「わたしもパパみたいに強くなる!」

って言ったのは、いつだったかな?
いつだったかなんて覚えていないけれど、わたしは今でもその約束を覚えている。
そしてわたしは、その約束を果たすために、この女子レスリング部に入った。
絶対、絶対強くなってみせる。

「じゃあまずは、腕立て伏せ30回。その後腹筋30回。背筋30回」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10・・・・・あー・・・もうダメ。
せめて、20回ずつで許してください・・・。
こんなの無理だよー。

28、29、30・・・
やっと腕立て伏せ終わった。次は腹筋・・・
と思って、腹筋に入ろうとしたその時。
「あたし終わりました」と言う一人の女の子の声。
誰かは分かる。同じ中学出身で、今も同じクラスの子。

涼宮ハルヒ

この子が行ってきた数々の奇行、振る舞いは数知れず。
高校になっても、入学式のときの自己紹介の言葉とか、たまに休み時間になるとよく分からないことしてるとか、
そういえば、鈴木さんや柳本さんの話だと、いろんなところに仮入部しているらしい。
ここもその一つ・・・だったらいいんだけど。
宇宙人とか未来人とか、信じるのは勝手だけど、みんなに迷惑かけるのはやめてほしい。
おふだが学校中に貼られてるときは怖かったんだよ。
学校ではなんとも思ってないフリしてたけど。

「もう終わったの?じゃあみんなが終わるまで休むか、もう一度筋トレするかしといて」
部長さんが涼宮さんにそう言う。
そして、次に涼宮さんが取った行動は・・・
スクワットだった。
どこにそんな体力があるの?
その体力をわたしにください。

・・・・・・・・・・・・・・

28、29、30・・・
やっと筋トレが終わった。
水・・・水がほしい・・・

ゴクッゴクッ

生き返った。

「はい、じゃあ今からそこの二人が実際にレスリングやるから。ちゃんと見てて」
と、丸い円の中に二人の先輩が向かいあっているところを指差して、部長さんが言った。
とにかく、今から見本を見せるから、ちゃんと見とけ!ということらしい。

試合開始。
わたしから見て右側にいる人が、「うおー!」とか言いながら、タックル。
片足掴んで・・・
ドスン

その後も、痛そうな試合が続く。
「ハハハ、見せるための試合だから、それやりすぎだってー」
と、部長さんが笑いながら言っている。
なら、やめさせてあげてください。

うわうわ、本当に痛そうだよー。なんだか怖いよー。
でも、わたし、めげずに頑張るもん。

そして、試合は5分ほどして終わった。
これを、これからわたしがやっていくんだ。ちょっと不安。

「はい、じゃあちょっと初心者には危険かもしれないけど、やってみたい人いる?」と、部長さん。
ここは・・・ここは・・・
「やりたいです!」
手を挙げる。
勇気があるからじゃなくて、自信があるから。
「ちょうど二人だね。じゃあ出ておいでよそこの二人」
わたし以外にも一人いたみたい。
相手があの先輩じゃなくてよかった・・・

と思ったんだけど、その相手は、多分、今日一日だけでやめてしまうであろう、涼宮さん。
「相手はあんたか」
涼宮さんがわたしに言ってくる。
「わたしじゃ不満?それとも、勝つ自信がないの?」
強気で言ってみた。
「フン」
笑われた・・・

「えっと、じゃあ名前聞いとこうか。じゃあそっちのリボンの子は?」
「涼宮です」
「えっと、涼宮さんね。あなたは?」
「日向です」
「ふむふむ。じゃあ簡単にルール説明するわね・・・」
それから、部長さんは本当に簡単にルールを説明してくれた。
簡単というより、短いと言った方があってるけど。

「じゃあ、そこでむかいあって」
といわれたので、わたしと涼宮さんは円の中で向かい合う。
涼宮さんの顔を見てみる。
涼宮さんもこっちを見てくるんだけど、なんか睨んでるみたいだよ。
やっぱり、怖いよ。
でも、負けないんだから!

そして、試合が始まった。
と同時に、涼宮さんはわたしの足を掴んでくる。
そしてそのまま、わたしを倒して、わたしの足に足を絡めてくる。
って、これ・・・関節技・・・!!

いたい、いたいよパパー。イタイイタイ。

「ちょっと涼宮さん。関節技は禁止だって」
「さっき言ってなかったじゃないの!」
「いや、まさかするとは思わなくて」
それを早く言ってよ部長さん。
うー。まだ痛い。

「他にも打撃技とか絞め技は禁止だから。はい、じゃあ試合再開」
まだやるのー。
でも、今度こそ。

そして、試合が再開されると同時に、わたしは涼宮さんにタックルすることに成功。
やった、今回は・・・
と、思っているとそのまま、お腹に腕をまわされ、そのまま・・・
涼宮さんの後方に投げ飛ばされた。

「おっ!うまいね、涼宮さん」
・・・これはちゃんとした技みたい。

やっぱり怖いよ、パパー。

それからも、何度か頑張ってみたけど、苦戦・・・
いたい・・・

で、試合終了後・・・
「あたしやっぱりやめます」と、涼宮さん。
先輩たちは「えっ!ちょっと、じゃああたしとやってから・・・」と言ってるけど、涼宮さんは無視。
わたしのことは忘れられてる感じ・・・

悔しいけど、もう戦いたくないよ。

家に帰って、今日のことをパパに言ってみた。
「うわーん、痛かったんだよーパパー」
「お前なら、大丈夫だ。学校でも泣かなかったんだろ?お前は強くなれる。気合だー!」
「うん、分かった。わたしがんばるね。パパ」
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