最近キョンの様子がおかしい。
何だろう、私に隠しごとがあるような。特に理由があるわけではないけど、なんとなくそんな気がするの。こういう時は直接聞くに限る。
「ねえ、キョン。私に隠しごとしているでしょ」
キョンは一ノ谷から駆け下りる源義経を見た平家のように動揺している。
「いきなり何を言い出すんだ。別に何もねえよ。」
「正直に言いなさい」
「母が次の中間テストで成績が悪かったら予備校に行けってうるさくてな。成績が悪かったらどうしようかと思い、憂鬱なのさ。」
「ふうん。あんたは勉強の仕方が効率悪いのよ。そう言えば来週数学の小テストがあったわね。今度、私が指導してあげるわ。」
「ああ、頼む。」
「ところでキョン。最近どう。元気にしてるの。」
どうもこうも、授業中も放課後もいっつもおまえの前にいるだろ。俺が元気かどうかなんて言わんでもわかるだろ」
「私の知らないところで変わった経験をしたとか、宇宙人が歩いていたとかそういうのはないわけ。普段、しっかり周りに目を配っていたら1つや2つ見つけられるはずよ。あんたそれでもSOS団の団員なの」
「あのな。ハルヒ。そんな体験がごろごろ転がっているわけないだろ。」
私はキョンが一瞬動揺したのを見逃さなかった。
「おまえこそ変な体験をしたことはあるのかよ」
「うーん。そうね。」
心当たりがないわけではない。私だって1つぐらい奇妙な体験をしたことがある。でも、言わなかった。
「まあ、いいわ。不思議な出来事は簡単には見つけられないの。ありふれた日常でもじっくり目を懲らすと転がっていたりするものよ。常に気を引き締めて周りに気を配りなさい。わかったわね。」
キョンは「やれやれ」とでも言いたそうな顔をしていた。
不思議な体験ねえ。もうあれから4年も経つのか。
放課後、いつも通り部室に行く。 部室に入ると、キョンと有希が何かを話していた。キョンは私が部屋に入ってきた途端、話をやめ椅子に座り、有希は私を一瞥してから、本を開ける。何を話し ていたんだろう。みくるちゃんはメイド姿でお茶くみをしている。私は机に座りパソコンに電源をつける。そしてお茶を飲み、メールとホームページのカウン ターをチェックしてからネットサーフィンをする。宇宙人も超能力者もいない、不思議で奇怪な体験も存在しない。SOS団を結成してもうすぐ1年。毎日繰り返されるSOS団的日常。けどそれはそれで楽しかった。そういえば最近のキョンの様子がなにか変なのよね。ここ数日ずっと感じる違和感。予備校の話は本当なんだろうけど、他にも何か隠しているわね。キョンが私に隠さなければいけないことってなんだろう。
と考えていると古泉君が部室に入ってきた。
「どうも、遅れてすみません。」
そうして、団員全員が揃った。 揃ったから何もする訳でもないのだが。私は今日明日に適当な記念日がないかネットで調べたりしていたが「日本気象協会創立記念日」とか「長良川鵜飼開きの 日」とかばっかりでイベントができそうな記念日も見つからなかった。まあいいわ。来週にはビックイベントをしないといけないしね。
キョンは部室を出て行ていく。三者面談があるらしい。
三者面談というのは、先生と生徒とその保護者の3人で進路のこととかを話し合うというくだらない行事で、2年生は5月のゴールデンウィーク明けから実施されている。
しかし暇だわ。なんかすることないのかしら。
そういえば、朝比奈ミクルの冒険DVDの仕上げをしようと思っていたんだわ。キョンがいないし丁度いいわ。DVDのジャケットを決めるためみくるちゃんの写真を何枚かピックアップして画面に表示させる。どれがいいかしら。このメイド服も色っぽいけど、かえるの写真も意外にいけるわね。
「古泉君、あなたはどれがいいと思う?参考までに聞いてあげるわ。」
古泉君が画面を覗きこむ。
「そうですね」
その時ドアが開いた。
「何やってんだ。」
キョンだった。
キョンは不機嫌そうな顔をしている。それを見た古泉君は微笑しながらパソコンから離れていく。
「写真を見ていただけよ。あんたこそ面談じゃなかったの。」
「前の人が長引いていて、まだ順番が回ってこないようだったから部室に戻って来たんだ。」
「そう。」
「で、何やってたんだ。」
キョンがパソコンを見る。隠し通してもよかったが、変に勘ぐられるのもなんだから全部正直に言ってやった。
「そんなもんいつ作ったんだ。俺は知らんぞ。」
「あんたがいない間に作ったのよ」
キョンは古泉君を一瞬睨み、私に
「DVDの発売はまずいだろ。」
「なんで?」
「そんなもん、発売してみろ。あっという間に広がってしまう。朝比奈さんの日常生活に支障が出るだろ。とにかく駄目だ。」
「あんたがなんと言おうと発売するわ。あの映画はSOS団全員で作り上げた汗と涙の結晶。後世に残す芸術作品だわ。みくるちゃんだって承諾しているわ。」
みくるちゃんは捨てられた子犬のような目でキョンを見てぶるぶると首を横に振る。
「だめだ。朝比奈さんも嫌がっているじゃないか。朝比奈さんはグラビアアイドルでも、おまえのおもちゃでもないんだ。だいたい、なんで映画と関係のないセクシー映像が必要なんだ。何がSOS団全員で作り上げた汗と涙の結晶だ。DVD化に俺は参加していないし、そもそもやることするら聞いていない。」
みくるちゃんのことになるとムキになるキョンをみて私も腹立ってきた。
「いちいちうるさいわね。私が発売するって言ったら発売するの。みくるちゃんは私のおもちゃよ。みくるちゃんに決定権なんてないわ。とにかく売り出すのよ。」
キョンの顔がみるみる内に赤くなる。
「こんな“くそ”映画、売り出す価値もない。」
かっちんときた。“くそ”映画。
「ふざけんな。SOS団の総力をあげて作り上げた映画に対して“くそ”はないわ。でてけ!!!」
キョンは部屋を出て行った。
なんなの。あいつ。
椅子に座り、パソコン画面を眺めた。
あー、むかつく。映画作りはあんなに協力的だったのに。“くそ”映画はないでしょ。
キョンは映画作りは楽しくなかったのかしら。
「涼宮さん」
振り返ると心配そうな顔で古泉君が私をみていた。
「彼も本心から映画を罵倒した訳ではないと思いますよ。彼の映画作りに対する情熱は涼宮さんにも負けず劣らぬものでした。にもかかわらずその映画のDVD化の話が自分の知らないところで進んでいたらどう思うでしょうか。」
私はパソコンの画面の方向に目線を向け、返事はしなかった。
「涼宮さん。彼は強情で意地っ張りです。彼は楽しいことでも「楽しい」と声に出しません。素直じゃないんです。彼も反省していると思うのですが、素直に謝ることができない人間なんです。ですから」
古泉君は言いにくそうに言葉を選んで話していた。
「わかってるわよ。」
古泉君の言うとおり。本当にあいつは頑固なんだから。仕方ないわね。私が謝るしかないわね。
しばらくしてキョンが部室に戻ってきた。面談が終わったようだ。
「ハルヒ。」
「何よ。」
「すまなかった。」
「そう。うん。」
ぱたん。有希が本を閉じた。有希が本を閉じる音はSOS団活動終了の合図になっていた。世の中にはタイミングというものがある。いくらこれをしようと考えていてもタイミングを逃してしまうとどうしょうもない。私もキョンに内緒でDVDを作ろうとしたことを謝ろうと思っていたが、どうもそのタイミングを逃してしまった。と、都合のいい理屈をつけてごまかす自分が情けない。謝ろうとは思っているんだけど。結局いつもうやむやになってしまう。
下校はいつも通り。私とみくるちゃんが先頭。後に有希。最後尾にキョンと古泉君がいる。有希のマンションの前でみんなと別れた。
たしかに私も悪かったわ。団員を仲間はずれにするなんて団長として失格ね。明日はちゃんと謝ろう。はあ。大きなため息が自然とでた。
と、ここで私は数学の参考書を学校においてきたことに気づく。宿題は小テストの日までにやればよくまだ余裕があるけど、キョンに教える前に一通り問題を解こうと思っていたんだった。仕方ない。私は学校に引き返えした。
私が有希のマンション前を通ろう としたとき、私はさっき別れたばかりのキョンを見た。あいつも忘れものかしら。このタイミングを逃してはいけない。今度こそ。ちゃんと謝ろう。私は小走り でキョンに近づき、声をかけようとした。しかし、キョンの行き先が学校でないと分かりやめた。キョンは有希のマンションに入っていく。え。どういうこと。 なんでキョンがマンションに。
なんか有希の家に行く用事があったのかしら。いや、でも変だわ。それならどうして私たちがマンションの前を通った時、直接マンションに入らなかったの。まるで、SOS団の誰かに知られたらまずいことでもあるような行動。すっごく嫌な予感がした。でもそれは、実は去年のクリスマスからうすうす感じていたそんな恐怖だった。
オートロックのドアが開きキョンは中へと消えていく。
私は坂を登るのをやめ、家路についた。キョンはいつから、有希のことを思うようになったんだろう。いや、まだ決まった訳じゃないしね。そう自分に言い聞かせる。
なぜか胸が締め付けられる。なんで私はこんな気持ちになるのだろう。はじめて自分の気持ちを気づいた。いや正直に言うわ。本当はずっと気づいていたの。気づいていたけど気づかないふりをしていた。私はキョンが好きだった。
翌日の放課後、部室に行くと誰も来ていなかった。定位置に座り本を読む有希を除いて。
「他のみんなは来てないの。」
「……」
私は椅子に座り、パソコンの電源をつけた。
「キョン達はまだなのかしら。遅いわね、何やってるのかしら。」
パソコンのファンの音が部屋に鳴り響いた。
「ねえ、有希」
「……」
「有希ってどんな本読むの?」
「いろいろ」
「好きなジャンルとかあるでしょ。」
「特に」
「恋愛小説とかは読むの」
「たまに」
「そういえば、有希のタイプの人ってどんな人なのよ」
「……」
「やさしい人、頼りになる人?」
「……」
「古泉君みたいな人は?やさしいし、しっかりしてそうじゃない」
「彼はとても立派。」
「そう。じゃあキョンは?あいつは気が利かないし頼りないけど。」
「……」
有希は何も言わず本に目を落とした。
私が何を言うか思案しているとドアが開く。キョンだった。
「よう」
私はネットサーフィンに忙しいふりをする。
古泉君とみくるちゃんはなかなか来ない。
無音が続いた。
私は心に決めていた。キョンに気持ちを伝えよう。もしかしたら迷惑かもしれない。
でも、私はこの気持ちを自分の中だけにしまい込むことはできそうにない。キョンが有希を選ぶならそれでいい。
とにかく私の気持ちを伝えたかった。2人きりになったときに言おう。学校帰り、みんなが解散した後が狙い目かしら。
沈黙を破るように扉が開く。
「遅れてすみません。面談がありまして。」
古泉君が入ってきた。
みくるちゃんも今頃、面談をしているのかしら。ちなみに私もこれから面談だ。
「そうそう、明日、土曜日は不思議探索ツアーをするから。北口駅9時集合ね。」
キョンの表情が曇る。
「いきなり言われても困るぞ。」
「何言ってんの。団長命令は絶対よ。参加しなさい。」
キョンはまだ怒っているのかしら。
「そうですね。やりましょう。最近やっていませんでしたから楽しみです。」
そう言ったのは古泉君。それを聞いたキョンは古泉君を一瞬睨みつけたが、承諾した。
私は部屋を出る。今日は三者面談の時間だからだ。
面談が終わり、部室に戻る。扉を開けようとしたとき中から声が聞こえてきた。キョンの声だ。
「どういうつもりだ。なんでOKしたんだ。明日の朝9時集合だと。あほか。」
「涼宮さんが集まると言っているんです。仕方ないでしょう。」
「俺たちは忙しいんだ。やらなきゃいけないことだってたくさんある。そんな暇つぶしにつきあっている暇はない。たまには断ってやってもいいだろう。」
「まあ、いいじゃないですか。」
「どうしておまえはハルヒの言うことをそうほいほい肯定するんだ。朝比奈さんも何か言ってやってください。」
「えーと、その、まあ。涼宮さんが決めたことだから仕方ないと思います。」
「やれやれ」
私はその場に立ちすくんだ。帰ろうかな。ドアノブに手をかけた状態で静止し続ける訳にもいかず扉を開ける。
キョンと古泉君はオセロの真っ最中だった。とりあえず椅子に座り、パソコンに電源を入れ、起動を待ちながら頭の中で整理する。
「俺たちは忙しいんだ。」キョンの言葉がフラッシュバックする。なにが忙しいよ。有希の家に行くのが忙しいっていうの。
それに古泉君とみくるちゃんまで。
みんなはSOS団の活動を楽しんでいる。そう思っていた。いや、楽しんでいるかどうかなんて考えもしなかった。
世界中どこにでもある平凡な毎日。不思議も何もない日常。そんな日常を変えようと必死でがんばってきた。世界一面白いクラブを作ろうとそう誓った。
SOS団は世界一面白いクラブだろうか。楽しいと感じていたのは私だけだったのかもしれない。
「そうそう。」
私は思い出したように言った。
「急用を思い出したわ。明日の活動は中止だから」
キョンも古泉君もみくるちゃんも、一瞬表情が変わった。有希までも読書を中断してこっちを見ている。
そんな顔をされるとこっちまで不安になってくるじゃない。
「安心しなさい。また近いうちに活動をするから。」
「楽しみにしています。」
古泉君が笑顔で言った。気を遣ってくれたのかもしれない。
「すみません。ちょっとバイトがありまして。帰らせていただきます。」
古泉君は突然そう言うと部室を去った。
そうこうしているうちに下校時間になる。パタン。
私は考えた。SOS団の団員は私のことをどう思っているのかしら。SOS団のことをどう思っているのだろうか。
今まで「みんながSOS団の活動を楽しんでいるか」なんて考えたこともなかった。
私は誰よりも面白い高校生活を送ろうと思った。世界で一番楽しいクラブを作ろうと思った。そして、そうなるように行動したつもり。
でも、それは私の自己満足だったのかもしれない。この1年私は1人で盛り上がり1人で空回っていたのだろうか。
宇宙人も未来人も異世界人もでてこない平凡な日々。SOS団ってなんなんだろう。SOS団なんてやめようかな。
キョンやみんなと映画を作った日が懐かしい。徹夜で映画の編集作業をしてくれたキョン。
今はSOS団の活動より、有希と一緒にいる方が楽しいのかな。
脱力。という言葉がぴったり合う。私は何もしたくはなかった。テレビを見ても音楽を聴いても、上の空だった。そうして何もせず休日は過ぎ去った。
月曜日。よっぽど学校を休もうかと考えたが、学校には行くことにした。始業時間ぎりぎりに学校に行き、休み時間を告げるチャイムが鳴ればすぐに教室を出た。授業は頭には入らず、ずっと雲を眺めていた。
放課後、部室に行くことにする。団長が無断欠席するわけにはいかないし。
部室に入ると誰も来ていない。いつも部屋の隅で本を読んでいる有希さえ来ていない。有希の座っている椅子に手紙が置いてある。
涼宮ハルヒ様へ
明朝体で書かれた字は有希が書いた字で間違いない。私は手紙の封を切った。中には一枚の紙があり、そこにはこう書かれていた。
私の家に来られたし。
なんだろう。果たし状?なわけないか。私に何か話しでもあるのかしら。
私は、椅子に座り誰か来るのを待ったが、だれも来なかった。5分と経たないうちにだれもいない部室に1人でいることに耐え切れずへやから飛び出した。気が進まないけど仕方がない。私は有希の家に向かう。
有希の家に行きインターフォンを鳴らす。
ドアが開き、有希が出てきた。
「入って」
私は伏魔殿に入るかのごとくおそるおそる中に入る。家の中は暗かった。前が見えないぐらい真っ暗なのだ。まだ外は明るい。不自然というか、意図的に暗くしたとしか思えない。
「こっち」
明かりもつけず真っ暗な廊下をまっすぐ歩く有希を追って中へ進む。手から汗が噴き出した。真っ暗なリビングに入ったとき、
パパン
轟音がなり、部屋の明かりが突然ついた。
え。
「ハルヒ。今までありがとう。」
クラッカーを持ったキョンがいた。
「これからもよろしくお願いします。」
と古泉君。
「おめでとうございます」
みくるちゃん。
つくえの上にはケーキや料理がところ狭しと並んでいた。
中央に陣取っている巨大ケーキには、
祝SOS団結成1周年
と書かれている。部屋は飾り付けをしていて、お祝いムード一色。リオデジャネイロのカーニバルに負けないほど賑やかな部屋だった。
このサプライズパーティーについて古泉君が説明してくれた。
「いつも涼宮さんが楽しいイベントを企画して、僕たちを先導してくださっていました。おかげで僕たちはいつも楽しませてもらっています。涼宮さんには感謝しきれません。ですから、SOS団結成一周年の今日ぐらいは役割を交代して、僕たち団員が団長を驚かせようと考えたわけです。
料理は朝比奈さんと長門さんが担当しました。ケーキも含めてみんな手作りですよ。僕たち男2人は部屋の飾りを担当しました。実を言うと、ここ数日、SOS団の活動が終わった後、涼宮さんに内緒で長門さんの家に集まって準備をしていたんです。休日返上でした。正直、涼宮さんが土曜日に不思議探索をやると言ったときにはどうしようかと思いましたよ。」
さらに古泉君は私にしか聞こえないような小さな声で言う。
「ちなみにこのパーティーを発案したのは彼です。」
古泉君は普段の2割増の微笑を浮かべていた。
饒舌な古泉君に対して、キョンは私に話しかけてくることさえしなかったが、時折私の顔色をうかがいたいのか、ちらちら見てくる。
私はあふれる笑みを抑えることが できなかった。無理もないわね。ここ数日感じていた違和感。胸のつかえが一気にとれたんだから。ここ数日キョンの様子がおかしかった理由。キョンが有希の 家に行った訳。不思議探検の実施を嫌がったことも、今ならわかる。理由はたった1つだったのだ。
もちろんSOS団結成一周年のことを私も忘れていた訳ではない。以前から盛大に祝おうと考えていた。けど最近立て続けに起こった出来事のせいでイベントをやる気持ちも失せていたのだ。
私はみんなに言った。
「みんな、ありがとう。」
私は緩んだ顔を引き締める。
「実を言うと、私は一度だけSOS団を解散しようと思ったことがあるの。私は世界一面白い仲間と世界一面白い活動をしようそう思ってこの団を作ったの。でも本当にそうなんだろうかって。宇宙人も未来人もやってこない。別に不思議な出来事もおきない。SOS団の活動もどこにでもある日常なんじゃないかって。
けど私はそう考えた自分を恥ずかしく思うわ。みんなに申し訳ない。SOS団は間違いなく世界一の団体。だって世界一のメンバーが集まっているんだもの。
みんなと出会えて本当によかった。本当にありがとう。
みんな、これからも私についてきなさい。今まで以上に盛り上げるわよ。
そうよ、常に前年を上回らなければいけないもの。
みんな覚悟しなさい。明日から激務が待っているから。」
その後、ケーキに1本のローソクを立て、ハッピーバースディを歌い、みんなで一緒に息を吹きかけ火を消した。そして乾杯してからみくるちゃんと有希の手料理に舌鼓をうつ。
有希は小さい体でよくこれだけ食べられると関心するぐらいもりもりもり食べ、みくるちゃんはメイド姿じゃないけど、ぱたぱたと動き回っていた。つくえにのりきらないほどの料理をみんなで平らげ、食後は古泉君が持ってきたツイスターやジェンガで盛り上がった。
日が沈み暗くなり私たちは解散し た。私は1人夜道を歩いている。暖かくなったといってもまだ夜は肌寒い。私は1つの決心をしていた。キョンにちゃんと気持ちを伝えよう。キョンが有希の家 に向かう姿をみて自分の気持ちに気づかされた。あれは杞憂だったが、今後心配が具現化するとも限らない。もうあんな気持ちにはしたくない。私はキョンが好 きなのだ。たぶんあいつだって。
私は携帯をポケットから取り出した。キョンと会って話をするために。