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綺想曲♭もう一人のカブトと音也 - (2011/01/24 (月) 01:17:32) のソース

*綺想曲♭もう一人のカブトと音也 ◆7pf62HiyTE



The First Movement "Decade"



『ブレイドの……仮面ライダーの力で……みんなを護ってくれ……』



 そう言い残し事切れた仮面ライダーブレイド剣崎一真の遺体は病室のベッドに安置されている。
 その傍で仮面ライダーディケイド門矢士が身体を休めていた。その手には剣崎から託されたブレイバックルが握られている。
 E-4に位置する病院にて14時を回る直前から始まった激闘は約20分の時を経て終わりを迎え、病院は漸く元の静寂を取り戻していた。
 士は剣崎に言われるまでもなく仮面ライダーの力で皆を守るつもりだ。そしてすぐにでも別れた北條透の元に戻りたかった。
 しかし、殺し合いが始まって数分のタイミングで戦った牙王との戦いで受けたダメージ、更に先程戦ったダークカブト戦での疲労は決して無視出来るレベルではない。
 故に士はもう暫くこの場で身を休める事にしたのだ。



 だが、結論から言えば士の判断は間違いだったとしか言いようがない。
 士が到着した時にはダークカブトと剣崎だけだった為知り得ない話だが実は到着する前には他に3人の参加者がいたのだ。
 剣崎が命を懸けたお陰で3人は離脱する事が出来、士と入れ違いになる形で北條と合流していた。
 だが、その内の1人で士の仲間である光夏海が同じく3人の内の1人の東條悟によって殺されていた。
 IFの話に意味など無いが、ダークカブト戦後すぐにでも北條の所に戻れば夏海を助ける事が出来たかもしれなかっただろう。
 その残酷な事実を士は知らない――



 閑話休題、身体を休める傍ら士には気になる事があった。
 それは剣崎についてだ。
 ちなみに病室に運んだ時には、先の戦闘で剣崎が仮面ライダーガタックに変身した際に巻いていたベルトはガタックゼクター共々何処かへと消えていた。もっとも、士は別段その事をあまり気にしてはいない。
 さて、士にとって剣崎は決して知らない人物ではない。かつて剣崎は世界崩壊を防ぐ為に破壊者である自分を紅渡、そして仲間の仮面ライダーと共に排除しようとしていた。
 それについて思う事が無いではないがこの際それは考えない。重要な事は――



「あの時のアイツと何処か違う気がしたが――どういう事だ?」



 破壊者である自分を知っていた事については別に不思議はない。むしろ問題は自分の素性を知っているにも関わらず自分と友好的だった事だ。
 士の手元にはディケイドをコンプリートフォームに強化するツールケータッチがある。これも先程剣崎から託されたものだ。
 だが、仮にあの時の剣崎と同じであればディケイドを強化するツールの存在を許すわけなど無いだろう。そうしなかった事が不思議だったのだ。
 既に剣崎は物言わぬ骸となっている。故に彼の真意を確かめる事は最早不可能だ――だが、



「いや、真意がどうあれ一真が人々を守ろうとする仮面ライダーである事に変わりはない……」



 そう、剣崎の願いが人々を世界を守る事に違いはない。ならば自分のすべき事はその願いに応える事だろう。



 その一方、ダークカブトとケータッチについてそれに関係するもう1つ気になる事を思い出した。
 そもそもの話、ケータッチを手に入れたのは9つの世界を訪れた後に訪れたある世界だ。
 その世界は夏海の世界の裏の世界、写真にポジとネガがある事に例えられネガの世界と呼ばれていた。
 ネガの世界では人間が生きる事は許されずダークライダーによって怪人達が管理されていた。
 そしてネガの世界にある大切な宝物がケータッチだったのだ。 

 さて、先程ダークライダーについて触れたがその中にカブトのダーク版というべきダークカブトがいた。
 だが、重要なのはダークカブトそのものではない。
 キバのダーク版というべきダークキバに変身しダークカブトを含めた3人のダークライダーと共に士を試し立ち塞がってきたネガの世界の管理者がいたのだ。その男の名は――



「紅音也……」



 奇しくも音也は士達を旅へと導き、士を排除する時にはキバへと変身した渡と同じ姓を持っていた。
 キバに変身する渡、ダークキバに変身した音也、どちらもキバに変身した紅の性を持つ男だ。両者が関係者である可能性は非常に高い。
 それを裏付けるかの様に名簿においても渡と音也は近くに書かれている。十中八九両者は同じ世界……士達が行ったキバの世界とは別のキバの世界からの参加者だろう。
 無論、剣崎を見てもわかるように、この地にいる音也や渡が士の出会った両名と何処かしら違う可能性もある。とはいえ、どちらにしても無視は出来ないだろう。

 その最中、名簿を見る内に他にも気になる人物を見つけた。



「五代雄介……」



 それはクウガの世界で出会った旅の仲間、小野寺ユウスケと同じ名を持つ人物だ。
 渡や剣崎同様、五代もまたユウスケの世界とは違うクウガの世界出身でクウガに変身すると考えて良いだろう。
 とはいえ、彼については今はそれ以上触れる事も無いだろう。
 そして、



「志村純一……」



 士達の前に度々姿を現し『お宝』を手に入れる為に時に敵対時に共闘したもう1人の通りすがりの仮面ライダーディエンド海東大樹、その兄である海東純一と同じ名を持つ人物だ。
 海東純一は海東大樹の出身世界、言うなればディエンドの世界(但し、ディエンドがその世界で作られたわけではない)で出会った。
 その世界はローチおよびフォーティーンによって支配されていて海東大樹は彼等に従い、海東純一は仮面ライダーグレイブとなり仲間達と共にフォーティーンを打倒しようとしていた。
 しかし紆余曲折を経て海東純一がフォーティーンに操られる事になり、海東大樹は海東純一を取り戻す為ディエンドとなった。が、海東純一の真の目的こそ第2のフォーティーンとなり世界を支配する事だった。
 もっとも、海東純一自身は内心で人間の中で自由な意志を認めている為、彼がフォーティーンになる事は無いだろうが……

 さて、問題の志村純一の名前は剣崎から比較的近くに書かれている。それを踏まえるならば彼が剣崎と同じ世界、言うなればブレイドの世界からの出身の可能性が高い。
 考えてみればグレイブとブレイドのバックルの趣が似ていた。それから踏まえても同一世界の可能性が高いだろう。

 しかし、仮に志村純一が海東純一同様グレイブであったとしても全てが同じとは限らない。善良な人物か凶悪な人物かどうかすら判断がつかないという事だ。



「海東……お前は気付いているのか? こいつの存在に……?」



 海東大樹がディエンドになったのは海東純一を取り戻す為だった。それを踏まえるならば志村純一の存在を無視するとは思えない。
 海東大樹がどうしようが別に知った事では無いし海東純一と志村純一が同じグレイブであっても別人である以上そこまで気にする話ではない。
 しかし、海東大樹もまた仲間である以上どうしても気にせずにはいられなかった。

 とはいえ、気にした所ですぐにどうこうというわけでもない。故に、



「ユウスケ……海東……夏海……無事でいろよ……」



 今は只無事を祈るだけだ。もっとも、確実に1人には最早届く事は無いが―― 







The Second Movement "Road"



「なぁ、おっさん……あんた何歳なんだ?」
「おっさん言うな。俺は23歳だ、おっさん言われる歳じゃない」
「いや、あんた息子いるって言っていたよな? それも立派な大人……どう考えても20代は有り得ないだろうが」
「言っていなかったか? 渡は22年後の未来から来ているらしい」



 そんなやり取りを音也と乾巧が繰り広げる中、傍では天道総司が名簿を見ていた。
 3人は先程、園崎霧彦を看取った後、改めて互いに情報交換を行っていた。
 まずは3人と先程死亡した霧彦の知り合いについてだ。

 霧彦の知り合いは4人、
 霧彦の妻の園崎冴子、
 探偵の左翔太郎と相棒のフィリップ、2人は1人で風都の仮面ライダーダブルでもある。
 翔太郎の事務所の所長の鳴海亜樹子の計4人だ。

 巧の知り合いは6人、
 巧と同じくベルトを所有しスマートブレインのオルフェノクと戦った草加雅人と三原修二、草加がカイザを、三原がデルタを所有している。
 巧同様オルフェノクだが巧と共に戦った木場勇治と海堂直也、
 戦う力は無いが巧の仲間である園田真理、
 そしてスマートブレインの社長で巧達の持つベルトを狙いオルフェノクを差し向け立ち塞がってきた村上峡児の計6人、

 天道の知り合いは4人、
 天道同様マスクドライダーでワームと戦った加賀美新と矢車想、加賀美がガタック、矢車がホッパーだ。
 ワームの幹部である間宮麗奈と乃木怜治の計4人、
 それとは別に最初に首輪を爆破された人物が紆余曲折を経て矢車の弟になった影山瞬である事を伝えた。

 音也の知り合いは3人
 22年後の未来からやってきた音也の息子でキバに変身する渡、
 22年後の未来でイクサをしていて、一時的に音也の時代を訪れた事のあるファンガイアと戦う戦士名護啓介、
 そしてファンガイアの王であるキングの計3人、 

 更に各々の世界に現れる怪物ドーパント、オルフェノク、ワーム、ファンガイア、更にそれと戦う戦士についての情報交換を行った。
 これまでの話を総合し、巧の世界におけるファイズやカイザ等、天道の世界におけるカブト等のマスクドライダーシステム、音也の世界におけるイクサそしてキバが大ショッカーの語る仮面ライダーと考えて良いだろう。

 さて、ここまでの話から気になる部分が出てきた。
 巧によると草加、木場、村上が既に死亡しており、天道からも麗奈と乃木を倒しており、音也の話によれば既にキングは打倒したという話だ。
 既に死亡している筈の人物が何故参加しているのかという根本的な疑問が出てきたのだ。

 しかし、これに関しては2つの説がある。
 1つは大ショッカーが蘇生させた上で参加させた説、もう1つは死亡する前から参加させたという説だ。
 どちらも非現実的ではあるが、音也の話から時間移動の技術が存在する以上、後者の説の可能性が高いと考えて良いだろう。
 だが、霧彦の話から前者の可能性も否定出来ない。どちらにせよ大ショッカーが強大な力を持っている事に違いはない。

 何にせよ、強大である大ショッカーを打倒する為には仲間達と合流する必要がある。
 しかしその過程の上で警戒すべき人物はいる。
 元々の世界で敵対していた事を踏まえ村上、麗奈、乃木、キングに対してだ。彼等については警戒しておくべきだろう。 





「それじゃ、俺は行かせてもらうぞ」



 粗方の情報交換を終えた頃、そう言って音也が2人から離れようとする。



「何処へ行くつもりだ、紅?」



 音也に対し問いかけるのは天道、



「なんだ、まだ俺に聞きたい事があるのか?」
「いや、俺達と大ショッカーを倒すんじゃないのか?」



 そう聞き返すのは巧だ。



「悪いが俺に野郎共とつるむ趣味はない。俺は俺で勝手にやらせてもらおう」
「って、まさか女ナンパする気じゃねぇだろうな?」
「人聞きの悪い事を言うな、待っている俺の女達を助けに行くだけだ」
「俺の女達って、お前の知り合いの女いねぇだろうが……誰の事を言っているんだ……」



 と、ここで天道が口を開き、



「おばあちゃんが言っていた……」
「何をだ?」



「……全ての女性は等しく美しい」



「は?」



 その言葉にあっけに取られる巧の一方、



「……わかってるじゃないか、お前の婆さん」



 そう返すと共に歩き出す音也だった。



「っていいのかよ!? このまま行かせて……」
「想像以上にこのフィールドは広い、下手に固まるより別れて動くのも手だ……紅、もう1つ言っておく……間宮麗奈には気を付けろ」
「わかったわかった、お前達もキングには気を付けろよ」



 振り向くことなく去る音也だった。



「大丈夫か1人で……」
「変身時間の制限は伝えてある。それがわかっていて下手を打つ様な男じゃないだろう。そんなに気になるのならば乾、お前がついて行けば良い」
「天道の方は良いのか? 俺もそうだがお前だってまだ暫く変身出来ない筈だろ?」
「心配するな、俺が望みさえすれば運命は絶えず俺に味方する……この程度の障害など何て事はない」
「何処まで自信家なんだ……」 



 そう言って、2人もまた音也とは別方向へと歩き出す。
 ちなみに巧の手元に首輪探知機があったものの周囲に自分達と音也以外の反応が無い事を確認後電源を切りデイパックの奥へ仕舞った。
 説明書では周囲1キロメートルと驚異的な範囲を誇るとあったが、実質的には半径150~160メートルまでしか効果がない(ちなみにその範囲の周囲は1キロなので説明書が間違っているというわけではない)。
 それ以前に、このフィールド自体がどれくらいの広さなのかすら不明瞭である以上その範囲が全体の割合と比較してどれぐらいなのかもわからない。もっとも、それでも十分な広さではある。
 しかしそれとは別に首輪探知機の電池の残り残量も気になる所だ。先の戦い以降ずっと電源を入れていた事から大分消耗した筈だ。
 十二分に使える道具であるからこそ、むやみやたらと使うわけにはいかない。
 首輪の反応をキャッチするという事は首輪解除の手掛かりにもなりうる、下手に無駄に使う事など愚の骨頂でしかないということだ。



 その最中、天道は巧にも音也にも話していないある事について考えていた。
 それは自分の世界からの参加者についてだ。前述の通り天道の知る人物は4人だ。
 だが、果たして本当にそれだけなのだろうか?
 名簿に知っている名前が無い以上、普通に考えれば一般人かそれに擬態したしがないワームだろう。一般人ならば守る、ワームならば倒せばいいのでそれならば問題はない。
 注意すべきはマスクドライダー資格者もしくはワームあるいはネイティブの幹部クラスだ。しかしそれなら天道が名前を知らない筈がない。
 此処とは微妙に異なる世界のマスクドライダーもしくはワーム? 確かにその可能性も僅かに考えたがそれ以上に可能性がある者がいるではないか。
 そう、天道自身が本名を知り得ないマスクドライダー資格者が1人いるではないか。

 それはダークカブトの資格者にして天道自身に擬態したワーム……いや、この言い方は正確ではない。
 ワームよりも早くこの地球へと飛来したワームとは別種のワームネイティブ、彼等の手により幼少時代に拉致され様々な人体実験によってネイティブへと変えられた人間だ。
 そしてネイティブとなっても尚、マスクドライダー計画等の為に様々な実験を受けその際に天道へと擬態した。
 つまり、ダークカブトの資格者であるその男が、擬態先である天道総司ではなく人間だった時の本来の名前で参加させられているという事だ。
 無論、本来ならばネイティブとの決戦でこの世界を自分達に託して散っていった筈だ。
 だが、麗奈や乃木が存在している事を踏まえるとその前から連れて来られている可能性が高い。
 そして恐らくはその場合、日下部ひよりを巡って争っていた時期、あるいはひよりに拒絶された後世界を破壊しようとした時期から連れて来られていると見て良いだろう。
 前者ならば自分を排除する事が目的だ、それならばまだ良い。だが後者の場合ならば確実に無差別に人を襲うだろう。何としてでも止めなければならない。
 しかしその男が参加させられているというのは只の仮説に過ぎない。断定仕切れない以上、現段階で他の参加者に伝えるわけにはいかないだろう。



「(名簿だけでは恐らく加賀美や矢車達は気付けない……奴が暴走するならば倒すのは……俺だ!)」



 その一方、天道は一瞬だけ巧の方を見る。実の所、巧が話した人物の中で1人気になる人物がいた。それが草加だ。
 巧によると対立もしたが力強い仲間だと語っていたが天道はそれを無条件に信用するつもりはない。
 そもそも最初の説明の時に草加は死神博士に同一世界の参加者だけになれば良い事を確認していた。
 これが単純な確認ならばそれでも良い。だが殺し合いを破壊するならばそんな確認すら必要ないだろう。
 もしや草加は殺し合いに乗るつもりでは無いのか? 優勝の際の褒美の話を聞いて眼の色を変えた事からも有り得ないとはいえない。



「(杞憂であれば良いがな……)」 



 一方の巧もある事について考えていた。
 天道や音也には村上以外は仲間だと伝えてはいる。だがどうしても気になる人物が3人いたのだ。
 1人は草加、オルフェノクを嫌悪する関係もあり何かと対立もしていたがスマートブレインとの戦いでは非常に頼れる仲間だった。
 だが、やはり最初の場での草加の口ぶりに引っかかる点があったのだ。草加の性格上、自分の世界を生き残らせる為に他の世界を排除する可能性は否定出来ない。だが、



「(いや、あの時だって……そんな筈ないよな、草加)」



 だが、巧はその可能性を否定する。
 かつての流星塾の仲間だった澤田によって真理が殺された際、草加はスマートブレインの技術を使えば蘇生出来ると語り一度は取引の為ベルトを渡そうとそこへ向かおうとした。
 しかし、草加はスマートブレインを打倒する為それを取りやめた。真理を犠牲にしてでも目的を果たそうとしたという事だ。
 大切な人を犠牲にしてでも倒すべき敵を倒そうとする草加なのだ、そんな奴が自分の世界可愛さに殺し合いに乗るとは思えない。

 次は木場だ。これまた仲間だと説明したものの、彼とは様々な行き違いで何度も対立し、決戦においてもスマートブレインの社長となりカイザに変身して立ち塞がってきた。
 最終的には味方になったわけだが一時的にでも敵になった事が問題なのだ。
 木場がスマートブレインの社長となって敵になっている時期から来たとしたら? その場合巧達の敵に回る可能性が高いだろう。



「(木場……お前は……)」



 草加の場合と違い此方は決して否定仕切れない。何しろ、木場がスマートブレイン側に付いた経緯自体はある程度理解出来るからだ。願わくば敵になって欲しくない。そう考えていた。



「(それに真理……無事でいろよ)」



 そして真理だ。他の仲間はベルトの所有者もしくはオルフェノクなので先に戦った白服の男等の様な奴等もいるため絶対ではないものの戦闘になってもそう簡単に倒される事はない。
 だが、真理だけは別だ。ベルトを扱えない普通の人間では戦いにすらならない。無論都合良く変身ツールが支給されている可能性もあるが、戦い慣れていない真理では厳しい。
 出来れば早く合流したい所だが――



 しかし、想いとは裏腹に木場と真理は既に死を迎え、草加は真理を生き返らせる為に優勝を目指そうとしてる――その非常なる現実が待つ事を今の巧に知る術はない――





 その2人がF-5の道路上で東に進む最中、



「あれは……!」



 天道は天を見上げるとそこにあるものを見つけた。



「ガタックゼクター……それにベルト……!」



 それはベルトを抱えたまま大空を舞うガタックゼクダーだ。ガタックゼクターはほんの一瞬天道の方を振り向いた様な仕草を見せたがすぐさま遙か遠くへと飛び去っていった。
 何故加賀美が持っている筈のゼクターとベルトが空を飛んでいたのか? いや、その答えなど容易に判る。



「そうか加賀美、お前は……」



 それが意味するのは加賀美の死、そして資格者を失ったゼクターは新たな資格者を求め飛び去っていったという事だ。
 加賀美はワームとの戦いの最中、時に対立する事もあったが心強い仲間であった。彼の存在がなければひよりを助け出す事は出来なかったと言って良いだろう。
 そして、天道にとって『友』と言える人物であった―― 



 だが、天道は決して歩みを止めたりはしない。例え誰が敵になろうとも怯むことなく立ち向かうのと同様に、仲間が死んだからといって決して立ち止まるつもりはない。
 そして何より、加賀美自身も立ち止まる事等望まないだろう。



『アメンボから人間まで地球上のあらゆる生き物を守るんじゃなかったのか? お前がそんなでっかい奴だからこそ俺はお前を越えたいと思ったんだぞ!』



 ひよりを助ける為に自身を犠牲にし後を加賀美に託そうとした天道の暴走を止めた際、そう口にした奴の事だ。きっと、



『俺の事は気にするな、お前はお前の道、天の道を行け!』



 そう言っている気がしてならなかった。無論、本当の所は誰にもわからない、だが、



「お前に言われるまでもない……俺が道を拓く!」



 人が歩む道、それを拓く事こそが天の道、天道はその名の如くその道を行くだけだ。



「……おい、あのクワガタがどうかしたのか?」



 そんな天道に巧が問いかけるが、



「いや、別に大した事じゃない」



 そう返した天道だった。



「……変な奴」



【1日目 午後】
【F-5 道路】
【天道総司@仮面ライダーカブト】
【時間軸】最終回後
【状態】健康、仮面ライダーカブトに40分変身不能
【装備】ライダーベルト(カブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
1:仲間達と合流して、この殺し合いを打破する。
2:首輪をどうにかする。
3:間宮麗奈、乃木怜治、擬態天道、草加雅人、村上峡児、キングを警戒。
4:情報を集める。
【備考】
※首輪による制限が十分であることと、二時間~三時間ほどで再変身が可能だと認識しました。
※空間自体にも制限があり、そのための装置がどこかにあると考えています。
※巧の世界、音也の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。


【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】顔中に複数の打撲、疲労(中)、ウルフオルフェノクに40分変身不能、仮面ライダーファイズに20分変身不能
【装備】ファイズギア+ファイズショット@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×2、ルナメモリ@仮面ライダーW、首輪探知機、ガイアメモリ(ナスカ)+ガイアドライバー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー。世界を守る。
2:仲間を探して協力を呼びかける。
3:間宮麗奈、乃木怜治、村上峡児、キングを警戒。
4:霧彦のスカーフを洗濯する。
5:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。 







The Third Movement "Destroyer"



 病院での戦闘後、『彼』は病院から離れそのまま移動を開始していた。
 その目的は全てを破壊する為――

 何故『彼』は全てを破壊するのだろうか?

 『彼』は世界の都合でその過去から現在、そして自分自身を都合の良い様に歪められたのだ。
 幼き頃に拉致され身体を弄られ人間からワームへと変えられそして別の人間に姿を変えられる羽目となった。
 それだけに留まらず長き時に渡り実験を繰り返され本来の姿だけではなく理性すら失ってしまった。
 希望無き絶望の中で出会えたひよりのお陰で世界の外へと解放され同時に理性も取り戻せた。
 『彼』にとってはひよりは何よりも大切な存在だったのだ。彼にとっては世界そのものと言っても良い。

 しかしそのひよりすらも自分の元から去っていった――またしても世界から拒絶されたという事だ。

 『彼』の心は再び絶望に満たされた。世界はまだ自分から奪うというのか?
 何故ここまで自分の全てが破壊されなければならないのだ?


 許せない――自分の人生を奪った世界が、
 許せない――人間としての自分を奪った世界が、
 許せない――本当の自分を奪った世界が、
 許せない――今の自分の姿にである『奴』が、
 許せない――自分を救ったひよりを奪った『奴』が、
 許せない――自分の元を去っていったひよりが、
 許せない――『奴』が守るであろう全ての世界が、


 だからこそ壊すのだ。自分以外の全てを――


 特に『奴』だけは確実に殺す。
 全てを失った自分に対して、全てを手に入れている『奴』、同じ姿をしているのにこの違いは理不尽以外の何者でもない。
 無論、好き好んで『奴』の姿と記憶を得たわけではなかったが――

 とはいえこの広いフィールド、そうそう簡単に出会えるわけもない。
 先の戦闘では『奴』の仲間に遭遇し、さらに別の『奴』の仲間が持っている筈のガタックが現れたがそんな都合の良い事が立て続けに起こるわけが――



「まさか……アレは……!」



 遠目に2人歩いているのが見えた。遠目だったが見間違えるわけもない。片方はよく知っている人物、今の自分自身と同じ姿、『奴』なのだから。



「天道総司……」



 『奴』こと天道がいたのだ。見つけたならば放置する理由は何処にもない、すぐさまダークカブトゼクターを構え、



「変身……」



 何時ものようにダークカブトへと変身しカブトに変身した天道を倒せば良――



「あれ……どういうことなんだ……?」



 しかしゼクターとベルトは応えてくれなかった。ダークカブトに変身するはずの姿は変わらなかったのだ。
 思えば先の戦闘でも何故か矢車は変身せず、自分のクロックアップも不発に終わっていた。
 もしかすると変身に関して何かしらの制限があるのかもしれない。
 だが、ダークカブトに変身出来ないのであれば別の姿に変身すれば良い。そう一瞬考えたが―― 



「無理だ……ダークカブトでなければカブトに変身したあいつは倒せない……」



 ここで戦いになっても勝てないと判断した。
 ワームの姿であっても病院で殺した鬼が持っていたベルトを使って変身しても恐らくカブトには届かない。



『所詮お前は過去の俺に擬態しただけ、俺は既に未来も掴んでいる』



 いつだったか天道はそう口にしていた。
 腹立たしいがその言葉は一理ある。同じ姿でも勝てるかどうかわからないのに、それよりも弱い姿になって勝てる道理など何処にもない。
 実際、『彼』はワームとはいえサナギ体、サナギ体如きではマスクドライダーに勝てるわけがない。
 また『彼』は知らないものの鬼が持っていたベルトことデンオウベルトにしても特異点ではない『彼』では扱う事が出来ない。
 出来たとしても大した力のないプラットフォームにしか変身出来ないだろう。どちらにしてもカブトに勝てる筈がない。



「いいよ、今は見逃してあげる……今の内に好きなだけ天の道を往けばいいよ……でも……僕は2人もいらない……次に会った時は絶対に……」



 そう口にし、後ろ髪引かれる想いを抱きつつ天道に背を向け『彼』は去っていった。
 かくして天道が気付くことなく、『彼』との遭遇は終わったのであった。 





 そしてF-4の道路を南下する。その最中今後について考える。
 変身制限がある以上、変身出来ない間の対応を考える必要がある。とはいえ、表向きには『天道総司』と名乗れば何の問題も無い、この姿をしているのだから利用しない手はないだろう。

 が、理想を言えば他の変身手段も欲しい所だ。改めて『彼』は自身のデイパックと鬼が持っていたデイパックの中身を確認する。
 その結果、自分1つ、鬼2つの支給品を確認した。但し、変身に使える道具は1つだけだった。

 ちなみにそれの支給先は鬼ことネガタロスへの支給品だった。では、何故彼はそれを使わなかったのか?
 理由の1つは使い慣れたデンオウベルトを使えば済む話だからだ。変身制限に気付かない限り普通はそちらを使うだろう。
 理由のもう1つはネガタロスの背景事情に少し関わる。そもそもネガタロスはキバと電王に倒された後この場に来ていた。
 つまり、電王とキバに怨みがあるという事だ。
 先の戦闘の際、キバに似た姿であるキバーラを見てトラウマを呼び起こされた事からもそれはわかる。
 そして、その支給品もまた問題のキバを彷彿とさせるものであったのだ。故にネガタロスはすぐさまそれをデイパックの奥底へとしまい込んだ。
 その正体は――



「何者だお前?」



 対ファンガイア組織である素晴らしき青空の会と同様の目的を持つ組織ワールド・ワイド・ウィング・アソシエーション通称3WA、
 かつて名護も所属していたその組織がキバを研究し開発したライダーシステムレイの変身ツール、キバット族を模したデザインを持つそのツールの名はレイキバットである。
 余談だが、3WAで開発されたライダーシステムはレイ以外完成に至らずレイもまた普通の人間では扱えない代物だった。
 だが、支給先であるネガタロスはイマジン、扱う事は可能だ。
 そして、現在所持している『彼』もサナギ体とはいえネイティブワーム、人間よりも頑強である以上使用する事は可能だ。
 つまり、『彼』にとってダークカブトほどではないが使えるツールという事だ。

 そして、問いかけるレイキバットに対し、



「僕の名前は……天道総司……よろしくね」
「俺の名はレイキバット、行こうか? 華麗に激しく!」
「そうだね……行くよ、全てを壊しにね……」



【F-4 道路】
【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません) 
【状態】疲労(中) 全身打撲 情緒不安定気味 仮面ライダーダークカブト40分変身不可 、ネイティブ40分変身不可
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+ダークカブトゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式、不明支給品×1、ネガタロスの不明支給品×1、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王
【思考・状況】
0:仮面ライダーを全員殺す。
1:天道総司を殺し、『天道総司』に成り代わる。
2:全ての世界を破壊するため、手当たり次第全員殺す。
3:特に優先的に『カブトの世界』の五人を殺害する(最終的には自分も死ぬ予定)。
4:僕はワームだった……。
【備考】
※名簿には本名が載っていますが、彼自身は天道総司を名乗るつもりです。 
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※残り不明支給品は何れも変身道具ではありません。 







The Fourth Movement "Music"



 ここで1つ思い出して欲しい事がある。霧彦によると冴子に撃たれ死亡したと思ったらこの地にいたという話だ。
 普通に考えればそれ自体異常事態だ、だが音也は別段その事について疑問は持たなかった。何故か?
 答えは単純、音也自身もまた似たようなものだからだ。



『聞こえるか、俺の音楽が……』
『聞こえるわ、貴方の音楽は私の胸の中でずっと鳴り響いている……』
『そうだ、それで良い……それが俺の本当の……音楽だ……』



 愛する女性である真夜に愛情を込めたオムライスを作り、そして真夜の腕の中で眠りについた……それが音也がこの地を訪れる前の最後の記憶だ。
 キングから真夜の息子である太牙を助け出す為に音也は命の危険も省みず闇のキバの鎧を纏った。結果、太牙を助け出しキングも打倒したものの度重なる変身により既に音也の死は不可避だった。
 つまり、本来であればあの瞬間永遠の眠りが訪れる筈だったという事だ。
 だが、実際はそうはならなかった。こうして五体万全で殺し合いに参加させられている状態だ。しかもキングとの戦いで紛失した筈のイクサナックルまで手元にある。
 大ショッカーの技術力によるものだろうが、音也自身は自分の日頃の行いが良かった程度の認識しかない。

 さて、音也自身生きているなら生き残り元の世界にいる真夜や麻生ゆりの元に戻りたい所だが、その為に殺し合いに乗るつもりは全く無い。
 音也に女性を殺す発想など無いし、人の心が奏でる音楽を冒涜する事を良しとしない音也が殺し合いを良しとするわけもない。人に流れる音楽を守る為戦うつもりだ。
 だからといって男と行動を共にする趣味は無い為、天道達と別行動を取ったわけだが。

 ちなみにこの地にいる知り合いについては別段気にするつもりはない。
 倒したはずのキングに関しては明らかに強敵だが立ち塞がるならまた倒せば良い話だ。
 未来のイクサである名護に関してもその実力は確かなもの、合流せずとも問題ないだろう。
 そして息子である渡、息子であるとはいえ既に大人だ、自分がとやかく構う必要は無い。
 無論、自分と出会う前から来た可能性もあるしそれが無くても悩み多き年頃だ、色々迷い苦しんでいるというのは十分にあり得る。
 とはいえそれは出会った時に考えれば良い。出会ってもいない状況で頭を抱えるつもりはない。
 それよりも他の女達を探し出して守る方がよっぽど有意義だろう。
 麗奈を警戒しろと天道から言われているものの、それについては会ってから判断すれば良いだろう。



「さしあたり、霧彦の妻……冴子でも探すか。都合良く渡か名護が出会っていれば良いが流石にそれはないだろう」



 流石の音也といえでもまさか渡と冴子が行動を共にし殺し合いに乗っており、渡が天道の仲間である加賀美を結果として殺しているという事は想像もつかなかった。 





 かくして、音也はE-4にある病院にたどり着く。そこを目的地に選んだのは只の気紛れ、その場所に誰か来ていると考えた程度の理由だ。
 丁度そのタイミングで病院から士が出てきた。気が付くと時計は3時半を過ぎており、何時まで経っても現れない北條の元へ戻ろうと考えたのだ。
 だが、目の前の士は音也の姿を見て驚いている。



「紅音也……」



 士にとって音也はネガの世界でダークライダーを纏めていた人物、その男が目の前にいる以上驚きを隠せないのは当然だ。
 しかし一方の音也にとって士は未知の人物だ、音也から見て士がどことなく警戒しているのはわかるがその理由はわからない。



「やれやれ、俺様のFAN……というわけではないようだな。お前、誰だ?」



 その音也の言葉で士は理解した。少なくても目の前の音也は剣崎同様自分が出会った音也とは別の存在だ。
 気になる事はあるが今は音也の問いかけに答えねばならないだろう。そう、何時ものように――



「通りすがりの仮面ライダーだ」



 士にとってはお決まりの台詞だ。だが音也にとってはそうではない。妙な事を口走っている為、少なくても関わり合いになりたいとは思えない相手だ。それ故に思わずこう応えた。



「何を言っている、お前?」



【E-4 病院前】
※剣崎の死体は病室に移されました。
※ガタックゼクターとライダーベルトは次の資格者を探してどこかへ行きました。


【紅音也@仮面ライダーキバ】 
【時間軸】第46話終了後
【状態】疲労(中) 
【装備】イクサナックル(プロトタイプ)@仮面ライダーキバ、ライアのデッキ@仮面ライダー龍騎 
【道具】支給品一式、不明支給品0~2 
【思考・状況】
0:目の前の男(士)とあまり関わり合いになりたくない。
1:最後まで生き残り、元の世界に帰還する
2:女性を見たらとりあえず口説く。冴子辺り探してみる。
3:乃木怜治、村上峡児、キングを警戒。間宮麗奈については会ってから判断。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、巧の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後 
【状態】重傷(軽い応急処置済み)、疲労(小)、仮面ライダーディケイド50分変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2、ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA~6.9)@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3)@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
0:音也から話を聞く。
1:大ショッカーは、俺が潰す!
2:仲間との合流。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、ブレイドの物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。 
※ライダーカード(G3)はディエンド用です。 


|050:[[Round ZERO ~KING AND JOKER]]|投下順||
|050:[[Round ZERO ~KING AND JOKER]]|時系列順||
|046:[[Kの名を胸に刻め/闇に消える光]]|[[門矢士]]||
|038:[[風]]|[[天道総司]]||
|038:[[風]]|[[乾巧]]||
|038:[[風]]|[[紅音也]]||
|046:[[Kの名を胸に刻め/闇に消える光]]|[[擬態天道]]||

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