【Wol】光の戦士にハァハァするスレ1…フリオニール+wol


 がらがらと崩れ落ちる物質を、ウォーリアオブライトは何の感慨も無く見ている。
城を模っている物質はどうやら錆付き腐っていたようで、だがそれにしても少々脆過ぎるなと迫ってくる剣先を躱しながら死体を跨ぐ。
上層にまだ複数のイミテーションが潜み、牽制の為に奇をてらっているのだろうか。
そう思いながら相手の剣を払い一気に首を刎ねる。濛々と立ち込める砂埃の合間から別の剣先が頬を掠める。
脆弱なイミテーションとは云えこれだけの数を相手に切り抜けるのは困難だろう。
分が悪いのなら一度退いて各個撃破するべきだ。
ウォーリアオブライトはそう判断し刃こぼれが酷い剣を鞘に収める。
慣れた日常だ。人が寝食を忘れることが無いのと同様で、ウォーリアオブライトにとって此れが日常なのだ。
殺し合う事を好き、嫌いという物差しで計るわけではなく、目的の為、謂わば過程として殺し合いがあるから切り伏せるだけだ。 確実に仕留められる「剣」がいい。死にさえしなければいずれ傷など塞がるのだ。
ウォーリアオブライトは爆撃とも云える中を一切躊躇い無く駆け抜けて行く。
手に炎が回っても構わない。死にさえしなければ構わない。
そのまま左の指先を激しく焼いて皮膚が爛れて捲れ上がるが、死にさえしなければ大丈夫だ。
まだ走れる。戦える。


『どうしてあなたは何時も無茶な戦い方ばかりするんだ。』
『……無茶? 私はただ最善を尽くしているだけだ。』
『いいや。最善を尽くすと云うのは傷付かずに済むよう心掛ける事だろう。あなたなら分かる筈だ。』
『フリオニール。それは違う』


退路を塞ぐイミテーションが三体いる。
死体を足先で転がし進路を開け、脂肪の剥き出しになった左手で柄を握ると痛烈な熱を感じる。
其れはやがて吐き気に変わるが生きていればそれでいい。
生きていれば。生きてさえいればウォーリアオブライトは永遠に戦える。


『私にとって最善とは、戦える事だ。
どれだけ形が残ろうと、痛みがなくとも、戦えなければそれは悪だ。』

『違う!』

鋭さを欠いた剣をもう一度抜き放ち、背後へと回り一気に首を切断する。
左手がいかれているので切り落とす事は考えない。的確に気管を切断しさえすれば後はゆっくり事切れる。
ごぼごぼと口から嗽をするような音を立てながら倒れるイミテーションはウォーリアオブライトと全く同じ姿をしていた。
だから其れから剣を奪い、残る二人に向かって構え直す。

『…そんなものは悪じゃない… …敗北と悪を履き違えてはいけない、ウォル。』


二人を斬り殺して瓦礫の影に身を潜める。
追ってきた別のイミテーション達が駆け寄って来るから、息の乱れを整えなくてはいけない。


『敗北は結果だ。善悪ではない。 …いいかウォル。善悪ではないんだ。 頼むから』


ウォーリアオブライトは兜を脱ぎ数メートル離れた地面へと其れを投げつけた。
からん、と音を立てた兜に愚鈍なイミテーション達は一斉にそちらへと集中する。

「奔れ、光よ!」

閃光は辺りの物質を巻き込み、爆炎にも似た衝撃を生み出した。
やはりこの城の物質の強度は足りないな。千切れた何者かの腕が真横を飛ぶ中、ウォーリアオブライトは爆風に吹き飛ばされながらそう思っていた。
その脆い物質はクリスタルに似ていたが、脆いが故ウォーリアオブライトの足を貫いている。
だが彼の強味は死にさえしなければ幾らでも戦えると云う事だ。戦い終えた時に四肢が人の形を保って若干でも動きさえすればいい。
そうすれば肌が捲れようが骨が折れようが勝ちだ。また戦える。だから、


『頼むからそんな馬鹿げた戦い方をしないでくれ… 頼む、 頼むから』


ウォーリアオブライトは一人でも歩んで行けた。
そうだった筈なのに


『生きてくれ』


どうして青年はそんなに私を憐れむのだろう。






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最終更新:2009年04月30日 17:07