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「プリンスレのスレタイをテーマに1レスSS」


 

ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」


 俺がリビングに置かれたPCで何気なく映画情報を調べていた時、その声は聞こえてきた。
 振り向いて見れば、冷蔵庫の扉を開けたままハルヒはこっちを見て睨んでいる。そうか、このプリンは俺が夕飯の買い物
ついでに買ってきた物なのだが、いつの間にかハルヒの物になっていたんだな。ポルナレフもびっくりだ。
 まだ食べ終わってない。それと、冷蔵庫は早く閉めた方がいい。
「あ~もう半分以上ないじゃない?」
 駆け寄ってきたハルヒは俺の手にある容器を見て本気で悲しそうな顔をしている、そんなにプリンが好きだったのか。
 俺は使っていたスプーンでハルヒの口なら入るであろう分量をすくうと、そのままハルヒの口の中へ入れてやった。
「ちょ? ……」
 うまいか?
 これ、俺の少ない小遣いで買うには高かったんだぞ。
「……うん」
 やけに俯いて口を動かすハルヒを眺めながら、俺も続きを食べるべくプリンの容器にスプーンを入れた――ん、まだ
欲しかったのか? 何故か少し赤面したハルヒが妙な視線を向けてくる。まあまてよ、俺ももう一口くらいは食べて
おきたいんだ。
 俺は少なめに自分の分を口に運んでから、底に沈んだカラメルを多めにすくってさっきから期待した目で見ている
ハルヒの口元へスプーンを近づけた。
 まるで餌を待っていた雛鳥の様に口は開き、スプーンは飲み込まれていく。
 残りも食べるか?
「え、あ。いい……ありがとう」 
 怒ったり大人しくなったり忙しい奴だな。


 ――その後、ハルヒはプリンが大好きなのだと思った俺は買い物のたびにプリンを買うようにした。
 だが、何故かハルヒは自分では食べようとせずに、俺がプリンを食べ始めると文句を言いにくる。
 まったく、何がしたいのかね? 
 

 


 

長門「私のプリンの行方について、貴方に聞きたい事がある」

 

 昼休み、部室を訪れた彼に私は質問しなければならない事があった。
「どうした長門、そんな真面目な顔して」
 弁当を片手に穏やかな表情を浮かべた彼に問いただす。
 私のプリンの行方について、貴方に聞きたい事がある。
「プリンか……確かに俺はお前のプリンがどうなったのかは知ってるんだが。……本当に聞きたいか?」
 聞きたい。即答した私の返答に、彼は表情を暗くする。
「世の中には知らないほうがいい事もあるぞ?」
 それでも、私は真実が知りたい。
「そうか、じゃあ教えよう。長門、お前のプリンはな――」
 …………そう。それは可能性の上では分かっていた事、悲観する事ではない。
 頭ではそう分かっているのに、心の中で小さなエラーがいくつも巻き起こる。
 ――バケツでプリンを作るわよ!
 昨日の放課後、涼宮ハルヒの提案によってその調理実習は開催された。内容は単純。
 バケツサイズのプリンを女子団員が一つずつ、計3個作成し、みんなで食べるという趣旨。
「みくるちゃんのって……まるで」
「い、言わないで下さい!」
 物理上ありえないお椀型で固まったプリンに対して、彼は視線を反らしている。
「お前のはわかりやすいな」
「でしょ?」
 涼宮ハルヒのプリンは完全なバケツ型で凝固も完璧。ちなみに、作成は殆ど彼の作業だった。
「長門のは……」
「牛乳を入れたから凝固に時間がかかる」
「だな、冷蔵庫に入れておこうか」
 冷蔵庫の中、トレーの上で不安定な山形を維持しているプリン。私がプリンを見たのはそれが最後だった。
「俺が朝見た時には、崩れて冷蔵庫の底一面に広がってたよ。俺にできたのは――よっと、これだけだ」
 彼が冷蔵庫の上部、冷凍室の扉を開けると小さな器に乗った真っ白な私のプリンが置かれていた。
「まるで雪みたいなプリンだな」
 私の様な……プリン? よく、わからない。
 添えてあったスプーンで一口すくい彼の口元に差し出すと、彼は驚いた顔をしつつもそれを口に含んだ。
 彼は無言で親指を立てている。その仕草を見て、私はまたプリンを作りたいと思った。

 

 


 

みくる「あの、キョン君。あたしのプリン知りませんか?」

 

 おかしいなぁ……確かに昨日、ここに置いたはずなのに。
「どうかしましたか?」
 あ、いえ。なんでもないんです。
 冷蔵庫の扉を閉めるあたしに、キョン君は不思議そうな顔を向けている。
「冷蔵庫に、何か入れてたんですか?」
 えっと、その。
 もしもここにみんなが居れば、あたしは何でもないと誤魔化していたと思います。
 でも、その時はたまたまキョン君とあたししか居なくって。
 あの、キョン君。あたしのプリン知りませんか?
 あたしはそう、聞いていました。
「プリンですか」
 はい。駅前の特製みるくプリンなんです……けど。
 一日20個の限定品、やっと食べられるとおもったんだけどなぁ……。昨日、お昼休みに
買いに行って、ここにしまって……持って帰るのを忘れちゃうなんて。
 落ち込む私の前に、
「あの。もしかして……これですか」
 キョン君が差し出したのは、空になってしまったプリンの容器。
「すんません! ハルヒのだとばっかり思って。……つい」
 頭を下げて両手を合わせるキョン君より、空になってしまったプリンがショックで……。
 うっ……ひっく……ふ……ふぇ。
「あ、朝比奈さん?!」
 我ながら情け無いけど、涙が出ていました。楽しみだったんです……凄く、楽しみだった
んです。口の中で溶けるって……カラメルが絶妙だって……。
 泣きやまない私の前にキョン君はそっと近寄ってきて、
「はい、どうぞ」
 ……あ、あれ? 目の前にあったのは、紛れも無い未開封の特製プリン。しかも2つ。
「すみません、驚かせようと思って同じものを買って来たんです」
 も、もう! いじわるです! 
 本気で怒った私がいくら胸を叩いても、キョン君は笑顔で謝るばっかり……。
 怒った顔も可愛いですよって……ず、ずるいです!

 

 


ハルヒコ「おい、キョンコ。俺のプリン食っただろ?」

 

 プリンって……ああ、昨日お前が冷蔵庫に入れてた奴か。俺は知らないぞ。
 そう俺が言い切っても、ハルヒコの疑いの眼差しは晴れなかった。
「い~や怪しい、なんだかんだ言ってお前も女で甘党だからな。朝比奈に作ってもらった特製プリンを前に
我慢できなかったとしても不思議じゃあない」
 あれは朝比奈君の手作りプリンだったのか。
 ……それを知ってたら手を出してたかもしれないな。
 っていうか、そんな事を言い出したら古泉だって女なんだから容疑者に含まれるだろ。
「ふん、一姫ちゃんが盗み食いなんてセコイ事するわけないだろうが」
 そうかい。
 溜息をつこうと息を吸った俺は、周囲に漂う甘い匂いに気がついた。
 おいハルヒコ。お前ちょっと口を開けてみろ。
「はぁ?」
 お前の口からカラメルの匂いがしたんだ。
「なんだそりゃ? 団長であるこの俺様を疑うつもりだってのかよ?」
 いいから開けろ、ほら。
 手を伸ばしてきた俺から逃れようともがくハルヒコだったが……甘いな、長年弟の歯磨きをしてきた
俺に歯向かおうなんて10年早い。
「ちょちょっ? キョンコ! おあ? ……――」
 俺はハルヒコの口に両手をかけ、そのまま強引に口を開いてみた。
 ん~よし、虫歯なし。じゃなくて…………あれ? 違ったか。
 口を開けたまま大人しくしているハルヒコに顔を近づけても、そこからカラメルの匂いはしなかった。
 すまん、勘違いだったみたいだ。…………おい、ハルヒコ聞いてるのか?
「え? ……あ、ああすまん。聞いてなかった」
 人の話はちゃんと聞けよ。急に顔を赤くして黙るから驚いたじゃないか。
 そう俺が怒っても、自分の唇を撫でながら何故かハルヒコは無言になっている。
 どうしたんだろう……そんなにプリンが無いのがショックだったんだろうか。
 お前のプリンだけどな、俺からみんなにも聞いておこうか?
「いや……もうどうでもいいや」
 そう言い残し、ハルヒコはふらふらと部室を出て行くのだった。
 まったく、気が変わるのが早い奴だな……。

 

 

 

 おしまい
 

 

最終更新:2020年07月08日 12:54
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