー?」と呑気に多丸兄に聞いていた涼宮ハルヒは、そう恨めしげに呟く赤スーツを見た途端、隣にいた対象Bと共に歓声を上げた。この二人の心臓は剛毛が生えてるに違いないわ。「マシン・みくるREXターボ改がエンストするなんて…」はぁはぁと息を切らせながら、三輪車から降りる。みくる、という事はこの小さなヒーローは朝比奈みくるで、お使いに向かわせる際涼宮ハルヒと対象Bに財布を渡し忘れたバカ泉との電話で聞いた涼宮ハルヒの発言から考えるに、今この子は未来人ではない、と。更に長門有希は魔女っ娘、アホ泉は喋る動物。…ややこしい事になりそうね。「唯一機能しているのはこれだけ…」レッドが三輪車のハンドルの間にある小さなボタンを押すと、その場に喧しいクラクションが鳴り響いた。その途端、私達が再起不能にしたチョッカー以外に僅かに残っていた黒タイツ数人がキーキーと叫ぶ。「あれ?少なっ……え?」朝比奈みくるはゴーグル越しに、チョッカーを粗方片付けていた私達を見た。「いち」立てた人差し指で自分を指差し、「にー」次に倒れ伏したチョッカーの背中に片足を乗せた私を差し、「さん」ばらばらに地面に散らばるタイツ集団を一ヵ所に纏めている新川を差し、「しー」それを手伝う多丸弟を差し、そして最後に「ごー」涼宮ハルヒと対象Bを背中に庇い、戦闘態勢を取っている多丸兄を差した。「もしかして、まだ目覚めない戦士達…?……いや、違うか。オバハンとジーさんとデブと若ハゲ。ヒーローには不相応だ」ガキに言われたくないわね、誰がオバハンよ。朝比奈みくるが一人で指を曲げたり伸ばしたりしていると、やっと自分達の役割を思い出したか、生き残った黒タイツ数人が彼女に飛び掛かった。それをやたらと格好を付けて地面を転がり、素早く回避した朝比奈みくるは、「私だって、私だって本当は戦いたくないんどぅわーーー!!」絶叫しながら、どこに隠していたのやら、バズーカ砲を肩に担いだ。おおっ!と涼宮ハルヒと対象Bが声を上げる。「君達だってそれは解っている筈だ!この戦いは何も生み出さないだがしかしっ!」一気に言い切り、朝比奈みくるはバズーカ砲を担ぎ直す。「それでも君達がそこの少年少女を傷付けると言うのならば……やむを得ない。せめて苦しめずに一瞬で葬る!」「かっけー!」どの辺が?と私は全く同時に叫んだ涼宮ハルヒと対象Bに聞きたかった、けれど止めておいた。「うぉおおぉお!血で血を洗う極悪惨烈みく、じゃないヒーローバズーカ!!」バズーカ砲から飛び出て来たのは、紐で繋がった万国国旗だった。隠し芸大会レベルじゃないの。ひらひらと万国国旗はチョッカーの頭上に降り注ぎ、ちょんと体のどこかに当たっただけで何故か彼等は吹っ飛んだ。あんなのでダメージ食らうか。「ルール無用の残虐ファイター、それが私!」残虐さをどこにも見出だせないままでいる私達を放ったらかしに、朝比奈みくるは涼宮ハルヒと対象Bのやんやの拍手を受けながらチョッカーに突っ込む。「おっぱいミサイルやりたかったけどそーだ園児だから無いじゃん出来ないじゃんキィーック!」えらい長いわね……これ技名?普通にヒーローキックでいいわよね?っていうか、おっぱいミサイルは変身ヒーローじゃなくてロボットでしょう。「仁義無き戦いこそが真の戦い!私に勝ちたくば義理や人情のたぐいは捨てろ!」涼宮ハルヒのヒーロー像に疑問を持ちながら、もう私に出番は無いわねと、チョッカーの背中から足を退けた。朝比奈みくるの攻撃は続く。今やこじんまりとしたこの公園は、完全に彼女の独り舞台だった。「ヒーローパンチ!」「ヒーローアタック!」「ヒーローバックドロップ!」「みくるチョップ!」「ヒーローアッパーパンチ!」今一回みくるって言った!気付いてしまっただろうか、と涼宮ハルヒを伺うと、彼女は嬉しそうにきゃーきゃー言っていた。「この究極戦士がいる限り、悪が栄える事はない!!」全てのチョッカーを地面に転がした朝比奈みくるは、声高らかにそう叫んだ。途端に涼宮ハルヒが勢い良く拍手し、隣の彼がそれに倣い、ああ、うん……と歯切れ悪く呟きながら私と新川とダブル多丸も手を打ち鳴らした。このままサイン会でも始まるのかしら、と思っていると、何の前触れも無く、「いい気になるなよ、究極戦士!」との台詞と共に耳障りな高笑いが聞こえた。まだなんか一芝居あるのね……。「これ位楽にこなして貰わないと、俺の宿敵は務まらん!」「その声は…!」朝比奈みくるが勢い良く、声の在処である滑り台の天辺を振り仰ぐ。「1年5組軍最高指揮官オ・カーベ…!」朝比奈みくるの怒りに包まれながらも緊迫した声が公園に響く。強盗宜しく鼻の下から顎までをバンダナで覆い、ジャージを着た男がそこに立っていた。涼宮ハルヒ達の担任、岡部ね。ラスボスを名乗るんなら、もうちょっと衣装に金掛けなさいよ。「少年少女には指一本触れさせないっ!」朝比奈みくるが岡部に、そこから降りて来いと大怪我な身振りを取る。「俺が欲するのは最早ガキ共では無い!」「何っ!?」「俺の素晴らしい計画を尽く邪魔する、目障りな貴様の命だ!!」岡部はそう叫び、どこに隠し持っていたのか、バズーカ砲を担いだ。またか。主人公とラスボスの武器が被るなんて有り?しかしそう考えているのは私だけの様で、涼宮ハルヒは、「あぶないっ、にげてー!」と窮地に立たされた朝比奈みくるに対し、激しく大声を上げていた。「ハンドボール爆撃!標的ロック・オン!!」そのまんまな技名と共に、バズーカ砲からハンドボールが続け様地面に打ち付けられる。万国国旗もハンドボールも、バズーカ砲に入れる利点はどこにあるの。「ぐぁああぁあ!」滑り台の天辺から朝比奈みくるの足元へと、滝の様に振るボールに彼女は呻いた。ちなみにボールは一つも当たっていない。「いやっ!!」涼宮ハルヒが見ていられない、と両手で目を塞ぐ。いや、心配しなくても当たってないわよ。これはあなたの力ね。「ぐっ……」ハンドボール爆撃が止み、朝比奈みくるはさもダメージを体力の限界まで受けたかの様に膝を地面に付けた。途端に、朝比奈みくるに青い電気が走り、彼女を包んでいた赤いスーツが消えてゆく。まずい、涼宮ハルヒに朝比奈みくるが変身ヒーローとバレてはならない、と、彼女の目を覆う手の上に更に私の手を重ねた。対象Bの視界は多丸弟が私と同じ様に遮る。「ハッ、所詮この程度か…」つるつるつる~と滑り台を尻で滑って降りて、跪いた朝比奈みくるの前に立ち、息を切らした彼女の額に、ポケットから取り出した……えーと…格好付かないわね……水鉄砲をぴたりと当てた。「命乞いしな」まるでピストルを突き付けた様な残酷な瞳の岡部。まるでピストルを突き付けられた様な絶望した表情の朝比奈みくる。しかし、朝比奈みくるは正義だった。「断る」彼女は悪に屈することを良しとしなかった。岡部は、朝比奈みくるを下劣に細めた目で見下ろし、耳障りな笑いを喉から洩らす。「地獄へと旅立つ前にこの世界に言い残す事は無いか。聞いてやろう」朝比奈みくるは一つ大きく息を吸い込む間だけ時間を空け、「お前に言う台詞等持ち合わせていない。私は、今まで私を支えてくれた、たった一人に……」それまで痛みと屈辱に歪んでいた朝比奈みくるの顔が、元の儚げな可愛らしさを取り戻していた。涙を目尻に浮かべ、慈悲深き女神の如き微笑みを浮かべ、「フローラ……永遠に愛しているよ…」誰よ。「私も永久に愛してるよダニエーーール!!!」だから誰よ。大絶叫と共に、公園に面した道路から目茶苦茶に長い緑色の髪をなびかせ、セーラー服の少女が岡部と朝比奈みくるの間に突進した。言わずもがな、その少女は私達も良く知る鶴屋家の娘だ。「フローラ……危険だから、里で待っていてくれと……子ども達を…ミッシェルとタカシを置いて来ては……駄目だろう……」子持ちかよ。別に致命傷を負った訳でもないのに息も絶え絶えな朝比奈みくるを鶴屋家長女は己の胸に彼女を寄せ、力一杯抱き締めた。「ダニエルっ、ダニエルっ!!ミッシェルとタケルの為に、生きて…私の為に、勝って……ずっとあなたは悪と戦っているのに、私はあなたの帰りを待ってるだけ。それはもう嫌にょろ……」にょろで全てが台無しね。あとタカシ可哀想。「ダニエ……いや、みく、違うね……ちるちる」鶴屋家長女は朝比奈みくるを抱き締めていた手を肩に置き、彼女の目を力強く見つめた。「今更出て来て、女子供に何が出来ると言うのだ」岡部が水鉄砲を手先で弄び、彼女等に非難を浴びせる。「ちるちる、ずっと黙ってたけどね…」岡部の野次にも負けず、鶴屋は朝比奈みくるの前髪を片手で掻き上げ、己の剥き出しの額をそこにぴたりと貼り付けた。「何を……?」「目、閉じるっさ」困惑する朝比奈みくるに鶴屋がそう言うと、彼女は大人しく瞼を降ろした。「ハハハ!戦いの神が悪戯に選んだメスガキ如きに、貴様等デコっぱち一族の蘇りの儀式が利く訳――」狂った様な高笑いを暫く響かせて、岡部はそれを唐突に詰まらせた。朝比奈みくると鶴屋が繋がったその額から、眩い光が放たれたのだ。ペカァアァアー、みたいな光が。「何だとぉおぉお!?」驚愕に満ちた岡部を、二人の間から漏れ出た光が包む。瞼を開けた鶴屋は、朝比奈みくるの額から己の額を離した。「今までずっと黙っててごめんにょろ、ちるちる。君を一目見た時から私は解っていたのさ……君が、千年に一度生まれると言い伝えられている幻の黄金律の輝きを持つ、レジェンド・オブ・デコリストだと!」ふーん。もう何でも有りね。「私が…?」「そうにょろ!君にヒーローとしての力を与えた神は、君が伝説のデコリストだって知ってたのさ!だから神は君こそがヒーローに相応しいと考え、究極戦士の力をお与えなさった」「しかし、そんな話すぐには……」「これでもかい?」パチン、と鶴屋が指を鳴らすと、一塊にされていたチョッカーの中から一体の黒タイツが立ち上がった。そいつは顔を覆っていたマスクを破り、朝比奈みくるの前に進み出る。オールバックから垂れた前髪が根元でぶつ切りになっているその男は、確か「朝比奈ミクルの冒険」にちょい役で出演し、池に嵌まっていた谷口とやらだった。次に朝比奈みくるの前に進み出たのは、公園の植え込みから姿を現した喜緑江美里だった。いつから隠れていたのだろう。最後に一歩踏み出したのは、私の真横に立っていた新川、ってお前!!「ちょ、ま、あらか…」「今の私は、あなたが良く知る機関の新川では御座いません」「はぁ?」「デコ友の会・会員ナンバー004、それが今の私の全てです」「はぁあぁああ!?」聞いてないわよこんなん!私達の困惑は無視して、新川達は朝比奈みくると鶴屋のもとへと迷い無く足を進め、そして朝比奈みくるに自分達の顔を見せる形で跪いた。「彼等は…?」「デコっぱち一族の生き残りにょろ。他の皆は…ホッペタ一族との壮絶な戦争で、粗方……」鶴屋がそこで言葉に詰まり、唇を噛み締める。くっ、と谷口は辛い過去を思い出したのか、歯ぎしりし、喜緑江美里は悲しげにゆるゆると頭を振った。新川は寄せた眉の下、瞼をそっと閉、もっかい聞くけど何してんのお前!!「そうか…これだから争いは……」朝比奈みくるは苦虫を噛み潰した様な表情になった。そろそろあんた等の後ろで突っ立ったまんまの岡部に構ってあげなさい。「ちるちる、私達で良かったら、オ・カーベを倒す力を貸すよ」あー良かった、このまま岡部は放置かと思った。鶴屋の申し出に、朝比奈みくるは、「しかし…」「独りで戦うの者だけがヒーローとは限りませんぞ」おまっ、新川、あんた帰ったら森園生☆必殺お尻ぺんぺん千叩きの刑ね。もちろん金属バットよ。「いいのか…?」「あったりまえっさ!ね、みんな」朝比奈みくると鶴屋に見つめられ、新川達は力強く頷く。「ありがとう…本当に、ありがとう…」じわり、と再び涙を滲ませた朝比奈みくるの小さな手を、鶴屋は優しく取った。「じゃ、みんな、あの儀式やるにょろ」後ろの新川達に鶴屋が言うと、彼等四人は個々が正方形の頂点の位置になる様に移動し、また地に跪く。その中心に朝比奈みくるを立たせた鶴屋は、「みんな、目ぇ閉じるっさ」五人が瞼を降ろした直後、パァアァアァア、と眩いばかりの光が四人の額から放たれ、空中で太陽にも負けない程の明るい一つの光になった。そしてその球は朝比奈みくるの小さな額に降り、そこに吸い込まれるように段々と小さくなった。「これが……レジェンド・オブ・デコリストの力………」全ての光が朝比奈みくるに注ぎ終わると、彼女は閉じていた瞼を上げ、拳を開いては閉じ、閉じては開きを繰り返した。まるで、己に新しく備わった力に慣れようとするかの如く。暫くの間そうして、皆が見守る中、朝比奈みくるは口を開き――「変身っ!!」公園が、目も開けられない程の強烈に眩い光で包まれた。余りの眩しさに思わず腕で顔を覆いそうになるが、涼宮ハルヒの視界を手の平で防ぐ事に専念する。もう色々な事が起こり過ぎで、どこまでが涼宮ハルヒの望みでどこからが個人が涼宮ハルヒの力が直接働いた訳ではなく、おかしくなっているのかが解らない。光が治まり、目を開けても問題無い状態になるまでたっぷり一分は要した。恐る恐る公園の中心に目をやると、そこには、カラフルなスーツを着た五人が威風堂々と立っていた。そして、合図も無しに声を揃え、誰一人として全くずれずに、「ツルピカ戦隊デコレンジャー!!」……うん、そんな事だろうと思ったわ。
ツルピカ戦隊デコレンジャー、怒涛の後半へと続く!
「……あれ?今回僕達の出番ってこれだけですか?」「そうじゃろうな」「まあ、たまにはこのような回があっても良……博士まだいたのか」「いちゃのか」
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