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ふたりのP/団結」を以下のとおり復元します。
*ふたりのP/団結 ◆LQDxlRz1mQ



 重そうなロングコートが、喫茶店のカウンター椅子にかけられたまま地面に向かってだれている。 
 その椅子には、それなりに顔立ちの良い……そして、殺し合いの場にしては比較的落ち着いた──しかし、険しい表情を崩さない男が座っている。 


(仮面ライダーか……) 


 警視庁の刑事・一条薫はその聞き覚えのない単語を脳内で反芻させていた。 
 異形の戦士、仮面ライダー。彼の生きる「クウガの世界」においてその単語が使われることはない。 
 クウガであっても、敵のグロンギであっても「未確認生命体」という名前で通っていたからだ。 

 この殺し合いの説明で、「仮面ライダー」について具体的な説明を受けることはなかった。確かにスクリーンにクウガが映ることもあったが、その瞬間に映ったのはクウガだけではない。クウガが怪人と戦う姿だ。 
 それが意味するもの──それが「クウガ」なのか、「グロンギ」なのか、それともその両方なのか──。 
 一条薫は、それについて知る由もない。 
 スクリーンに映った者たちに共通しているのは、全て異形であること。どちらが主催者の言う「ライダーと敵対する組織、怪人」であるかもわからない。 
 彼にとっての身近な組織は「警察」だ。だから、それと敵対する「仮面ライダー」とはグロンギのことかもしれない。 
 逆に彼にとっての身近な怪人は「グロンギ」だ。だから、それと敵対する「仮面ライダー」とはクウガのことともいえる。 

 今はそんな事を考えている場合ではないかもしれないが、一条はこの殺し合いの原因となっている存在に興味があった。いや、知らなければならないのかもしれない。 
 何故、人と人が殺しあわなければならないのか。──それだけの理由となる存在に。 


(……いや、それなら彼が殺し合いの原因であるはずがないな) 


 ──五代雄介。 
 その男の笑顔が彼の脳裏に浮かび上がった。 
 彼こそが仮面ライダークウガなのだが、一条にとって彼は「殺し合いの原因」、「世界を破壊する存在」であってはならない。 
 それだけ信用に足る友人であり、誰よりも「そんな存在」であることを望まない男なのだから。 


(しかし、五代や警察も結局危険因子には違いないと言っていたな。未確認生命体に対抗するためのクウガの進化や武器の強化も世界の破壊に繋がるということか……) 


 それに関して、一条は「仕方がないことだった」という言葉でしか片付けることはできない。 
 言葉で和解できる相手ならば、五代も一条も苦労することはなかった。 
 責任転嫁に聞こえるかもしれないが、彼らにとってグロンギは道徳に逆らう狂気の集団以上の何物でもない。 

それに対抗するために新しい力を得たクウガやゴウラムは世界の法則を乱すほどのオーバーテクノロジーだったのだろうか。 
 ならば、やはりそのために力を尽くした警察は何らかの形で責任を取るべきだろう。いや、何億・何兆──そんな言葉ではすまないほどの犠牲者が出るというなら、責任というものでは済まない。 
 大ショッカーの望む「責任の取り方」は「ライダーのいる世界を消滅される」という行動なのだろう。 


(……無論、そのために死ぬ気も、人を相手にこんなものを使用するつもりもないがな……) 


 一条の手に握られているのは、AK-47──別名を「カラシニコフ」という銃である。 
 普段使っている拳銃と違い、アサルトライフルの銃身はとても大きい。 
 使い慣れないとはいえ、訓練をしていないわけではない。実践で使ったこともあるのだ。おそらく、一般人よりずっと射撃能力は高い。 
 殺し合いに乗るならば、それは大きなアドバンテージとなるだろう。──先述の思考通り、一条がそんなものを人に向けて撃つつもりはないが。 


(ん? 特殊弾付きか) 


 カラシニコフに対応した「対オルフェノク用スパイラル弾」という特殊な銃弾も共に付属している。 
 グロンギに有効な「神経断裂弾」のようなものだろう。 
 その世界における「仮面ライダー」はオルフェノクと呼ばれるのだろうか。或いは、「仮面ライダー」の敵か。もう少しわかりやすい説明が欲しいところである。 
 とにかく、こういった兵器を作るとしたら自衛隊か警察だ。グロンギのような存在が作るとは思えない。「オルフェノク」は人類の敵である可能性が高いと頭に入れておこう。  


(他の支給品はいまいち用途がわからないな……この鍵は車の鍵のようだが) 


 形状を見るに車の鍵らしき支給品。車持ちの参加者は物事を有利に持っていけそうだが、この広い会場の中からたった一つの車を見つけて鍵を開けろというのは酷な話だ。使い物にならない支給品だと考えた方が良い。 
 もう一つの支給品が、ボタンで作られた腕飾り(?)である。 
 取れた服のボタンを一つの糸で通したのか、様々な種類のボタンが一つの糸に通されている。 
 用途も、これを渡した意図さえも掴めない。大ショッカーと呼ばれる集団は、一体どういう思惑を持ってこれをカバンの中に詰めたのか。 

 いずれにせよ、一条も死にたくは無い。 
 まして、相手は「仮面ライダー」と呼ばれる異形の戦士。この道具を駆使して戦うには、「鍵の対応した車」を探しておいたほうが死亡率は減りやすい。車自体が防御にも攻撃にもなりうる道具だからだ。 
 このまま、自動小銃のみというのは心細すぎるだろう。何せ、相手が相手なのだから。 


(危険だが、外に出る必要があるか……。まあ、この場所の安全も保障されたものではないが) 


 支給品を見る限り、ここは逆に不利な地形かもしれない。 
 カラシニコフを使うには狭すぎるし、素手でも人を殺せる者を相手に接近戦など自殺行為だ。 
 敵がいつ出てくるかもわからない。 
 今にも、ドアから、窓から、敵が出てくるかもしれない。 


 キィィィィ。 


 そのときであった。 
 一条が情報を整えていたその建物に木のドアを開ける音が聞こえたのは。 
 「人間を含む動物には一種の予知能力があり、あまり余計なことを考えているとそれは現実になりかねない」……というどこかで聞いた仮定が一条の脳裏をよぎった。 
 一条はそれを開けた主の顔が見える前に、微かな恐怖心で強くカラシニコフを握る。 

 もしかすれば、このまま死ぬ。 
 それを回避するにはどうすればいいか。 
 それが「オルフェノク」という仮面ライダーならば撃てばこの場を凌げる。 
 違う仮面ライダーなら、窓や二階のベランダなど逃げ場を捜せばいい。 
 もし五代だったら……そのときは純粋に運が良かったのだろう。 
 ドアが完全に開くまでの僅かな間がスローモーションであるかのように、様々な対処法が頭を流れていく。 


 ……が、ドアが完全に開いた時にそういった警戒心は薄れていった。 
 派手にも真っ赤な革のスーツを着こなした男性がそこに立っている。 
 怪人ではない。おそらく、仮面ライダーでもない。 


(いや、しかし安心はできないな。普段グロンギは人間の姿をしているんだ……) 


 同じように、「仮面ライダー」なる存在が人から怪人に変わる存在であったら。 
 目の前にいる彼がその一人とも限らない。 


「……君、名を名乗れ」 


 一条はカラシニコフを両手から離せなかった。未確認生命体と戦ってきたからわかる。 
 死は、残虐だ。そうでありたいと思うほど、安らかなものではない。 
 もし違ったならば失礼だとはわかりながらも、それを放すことはできなかった。 


「照井竜。警察だ」 


 男はあまり向けられた銃口に動揺せず、一切表情を変えずに警察手帳を差し出す。 
 一条は彼が警察であったことに安堵し、カラシニコフの銃身を降ろす。 
 敵が特異な存在でなく、自分に近い存在だったのが安心感を引き立てたのだろう。 


「なんだ、警察でしたか……なら話が早い。自分も警察の者です。名前は一条薫、警視庁未確認生命体合同捜査本部所属です」 

「階級は?」 

「警部補です。……失礼ですが、あなたは……?」 

「俺に質問するな。手帳を見ればわかるだろう」 


 彼の手帳に記された階級は「警視」。 
 一条の「警部補」の上に「警部」があり、「警視」はその上である。 
 つまり、彼は一条の上司ということになる。 


「その若さで警視とは思いもよりませんでした……知らぬこととはいえ、無礼をお許しください」 


 一条も充分エリートコースを進んできたが、一条よりも若年で警視を取るというのは非常に珍しい例である。 
 警察学校を卒業していたとしても、これだけ早く警視になるということは困難なことだ。 


「いや、この場ではあまり上下関係を気にしないほうがいい。変にストレスを溜め込んで暴走されても困るからな 
 ……ところで、その未確認生命体合同捜査本部というのは何だ? UMAの捜査でもする気か?」 

「我々の世界での……いわゆる『仮面ライダー』を倒すために警察が作った組織です。……どうやら、この場では私とあなたは敵のようだ」 

「待て。お前たちの世界では『仮面ライダー』と警察は敵なのか?」 

「ええ。……あなたの世界では違うんですか?」 

「俺に質問するなと言った。……が、良い質問だ。詳しくは答えられないが、『仮面ライダー』は我々の世界では街を守るヒーローとされている」

 照井は自分自身も仮面ライダーアクセルである、という事実を隠す。 
 一条が仮面ライダーを敵視しているなら、迂闊な発言はするものではない。 
 ましてや、この殺し合いの原因が仮面ライダーなのだと、あらぬ話を公言されてしまった状況だ。 
 現状で「仮面ライダー」であると言ってしまえば……一条の警戒は強くなる。 


「とりあえず、互いの世界に関して情報を交換しておこう。警察内の機密も包み隠さず話せ。……この場限り、俺への質問を許可する」 

「その言葉を待っていましたよ。質問できなければ、私の持つ情報は少なすぎる」 

「ただし、それ以外の場では俺に質問するな」 

「……了解です。必要な話はここでしておきましょう」 


 同じように警察の子に生まれ、警察として育ったふたり。 
 住む世界も、階級も、境遇も違う彼らのゴールは希望か、絶望か──。 


【1日目 昼】 
【D-2 街/喫茶店】 


【一条薫@仮面ライダークウガ】 
【時間軸】第46話 未確認生命体第46号(ゴ・ガドル・バ)撃破後 
【状態】健康 
【装備】AK-47 カラシニコフ(対オルフェノク用スパイラル弾入り)@仮面ライダー555 
【道具】支給品一式、名護のボタンコレクション@仮面ライダーキバ、車の鍵@??? 
【思考・状況】 
1:照井と互いの世界の情報交換をする。 
2:情報交換を終えたら、外へ出て鍵に合う車を探す。 
3:『仮面ライダー』には気をつける。一般人は他世界の人間であっても危害は加えない。 
4:五代と合流したい。 
5:未確認への対抗が世界を破壊に導いてしまった……? 
【備考】 
※ 『仮面ライダー』はグロンギのような存在のことだと誤認しています。 
※ 『オルフェノク』は『ある世界の仮面ライダー≒グロンギのような存在』だと思っています。 
※ 対オルフェノク用のスパイラル弾はオルフェノクにほぼ効きませんが、有効なものであると勘違いしいています。 


【照井竜@仮面ライダーW】 
【時間軸】第20話終了あたり(初登場ごろ) 
【状態】健康 
【装備】アクセルドライバー&アクセルメモリ@仮面ライダーW 
【道具】支給品一式、不明支給品 
【思考・状況】 
1:一条と互いの世界の情報交換をする。 
2:この時間以外は俺に質問するな。 
3:『仮面ライダー』が敵……? 
【備考】 
※ 参戦時期が早いため、復讐心や他人に対する態度は安定していません。 


|000:[[オープニング]]|投下順|002:[[My name is]]|
|000:[[オープニング]]|時系列順|002:[[My name is]]|
|&color(cyan){GAME START}|[[一条薫]]|044:[[Rの定義/心に響く声]]|
|&color(cyan){GAME START}|[[照井竜]]|044:[[Rの定義/心に響く声]]|

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