「おや?古泉くんじゃないかい!」
「鶴屋さん。こんにちは」

会長と僕の企てた、SOS団存続イベント。
まぁ少しでも涼宮さんが退屈しないように、という名目の下なんですが。
その話の打ち合わせの為に生徒会室に入ろうとした所、鶴屋さんとばったりでくわしました。

「生徒会に用事でもあるのかい?」
「まぁ、そんな所です」
「ふーん…まさか、生徒会のスパイじゃないだろうねぇ?」

相変わらず勘が鋭いのか、それともふざけてるだけなのかよくわからない。

「あはははは!そんなに真面目に考えなくてもいいっさ!」
「いえ、でもこんな所を出入りしてたら少なくともそういう疑いはかけられますよ」
「SOS団の副団長さんなんだから、ハルにゃんに怒られるようなことしちゃだめだよ!」

苦笑しながら返事を返す。
副団長、か。

「みくるから聞いたんだけどさ、古泉くんって転校してきたんだっけ?」
「えぇ、そうですが?」
「珍しいよねっ、高校に入って1、2ヶ月で転校って」

あぁ、そういうことになっていたのだっけか。
「何か前の学校で嫌なことでもあったのかい?」
「いえ、親の仕事の都合上どうしようもなくて」
「そっか」

さきほどの悪戯のような瞳ではなくて、真剣に心配してくれている瞳。

「なんというかね、最近は色んな人がどんどんいなくなっちゃうんじゃないかと心配でね。古泉くんやみくる、ハルにゃんにキョンくんに有希っこにも、他にもたくさんの人と会えたのに…いつか別れなくちゃいけないときがくるのかなって」
「…別れ…ですか」
「もしかしたら古泉くんの時みたいに親の仕事の都合でどうしても転校せざるをえない時もあるわけじゃないか。怖くてしょうがないっさ」
「…僕はそうは思いませんけどね」
「え?」

明らかに驚いた顔で鶴屋さんが僕を見る。

「永遠に別れる…まぁ死んでしまう時はそうなるかもしれませんが、転校等で別れてしまっても、会いたい時にいつでも会いに行けます」
「………」
「きっと、会いに行こうと思わなくても、いつかきっとまた巡り会えると思えます。ほら、そうやって僕も皆さんと出会えたわけですし」

まぁ…結局は

「涼宮さんがそんなこと許すとは到底思えないんですけどね」
「転校する!なんて言ったら親に食って掛かっていきそうだもんねハルにゃんは!」

…もうひとつの意味でも。 涼宮さんが望んでいればきっと誰かがいなくなることは無いと思いますが。

「何か悩んでた自分が馬鹿みたいっさ!ごめんね、変な話をしてしまって」
「いえ、僕でよければいつでもどうぞ」
「あはは!流石副団長!頼りになるっさ!君ももし生徒会と戦うなんてことになったら是非ともお姉さんに言うんだよ!なんてったって、私は名誉顧問なんだからね!」
「ふふっ、了解です」
「おっと、もうこんな時間だ!じゃ、またね!」

そう言うと鶴屋さんは勢い良く走り去って行った。
元気が出たみたいで良かった。

僕も生徒会の扉を開ける。

「ん、遅かったな古泉」
「すみません、少し話し込んでまして」

…どうかしましたか?
人の顔をじっと見て。

「いや、少し嬉しそうに見えたからな。まぁいい。とりあえずお前の考えてきた例の団を焚き付ける方法を言ってみろ」
「はい、わかりました」


頭の中で組み立ててきたことを話しながら、少しだけ考えてみる。

…涼宮さんが力を失ったら、もしかしたらみんな離ればなれになってしまうかもしれない。
さっきは大見得を切って言ってしまったが、もう会えなくなるかもしれない。
でも、まだそんなことは考えなくても大丈夫ですよね。

「ニヤつくな、古泉」
「ふふっ、すみません」

…日常が楽しい。
ただそれだけで十分です。

おわり

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最終更新:2008年12月04日 09:58