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皆が寝て、静まった頃。俺、長門、由良、国木田の居る部屋。
「・・・長門?」
眠れない俺が体を起こすとベッドから降りて立っている長門が目に映り、俺は声を掛けた。
長門はゆっくりと俺の方を向くと静かに一言、
「歪が具現化される」
と神妙な面持ちで言った。
「ヒズミ?」
「世界を改変しすぎた影響で生まれた。その歪は意思を持った混沌。きっと、襲ってくる」
ふと部屋の扉が静かに開く。朝倉と喜緑さんがそこには立っていた。
「長門さん、行きましょうか」
そう言う二人は手に銃を持っている。長門も気付けば銃を片手に一つずつ持っていた。
 
 
ながとぅーみー 第七話「メルティーバレット Re.Act」
 
 
「待て、俺も行く」
「駄目よ、キョンくんは。ゾンビとかと比べ物にならない戦闘能力なんだから」
一秒も経たないうちに朝倉に制される。
「そんなに危ういのか?」
「そうですね・・・三人の計算の平均値によると、歪みの力は岡部さんと同等と出ています」
「・・・!」
このインターフェース三人ですらどうにも出来ない岡部と同等レベル。
それを相手にするなんて命知らずにも程がある。
「・・・心配はいらない。私達は必ず戻ってくる」
「そうよ」
「はい」
三人が三人とも微笑む―――長門は微妙だが―――から俺は溜息を吐く。
「解った。信じてるぞ」
「ん。行って来る」
一応お見送りみたいな感じで、エレベーターまでついていった。
三人はエレベーターに乗り、扉が閉まる前に一度こっちをチラッと見てきた。
エレベーターの階表示を俺はただ凝視する事しか出来ず、その数字の移行を眺めていた。
20、19、18、17・・・。
段々と1に近付いていく数字。あぁ、不安だ。不安すぎて今すぐ駆け出したい気分だ。
5、4、3、2・・・1。
それと同時だっただろうか。轟音が聞こえたのは。
「な、なんだ!?」
確かめに行こうとエレベーターの↓ボタンを押すが動く気配はしない。不安も最高潮だぜ。
俺は思考を切り替えて、銃を持ってる事を確認するとさっさと非常階段から一階へと向かった。
あぁ、そうだ。待ってるだけじゃいられない。長門が心配で仕方が無い。
だが、最高級ロイヤルスウィートルームのある最上階から一回までは物凄い長い。
時間が掛かると言ったら無かった。あ~疲れると言ったら疲れるね。
「サァ、目覚メヨ。食事ノ時間ダ・・・」
そして、ようやく一階に到着した頃、そんな渋い声が聞こえた。俺は物陰からそっと顔を出した。
「長門サーン! 一目ボレラーーーーブデスYoッッッ!!」
中河だった。なんだ、中河がカオス化したのか。
普通にどう見たって顔以外は混沌だ。なんだ。中河の本名はフォアブ■・■ワインか。
っていうか、ここはバイオハザード世界だぞ。何故紛れ込んでるんだ。
感心するね、悪い意味で。作中に格好いい男二人居るだけでBLの同人書く腐女子と相違ないな。
動物を使役してるし、っていうか動物みんな中河の顔なんだが気持ち悪いぞ。
長門達はその中河に対して必死に攻撃を加えていた。
「全ての因子を同時に破壊しなきゃ駄目かな・・・」
朝倉が苦々しく呟く。
「難しいですね。これだけの数だと情報連結解除を一斉に行ってもタイミングがどうしてもズレてしまいます」
喜緑さんからも笑顔が消えている。笑顔がデフォルトなのにね。
長門は黙々と襲い掛かってくる中河の顔をした動物達を次々と倒していく。
「愛ヲ受ケ取ッテ下サーーーイ! 創世ノ士ィィィィイイイイイ!!」
創世の”土”じゃなくて”士”かよ。なんだそれ。
中河・カオスの合図で生物の因子が繋がったそれが襲い掛かる。
「させない。情報連結解除」
長門の呟きと共にそれらは光の粒と消えていこうしていたらしい。だあ、
「無駄ダヨ、長門サン」
中河・カオスは微笑む。空へと登っていた光の粒はそれと同時にピタリと止まった。
そして方向を変えて中河・カオスの体の中へと吸い込まれていくではないか。
「・・・ドンナニ動物ヲ原子単位マデ戻シテモ、スグニ蘇ルノサ。何度デモ蘇ルサー!!」
何度でも蘇るさーと言った奴は目がーと叫んで死んでいったな。
しかし、このままではインターフェース三人のピンチだ。どうしたら良いんだ。
俺は頭を抱えて考えてみるが、何の解決手段も思い浮かばない。死の点なんか見えないしな。
・・・あ、そうだ。
あいつは岡部と同じとか言ってたよな、戦闘能力は。
俺はインターフェース三人と中河に見付かるのを承知で大声で叫んだ。
「ここにハンドボールをバカにしてる奴がいるぞぉおおおおおッッ!!」
その俺の絶叫に中河・カオスとインターフェース三人は俺の存在に気付いた。
「なんでここに居るの?」
見たこともないぐらい驚愕の感情を露にして―――と言っても本当に極微量―――長門が疑問を投げかけてきた。
うむ、良い質問だ。よろしい。誤解を招く事を承知でこのキョンが答えよう。
「お前が心配になってな」
「駄目。ちゃんと戻らなきゃ。戻って」
「でもエレベーター壊れてるじゃん」
 
―――・・・ゴゴゴォ・・・・。
 
ふと、遠くから大地を揺るがす程の足音が近付いてくるのが聴こえた。
「成功したな・・・」
 
それを確信したついでに勝利を確信した。ここに召されるは最強なり。
さぁ、中河・カオスよ。
 
こいつを突破してみせろ!
 
「ハンド・・・ボール、ヲ・・・バカ・・・ニスル・・・奴・・・・・許サナ、イィィイ・・・・シヨウゼ、ハンドボールウゥウゥウウッッ!!」
そう。世界最強のクリーチャー、岡部タイラントのご登場である。
「岡部、こいつだ! こいつがハンドボールを馬鹿にしてるんだ!!」
中河・カオスを指差して俺は大声で叫んだ。指差された本人はにやりと笑う。
「フン・・・キョン。ハンドボールナンカヨリ、時代ハラグビーダゼ」
その言葉を聞いた途端だった。
 
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!
 
岡部タイラントがスーパーサイヤ人のようなオーラを漂わせたのは。
地鳴りしそうな程の感情の怒りという部位に関するポテンシャルを明らかにしている。
それはあたかもゴジラとガメラが腕を組んでマッハ10000で飛ぶくらい物凄い勢いだった。
岡部タイラントはそんなメテオの如き勢いで中河・カオスに体当たりを食らわせた。
衝突のエネルギーが回りに波動として木霊する。
衝撃波が発生するときの独特の炸裂音が幾度ととどろき、思わず耳を塞ぐ。
生身の人間が受けたら体が十七個に砕けそうだな、あれは。
「ハ☆ン☆ド☆ボ☆ー☆ルゥゥゥウウウッッッ!!」
ぶつかってなおその勢いは止まる事が無い。
二人はそのまま何処かへとぶっ飛んで行った。
さらば、中河。戦闘能力は同じでもきっとお前は殺されるよ、一瞬で。
「万事解決、だな」
そう呟いて遥か彼方に消えた影を見ていると、ちょいちょいと袖を引っ張られた。
見れば長門が袖を引っ張っている。こうして見ると本当に小さいな。
「危ないと言ったのに。何で貴方は待機していられないのか・・・もう」
少しムスッとした表情で言ってくるが、それが可愛い。
まぁ、他の人間には表情の変化を読み取れないだろうけどな。
そうさ。これは俺の特権だ。彼氏という特権階級の技さ。
「まぁ、でも、結果オーライじゃないの、長門さん」
「そうよ」
朝倉、喜緑さん、ナイスフォローだ、ありがとぅー。
俺は何となく岡部タイラントと中河・カオスが飛んでいった方向を見た。
そして、創世の土、もとい士を突破され666の命を抹殺されているだろう中河・カオスにご愁傷様と手を合わせた。
君は良い友達であった。だが、君の思念がいけないのだよ。
「さて、上の階に戻ろうか・・・と言いたいところだが」
「まぁ、あれだけドンチャン騒ぎしたのだから仕方ないですね」
喜緑さんが苦笑した。周りを見渡せば人影だらけだった。
音で集まったのだろう。ゾンビどもがうようよしていたのだから。
「キョンくん、銃はある?」
朝倉が尋ねてくる。
「もちろん」
頷いて応える。そして、長門が動き出すのを合図に俺達は散開した。
しかし多い。数にして何十だろうか。しかし、揃いも揃ってどいつもこいつも同じように呻いてやがる。
十人十色っていうけど、こいつらに関しては十人一色で更に異口同音だね。やれやれ。
「一発で楽にしてやるよ、お前等」
ひたすらに頭をぶち抜く。ちょっと使っただけの銃ではあるが、ゾンビを撃ち殺していく間に随分と狙いが性格になってきた。
ふと何発目かの銃弾を放ったあと、俺はそこである失態にカチッという音と共に気付いた。
「ちっ・・・弾が切れた」
マガジンを持って降りるのを忘れていたのだ。
散開したせいで長門達へは近付けない。だがゾンビは近付いている。
逃げようとしても前と後ろで挟まれているし・・・素手でやるしかないのか。
「相手は動きが鈍い・・・なら後ろに回ってやればやれるはずだ、素人でも」
自分に言い聞かせて、深呼吸を一つ。
状況をよく見る。前方には三体。後方に一体。挟み撃ちされると厄介だ。
なら、後ろの一体を倒してしまえば、どうにでもなる。
俺は後ろに居るゾンビへと駆け寄った。こちらへと伸ばす腕を避けて、後ろに回りこむ。
あとは振り返る前にゾンビの頭に腕を回し、思いっきりその首を捻るだけだ。
「そぉいっ!」
 
グキッ、
 
爽快な音と共にゾンビの体が崩れる。あとは頭を思いっきり踏み潰すだけだ。
足を上に上げて全体重かけて思いっきり振り下ろす。頭は、簡単につぶれた。
流石、体が腐ってることだけあって潰れ易い骨だな。カルシウム取った方が良いんじゃないか?
残りは前方に三体。これなら、上手くいけば銃無しでも倒せるか。
ただ・・・複数相手に勝てるかどうか・・・。
「せめて重たい鉄棒とか、打撃武器があればな・・・」
頭を打ち砕けるのら、それこそモーニングスターでも、稽古用の長刀でも良い。
ふとそんな俺の横に長門が駆け寄ってきた。
「銃弾が無くなったなら私を呼んで。はい、装填して」
「・・・すまん」
そこで俺はぞっとした。どうにも冷静さを欠いていたらしい。一匹にしろ素手でゾンビに挑むなんてどうにかしてる。
ちょっとでも怪我をしたらそれでおしまいなんだ。駄目だな、俺。クールにならなきゃいけないな。
俺は言われるがままさっさと銃弾を装填し、前方に居る三体の頭を打ち抜き殺した。
それから数分と経たないうちに集まってきたゾンビは死体の山と化した。
「片付いたことだし・・・さぁ、戻りましょう」
朝倉がくるりとこっちを振り返り上を指差す。
「・・・その前にエレベーター直してくれ。あの距離を歩いて登るのはしんどい」
「自業自得」
「な、長門ぉ・・・」
「降りてきたら駄目って言ったのに・・・心配してしまう・・・・・」
拗ねたようにちょっと口を尖らせているように見える長門が可愛くて、俺はそっと頭を撫でた。
「すまんすまん」
「・・・・ん」
くすぐったそうに呻いた長門は、かすかに微笑んだように見えた。
 
――――。
 
その後、部屋に戻るや否や俺は長門にこっぴどく叱られた。
淡々とした口調で、怒気を表面化させる事もなかったが間違いなくあれは怒っていた。
いや、と言うよりも、
「だいたい貴方は自分の事に対する配慮が欠けている」
怒っている、だな。まだ続くんだろうか、このお叱りは。
「すまなかったな、長門」
「・・・・・許さない。私を心配させた罪は重い」
なんかハルヒっぽい事言ってるぞおい。
「ゆ、許せ、長t―――」
「罰として、キス」
「・・・え?」
「私に、キスをすべき。貴方はそれだけの罪を犯した」
よく見ると長門の顔は少しだけ赤い、気がする。
「・・・解りました」
俺はそっと長門を抱き締めると、言われるがまま、そして己が望むがままにそっとそれをした。
 
<SIDE ・・・>
 
「頑張って!」
「解って、る・・・堪えなきゃ・・・奴等みたいに、なりたく、ないから・・・・・くっ」
「意思を確かに持って!」
「ありがとう・・・このまま、応援お願いね・・・」
「もちろん。貴女がこれを乗り越えるか、それとも変化するまでは少なくとも私はずっとここに居るから」
「・・・ごめんね」
「当然のことよ。私達友達でしょう?」
「ありがとう。私、頑張る・・・くっ」
 
《!WARNING!》次回予告《!WARNING!》
町の中で蠢く奴らの影。
本来ならさっさとこのホテルを出るべくなのだろうが、生憎疲労が溜まって動けないのでざんね~ん。
そんな俺達とは別の生存者達が町を出るべく動き出す。
幼い一組と、苦しみと支えの一組。
この世界の終わりはいつ見えるのかさっぱり解らないぞ、畜生めー。
次回、ながとぅーみー第八話「しにがみのベレッタ」
「キョンくーん!」

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最終更新:2008年07月16日 03:14