2006.4.7-
飛行機がコルカタに到着したのは深夜12時過ぎ。初めての海外旅行、しかもインド、ということで、私はかなり不安を感じていた。飛行機の窓から見える深夜のコルカタ市街は無気味なオレンジ色の光がまばらに見えるだけで、とても4500万人もの人口を抱える大都会とは思えないたたずまいだ。出発前に聞かされていたいろいろな情報、空港を出ると大勢の人々が荷物を持ち去ろうとする、無数の物乞いがいる、そういったインドに対する先入観もあり、不安はいやが上にも高まっていた。
空港で荷物を受け取ったあと、私とSさんを迎えに来てくれていたアニルさんは、とても日本語が上手で、すこしほっとする。想像していたたくさんの物乞いは、深夜のせいもあるのか見かけない。空港前の通りにあるホテルに到着し、チェックインした後は、時差の関係もありすぐに寝入ってしまった。
翌朝、ホテルの屋上から外を見渡すと、そこは一面の「未知の世界」であった。通りを走るたくさんの車、オート三輪のタクシー(リクシャー)、自転車のリクシャー、そして猛烈な勢いで走るバスの数々。バスには信じられないくらいたくさん人が乗っているのが見える。通りはホテル街らしく、両隣にもホテルが続いている。ホテルとホテルの間には、木材とトタンを組み合わせて作った掘建て小屋があり、その中にも人が生活しているようだ。水浴びをしている人の姿も見える。そして、午前7時でも、暑い! 気温は30℃を超えており、さらに暑くなりそうだった。4月のコルカタは乾期のおわりくらいの時期で、気温は昼間で40℃を超えることもあるらしい。
(1) インドのfish market
コルカタのfish marketでは、左手でサカナを触ると大変なことになる、と聞いていたので、左利きの私は左手の甲に「サカナ禁止」とか書き、注意していた。でも、でもアニルさんは左手でサカナを触っていだが.. 市は街の至る所でたっており、サカナ売りのほかに、野菜、果物、鶏肉(と卵)、羊肉などを売っている。人はどこでもものすごく多い。売っているサカナはおもにコイ科(major carpと呼ばれるハクレン、ソウギョ、その他大きいサカナ)と、ナマズ類、ティラピア、キノボリウオ、ナギナタナマズなどが多い。あと、ニシン類もいろんな種類が出回っている。コイ科の小魚は種類数が少なく、Sさんは苦労していたようだ。ぼくの印象に残っているのは、体側に赤いラインが入っている小型のサカナ(Puntiusの一種)。
コルカタ駅の付近、かなり治安が悪い場所のfish marketは特に印象的だった。marketの奥に進んでいくにしたがって人の数が増え、身動きが取れないほど。油断をすると荷物を持っていかれそうな危険な雰囲気。汗と唾液とカレーの匂いが混じったむき出しのインド感に、すっかりやられてしまった。
地方のfish marketでも種類はあまり変わらなかったが、都会のように「危険な」雰囲気はなく、非常に穏やかな雰囲気だった。日本の田舎町にも似ている。それも、おそらく20年くらい前の日本だ。ときどき声をかけてくる露天のおばさんは、笑顔でこたえると、たいていは笑顔を返してくる。彼等にとっては、私や佐土さんは珍しいガイジンさんなのだろう。ただ、場所によっては柄の悪い集落もあって、そういうところでは人々が妙に馴れ馴れしく話しかけてくる。英語も通じないので、言葉は分からないけど、友好的なのか、お金をとってやろうと思っているのかは、雰囲気で分かる。
(2) 郊外でのサンプリング
コルカタ郊外の農村は、一面の水田地帯が続いている。水田は、乾期の4月には地面が見えているが、5月以降の雨期になると、水没してしまうようだ。これらの水田では、タイ米のような細長い米、いわゆる水稲を栽培している。コルカタでは、米を食べる習慣は強いようで、カレーライスもよく食べるが、ご飯はこの細い米であった。サンプリングは、地元の人たちの協力の下、この水田地帯の至る所にある池(沼)で行なった。投網に入るのは、ヤリタナゴによく似たPuntiusの一種と、インドメダカ、イトモロコかモツゴのようなサカナ(Esomus, Danioに近い)、グラミー、ドジョウの一種、小さいナマズなど。コイ科のサカナはどれもよく似ていることもあって、福岡の筑後平野でタナゴを採っているような錯覚を覚えた。地元のおじさんが実に楽しそうにサカナを採ってくれる。日本でも、投網を投げていると近付いて来て投げさせてくれというおじさんは必ずいるけど、インドでも同じだ。自分でも沼に入って投網を投げたいところだが、寄生虫が恐いのでとりあえず見学。小学生くらいの子供がたくさんいて、興味深そうにその様子を見ている。やっぱり、20-30年前の日本もこんな感じだったのかなあ、と思ってしまう。なんか、子供たちは目が輝いていて、みんな楽しそう。
バングラディッシュ国境近くの町では、近くを流れる川を船で渡してもらった。投網を投げると、アナゴとコチの仲間が採れた。だが、投網にウンコなども入り、さすがインドだなあと実に納得する。どの場所でもとにかく人はたくさんいて、採集をしているとどんどん集まってくる。特に子供は多く、好奇心も旺盛なので何かとちょっかいを出してくる。こちらがサカナを集めていることを知ると、小さいサカナとか、ゲンゴロウとかをくれることもある。
(3) コルカタの交通事情
コルカタは、とにかく人が多い! 町には無数の人、車、オート三輪、自転車が行き交い、それに犬、牛、カラスが入り交じっている。車はクラクションをバンバン鳴らすし、人々はベンガル語で怒鳴っていて、とにかくすごい活気だ。私たちは、街の移動手段はおもにオート三輪のリクシャーを使っていた。これは、タクシーのように見えるが実は行き先が決まっていて、車に書いてある(ベンガル語なので読めない)。それで、目的地まで行くものを捕まえて乗せてもらうのだが、このさい相乗りは普通のようだ。小さいので(オート三輪!)、3人(ぼくと佐土さん、アニルさん)乗るとすでにいっぱいなのだが、さらにあと2人くらいは普通に相乗りしていた。オート三輪なのだが、5人乗ってもかなりのスピード(60km/hくらい) で走る。値段は一人あたり5ルピー (Rs)くらい。
自転車のリクシャーは、荷台に幌付きの座席がついていて、そこに乗る。漕いでいるのはおじいさんみたいな人が多い。これも後ろに3人のって、4人乗りをする(物理的に無理だと思う..)。短い距離の移動用で、値段は3人で5Rsくらい。
バスは、車掌がいて、行き先を怒鳴っている(行き先はバスにも書いてある。読めないけど)。バス停から乗るが、乗っている途中に動き出すくらい慌ただしい。常に満員で、さらに猛スピードで走る。バスの中で車掌にお金を払うと、細い紙切れ(領収書?)をくれる。2-3Rs。
(4) 言葉
インドは、基本的に英語が公用語として使われているため、英語はよく通じていた。ホテルの人たちや、博物館の人は、たいてい英語が通じていた(ぼくが聞き取れていたかどうかは分からないけど)。でも、それ以外にもいろいろなことばが使われていて面白かった。たとえば、コルカタ周辺で普通に使われているのはベンガル語で、またヒンディー語も使われているし、もちろん英語も使う。アニルさんが、アニルさんの奥さんの先生(コルカタの大学の水産学の教授:家に招待してもらった)と話しているときは、英語とベンガル語が混ざっていたような感じだった。
インドの人の英語で印象に残っているのは、"I see"と言うときに、日本人とは逆に首を横に振ること。最初、これが"No"を表しているのかと思って違和感があったが「わかりました」という意味のしぐさのようだ。またベンガル語でこの「わかりました」は「アチェ」ということばらしく、"I see"と似ている。たぶん、英語とベンガル語で同じように使っている。首を横に振りながら「アチェ、アチェ」というと、コルカタでは「わかりましたよ」ということになる(たぶん)。
最終更新:2008年01月20日 21:11