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人を護るためのライダー - (2011/01/17 (月) 22:04:33) の最新版との変更点
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*人を護るためのライダー◆LQDxlRz1mQ
城戸真司は、仮面ライダーである。
彼に与えられた使命は、他のライダーを殺すこと。
──だが、その使命に背いていたのが彼の変身する龍騎というライダーだった。
彼の住む龍騎の世界は、時間の巻き戻りによって幾つもの戦いの歴史を繰り返していた。
今の彼が記憶する歴史は──残り6人のライダーが残り3日の死闘を繰り広げた世界である。
しかし、彼の知る情報では現状での仮面ライダーの数は、4人。自ら戦いをやめた北岡までも参加している。
そして──
「……浅倉威に東條悟。こいつは死んだはずなんだけどな……」
ゲームが始まりを告げるときに見かけた東條・浅倉の姿も、名簿に載っている二人の名前も確かに死者のものであった。
死んだはずの人間が生きているということは、やはり大ショッカーには不思議な力が備わっているということだろうか。
そうだとして、大ショッカーは何故その力を世界崩壊の阻止に使わないのか。
無数にある世界の人間たちが、阻止することはできないのか。
「止めてやる……止めてやるからな、こんな戦いも世界の崩壊も……絶対!」
龍騎のデッキを、真司は強く握り締めた。
真司はかつて、この力を殺しあうためではなく、守るために使うと決心していた。
だから、この殺し合いで誰にも死んでほしくないし、世界も崩壊させたくない。
そして、左手に握られたもう一つのデッキ──それは龍騎の知る残り5人のライダーでも、死んだライダーのものでもない謎のデッキだった。
それは一体何なのか。真司の世界には存在すらしていないデッキだった。
アビスのデッキ。契約モンスターはアビスハンマーとアビスラッシャー。
かつて龍騎が倒したモンスターだったが、モンスターは同じ種が複数存在することもある。
「これが……最後のライダーなのか? 最後のライダーは、このデッキを使って……」
現れていない最後のライダー。既に12人のライダーを見た彼が、そう誤解するのは仕方がないことだった。
龍騎、ナイト、ファム──そして最後のたった一人のライダーが、アビス。
「この事を、蓮やあいつにも伝えないと……」
秋山蓮と霧島美穂。彼らならば、きっと殺し合いをやめてくれる。
彼らは、誰よりも人間に近い心を持っているライダーなのだから。
北岡だって、今はライダーバトルをやめたのだから、きっと今回も殺し合いなんてしないだろう。
彼らに、最後のライダーの事実を伝えなければならない。
それが、今は「仲間」として互いに協力すべきライダーが共有するべき情報だ。
「そこのあなた……」
真司は、突然かけられた背後からの女性の声に振り向いた。
彼の知っている女性──霧島美穂の声とは違う。
「ほどけてるわよ」
「え?」
「靴紐」
見下ろすと、確かに靴紐がほどけていた。まるで、美穂のようなことを言うのだな……と真司は思う。
それが、こんな状況でもどこかマイペースな、しかし真司を警戒して銃を構える女性──小沢澄子との出会いだった。
△ ▽
「随分と壮絶な世界に生きていたのね……あなた」
龍騎の世界の事情を知った小沢の最初の感想は、そんな言葉だった。
当然だが、絶句する。大ショッカーははっきりと、「ライダーと敵対する怪人・組織」と言ったが、彼らの世界にそれはないのだろう。
ライダーの敵はライダーなのだから。
「お疲れ様、城戸くん……そんな世界で、よく生きてこれたわね。
それだけ強いサバイバル能力があるなら、この場でもきっと生き残ることができるわ」
「いや、俺は……」
「まずは、生きること。それが最優先よ。でなきゃ、他人を守ることだってできないじゃない」
小沢はそう諭すと、真司の背中を叩く。
どうやら、真司の周りにはいないタイプの女性のようだ。姉御肌、というやつだろうか?
真司も周りに比べれば、よく吠えがちだが、これほどエネルギッシュな女性も珍しい。
「こう見えても私だって警察なの。アンノウンに対抗する兵器だって開発してきたわ。まあ、今回の支給品は解析し難いものばかりだけど」
彼女の支給品は、コルト・パイソンと呼ばれる銃のほかに、「狙撃手」の記憶を内包したメモリと青の胸像があった。
説明書を読む限りでは、それらは真司や小沢のような人間には信じ難い能力が備わっているらしい。
唯一、小沢が理解できるのはかつて未確認生命体との戦いに使われた「コルト・パイソン」のみだ。
真司が小沢に見せた支給品も、龍騎とアビスのデッキは原理がわからず、天才的頭脳も混乱に陥ってしまう。
もう一つの支給品である不ぞろいなトランプカードならばまだ理解できるが……。
「なんでスペードのカードの一部だけ支給されてるんだ?」
「それはきっと、カードを使って戦うあなたに対する宛てつけね。
……大ショッカーはきっと、ゲーム感覚で世界の存亡と人の命を操ってる。これで確信がもてたわ」
「じゃあ、ライダーのせいで世界が滅びるっていうのは嘘!?」
「それはわからないけど、ライダーたちを惑わせるための嘘っていうのも、可能性としてゼロじゃないわね」
どちらにせよ、こういった形で「挑戦状」を寄越してきた大ショッカーがこの殺し合いを楽しんでいるのは事実だろう。
真司はそんな大ショッカーに強い怒りの感情を覚える。
「……? ところで小沢さん」
「何かしら?」
「小沢さんって、もしかしてお好み焼屋で焼肉食べたりします」
「どうして?」
「ここに来るちょっと前に──ほら、さっき話した霧島美穂と一緒にお好み焼屋に行ったら、小沢さんに似た人に青海苔ぶつけちゃって」
「安心して。それは私じゃないわ。……ただ、やっぱりあなたって面白い人ね」
氷川誠のような男だ──そう、小沢は思った。
靴紐さえまともに結べず、お好み焼屋に行けば他の客に青海苔をぶつける。そんな不器用さ。
そして、こうして大ショッカーに立ち向かおうとする勇気と正義感は確かに氷川に近いものがある。
「──となると、美穂さんって人も将来大変ね」
「え?」
「なんでもないわ」
氷川という男を可愛いく思いつつも、彼が恋人に向かないタイプだというのは、小沢も熟知していた。
△ ▽
「お。早速見つけたぞ、他の参加者」
G-4エリアに向かったヒビキは、早速二人の参加者を遠目に発見していた。
仮面ライダーの中でも、龍騎の世界とは違って「護りし者」という括りのなされた響鬼の世界の住人は、他者を護るために動くのが目的である。
ヒビキは先ほど、津上翔一という参加者と出会い、その決意を確かなものにしたばかりだ。
「まあ、良い意味でのカモってわけか。仕事だもんな」
報酬は受け取らないものの、「お得意様」になってもらうべく、ヒビキは軽快に動き始めた。
二人一組というのは、同じ世界で協力したのだろうか。できればああして一緒にいるのが違う世界の人間であったほうが、色々とやりやすいものだが。
「おい、お二人さん!」
ヒビキはなれなれしくも、そう声をかける。
当然だが、返ってきたのは怪訝そうな表情であった。
「お互い厄介な事に巻き込まれたね」
「……あなたは?」
「俺はヒビキ。名簿には日高仁志で載ってるけど、そっちのほうが慣れてるからヒビキって呼んでくれ」
胡散臭い上に、怪しい男・ヒビキに、二人──小沢と真司は警戒を隠せない。
それだけでなく、日高仁志という名前とヒビキのあだ名の接点が見当たらないのだ。
馴れ馴れしい口調といい、どうもこの男のペースには順応できない。
そんなヒビキに、こちらが警戒しているという合図の意味で小沢はコルト・パイソンを向けた。
「ちょっと……やめろよ小沢さん!」
真司の制止を無視して、小沢はコルト・パイソンの銃口をヒビキに向け続けた。
そういえば、真司との出会いの瞬間もこれを向けていた。流石に、警戒心という武器は捨てきれないらしい。
「あ。ひどいな。同じ仮面ライダー仲間だろ?」
「残念だけど私は違うの。彼はそうみたいだけど」
「ほら、やっぱり同じライダーだ。なら話がしたいんだよ」
「小沢さん、話くらいさせてくれよ!」
小沢は銃を降ろすも、その右手は銃を握ったまま離さない。
咄嗟にヒビキに攻撃ができるようにはしてあるのだ。
「……俺はこれでも、人間を護るっていう使命を持ってるんだよ。だから、他のライダーにもその使命を受け取ってもらおうと思って」
「はい。それなら、俺も同じ考えです。俺だって、ライダーの力を誰かの為に使いたいから」
「お。やっぱりライダーはみんな良い心がけしてるから話が早いなぁ。
今から12時間後──まあ、ド深夜だけど夜の12時に、E-4エリアの病院の屋上に来て欲しいんだ。俺が来てなくても、津上ってやつがいると思うから」
ツガミ──その響きを、真司は知っていた。
どこかで聞いたからだ。──そう、小沢から聞いた名前だった。
真司は小沢の方を向いて、顔色を確かめる。小沢はこちらを向いて、頷いた。
「……津上翔一、でしょ? 私の知り合いよ」
「え? 小沢さん、津上と知り合いだったの?」
「ええ。あの津上くんに間違いなさそうね。彼がどこに行ったか知らない?」
「津上ならE-2に向かったはずだよ。そうだな……今頃、E-2で助けるべき人を探してるはずだから、行ってやったらあいつも喜ぶと思うよ」
「じゃあ、ヒビキさん、小沢さん、俺と一緒に行きましょう!」
真司はそう提案する。が、そう言った真司の屈託のない笑顔を破壊するかのように、駆ける足音が耳を通ってきた。
一体、その足音の主はなぜ走っているのか──。そういう疑問と、不安がヒビキたちの中を駆け巡る。
「近くに誰かいるみたいだな」
「それも、俺たちの望む形じゃなさそうだ。何か物騒な奴から逃げてるんじゃないかな」
「なら、助けに行かなきゃ……」
と、龍騎のデッキを構えた真司が走り出そうとする。
──が、ヒビキがそれを制止した。
「お前は、小沢さんと一緒に津上のところに行ってこい」
「え……? でも、大丈夫かよ、ヒビキさん」
「大丈夫大丈夫。鍛えてますから」
「それならいいけど……」
「うん。じゃあな──また、後で」
そう言ったヒビキはもう走り出していた。
「行きましょう、城戸くん」
「……はい」
橋を抜けようというヒビキに背を向けて、二人は走り出した。
△ ▽
「なんだ、じゃあ逃げ切った後だったわけか」
と、ヒビキは目の前の男二人──海堂直也と小野寺ユウスケに言った。
同じように駆け足で出会った三人だったが、海堂と違ってヒビキはほぼ息切れというものをしていない。
「津上と一緒にこっちに来てれば、もう仲間が五人もできてたんだけど」
ヒビキは最初に津上翔一と別れたことを多少後悔していた。
彼と一緒にこちらのエリアに来ていれば、ヒビキは五人の仲間と協力することができたのだ。
それが惜しい事実だったのは確かだろう。
「どうだ? 落ち着いたか? 二人とも」
「……はぁ……はぁ……おっさん、なんでそんなに元気なんだよ。ちゅーか、なんで汗一つかいてないだろ……」
「鍛えてますから。それに、こう見えても俺、仮面ライダーだから」
「……仮面ライダー? 名前は?」
とユウスケが反応する。
「ヒビキです」
「仮面ライダー響鬼……魔化魍と戦ってた音激戦士だ」
「……ん? 俺のこと知ってたのか?」
「……あなたの知ってること……そして、あなたが出会った残り三人の参加者のこと、聞かせてもらえませんか?
俺も、知ってることは包み隠さず話しますから」
彼らはそれぞれ、話すに充分なほど『仮面ライダー』と出会ってきた戦士であった。
【一日目 日中】
【G-4 草原】
【日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】本編第41話終了後
【状態】健康
【装備】変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、着替え(残り2着)
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー
2:殺し合いはさせない
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
4:俺がしっかりしないと……
5:ユウスケ、海堂の話を聞く
【備考】
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。
※アギトの世界についての基本的な情報を得ました。アギト世界での『第四号』関連の情報を得ました。
【海堂直也@仮面ライダー555】
【時間軸】最終話 アークオルフェノク撃破後
【状態】疲労(小)、 スネークオルフェノクに一時間変身不可
【装備】スマートバックル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式、不明支給品×2
【思考・状況】
1:ヒビキ、ユウスケとの情報交換
【備考】
※デイバッグの中はまだきちんと調べていません。
【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(中) クウガに一時間変身不可
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品×3
【思考・状況】
1:海堂直也は信じてもいいのか?
2:殺し合いには絶対に乗らない
3:まずはヒビキに出会ってきた参加者のことを聞く
【備考】
※デイバッグの中身はまだ確認していません。
【一日目 日中】
【G-2 橋】
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】健康
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、アビスのデッキ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、ラウズカード(スペードの7,8,10~K)@仮面ライダー剣
【思考・状況】
1:小沢と一緒に津上翔一に会いに行く
2:ヒビキが心配
3:絶対に戦いを止める
4:蓮、霧島、北岡にアビスのことを伝える
5:大ショッカーは許せない
【備考】
※支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界について認識しました。
【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤
【状態】健康
【装備】コルト・パイソン+神経断裂弾@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
1:真司と一緒に津上翔一に会いに行く
2:殺し合いには乗らない
3:打倒大ショッカー
【備考】
※真司の支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
【共通備考】
※1日目0時、E-4エリアの病院屋上で合流する予定です(ユウスケ、海堂にはまだ話していません)
|022:[[代償]]|投下順|024:[[Sへの想い/踊る緑の怪人]]|
|022:[[代償]]|時系列順|024:[[Sへの想い/踊る緑の怪人]]|
|014:[[二人の船出]]|[[日高仁志]]|049:[[メモリと勘違いと呪い]]|
|011:[[その力、誰の為に]]|[[海堂直也]]|049:[[メモリと勘違いと呪い]]|
|011:[[その力、誰の為に]]|[[小野寺ユウスケ]]|049:[[メモリと勘違いと呪い]]|
|&color(cyan){GAME START}|[[城戸真司]]048:|[[嘆きの龍騎]]|
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*人を護るためのライダー◆LQDxlRz1mQ
城戸真司は、仮面ライダーである。
彼に与えられた使命は、他のライダーを殺すこと。
──だが、その使命に背いていたのが彼の変身する龍騎というライダーだった。
彼の住む龍騎の世界は、時間の巻き戻りによって幾つもの戦いの歴史を繰り返していた。
今の彼が記憶する歴史は──残り6人のライダーが残り3日の死闘を繰り広げた世界である。
しかし、彼の知る情報では現状での仮面ライダーの数は、4人。自ら戦いをやめた北岡までも参加している。
そして──
「……浅倉威に東條悟。こいつは死んだはずなんだけどな……」
ゲームが始まりを告げるときに見かけた東條・浅倉の姿も、名簿に載っている二人の名前も確かに死者のものであった。
死んだはずの人間が生きているということは、やはり大ショッカーには不思議な力が備わっているということだろうか。
そうだとして、大ショッカーは何故その力を世界崩壊の阻止に使わないのか。
無数にある世界の人間たちが、阻止することはできないのか。
「止めてやる……止めてやるからな、こんな戦いも世界の崩壊も……絶対!」
龍騎のデッキを、真司は強く握り締めた。
真司はかつて、この力を殺しあうためではなく、守るために使うと決心していた。
だから、この殺し合いで誰にも死んでほしくないし、世界も崩壊させたくない。
そして、左手に握られたもう一つのデッキ──それは龍騎の知る残り5人のライダーでも、死んだライダーのものでもない謎のデッキだった。
それは一体何なのか。真司の世界には存在すらしていないデッキだった。
アビスのデッキ。契約モンスターはアビスハンマーとアビスラッシャー。
かつて龍騎が倒したモンスターだったが、モンスターは同じ種が複数存在することもある。
「これが……最後のライダーなのか? 最後のライダーは、このデッキを使って……」
現れていない最後のライダー。既に12人のライダーを見た彼が、そう誤解するのは仕方がないことだった。
龍騎、ナイト、ファム──そして最後のたった一人のライダーが、アビス。
「この事を、蓮やあいつにも伝えないと……」
秋山蓮と霧島美穂。彼らならば、きっと殺し合いをやめてくれる。
彼らは、誰よりも人間に近い心を持っているライダーなのだから。
北岡だって、今はライダーバトルをやめたのだから、きっと今回も殺し合いなんてしないだろう。
彼らに、最後のライダーの事実を伝えなければならない。
それが、今は「仲間」として互いに協力すべきライダーが共有するべき情報だ。
「そこのあなた……」
真司は、突然かけられた背後からの女性の声に振り向いた。
彼の知っている女性──霧島美穂の声とは違う。
「ほどけてるわよ」
「え?」
「靴紐」
見下ろすと、確かに靴紐がほどけていた。まるで、美穂のようなことを言うのだな……と真司は思う。
それが、こんな状況でもどこかマイペースな、しかし真司を警戒して銃を構える女性──小沢澄子との出会いだった。
△ ▽
「随分と壮絶な世界に生きていたのね……あなた」
龍騎の世界の事情を知った小沢の最初の感想は、そんな言葉だった。
当然だが、絶句する。大ショッカーははっきりと、「ライダーと敵対する怪人・組織」と言ったが、彼らの世界にそれはないのだろう。
ライダーの敵はライダーなのだから。
「お疲れ様、城戸くん……そんな世界で、よく生きてこれたわね。
それだけ強いサバイバル能力があるなら、この場でもきっと生き残ることができるわ」
「いや、俺は……」
「まずは、生きること。それが最優先よ。でなきゃ、他人を守ることだってできないじゃない」
小沢はそう諭すと、真司の背中を叩く。
どうやら、真司の周りにはいないタイプの女性のようだ。姉御肌、というやつだろうか?
真司も周りに比べれば、よく吠えがちだが、これほどエネルギッシュな女性も珍しい。
「こう見えても私だって警察なの。アンノウンに対抗する兵器だって開発してきたわ。まあ、今回の支給品は解析し難いものばかりだけど」
彼女の支給品は、コルト・パイソンと呼ばれる銃のほかに、「狙撃手」の記憶を内包したメモリと青の胸像があった。
説明書を読む限りでは、それらは真司や小沢のような人間には信じ難い能力が備わっているらしい。
唯一、小沢が理解できるのはかつて未確認生命体との戦いに使われた「コルト・パイソン」のみだ。
真司が小沢に見せた支給品も、龍騎とアビスのデッキは原理がわからず、天才的頭脳も混乱に陥ってしまう。
もう一つの支給品である不ぞろいなトランプカードならばまだ理解できるが……。
「なんでスペードのカードの一部だけ支給されてるんだ?」
「それはきっと、カードを使って戦うあなたに対する宛てつけね。
……大ショッカーはきっと、ゲーム感覚で世界の存亡と人の命を操ってる。これで確信がもてたわ」
「じゃあ、ライダーのせいで世界が滅びるっていうのは嘘!?」
「それはわからないけど、ライダーたちを惑わせるための嘘っていうのも、可能性としてゼロじゃないわね」
どちらにせよ、こういった形で「挑戦状」を寄越してきた大ショッカーがこの殺し合いを楽しんでいるのは事実だろう。
真司はそんな大ショッカーに強い怒りの感情を覚える。
「……? ところで小沢さん」
「何かしら?」
「小沢さんって、もしかしてお好み焼屋で焼肉食べたりします」
「どうして?」
「ここに来るちょっと前に──ほら、さっき話した霧島美穂と一緒にお好み焼屋に行ったら、小沢さんに似た人に青海苔ぶつけちゃって」
「安心して。それは私じゃないわ。……ただ、やっぱりあなたって面白い人ね」
氷川誠のような男だ──そう、小沢は思った。
靴紐さえまともに結べず、お好み焼屋に行けば他の客に青海苔をぶつける。そんな不器用さ。
そして、こうして大ショッカーに立ち向かおうとする勇気と正義感は確かに氷川に近いものがある。
「──となると、美穂さんって人も将来大変ね」
「え?」
「なんでもないわ」
氷川という男を可愛いく思いつつも、彼が恋人に向かないタイプだというのは、小沢も熟知していた。
△ ▽
「お。早速見つけたぞ、他の参加者」
G-4エリアに向かったヒビキは、早速二人の参加者を遠目に発見していた。
仮面ライダーの中でも、龍騎の世界とは違って「護りし者」という括りのなされた響鬼の世界の住人は、他者を護るために動くのが目的である。
ヒビキは先ほど、津上翔一という参加者と出会い、その決意を確かなものにしたばかりだ。
「まあ、良い意味でのカモってわけか。仕事だもんな」
報酬は受け取らないものの、「お得意様」になってもらうべく、ヒビキは軽快に動き始めた。
二人一組というのは、同じ世界で協力したのだろうか。できればああして一緒にいるのが違う世界の人間であったほうが、色々とやりやすいものだが。
「おい、お二人さん!」
ヒビキはなれなれしくも、そう声をかける。
当然だが、返ってきたのは怪訝そうな表情であった。
「お互い厄介な事に巻き込まれたね」
「……あなたは?」
「俺はヒビキ。名簿には日高仁志で載ってるけど、そっちのほうが慣れてるからヒビキって呼んでくれ」
胡散臭い上に、怪しい男・ヒビキに、二人──小沢と真司は警戒を隠せない。
それだけでなく、日高仁志という名前とヒビキのあだ名の接点が見当たらないのだ。
馴れ馴れしい口調といい、どうもこの男のペースには順応できない。
そんなヒビキに、こちらが警戒しているという合図の意味で小沢はコルト・パイソンを向けた。
「ちょっと……やめろよ小沢さん!」
真司の制止を無視して、小沢はコルト・パイソンの銃口をヒビキに向け続けた。
そういえば、真司との出会いの瞬間もこれを向けていた。流石に、警戒心という武器は捨てきれないらしい。
「あ。ひどいな。同じ仮面ライダー仲間だろ?」
「残念だけど私は違うの。彼はそうみたいだけど」
「ほら、やっぱり同じライダーだ。なら話がしたいんだよ」
「小沢さん、話くらいさせてくれよ!」
小沢は銃を降ろすも、その右手は銃を握ったまま離さない。
咄嗟にヒビキに攻撃ができるようにはしてあるのだ。
「……俺はこれでも、人間を護るっていう使命を持ってるんだよ。だから、他のライダーにもその使命を受け取ってもらおうと思って」
「はい。それなら、俺も同じ考えです。俺だって、ライダーの力を誰かの為に使いたいから」
「お。やっぱりライダーはみんな良い心がけしてるから話が早いなぁ。
今から12時間後──まあ、ド深夜だけど夜の12時に、E-4エリアの病院の屋上に来て欲しいんだ。俺が来てなくても、津上ってやつがいると思うから」
ツガミ──その響きを、真司は知っていた。
どこかで聞いたからだ。──そう、小沢から聞いた名前だった。
真司は小沢の方を向いて、顔色を確かめる。小沢はこちらを向いて、頷いた。
「……津上翔一、でしょ? 私の知り合いよ」
「え? 小沢さん、津上と知り合いだったの?」
「ええ。あの津上くんに間違いなさそうね。彼がどこに行ったか知らない?」
「津上ならE-2に向かったはずだよ。そうだな……今頃、E-2で助けるべき人を探してるはずだから、行ってやったらあいつも喜ぶと思うよ」
「じゃあ、ヒビキさん、小沢さん、俺と一緒に行きましょう!」
真司はそう提案する。が、そう言った真司の屈託のない笑顔を破壊するかのように、駆ける足音が耳を通ってきた。
一体、その足音の主はなぜ走っているのか──。そういう疑問と、不安がヒビキたちの中を駆け巡る。
「近くに誰かいるみたいだな」
「それも、俺たちの望む形じゃなさそうだ。何か物騒な奴から逃げてるんじゃないかな」
「なら、助けに行かなきゃ……」
と、龍騎のデッキを構えた真司が走り出そうとする。
──が、ヒビキがそれを制止した。
「お前は、小沢さんと一緒に津上のところに行ってこい」
「え……? でも、大丈夫かよ、ヒビキさん」
「大丈夫大丈夫。鍛えてますから」
「それならいいけど……」
「うん。じゃあな──また、後で」
そう言ったヒビキはもう走り出していた。
「行きましょう、城戸くん」
「……はい」
橋を抜けようというヒビキに背を向けて、二人は走り出した。
△ ▽
「なんだ、じゃあ逃げ切った後だったわけか」
と、ヒビキは目の前の男二人──海堂直也と小野寺ユウスケに言った。
同じように駆け足で出会った三人だったが、海堂と違ってヒビキはほぼ息切れというものをしていない。
「津上と一緒にこっちに来てれば、もう仲間が五人もできてたんだけど」
ヒビキは最初に津上翔一と別れたことを多少後悔していた。
彼と一緒にこちらのエリアに来ていれば、ヒビキは五人の仲間と協力することができたのだ。
それが惜しい事実だったのは確かだろう。
「どうだ? 落ち着いたか? 二人とも」
「……はぁ……はぁ……おっさん、なんでそんなに元気なんだよ。ちゅーか、なんで汗一つかいてないんだよ……」
「鍛えてますから。それに、こう見えても俺、仮面ライダーだから」
「……仮面ライダー? 名前は?」
とユウスケが反応する。
「ヒビキです」
「仮面ライダー響鬼……魔化魍と戦ってた音撃戦士だ」
「……ん? 俺のこと知ってたのか?」
「……あなたの知ってること……そして、あなたが出会った残り三人の参加者のこと、聞かせてもらえませんか?
俺も、知ってることは包み隠さず話しますから」
彼らはそれぞれ、話すに充分なほど『仮面ライダー』と出会ってきた戦士であった。
【一日目 日中】
【G-4 草原】
【日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】本編第41話終了後
【状態】健康
【装備】変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、着替え(残り2着)
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー
2:殺し合いはさせない
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
4:俺がしっかりしないと……
5:ユウスケ、海堂の話を聞く
【備考】
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。
※アギトの世界についての基本的な情報を得ました。アギト世界での『第四号』関連の情報を得ました。
【海堂直也@仮面ライダー555】
【時間軸】最終話 アークオルフェノク撃破後
【状態】疲労(小)、 スネークオルフェノクに一時間変身不可
【装備】スマートバックル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式、不明支給品×2
【思考・状況】
1:ヒビキ、ユウスケとの情報交換
【備考】
※デイバッグの中はまだきちんと調べていません。
【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(中) クウガに一時間変身不可
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品×3
【思考・状況】
1:海堂直也は信じてもいいのか?
2:殺し合いには絶対に乗らない
3:まずはヒビキに出会ってきた参加者のことを聞く
【備考】
※デイバッグの中身はまだ確認していません。
【一日目 日中】
【G-2 橋】
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】健康
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、アビスのデッキ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、ラウズカード(スペードの7,8,10~K)@仮面ライダー剣
【思考・状況】
1:小沢と一緒に津上翔一に会いに行く
2:ヒビキが心配
3:絶対に戦いを止める
4:蓮、霧島、北岡にアビスのことを伝える
5:大ショッカーは許せない
【備考】
※支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界について認識しました。
【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤
【状態】健康
【装備】コルト・パイソン+神経断裂弾@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
1:真司と一緒に津上翔一に会いに行く
2:殺し合いには乗らない
3:打倒大ショッカー
【備考】
※真司の支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
【共通備考】
※1日目0時、E-4エリアの病院屋上で合流する予定です(ユウスケ、海堂にはまだ話していません)
|022:[[代償]]|投下順|024:[[Sへの想い/踊る緑の怪人]]|
|022:[[代償]]|時系列順|024:[[Sへの想い/踊る緑の怪人]]|
|014:[[二人の船出]]|[[日高仁志]]|049:[[メモリと勘違いと呪い]]|
|011:[[その力、誰の為に]]|[[海堂直也]]|049:[[メモリと勘違いと呪い]]|
|011:[[その力、誰の為に]]|[[小野寺ユウスケ]]|049:[[メモリと勘違いと呪い]]|
|&color(cyan){GAME START}|[[城戸真司]]|048:[[嘆きの龍騎]]|
|&color(cyan){GAME START}|[[小沢澄子]]|048:[[嘆きの龍騎]]|
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