このSSはニコニコ動画のボーかロイドオリジナル曲「初めての恋が終わる時」を勝手にハルヒSS化したものです。
そういうのが嫌いな方や、ニコニコ動画が嫌いな方は読まない方がいいです

 


ガタン…ガタン…キョンを乗せた列車が走っていく。
あたしの初恋は今…終わりを告げた。
 
 
駅をでると雪が降ってきた。季節は冬、街はクリスマス一色だ。
こんな日に初恋の人とわかれることになるなんて、神様は相当意地悪らしい。
ふとすれ違った一組のカップルが楽しげに話していた。
「ほらみて!初雪だよ!」
「ああ、もしかしたら今年はホワイトクリスマスかもな」
胸がチクリと痛む、もしかしたら、あたしがもっと早く告白出来ていたなら…今頃二人であんな会話も出来ただろうか。
 
かじかむ両手に息を吹きかけ、空を見上げる。
来年の今頃、あたし達はどんな風に過ごしているだろうか。
-初めての恋が終わる時-
 
 
 
キョンが転校することになった、理由は父親の仕事の事情らしい。
最初あたしはごねた。喚いて叫んでキョンを引き留めようとした。
「そんなこと許さないわよ!あんたがいなくなったらSOS団の活動に支障をきたすじゃない!」
違う、本当はSOS団のことなんか関係ない。
別にSOS団の活動を軽視してるわけじゃない、みんなでただ探索してるだけで楽しかったし。ゆきやみくるちゃんや古泉君もあたしの大切な友人だ。
ただ、キョンは三人とはまた違う存在だった。
 
あたしはキョンが好きだった。精神病だと言われようと好きでしょうがなかった。
それでも素直になれずに告白出来なかった。その結果がこれだ、神様はあたしに罰を与えたんだろう。
「俺も離れたくはないがな…家の事情だ、仕方ないんだよ」
キョンが言わなくてもそんなことはわかっていた。どれだけあたしが嫌がったって転校はかえようがない。
 
今更ながら告白出来なかったことを悔やんだ。毎夜枕を涙で濡らした。
瞳が赤いまま学校にいくとキョンは
「ハルヒ…目が赤いぞ、大丈夫か?寝不足か?」
こうやってキョンはすぐ心配してくれる。いつも憎まれ口を叩くくせにキョンは優しい。
だからあたしはこの気持ちを胸にしまうことにした。優しいキョンのことだ、きっと困らせてしまう。
 
引っ越しする日を聞いたら、冬休みが始まるちょっと前らしい。
クリスマスに渡そうと、必死で編んだマフラーも渡せなくなった。告白出来ないにせよ、それくらいは許されると思ったけど、神様はそれも許してくれないらしい。
そんなふうに言い訳をしても本当はわかっていた。
渡すならクリスマスじゃなくたってよかった。むしろそうじゃないほうが、団長からの選別という名目で、この気持ちにも気付かれなかっただろう。
ただ勇気が出なかっただけ、意気地なしな自分が悔しくてまた枕を濡らした。
 
そして今、あたしは駅のホームでキョンを見送ろうとしている。
キョンの家族はあたしに気を遣って一つ前の列車で先に行った。他の三人も来ていない。今ここにはあたしとキョンしかいない。
「………」
なのにあたしは何も言えない。
「…もうすぐ列車が来るな」
「あっ…」
「やっぱり寂しいな、みんなに会えないと思うと」
なんでそんなこと言うのよ…そんなこと言われたら…また引き留めたくなるじゃない。
でもだめだ、あたしの勝手な気持ちでキョンを振り回しちゃいけない。
「…頑張りなさいよ、キョン」
「…ああ」
「離れてたってあんたはSOS団団員その1なんだから」
「わかってるよ」
 
こんなことが言いたいんじゃない。
あたしはただ、今までありがとう。迷惑かけてごめん。それだけを伝えたいのに。
ここでも臆病が顔をだす。言わなくちゃ…。
そう思ってると、狙いはかったかのように列車がやってきた。
「っと、きたか」
「あっ…」
キョンが荷物を抱える、急がないと…もう時間がない。
開いたドアからキョンが列車に入っていく。
「キョン!」
声が思わず裏がえってしまう。驚いたキョンが振り返った。
「どうしたハルヒ」
「あっ…」
また言葉が出ない…どうして、どうしてあたしはこんなに弱いんだろう。
涙を流しちゃいけないのに、悔しくと瞳から滴がこぼれ始めた。
 
「うっ…くっ…」
「ハルヒ…」
止めようとしても、とめどなく涙が溢れる。弱音をはかないようにするので精一杯だ。
どうしよう。困らせたくないのに、困らせてしまう。
「っ!」
どうしようもなくただ泣いていると、キョンがあたしの手を握った。
「ハルヒ…俺…」
…ほら…やっぱりあなたは優しいから、そんなふうに困ってしまう。
お願い…今だけ…今だけ、ほんの少しの勇気をあたしにちょうだい。
「…大丈夫だから…離してよ」
「あっ…わりぃ」
そういうと、すぐにキョンはあたしから手をはなした。
先程まであったかかった手が、また冷たくなった。
…さよならって、こういうことなのかな。
 
涙を抑えて、顔をあげる。これだけは言わなくちゃ。
「キョン…ありがとう…ありが…と…」
言葉を紡ぐ度に、想いが溢れて、また涙がこぼれだす。
本当はいけないけど…たった一つの罪なら、神様は許してくれるだろうか。
「あのね…っ!」
あたしの唇を塞いだのが、キョンの唇だと理解したのは、キョンの腕に抱きしめられてからだった。
初めてのキスはレモン味だなんて言うけれど、あたしのファーストキスは涙でしょっぱかった。
列車のベルがなると、キョンはあたしから離れた。
「じゃあなハルヒ…ありがとう」
その言葉を最後にキョンを乗せた列車は走っていった。
「うっ…キョン…キョン!キョン!うっ…くぅ…ふぅぅ…」
膝から崩れ落ち、ホームにへたり込んでしまう。
今だけは、泣いてもいいよね…。
 
涙も多少落ち着き、家に帰る。顔に当たって溶ける雪が冷たい。でも、まるであたしの心を洗い流してくれるよう…あの人のように。
 
 
途中手が寒くて、コートの中に手を入れると何かが入っていた。
「…?」
中からその何かを取り出すと一枚の紙切れだった。
紙切れには見覚えのある字で、たった一言
 
 
 
「迎えにいくから」
 
 
 
 
 
fin
 

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最終更新:2020年03月11日 18:15