※このSSはヤンキーくんとメガネちゃんという漫画のクロスオーバーです。苦手な人はスルーしてください

 

 

 

 

 

俺が涼宮ハルヒという超ド級の爆弾女と出会って早一年が経った。ハルヒも随分と普通の女の子らしくなったと言っても、
それは俺が奴の一年前の初顔合わせで耳にしたあの自己紹介を、今でも深く記憶に刻み付けているからであって、
もし、俺が記憶喪失にでもなってハルヒと二度目の初対面を果たしたら、おそらく感想は去年と同じものになるのだろう。
つまり、何が言いたいのかというと、二年になってからもハルヒはハルヒでしかないわけで、
去年通り閉鎖空間を期間集中で量産して、あのいけ好かないハンサム野郎に俺に変わって制裁を下したり、
合宿合宿と騒ぎ、俺の数少ないささやかなる休日を根こそぎ奪い取ったり、
文化祭に向けての映画作成を思い出し、躍起になったりとハルヒは変わらずハルヒしていた。
こんな日常の中にいるとつい考えちまうね。俺ほどある特定の人物にジャイアントスイングのごとく振り回されている人間もいないだろうとな。
しかしこの考えは間違えて いた。思い知ったさ。世の中には俺と同じくらい平穏を犠牲としている奴がいることを。
肩を組んで言ってやりたいね。「お互い大変だなぁ」とな。

全てはハルヒのこの一言から始まった。

「SOS団の別支部を作るわよ!!!」
さて、ここはいつもと変わらぬ文芸部室。無事映画の撮影、公開を終え、
よし、これから束の間の平穏なる日々を満喫するかと考えていた所にこれだ。
「あ~、すまん、よく聞こえなかった。何だって?」
「二度も言わせるなんていい度胸じゃない!その耳糞詰まった耳をかっぽじってよく聞きなさい!!
SOS団別支部を作るわよ!」
はあ、いつかはこんな日が来るのではないかと思っていた。だがいくらなんでもこのタイミングはないだろう?ハルヒ。
「何言ってんの?むしろ遅いくらいよ!!いい?キョン!!SOS団は将来は世界各国を支配するのよ?その足掛かりを見つけようっていうの!」
何やら突っ込み所が満載なんだが、一つ言わせてくれ。
お前は宇宙人や未来人、超能力者と遊ぶだけで本当に世界を支配出来ると思っているのか?
「なるほど、僕としたことが。すっかり失念していました。さすがは涼宮さんです。」
まあ俺がとやかく言ったって……
「でしょでしょ!!団員がもっと増えれば不思議探索の高率も上がるし!!」
「ふえ~~じゃあ友達沢山出来るんですか~?」
多数決で敗北するのは必然なわけで…………

「……………」

「よーし!じゃあ決まり!
皆これから校外にでて使えそうな学校を探すわよ!!」
俺は決まってこの台詞を口にするんだ。
「やれやれ」



ここは駅前。俺達四人を従えたハルヒは壁に張られたポスターと絶賛にらめっこ中だ。
何が書いてあるんだ?なになに?おもンしろ~い♪紋白祭?
何だこりゃ?紋白高は北高とタメをはるくらい平凡で有名(?)な高校だが……
それにしても一体誰が考えやがったんだ?こんなキャッチコピー。
考えた奴も相当にアレだが、生徒会――が審査したのか知らんが――もよく採用したもんだ。

「キョンと同じ匂いがする」
ハルヒの呼吸するのと同じくらいの自然さで呟いたその台詞を俺は聞き逃さなかった。
おい、ちょっとまて……お前、まさか……
「決めたわ!!我らがSOS団記念すべき第二支部は紋白高にします!!」
そう叫んだ数秒後にはハルヒは紋白高の最寄り駅への切符を求め、券売機に並んでいた。
はあ、やれやれ……またこのパターンか……

「ふふっ、結構なことではないですか。これはいい傾向だと思いますよ。」
いつの間にかニヤけ顔が俺の横に迫っていた。
ええい、こいつは意図して気配を消しているんじゃないか?
「これまでの涼宮さんはいくら周りと打ち解けられてきたと言っても、SOS団という小さな枠組みを第一に置いていました。
その涼宮さんが、自らその枠を広げようとしているのです。これは中学時代の彼女からは想像出来ないですよ。」
わかった、わかったから顔をどけろ。まあ確かにハルヒ自ら交流の輪を広げようとしているのだ。
せいぜい応援してやるのがいいのかもな。

 

 

 

 

長い間電車に揺られて紋白高にたどり着いた俺達だが……この光景は一体どういう訳なのかね。
俺のふり絞り過ぎて、既に枯渇しているのではないかと思われる脳みそでは、
答えにたどり着かないことは目に見えているので、ここは早々に最も適当な奴に尋ねるとしよう。

「ハルヒ?これは何だ?
「何って、紋白高に決まってるでしょ?」
いや、そういうことじゃなくてだな……
「あれ?もしかして文化祭終わっちゃったんですかぁ?」

いえ、そんなことはないでしょう。俺も先程、朝比奈さんと同じ壮大な勘違いをしたのは内緒だが、今はまだ昼間の三時である。
今日は目前に迫っている試験に奮闘しろという意味の教師から与えられたありがたーい短縮授業だったからな。
やれやれ、そんな時に俺達は一体何をやっているのかね。
とにかく、そんな真っ昼間から文化祭の片付けをする学校があるはずないので、今目の前に広がっている光景は、
生徒総出で準備をしてると考えるのが妥当だろう。

「俺はてっきり今日が文化祭当日だと思っていたんだが?」
ハルヒは何て返せばいいのか精一杯悩んだ挙げ句、それ意外に返す言葉が見つからないとでも言いたげな表情で、
「そう思ってたあんたが悪いんじゃない?」
とのたまった。

はあ、もっと早く気付くべきだったんだ。あの時もっとポスターをちゃんと見ていれば、
今日が平日ということの意味をよく考えていれば……
いやそれに気付いた所でハルヒが俺の意見を聞き入れるはずないか……
さて、どうしたものか。今日が部外者大歓迎の文化祭ではないと分かった以上、
俺の意思は、いかにハルヒを説得して連れて帰るかにシフトした。
そもそも何でここなんだ?例えば光陽園学院だったら近場だし、佐々木という知り合いもいるから手頃じゃないか。
「やだ。」
一気にハルヒの周りを取り巻いているオーラの性質が変わった。何だ?俺まずいこと言ったか?
「おいおい、お前佐々木のことそんなに嫌ってたのか?」
「ふん!いいからとっとと乗り込むわよ!バカキョン!!」
まてまて、耳を引っ張るな!おい古泉、ニヤニヤしてないで止めろっての!!
乗り込んだって教師に見つかれば即刻放り出されるぞ!
「皆うかれているし、OBって言えば大丈夫よ!」
OBってお前!俺達制服……いてて!

「大丈夫。」
「長門?」
長門の声が頭に響いてきた。こいつ、テレパシーまで出来たのか、まあ驚かないが。
「情報操作は得意。」
はは、ありがとよ……やれやれ。



「何かあっけないわね。少しは教師達がいちゃもんつけてくると思ってたのに。」
俺達は廊下を堂々と歩いている。長門の情報操作――不可視フィールドだっけか――のお陰で教師達の目に止まることはなかった。
まあ生徒達は奇異の視線を向けていたが、コスプレとでも思ってくれ。

「これからどうするんですかぁ?」
「ふふふ、敵地を支配するには中枢を手中に治めるのが一番!生徒会に殴りこむわよ!」
何で学校を支配することに話がすり変わっているんだ!そもそも学校の中枢を生徒会とするのが間違ってる。
「じゃあ職員室に殴りこんでみる?」
ごめんなさい間違ってましたすいません。

「あれゴミ箱?随分と立派ね。」
ハルヒの指差す先には木で作られたゴミ箱が置いてあった。紋白蝶の模様がついているが、
どことなく文化祭のキャッチコピーと同じセンスを感じる。
ってこら触るなハルヒ!どう見てもペンキ塗りたてだぞ!

「うわ、何これ?まだ乾いてなかったの?」
「おいコラてめぇ!!何勝手に触ってんだyo!?」
「品川さんが折角作ってくれたんだぞ!弁償しろよなぁ!」
後ろから何かやば気な奴等が怒鳴りつけにきた。
ギャル男二人を連れた見るからに不良学生な金髪頭は品川というらしい。
「な、何よ!あんた達!」
ずっと黙ってこちらを睨んでいたヤンキーは眉間にしわを寄せながら『紋白祭―ゴミ』と書かれたシャツを摘んで見せつけてきた。
「これ見りゃわかんだろ。俺は紋白祭ゴミ係のリーダーだ!!」
「「俺達はゴミ係その1と2だぜ!!」」
「はあ?ゴミ係?」

さすがのハルヒも呆気に取られたようだ。ここまでゴミ係を誇らしげに名乗る奴はそういないからな。
「たく!気を付けやがれってんだ。あーあー、チョウチョの羽が消えちまってるじゃねーか。
めんどくせぇなぁ、クソ。」

そう言いながらヤンキーたちはまた作業を開始し始めた。言ってる割りにはやけに楽しそうだ。
「ふええ、怖かったです。」
「関わらない方がいいでしょう。涼宮さん、手を洗わなければ。」
放心状態だったハルヒを古泉が促す。そうだな、ついでに用を足すとするか。

 

 


ハルヒがトイレで手を洗っている間、俺は便器に座り込んでいた。汚いって?仕方ないだろ生理現象なんだから。
にしても、さっきの……品川だっけか。奇妙な奴だったな。
睨みを利かした顔は、うちの生徒会長に勝るとも劣らないが、何でゴミ箱作りに夢中になっていたんだろう。
あれか?不良が猫に優しくすると、すごいいいやつに見えるっていうあの効果を狙っているのか?
ドガン!!

そんなことを考えていると、トイレのドアの反対側から殴られたような音がした。
何だ何だ?ハルヒが待ちくたびれてせかしに来たのか?いやでもあいつも女だ。
男のクソを邪魔する程変態ではないだろう、多分。
俺がどうしたらいいかわからずにいると女の声がした。
って女ぁ?!
「またサボってるんですか!?Tシャツ着ただけじゃダメですよ!!」
ハルヒではないが、かえって緊急事態だ。おいおい、この学校の女子は男をアレ 中に襲撃するのか?
「ちょ、待ってくれ、誰か知らんが人違いだ!」
「品川くん!声色変えてもだめです!早く開けないと…………」
品川?まさか………

と思ったら急にドアが迫ってきた。一瞬隙間から女子のキッキングポーズが見えたが、
次の瞬間にはドアが脳天に直撃し、俺は意識を失った。

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最終更新:2008年02月15日 21:04