繋いだ手が汗ばんできた。
緊張----なんて言葉じゃ表現できない。手 ひとつにしても印象がずいぶんと違う。
いつもは引っ張り回されて合わさる手。
だけど、今は本当の意味で"繋がっている"カンジがする…。

なんてキレイごとばっかで情けなくなるな。
すまん、実はもういろいろと限界なんだよ。だってそうだろう?
妹と一緒に寝るのとはわけが違うんだよ!!…あ? いや待て俺はそっちの趣味は無いんだ。一般論だあくまでも。
ハルヒのやわらかい手、肌背中を通して伝わってくる熱。
そんな少しの触れ合いが、物足りなさと妄想を何倍にも膨れ上がらせていく。
健康な男子高校生ならわかってくれるよな?古泉を除く。
そんなこんなで、さっきから寝るどころかどんどん目が冴えている。
っくそ!いっそのこと朝まで起きてればいいのか!?

『寝れないの?』
いきなり話しかけられて固まってしまった。俺 声に出してたか?
『あ あぁ…いやー 今日は暑くてなんか寝苦しいな。』
外は大雨。むしろ肌寒いくらいだ。
『? 普通じゃない?』
普通じゃない断じて違う!この状況が普通なら、ゾウが生クリーム塗ったくられてても驚かないね。
『早く寝なさいよ。明日も9時集合なんだから!』
『いや 起こしてくれよ。』
『ダメよ!そんなことしたら自力で集合時間に間に合わせてるみくるちゃん達に悪いわ!
それに、喫茶店で誰が奢るのよ?』
俺かよ!!
そう言って無邪気に笑うハルヒを見るとホッとした。もう、いつものハルヒだ。
反面…若干焦った。俺だけなのか?こんなにドキドキしてるのは。
それともハルヒはこういう事態に慣れているのだろうか?俺以外の…他の誰かには、もっと素直に甘えているのかもしれない。

はぁ〜…なんてしょうもないこと考えてるんだろうな……ん?
 なんだ このやわらかい感触………!???
今まで反対方向に向いていたハルヒの体が180°回転してこっちを…ってことは コレは…
『ハ…ハルっ?』
やべっ 声がうわずった。
『すー……すー…』
寝てやがる!!ってことは 寝返りか。
それにしてもちょっとひっつきすぎだ!ム ムネが…当たる…。
朝比奈さんには程遠いが、それでも人並み以上を誇るハルヒのソレは、確実に脳味噌へ大ダメージを負わせていた。
ぐわっ 腰を持つな!抱き寄せるな!
『キョン…も…食べられないわよぅ』
ベタな寝言を言うな!

…どうしたもんかね。まさか 起きてるんじゃないよな?からかわれてるとか…
そっと体を起こしてハルヒの顔をのぞき込んだ。
長いまつげ、透明感が強い白い頬、そして、薄く微笑んだように見える唇…毎日顔をつき合わせているハズ、それもいつだって特等席だった…それなのに、なぜこんな単純なことにも気づけなかったんだろうか。
ハルヒは可愛い。可愛いが不安定だ。
この安心しきった顔を見て、さっきの暗い表情が脳裏に浮かぶ。
すっと手を伸ばして、髪を撫でると、一瞬ピクッと肩が動いた気がしたが、起きてはこなかった。

強がりなんだろ?誰かに頼りたくなる時も、ひた隠しにするくらいなのだから。
でもなぁハルヒ、少しぐらい寄りかかってもいいんだぞ。少なくとも俺や、他の団員くらいなら迷惑はかからない。
…まぁ ワガママとは違うけどな。そこんとこはひとつよろしく。

閉鎖空間が発生するから?古泉のバイトが増えるから?世界が、崩壊するから…?
そんなことは、どうでもいいんだよ。もう あんな不安な顔はさせたくない。
させたくないから 俺がお前の側に…。

俺の小さな決意なんて知るよしもなく、ハルヒはかわいい寝息をたてていた。……腹 丸出しで。
なぁ神様よ これは何かの試練なのか?いや 神は涼宮ハルヒだったか。
捲れあがったパジャマをすばやく直し…触ってないからな。指一本、神に誓って。
頼むからこれ以上「こいつ何やっても起きないんじゃないのか?」という邪な考えを膨らまさせるような真似はしてくれるなよ。
そうそう、そうやっておとなしく寝ててくれ。
黙っててりゃ美人。眠ってりゃ文句無し!なハルヒの寝顔は、眺めていてすぐ飽きるような代物じゃなかった。
自分の気持ちの整理がついたことにほっとしたのか、ただじっとハルヒを見つめていた。
何も考えずに………心頭滅却……煩悩抹殺…

キ      …キスくらいなら…

だーーーーーーー!!!ケダモノか!? 俺は六人の獣なのか!!?
さっきの聖人のような俺!カムバック!!続

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最終更新:2007年07月12日 17:26