目次
これも「
第三回君誰大会」の続編です。どうしようもないですが、見てください。
君誰大会 「平凡な物語り」
「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」
「ぐ、それを言われると……」
「決断しなさい! さあ!」
いつもの喫茶店で、いつもの面子+いろいろの、総勢二十名ほど。
そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。
そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。
正直な所、誰にも糾弾されないままだと俺はまた逃げてしまっていたかもしれない。
実は、答えはもう出たのだが、それを口にするのは憚られたのだ。
なにせ、今のままコトに及んだら犯罪である。
俺は、よりにもよって妹の友人……まだ小学生である、吉村美代子を好きになってしまったのだ。
ああ。年齢的にはロリヰタコンプレックスといわれても仕方がないだろう。
というか社会的に抹殺されてもおかしくない。
だがしかし、あの表情、仕草を見ていないからそんなことが言えるのだ。
周りの女子高生に遠慮しながらも期待を覗かせたあの表情はまさに水爆級だった。一瞬で俺の心は焦土と化した。いや、楽園と化した。
なんだ、もうすっかり大人なんだな………的な父親視点と一人の女の子として見る男視点の両方から見て彼女は可愛い。
ああ、何いってんのかわかんなくなってきた。
しかし、この気持ちを声に出さねばいけない空気である。
恥ずかしいのに。
まあ、しょうがないか。
死を覚悟して言った。
「俺はミヨキチが好きだ。」
言ってやったさ。ああ。言ってやったとも。
だがしかし。
俺を待っていたのは、ある意味当然な、しかし言われる方としてはたまったもんじゃない口撃だった。
「ロリコン?」
「炉?」
「ロリヰタコンプレックス?」
「ローカルなキャラクタリスティックにコンプレックスを持っている略してロリコン?」
「待て。待て待て待て。確かにそう言われる分には覚悟してたがなんだローカルなキャラクタリスティックにコンプレックスを持っている略してロリコンってのは。ドンだけ長いんだ。」
「べ、別にロリコンなんて思ってないんだからね!」
「そしてそれもどんなツンデレ!? さっぱり何がしたいのか分からないよ!? そして外野! こっそり通報しようとするな!」
「もしもし警察ですか………」
「だーかーらやめろっての!」
「もしもし、黄色い救急車をお願いします。」
「都市伝説!」
「そういえば、本当に精神障害になった人は警察が引っ張って行くらしいよ?」
「じゃあ、110番するっさ!」
「つーるーやさーん! お願いですからやめてー!」
「不不不、みくるを泣かせるようなやつは投獄されるがいいっさ!」
「すいませんでしたーっ! でも俺はミヨキチが好きなんです!」
「じゃあ、そろそろ吉村さんにも喋ってもらいましょうか。」
「あ、はい、ありがとうございます。」
「緊張しなくていいんだぞ。こんなやつら相手に。外野の方々は極力気にしない方向で。」
「あの…はい。本当に、私なんかでいいんですか?」
「そーよそーよ。そんな子より私のほうがいーわよ。」
「黙れ自意識過剰。ミヨキチ、俺のこと嫌いなのか?」
「いいえ、そんなことは無いです。けど……」
「けど?」
「じゃあ、私とお兄さんは恋人同士、ってことでいいんですよね?」
「ああ。」
「じゃあ、ミヨキチ、じゃなくて、美代子、って呼んで下さい。その方が好きです。」
「じゃあ、み、美代子。ミヨキチってのは嫌なのか?」
「嫌じゃないですけど、折角恋人になれたんだからそう呼んでほしいです。」
「分かったよ、美代子。」
「お兄さん………」
「ねえちょっと見てアレ。お兄さんって呼ばれるのは変更無しですってよ。つまり、お兄さんと呼ばれたい、むしろ呼ばせて背徳感アップ!」
「ほうほう、えろいね。ナニする時も『あっ、お兄さんそこは……』的な声が聞きたいってことか。えろいね。実にえろい。男のロマンだ。」
「うっせーよお前ら! いちいち雰囲気を壊していくな!」
「うるさいこの幼女愛好家。」
「そうだよペドフィリア。」
「いいから黙って私たちの恨み辛み妬み嫉みを受けなさい。」
「長えよ!」
「高天原にかむづまります。すめらがむつかむろぎかむろみのみこともちて八百万の神等を。かむ集へに集へ賜ひ。かむはかりにはかり賜ひて。あがすめみまのみことは。豊葦原水穂国を安国と平けくしろしめせとことよさし奉りき。かくよさし奉りし…………」
「誰! 誰よ大祓詞なんて唱えてるのは! うわ以外や以外にも朝比奈さん! 畜生春の幽霊騒ぎのせいか!」
「おやおや、神道の魔術特性は禊。つまり絶対なる結界といった所か。彼等のラヴパワーが溢れてこないようにするには確かに有効だね。」
「その上、アレは大祓詞なんだから、ラヴパワーを祓う効果もある、と。流石はみくるちゃんね。」
「そこ! そこの神様コンビ! それ異世界だから! 同じスニーカー文庫だけど異世界だからね!」
「ふむ……つまりあたしもグラム・サイトを使うべきということ……?」
「社長は控えてて。ここはあたしが………。」
「お前ら、周りの皆分かってないから! せめてわかるやつでお願い!」
「むう、祝詞を唱えたからにはわたしは巫女役………でもわたしはあんなに小さくないしな………」
「私が陰陽師役をする。大丈夫。猫には懐かれている。ほら、シャミセン。」
「いいなあ、有希ちゃん。じゃあ私はサメでも飼おうかしら。」
「朝倉さん、フォルネウスは飼ってるんじゃなくて使役してるんですよ。そして私はアレですか? 幽霊少女ですか? 影薄いですか?」
「分かってたの!? そしてやめなさい! 美代子が話し分からなくておろおろしてるだろ!」
「あ、あの………それだと私がルーン使いの狼女ですか? それはちょっと………せめて、ホムンクルスの少女がいいです。」
「おろおろしてる原因それだった! 畜生ここらは馬鹿ばっかかよ!」
「それじゃあオピオンの方々も決めないとね。古泉君たち、頼めるかしら?」
「ええ。僭越ながら僕がもう一人のグラム・サイトを勤めさせていただきます。」
「じゃあ、私は吸血鬼役で。なんだかんだいってチェンジリングとよく一緒だし。」
「じゃあ、会長は陰陽師でいいですか? いいですよね? 有希ちゃんのお父さん役ですよ? 嫌なんですか? 嫌だって言ったら………」
「不服はないが、じゃあ君は何役だ?」
「もちろん気が狂ったまま死んだあなたの妻役ですよ。」
「ならいい。」
「いいの!? それいいの!? そして何で皆そんなノリノリなの?」
「あ、じゃあキョン君がルーン使いの狼少年でいいじゃん。」
「そうだねー。妹ちゃんはあえて管狐使いの彼とかどうにょろ? かっこいいっさ。」
「じゃあ鶴屋さんはみくるちゃんのお姉ちゃんとか? 巫女さんだよ?」
「あ、じゃあ僕はその守人ってことで。神楽ってどんなのかな。」
「―――私は――病弱なネクロマンサー――根暗マンサー?」
「じゃあ、僕はオートマタのオピオンで。」
「む、ならば私がオートマタのアストラル側で。」
「あらら、新川さんに取られてしまったよ。じゃあ、僕は破戒僧にでもなろうかな。裕は?」
「じゃあ、魔法使いを罰する魔法使い、にでもなるよ。」
「正直、彼はチートだと思うけどね。神を越えてるんじゃない?」
「まあ、楽しげだからいいでしょう。」
「………みんな、なんでそんなにノリノリなの? 誰か教えて?」
「ま、まあまあお兄さん。落ち着いて。それに、楽しいじゃないですか。」
「ああ、まあやってるほうは楽しげだけどさ、ツッコミ以外全員ボケって厳しいと思うんだ。二十人弱対一人ってもはや虐めだといっていいと思うんだ。」
「ま、まあまあまあ。皆さんのを見てるだけではいけないんですか?」
「無理なんだよ。これはもう血に埋め込まれている宿命なんだよ。大宇宙の意思なんだ。心で止まろうと思っても体が勝手に動くんだ。」
「危ない薬をやってる人みたいですよ。」
「じゃ、今度の文化祭はこの配役で映画を撮りましょう! そうと決まれば善は急げ! 早速行動しましょう! あ、キョン、お会計お願い!」
「ちょっと待てコラァ! 二十人分の喫茶店代なんて持ち合わせてるわけねえだろ! 古泉払え!」
「新川さんに頼んでください!」
「あの、お兄さん、私なら少しは持ち合わせてますよ?」
「いや、女の子に出させるなんて出来ねえから。というわけで新川さん、後で古泉から搾り取ってください。」
「了解しました。彼の今月の給料から天引きしておきます。」
「ありがとうございます。さて、いくか。」
「ええと、どこへですか? 皆さんがどこへ行ったかわかるんですか?」
「違うよ。折角二人きりになれたんだから出掛けようってこと。」
「え、あの、それは……。」
「もちろんデートってこと。嫌?」
「え、あ、嫌じゃないです! 嬉しいです!」
「じゃ、行こうか。」
「若いって………いいですね。」
「若さとは、振り向かないこと、だったけね。」
「あきらめないこと、でもあるよ。」
後には、遠くを見つめる新川さんと田丸兄弟が残されていたとか。
その後、いちゃついていた所にまた皆が乱入してきて乱痴気騒ぎになるのだが、ひとまずはおしまい。