漆黒の壁に蒼き炎を宿せし時、物語の歯車は回り出す
異なる輪廻と既知世界-3
「・・まさか、女の子に担がれて逃げることになるとはな・・。」
「ノームは生まれつき力が強いのよ。チビッコポークルやヒョロヒョロエルフと一緒にしないで頂戴。・・・ここまでくれば安心ね。」
ミラの身体を壁に座らせる。
すぐさま私はミラに回復呪文《ヒール》をかけたのだが、ヒールの魔力はミラの身体を癒すことはなかった。
「嘘・・・治癒が効かない!?」
「無駄だ・・奴の魔法には『ヒール・カーズ』という呪詛が宿っている・・この呪詛はあらゆる治癒を無効化するんだ・・。」
「そんな・・・。」
今にも泣きそうな表情の私を励ます言葉を探した。
「そう悲観するな・・。奴のおかげで少し記憶が戻ったようだ。」
彼は先ほどの戦闘で思い出していた。
ルドルベンド、方舟、馴染まない身体、脆い装備、奴の背後に入れようとしたが発動しなかったスキル。
条件は全て揃ったようだ。
「ルーナに一つ頼みがある・・。」
「自分カラ出テクルトハ、潔イ。」
血の匂いを追ってきたルドルベンドの前に立ち塞がるミラと私。
ミラは相変わらずの重傷で私の肩を借りなければ立つこともままならない。
「諦メタ、ト言ッタホウガイイナ。」
山羊は鼻で笑う。
「馬鹿か?お前を殺しに来たんだよ。今度こそな!」
「威勢ダケハ立派ヨナ、虫。ソンナ身体デ何ガデキル。」
戦闘態勢に入る山羊を余所目にミラは曇る表情のルーナを見つめ力強く頷いた。
「俺は信じる・・俺の可能性を、ルーナの可能性を。」
肩を借りていたミラはやっとの思いで一歩前に出ると近くに落ちていた短剣を手に取り、逆手に持ち替える。
「いくぞ・・。」
「う、うん・・・。」
高々と掲げた短剣は勢いよく振り下ろされ、己の心臓部を強く抉った。
「あとは・・・任せた。」
鮮血を滝のように吹き出しながらスローモーションで崩れ落ちるミラは私に向かって微笑みかけ、弱々しいVサインを決めながら倒れ絶命した。
「自ラ命ヲ絶ツトハ、モウ少シ骨ノアルヤツダト思ッテイタガ興ザメダ。所詮虫ケラハ虫ケラデアッタカ。」
興味を失ったかのように戦闘態勢を解く山羊。
「絶対に助けるから!待っててね・・ミラ!」
うつ伏せで倒れたミラを仰向けにして、背中まで貫いた短剣を引き抜くとすぐさま詠唱に入る。
「・・偉大なる神の加護の力よ!我は我の全霊を駆使し、常世全ての奇跡を冥府を彷徨う彼に与えん!」
ルーナの周りを覆う美しい光の束。
それはやがて一つになり、一筋の光となった。
「《リバイブ》!!」
最終更新:2015年02月26日 18:04