そろそろ映画公開ですね。よく広告に写っている消失の長門さん、可愛いですね。自分はアニメ進行だから彼女がどんな子なのか知らないので、観に行くのが楽しみです。


主な登場人物

キョンくん・・・彼も意外とドSだったりする。

古泉くん・・・バイトが忙しくなってきたみたいです。

谷口くん・・・絶叫マシン大好き。


国木田くん・・・変な悪戯も、程々にね。


「僕は国木田。その二」

今からこのハートのAが描かれたトランプに魔法をかけるよ。じゃあみんなで一緒に・・・カッワ~レ! ダイヤのAに変わりました。一度やってみたかったんだよね、これ。


谷口「この前やっとアカム倒したぜ」
キョン「やれやれ、アカム倒すのにどんだけ手間取ってるんだか」
谷口「ちょっと待てよ! 前にやったときはお前のせいでなあ!」
キョン「たまには失敗することもあるさ・・・」
僕「キョンの言うとおりだよ谷口。それに君の方が二回も力尽きていたじゃないか」
谷口「なんでお前は常にキョンの味方なんだよ!」
僕「常にキョンの味方ってわけじゃなくて、常に谷口の敵って表現の方が正しいよ」
谷口「WWWWWWWWW」
古泉「まあまあ落ち着いて」
年が明け、冬休みも残り少なくなってきたある晴れた日のこと。僕達は古泉くんの誘いで近くの遊園地に来ている。彼の話によれば、バイ

トの同僚に遊園地の招待券を貰ったらしい。そういえば古泉くんってどんなバイトしてるんだろう?
谷口「にしてもナンパ目的で来たってのにどいつもこいつも彼氏連れとは・・・・・・」
キョン「お前は常に彼女作りの事しか考えとらんのか」
谷口「良いじゃねえかよ別に。そういうお前だって近所の喫茶店で働いてる、ポニーテールのウェイトレスにメロメロじゃねえかよ」
キョン「あ・・・あの人の事は別になんとも」相変わらずポニーテール萌えなんだね。
古泉「その話、興味深いですねえ・・・もっと聞かせてもらえないでしょうか」顔怖いよ、古泉くん。
キョン「なんでお前が興味持つんだよ!」
ふふっ、やっぱり新しい年が来ても変わんないなあ。谷口は相変わらずアホだし、古泉くんは相変わらず面白いし、キョンは相変わらずキョンだし・・・え? それが友達に対する評価なのかって? だったら原作で僕達を映画撮影に呼んだときにキョンが友達をどう見ていたのか思い出してよ。あれに比べたらマシだと思わないかい?
古泉「今度髪伸ばしてポニーテールにしようと思うのですが・・・どう思いますか?」
キョン&谷口「気持ち悪い!!!」
さて、今日は遊園地という特別な舞台。文化祭以降なんの進展もない二人の変愛(へんあい)の為に僕も一肌脱ごうかな。遊園地で遊ぶ事

だけでも楽しいイベントだというのにこれ以上の楽しみを求める・・・僕は欲張りな人間だね。
キョン「お、開園したみたいだぞ」
僕「遊園地なんて久しぶりだなあ」
古泉「まずは何に乗りますか?」
う~ん・・・最初はやっぱりメリーゴーランド辺りがちょうど良いかな。
僕「じゃあ・・・」
谷口「ジェットコースター行こうぜ!」
な・・・なにを言ってるんだよ谷口。そんな絶叫系の乗り物なんて後で良いじゃないか。体を慣らすためにまず普通の乗り物を・・・。
谷口「なにしてんだよ国木田。早く来いよ~!」
僕「・・・・・・」

 

古泉「さすが人気のアトラクションですね。十五分ぐらい並んでやっと最前列ですか」
十五分も待たされたのにジェットコースター自体を楽しむ時間はほんの少しだけ・・・時間の浪費以外のなにものでもない。それだったらメリーゴーランドやお化け屋敷の方が楽しむ時間が長いだけマシだ。いっそのこと同じ園内に同じようなジェットコースターを二つ作ってみたらどうだい? 客が分割されるから並ぶ時間が短縮出来る筈だよ。いや、別に怖くて文句を言ってるわけじゃないからね。これは間違っている物事に対しての指摘というやつだから勘違いしないでよ。さて、ガイドブックによればこのジェットコースターは一般的な物と同じように席が二列に並んでいるらしい。さっそくチャンス到来、古泉くんとキョンには一緒に座ってもらおうかな。
キョン「この並びだったら一番前とその後ろに座れるな」
谷口「よし! 一番前に座らせてもらうぜ」
な・・・なにを言ってるんだよ谷口。一番前なんて一番迫力があって一番怖い席じゃないか。そんな危ないとこに僕を座らせるつもりなのかい? ふふっ、まあ良いさ。これも古泉くんの為だから仕方ない。
僕「じゃあ、僕も一番前に座ろうかな」後で覚えといてよね、た・に・ぐ・ち・くん。

ジェットコースターに乗ってる間中、恥ずかしながら目をギュッと瞑って早く終わりが来ることを祈った。人は本当に恐怖を感じているときは叫び声なんて出せないんだ。隣で両手上げて叫んでる奴と違ってね。
古泉「大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」ジェットコースターを降りた後、古泉くんが声をかけてきた。
僕「大丈夫だよ」ちょっと機嫌が悪くなっただけでね。
古泉「んふっ、あまり無理はしなくて結構ですよ。例えそれが僕の恋路の為でもね」どうやらバレバレみたいだね。
僕「ふふっ、ありがとう。でも僕は物事を楽しむ際には自分も何かを犠牲にする必要があると思ってるんだよ。だから心配しないで」
古泉「ふむ・・・了解しました」

 

谷口「あっという間に終わっちまったな~」
キョン「今まで乗ってきたジェットコースターの中で一番速かったかもな。で、次は何に乗る?」
是非ともこの苛立ちを抑える為に観覧車辺りを・・・。
谷口「よし! スピニングコースター乗ろうぜ!」
どうして君はそんなに絶叫マシンが好きなんだ!? やっぱりあれかな? なんとかは高いとこが好きって奴なのかな?
キョン「すまん、俺はパス。これって回転しながら高速で移動する奴だろ? 正直苦手なんだよ」出来れば僕が言いたい言葉をあっさりと

・・・自分の弱い部分を平気で曝け出せるなんて羨ましいよ。
谷口「なに情けないこと言ってんだよ~せっかく来たんだから乗っていこうぜ!」
キョン「お・・・おいこら! やめろ放せって! ふざけるなよ!」嫌がるキョンを無理矢理引っ張っていく谷口。その表情には悪戯心と

いう成分がたっぷり振りかけられていた。ごめんね、キョン。今は君を助けてやる気分ではないんだ。
古泉「んっふ、嫌がる彼も魅力的ですね~」・・・恋をするってことは頭のネジが何本か外れるって事なのかな?

 

乗ってる最中は特に悲鳴を上げる事もなかったけど・・・問題は降りたあと。
キョン「・・・うぷ・・・・・・おえ・・・」さっきの僕より顔色悪いね。
古泉「大丈夫ですか?」
キョン「・・・・・・死ぬ」
谷口「大丈夫かよ? 情けねえな~」
キョン「・・・・・・死ね」
谷口「なっ!?」ふふっ、あまりキョンを怒らせない方が良いよ。
僕「ここでずっと待ってるのもどうかと思うんだけど。どうする? 観覧車でも乗る?」
キョン「・・・・・・そうするか」


~観覧車内~


どうせなら計略を駆使して二人っきりで乗せてやろうかと思ったけど、あからさまって感じがするから却下。その代わり谷口を無理矢理押し込んで僕の隣に座らせた。
谷口「うわ~お! 良い景色だな~!」
僕「そうだね~園内の人々がミジンコ並みにちっぽけな存在に見えるよ」
谷口「いや、そうじゃなくてな?」
古泉「僕の住んでるマンションが見えましたよ」
キョン「どこだ?」
古泉「ほら、あそこですよ」身を乗り出してキョンが座ってる方の窓を指差す。おやおや、そんなに密着しちゃって。君の家ってホントに

そっち側にあるのかな?


古泉「ふんふんふんふん・・・ふ~ん、ふふん」歌は良いね~そうは思わないかい?
キョン「すっかり酔いも治ったし、次は何に乗る?」
谷口「よし! 空中ブランコ」
キョン「・・・・・・死ぬか?」
谷口「!!?」
僕「じゃあ、お化け屋敷でも行く?」
谷口「お・・・お化け屋敷? 悪いことは言わん、やめとけ。つまんねえことは目に見えてる」
キョン「・・・・・・」
古泉「・・・・・・」
僕「・・・・・・」
谷口「なんだよ? いきなり黙り込んで」
キョン「よ~し、お化け屋敷行こうぜ」と言って谷口の腕を掴む。
谷口「なにすんだよ! 放せって! いや、ホントにつまんないんだって! お化け屋敷なんて全然面白くないから!」
僕「はいはい、それは良かったね」背中をグイグイ押してやった。
谷口「ちょっと待てよ!!!」
古泉「微笑ましい光景ですねえ」

 

~お化け屋敷内~


谷口「も~! なんでこんなに暗いんだよ。危ないからもっと明るくしろよな~」
僕「それじゃあ普通に面白くないから」
キョン「にしても歩きなんて珍しいな。最近のお化け屋敷って乗り物に乗るタイプが多いのに」
古泉「歩きだと後ろがつっかえるからでしょうかね。僕はこの方が好きですが」
谷口「歩きだろうが、乗り物だろうがつまらあああああああああああ!!!」
キョン「うおおおっ! 俺にしがみつくなよ!!!」
谷口「だて! もう! だから来たくなかったんだよ~!」
キョン「逆ギレすんなよ! だいたいまだ始まったばかうおっ!」
谷口「ぼおわああああああああああああ!!!」
古泉「さっきからあなたの絶叫に驚愕してしまうんですが・・・」
谷口「悪かたなあ! くしょう!」
僕「君の言葉が「飼育係の日誌」みたいにおかしくなっているのは気のせい?」
谷口「なんだよそれ・・・っていうかなんでお前平気なんだよ!? 恐くないのかよ!」
僕「所詮作り物じゃないか。これくらいならホラーゲームの方がまだ楽しめるよ」
谷口「お前ってつまんない奴だな~そんなんじゃ人生面白ないずぅおおおおおおおおおお!!!」
僕「大丈夫、面白い者が目の前にいるから」
谷口「なのことだよそりは!!!」


お化け屋敷を出た僕達は、その後も様々なアトラクションを楽しんだ。

 

キョン「スカイサイクリング? ネーミングセンス悪いな」
僕「二人乗りの自転車かあ。じゃあ一緒に乗ろうよ谷口」
谷口「・・・・・・(喉痛い・・・)」
古泉「楽しいサイクリングになりそうですね」

 

古泉「高速落下エレベーター? そのまんまって感じな名前ですね~」
キョン「作者のセンスがゴミ以下なんだろうな」
僕「ほら、奥に座ってよ谷口」
谷口(なんでさっきから人を押すんだよこいつは)


谷口(レーシング・・・名前付けんのも面倒になったのか?)
僕「これまた二人乗りのレーシングカーだね。谷口が運転してよ」
キョン「俺の超絶運転テクニックを見せてやるよ」
古泉「下がレール式になってるからテクニックは関係ないかと・・・(でも二人でドライブ、悪くないですね~)」

 

僕「アクアダイビング・・・あ、これ写真撮ってくれるやつだ。ほらほら、さっさと座ってよ谷口」
谷口(また国木田の隣か・・・)


古泉「で、これが出来た写真ですね。んふっ、よく撮れてます」
キョン「・・・・・・」

 

~レストラン内~


僕「早く座ってよ谷口」
いつも通り、谷口を僕の隣に座らせる。ん? レストランの席では向かい合わせの方が良かったかな? まあいいや。
店員「ご注文、お決まりになりましたか?」
キョン「カレーライスとメロンソーダ」
古泉「ミートスパゲティとレモンティお願いします」
僕「オムライスとカルピスで」
谷口「これと・・・これ」ハンバーグとコーラを指差す。
店員が立ち去ったあと、今までのアトラクションについて雑談し始める二人。まあ、席が隣同士なうえに谷口が全然喋んないから無理もないか。今日は二人を隣同士にする為に少々強引な手を使ったけど、目の前で仲良く会話している二人を見る限りその甲斐はあったかな。キング・オブ・鈍感のキョンは全然気付いて無いだろうし。
僕「・・・・・・」
谷口「・・・・・・」
僕「・・・・・・なに?」
谷口「な・・・なんでもねえよ」
さっきから谷口の視線を感じるのが不思議だ。僕になにか恨みでもあるのかな?

 

古泉「今日は楽しかったですね~」色んな意味で?
谷口「結局ナンパのひとつも出来なかったぜ・・・」あの驚き様では決まりかけた見合い話も無くなるよ。
キョン「俺はなんか疲れた」君はお年寄りか?
キョン「でも楽しかったよ。今日は誘ってくれてありがとな、古泉」と言って普段の顔からは想像も出来ないような笑顔を浮かべる。
古泉「どういたしまして。僕も喜んでもらえて嬉しいです」表情から察するに別な意味含んでるよね。
キョン「お前も楽しかったか? 国木田」その笑顔のままで僕を振り返る。
僕「え? うん、楽しかったよ」僕も様々な意味を込めて言ってみた。ふふっ、言葉ってホントに面白い。ひとつの言葉でも、場合によっ

ては違う意味を持っている。まるで人間の様だ。普段、人前で見せる表情が全てではない・・・という意味でね。
古泉「それでは、失礼します」
キョン「じゃあ、またな~」
谷口「じゃあな!」
僕「さよなら、また今度ね」

 

ん? メールだ。相手は古泉くん。「今日はありがとうございます」か・・・ふふっ、お礼を言うべきは連れてきてもらった僕の方だよ。最後に見せたキョンの笑顔だって、招待してくれた君に向けられたものだ。僕の行いは単なる暇つぶしでしかないのだから、お礼を言われる資格なんてないんだよ。さて、次はどんな方法を使おうかな。恋愛ドラマではそろそろトラブルが起きそうな時期だし、いっそのこと上手く邪魔してみようかな。
僕「!?」
僕は・・・・・・考え事をしていると、周りの人が声をかけてきても全然聞こえないことがよくある。今も古泉くんへの返事に夢中で、人が後ろに立っているなんて思わなかった。こんな人気のない通りだというのに携帯を持っている方の腕を掴まれるまで気付く事が出来ず・・・そして気付いたときには、既に手遅れだった。
キョン「なに携帯見て笑ってんのかなあ? く・に・き・だ・くん?」背後からその声が聞こえた瞬間、全身から冷や汗が溢れる。
僕「や・・・やあ、キョン。どうしてこんなとこにいるんだい? 僕に・・・なにか用事?」
キョン「質問してんのはこっちだろ?」僕の右手首を握る彼の左手の力が強くなる・・・あはは、相変わらず凄い握力だ。
僕「痛いから、放してくれないかなあ?」
キョン「・・・・・・断る」右手を強く引っ張られ、彼と向き合う格好になっても・・・僕は恐くて目を合わせる事が出来なかった。
キョン「今日はありがとうございますか・・・古泉に礼を言われるような事をしたのか? 偉いじゃないか~国木田くん」
・・・くん付けしてる。まずいなあ、本気で怒ってるよ。幸いメールにはあれに関する明確な事は書いてないから、誤魔化してみようか?
僕「うん、実は古泉くんがハンカチ落としちゃってさ、それを僕が・・・」右手で鼻を思いっ切り摘んできた。
キョン「嘘吐いたら鼻が伸びちゃうぞ~! お前のやってることなんてぜ~んぶお見通しなんだからなあ!」
僕「痛いよぅ・・・キョン」鼻声なんてみっともないけど、そう懇願したくなる程に強烈なんだよ・・・・・・。
キョン「アクアダイビングだっけ? あれの写真見たときに初めて気付いた。いつも隣にあいつの笑顔があった事にな。最初は偶然にしちゃあ出来過ぎな感じがしたから古泉の策略かと思ったんだが・・・レストランでお前が谷口を隣に座らせてるのを見たときに謎は全て解けた。驚いたよ、まさか友達をボーイズラブな世界に引き摺りこもうとする黒幕がいたなんてな」
さすがのキング・オブ・鈍感でも気付いちゃったみたいだね。
キョン「ひとつ質問だが、お前ってまさか谷口が好きなんて事はないよな?」
僕「ち・・・違うよ」
キョン「それは良かった。中学からの友人が同姓愛者だったらと思うと、鳥肌が立つ。もっとも、お前は違うみたいだがな」
僕の鼻を引っ張って無理矢理自分の視線に合わせる。古泉くんに見せたのと360度違う表情・・・ついに目覚めたのか、あの頃の君が!
僕「放して・・・」鼻が・・・曲がりそうだよ。
キョン「・・・・・・」素直に放してくれた、まるで引っこ抜くかのように強くね。
僕「うう・・・」思わず鼻を押さえる。痛みと恐怖で涙が滲んできた。
キョン「やれやれ、悲しいよ。お前がこんな奴だったなんてな・・・悪戯ばっかりする悪い子にはおしおきが必要だ」
僕「やめてよ、キョン」
キョン「ん? お前汗びっしょりじゃないか。ちょうど近くに大きな池があるらしいから、そこで水浴びするか?」
僕「こんな寒いときに池なんか入ったら風邪引いちゃうよ」
キョン「別に裸で泳げって言ってるわけじゃないから心配するなよ」
僕「でも・・・僕がカナヅチだって事知ってるでしょ?」
キョン「ちょうど良い、泳げるように練習してみろよ。ずっと見ててやるから」
僕「キョン、許してよぅ・・・」
キョン「・・・・・・」
僕「・・・・・・」
キョン「・・・・・・だぁんめ!」

 

終わり


強弱早見表・・・「古泉くん>キョンくん>国木田くん>谷口くん」

 

 

「平穏な世界」

 

ここはどこなんだ? この校舎はどう見ても北高・・・ではないよな? ここ前に一度来たような気がするな。あれは文化祭だったか? 

確かあのときもこうやって振り返ったら・・・やっぱり校庭に出来損ないのナスカの地上絵が描かれてら。これは、夢なのか?


ヴォオオオオオオオオオオオオオ!!!


わあっ! いきなりデッカイ声出すな・・・って、なんだよあれ! 青白い巨人!? いつの間に現れたんだ! ああ、校舎破壊してる・

・・いったいどうなってるんだよ? あれか? 三つ葉領域ってやつか? それともついに使徒襲来か!? とにかく逃げよう! ミ○ト

さんが来るのなんて待ってられるか! ん? 校庭に誰か・・・立ってる?
「そう、これよ・・・これこそが私の望んでいた世界」
俺は何故かその人物から目を放すことが出来なかった。その声と身に着けている制服から見て、相手が女の子である事は容易に判断出来た。その横顔は俯き加減で、風に煽られた長い髪に隠れてよく見えない。そのせいか、自然と顔よりも頭に付けている黄色いカチューシャに

目が行ってしまう。
「だけど、もういい・・・」
吹き付ける強風に巻き上げられた砂が、彼女の姿を隠していった。
「もう・・・こんなのいらない! こんなの欲しくない! こんなの・・・必要ない!」
校庭に描かれた地上絵が強風に吹き飛ばされる。
「消えて!!!」


・・・・・・夢? うわ~! なんつ~夢見ちまったんだ! フロイト先生も爆笑だぜ!


立花「いよいよ新学期! 楽しい学校生活の再来です!」
蘇芳「学校退屈」
立花「なに言ってるんですか蘇芳さん!」
ジョン・スミス「はは、気持ちはわからんでもないな」
立花「ジョン・スミスさんまで・・・」
笹の葉「二人共ダメだよ、そんなこと言っては。学校というのは勉強する為だけの場所ではなく、友達との友情を育む場所でもあるんだか

らね」
蘇芳「友達いない」
笹の葉「いないなら作れば良いんだよ、蘇芳さん。君はとても物知りなんだから、その知識を他の人に分けてみたら良いんじゃないかな。

そうすれば他人の君に対する見方が変わると思うよ」
立花「笹の葉さんの言うとおりです!」
蘇芳「やってみる」
ジョン・スミス「大事な話をしてるとこで悪いが・・・ちょっと良いか?」
笹の葉「なんだい?」
ジョン・スミス「実は今日、変な夢を見たんだ。内容は・・・かくかくじかじか」
立花「それは予知夢に違いありません! きっと近い将来宇宙から恐ろしい侵略者が舞い降りてくるんです!」
ジョン・スミス「オーバーだなぁ・・・」
蘇芳「興味深い」
笹の葉「僕も蘇芳さんと同意見だ。内容が夢にしては明瞭過ぎるうえに奇想天外、そして一度ならず二度も同じような夢を見るなんてね。

くっくっ、これは何かメッセージ的なものを感じるよ」
立花「一富士、二鷹、三なすびみたいなやつ? あ、そういえば皆さんはこの夢見れましたか? あたしは残念ながら見れませんでした」
蘇芳「見てない・・・・・」
笹の葉「僕もだよ」
ジョン・スミス「俺も見れなかったが、友人のKUNIって奴が見たって言ってたな」
笹の葉「KUNIか・・・くっくっ、彼は元気なのかい?」
ジョン・スミス「元気だよ。最近少し風邪気味だけどな。そいつの話によれば、これまた友人のTANIって奴が富士山を登っていた。と

ころがぎっちょん、何故か置いてあったバナナで足を滑らせて転落」
立花「あらまあ・・・・・・」
ジョン・スミス「危うく崖に一直線・・・かと思ったそのとき、巨大な鷹が彼を救い出した!」
蘇芳「間一髪!」
ジョン・スミス「実はその鷹は芸能人のなすびの使い魔で、TANIは命を救われたお礼にWAWAWA音頭を披露したとさ」
笹の葉「う~ん・・・実に意味不明だね」
立花「同感です」
ジョン・スミス「普段から意味不明な寝言を言ってるような奴だから仕方ないさ。そろそろ時間だから落ちるぞ」
笹の葉「わかった」


妹「キョンく~ん! 朝ご飯だよ~!」
へいへい、わかってるよ。冬休み前ならここで妹に叩き起こされるのが日課のようなもんだったが・・・最近の俺は随分早起きになった。
原因帰属に従ってこの変化の理由を述べるなら、それは冬休み中に偶然再会した友人によるものだと言っておこう。
俺は世間で言うところのインドア派で、休日には家でごろごろしたり、本を読んだりゲームをしたりするだけの怠惰な過ごし方をする男だ

。このSSでよく休日に外で遊んでいる事が多いのは、谷口と古泉という二人のアウトドア派が勝手に俺の脳内カレンダーの休日欄に油性

ペンで予定を書き込むからである。もう一人のインドア派である筈の国木田も「面白そうだね、僕も行くよ」とか言って俺の味方になって

くれる気は全く無い。べ・・・別にとんでもなく迷惑な事だとは思ってないけどな。
で、その日はどうだったかと言うと実は誰の誘いも受けてはいなかった。事実、冬休み中にあいつらと行動したのは谷口の呼び出しで行く

ことになった初詣と、例の遊園地くらいだ。そんな俺が外出する事になったのは現在、俺が皿の上に我が物顔で居座っているトーストとベ

ーコンエッグを処理するのを台所で待ち構えてる母親が原因だ。
当日、ノックも無しに俺の部屋に侵入してきた母親が発した一言は子供にとって面倒な事ベスト5に入っているに違いないものだった。
母親「お買い物に行って来てよ」
俺「・・・お断りする」
母親「そんな選択肢は存在しませ~ん! じゃあ、頼んだわよ」
・・・・・・理不尽だ。というわけで俺は凍りつきそうな寒さを誇る冬空の下を自転車で駆け抜けていった。そしてスーパーの前の駐輪場

で空きスペースを探していた俺の背中に声をかけてきたのが、笹の葉こと・・・中学の頃の同級生である佐々木だった。その後、佐々木と

どんな会話をしたのかは「分裂」でも読んでくれれば良い。展開的に「分裂」と違うのは三つ。

①俺は誰かを待たせてはいなかった。

②佐々木もこの時は塾に行く予定が無かった。

③佐々木が「お茶でもしないか?」と言って喫茶店に誘った。こんなところだ。

そのときにあれこれ会話した後、佐々木はどういうわけか俺に携帯サイトの話を持ちかけて来た。本人曰く、勉強の合間の息抜きで参加し

ているらしいが・・・これがなかなか楽しいんだとか。俺とそんなので会話して楽しいのだろうかとは思ったものの、通話ぐらいにしか使

っていない俺の携帯にそれくらいの機能を与えてやっても良いか・・・という結論に達した。
サイト内での友人は佐々木を含めて三人、立花さんはムードメーカー的な存在で、古泉並みの知識を持っている。蘇芳さんは独特の喋り方

をしていて、オカルト的な事に詳しい。佐々木と俺は主に聞き手に回る事が多いが、難しい話になったときは佐々木が俺に解説してくれる

。このメンバーとの付き合いはもう一週間にもなるが、その間に様々な知識を与えられた気がするよ。有名な都市伝説の真実やら、勢力を

拡大していた宗教団体の謎の消失についての議論やら、宇宙人は本当に存在するのか、密かに日本に進入しているらしいマフィアの目的は

何なのか・・・どれもこれも俺の知的欲求を満たすような素晴らしい話ばかりだった。な~んてな、俺にとっては知ったこっちゃねえ話題

ばかりだ。都市伝説ならまだしも、なぜ俺が意味不明な宗教団体の謎やら、マフィアが何をする気なのかで悩まなくてはならんのだ。そう

いう事で悩まなくてはならないのは、俺ではなく警察やFBIの方だろう。佐々木も立花さんも蘇芳さんも、それほどの知識があるなら警

察にでも助言してやれば良いのだ! その結果がどうなろうと、それは奴らの責任であって、俺には無関係だ。せいぜい走り回ればいいの

さ・・・俺以外の人間がな! まあ、変な話でも聞いてるだけなら楽しいし、こいつらとの会話も別に悪くはない。


校長には二種類の人間がいる。始業式や朝会で自分が話すときに生徒達を座らせてくれる人間と、立ちっぱなしにする人間だ。こんな話を

している時点で読者は気付いてくれていると思うが、うちの校長は後者の方の人間だ。既に五分は経過しているだろう。正直、ダルい!
校長「では、私の話はここまで」
バンザ~イ、な~んてね。
「次は今期、生徒会長の挨拶です」
生徒会長ねえ・・・正直、顔なんざ全然覚えてない。文化祭の後にあった生徒会選挙だって適当に眺めていただけだ。講堂で各候補者の演

説めいたものを聞いた覚えはあるが、完全な無党派層であった俺は投票用紙に一番ありふれた名前を書いたきり、その名前すら瞬時に忘れていた。ともかく現二年生なのは確かで、会長というからには上級な生徒なんだろうな。お、来た来た。ここから見ても背の高い男子生徒

であることはわかった。その顔は古泉の安上がりなアイドル顔とはまた違った意味のハンサム顔で、やたらと細長い眼鏡をかけている。
生徒会長「少々長話になる。全員、座りたまえ」
現実に、しかも壇上で堂々と「座りたまえ」なんて言う高校生がいるとはね。ん? この渋い声、前にもどっかで聞いたことあるような気

がするな。そういやあ会長の顔も見覚えがある。・・・・・・どこだっけ? まあいいや、ありがたく座らせてもらおう。
生徒会長「まずは清き一票によって、この私を生徒会長に指名してくれた君達に礼を言わせてもらおう」
はは、適当に選んだだけで感謝されちまったよ。もっとも、あの会長に投票したかどうか知らんけどな。
生徒会長「君達の期待に答える為に、私も学内改革に全力を注がなくてはなるまい。そこで今期における生徒会のスローガンを発表する。

これは私がこの学校に身を置いてから二年もの間、ずっと胸に抱いていた疑問を解決するために考え抜いた結論だ。それ即ち・・・・・・


そこで会長の眼鏡が無意味に光った。何の特殊効果だよ。
生徒会長「生徒の自主性を重んじること」
国木田コラム(自主性というのは他から指図を受けずに行動するってことだよ)
生徒会長「知っての通り今までの生徒会は生徒会とは名ばかりで、そこに生徒の自主性が入る余地は殆ど無かった。職員室で作られた予定に大人しく従い、言われたことを真面目にするだけの空気組織だ」
おいお~い! それは言いすぎでしょう! 今の発言で確実に先公達と前生徒会の人達を敵にまわしたって!
生徒会長「そんな立場からの脱却を私は目指す! 君ら生徒が望むのなら学食のメニューを増やすことでも購買の内容を充実させることで

も、どんな些末なことでも議題にかけ、学校サイドにかけあって実現の道を歩ませる! あえて言おう、生徒会の活動において私が第一に

考えるのは先公の顔色ではなく、生徒達の心であることを!」
俺の隣に座っていた女子が「ほう」と感嘆のため息を吐いた。
生徒会長「生徒会は生徒の味方だ。それだけは知っておいてほしい。以上」

 

谷口「なんだあの生徒会長は・・・まるで政治家や将軍様に見えたぞ」
国木田「でも面白そうな人だったよね。ゴホッ! これからどう活動するのか楽しみだよ」
はは、マスクのせいで声がくぐもってるぞ。国木田くん。
谷口「そうかあ? 俺は別に興味ねえけどな」
俺「同感だ。まあ、堂々と先公達に喧嘩を売るあの姿勢だけは好意に値するが・・・どうせ口先だけだろうな」
谷口「当ったり前だろ。にしても、こういう時にどんな意見を述べるのか一番気になる奴がいないとは・・・・・・」
国木田「ケホッ! 古泉くんの事かな? ホントにどうしたんだろうね。始業式の日に休むなんてさ」
それは俺も気になる事だった。二学期に転校してきてからあいつが学校を休んだことなど一度もない。ちなみに谷口はもうすぐクリスマス

と言う時に風邪を引いて何日か欠席。国木田は例のナンパ事件の次の日に欠席している。
俺「珍しいよな・・・」
国木田「ゲホッ! ゲホッ!」
谷口「まさに驚天動地って奴だな」
俺「いや、そこまでじゃないだろ。もしかしたら国木田の風邪が伝染ったのかもな」
国木田「ヴヴンッ! それは無いと思うよ。遊園地のとき以来、彼には会ってないから」
俺「そうか・・・てっきり二人で良からぬ事でも企んでるのかと思ったよ」
国木田「ゲホゲホッ!」
谷口「大丈夫かよお前・・・・・・」

 

始業式ということもあって学校は早めに終了。ところが、帰り支度をしてるときに担任の岡部が今日出たプリントを古泉の家に届けてくれ

と頼んできた。どうやら学校側には風邪を引いたと連絡していたらしい。しかし、俺達全員あいつの家には一度も行ったことがない。てな

わけで、現在俺達は岡部から「(○○えもん風に)古泉の家までの道のりが赤ペンで記された地図~!」を貰って古泉家を捜索中である。
谷口「そういや国木田、この前から電話してんのに携帯繋がんないじゃんかよ」
国木田「ああ、ごめん。うっかり水没させちゃってさ。二回も携帯無くしたもんだから、しばらく携帯禁止にされちゃったよ」
俺「バッカだな~お前」
国木田「う・・・うん。そうだね」
その何か言いたげな目はなんなのかな? 国木田くん。
谷口「ふ~ん、でもお前大丈夫か? 先に帰った方が良いんじゃね?」
国木田「大丈夫だよ。ただの咳だし、ほっといたって明日には治る程度だよ。それに古泉くんの家ってどんなとこか気になるしね」
俺「そりゃあ助かる。正直、谷口と二人きりだと迷子になる可能性があるからな」
谷口「あのなあ・・・俺だって地図くらい読めるっつうの!」
国木田「じゃあ、この地図で自分の家探してみてよ」
谷口「楽勝だ。えっとまずここが学校だろ? そんでこう行って」
国木田「・・・・・・コホッ」
谷口「あれ? ここだっけ? あ、道一本間違えた」
俺「・・・・・・」

 

十分経過!


谷口「そうそうここだよ! ほら見ろ俺だってな~」
俺はこのアホの後頭部を軽く叩いてやった。自分の家も見つけられないのに他人の家探しなんて例え赤ペンで記されていても心配だ!
国木田「そんなんでよくバイクの免許取りたいなんて言えるね」
谷口「うっせ~! 見てろよ、春休みまでには絶対取ってやる! うちの頑固親父やお前らがなんと言おうとな! そうだ、俺が免許取れ

たら後ろ乗せてやるからナビしてくれよ」
俺「遠慮しておく、まだ死にたくないからな」
国木田「僕も」
谷口「お前らウザッ!」
まったく・・・平和だな。今こうしてる間にだってどこかの国では内戦やら食料不足やらテロ行為などでたくさんの人達が命の危険にさら

されているって言うのに、そんな事なんて一切関係なさそうなこいつらの会話を聞いてるとつくづくそう思う。そう、これが普通なんだ。

小さい頃に思い描いたような夢のような出来事・・・でもそれは所詮夢であって、現実には宇宙人も未来人も超能力者も存在しない。何の

面白みもない世界だが、それが当たり前なんだ。
「これこそが私の望んでいた世界」
「だけど、もういい・・・」
「もう・・・こんなのいらない! こんなの欲しくない! こんなの・・・必要ない!」
今朝のあの夢は、きっと誰かが夢を捨てて現実へと歩んでいくさまを描いたものなんだろうな。って・・・言ってるそばから非現実的な事

を考えてどうする! とにかく・・・この平穏な世界が、俺にとっての普通なんだ。


このときの俺にとってはな・・・・・・。

 

谷口「結構普通だな。あいつの事だから立派なマンションに住んでるかと思ったんだが・・・・・・」
俺「なにを期待してるんだお前は」
何階に住んでいるのか確認して、エレベーターに乗り込む。
谷口「ドアに新聞の束が突っ込んであったり、鍵が掛かってなかったり、風呂に入ってたりしてないだろうな」
俺「なんのアニメだそれは。あいつはそんな不真面目野郎じゃないだろ」
国木田「ゴホッ! エホッ!」
谷口「わかんないぜ~もしかしたらズル休みかもしんないしな」
エレベーターが到着した。
国木田「あ、この前の観覧車が見える。えっと、観覧車の方向とあのときの時間と太陽の向きから計算すると・・・へえ、ホントにこっち

の方向だったんだね」
谷口「なんの話だ?」
国木田「彼が嘘を吐いてないかどうか確認したんだよ」
谷口「???」
もうすぐあいつの部屋に到着するな。ん? 部屋の前に誰かいる。
俺「んん?」
谷口「!?」
国木田「ケホッ?」
古泉「・・・・・・え?」
古泉は、俺達を見て本当に驚いたようだった。その表情は少し疲労を感じるものの、とても風邪を引いてるようには・・・見えなかった。

終わり

 

橘さんと九曜さんの喋り方がよくわかんない(笑) 青白い巨人って鳴き声あったっけ?

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最終更新:2010年02月08日 11:53