漆黒の壁に蒼き炎を宿せし時、物語の歯車は回り出す
序
私は冒険者と呼ばれる存在
私は不死身の魂を持った冒険者
私は魂の消失(ロスト)が許されない復讐者
死しても尚立ち止まることを許されない戦闘狂
代わりはたくさんいる駒
どれが自分?全てが自分。
自分が自分である理由。それを知ることが一番の望みであり、唯一無二の希望である。
–港町イルファーロ 某酒場−
「じゃあmilamort(ミラ・モート)でミラね!素敵な名前でしょ!記憶喪失のキミ!」
満面の笑顔で笑う、頭に巻き角を生やした女性に背中をバンバン叩かれ眠気が一気に吹き飛び意識が戻る。
「・・immortal(不死身)のスペルを並び替えて名前にするとか皮肉にも程があるだろう。・・まぁ好きに呼んでくれ・・。」
机に溜息が届きそうな勢いでがっくりうなだれる。
そう、俺は不死身・・
いや、不死身とは違うか。
不滅の魂を持っている。
肉体は死んでも魂は生き続けることができるので何度でも生き返れる。
だからいわゆる不死身ってことだ。
「あなたって凄いのね!だって普通はクオパティの上位僧侶じゃないと蘇生は怖くて出来ないのに、自分で生き返ってくるなんて!これが『リバース』ってやつ!?私も見習わないと・・。」
この世界の住人はいずれも『魂』を所持しており一定の条件が揃えば死んでも生き戻る事ができる。
ただ一般的に魂は肉体と共にあり自立して行動することは出来ない上意識も存在しない。
なので生き戻る場合、第三者に蘇生してもらうなど蘇生手段が限られている。
しかし、魂の輝きが一定以上強い人間は肉体を離れ自立して行動することができる。
その上で特殊な力を宿したオブジェクトに触れることにより自己蘇生が可能である。
よって彼女の言動から推測するに、未だに死亡したことがないか、あるいは魂の輝きが弱いかだ。
それを一々口に出すのは面倒なのでこの場はリバースということにしておこう。
「それにしても・・そんなに飲んで平気なのか?・・これから冒険者ギルドへの昇格任務なんじゃないのか?」
彼女の右手には大ジョッキ。
正面のテーブルには空のジョッキが無造作に並べられている。
「大丈夫大丈夫!私もといノームは生まれつき酒が強い方なのよ!しかもあれでしょ?査定任務とはいえ自分の生死がかかってるんだから!今の内飲まなきゃ化けて飲むはめになるわ!」
「さいですか・・。」
俺はしばらく彼女の暴れ酒に付き合うはめになった。
最終更新:2015年02月24日 18:35