【Wol】光の戦士にハァハァするスレ1…ガーランド+wol

 ウォーリアオブライトの手は、ガーランドのそれと比べて少しひんやりとしている。
魔道に身を堕とし異形と変化したガーランドの皮の厚くなった皮膚とは違い、柔らかくて、ひんやりとして
それでいてしっとりと吸い付くような滑らかさを持っている。
ガーランドはそれに触れてしまうと、何時だって申し訳ないような気持ちになってしまう。
深雪を前に慄く狼に似ているかも知れない。
腹が減っていると云うのに踏み出してしまえば美しさが損なわれてしまうのが目に見えて分かっている。獣は躊躇う。
そして暫し木の皮を齧り飢えを凌ぎ、されど結局は雪に足を踏み入れるのだ。
ウォーリアオブライトが優しい男である事は良く知っている。だから多くの事を許すであろう事も。
例えば此処でウォーリアオブライトに触れたいとガーランドが望めば、彼は笑って「あぁ」と言うに決まっているのだ。
だがどうして触れられようか?ウォーリアオブライトを喪いたくないが為にカオスに背き、陰惨な戦場から逃げ出し、
その喪いたくなかった青年の手を引いて此処まで来たが、彼をこの様な目に遭わせたのは他でもない自分なのだ。
守りたいだなどと言えたものか!ガーランドさえ居なければウォーリアオブライトは戦う必要などなかったのだ!
許して欲しいと願う自分と、甘言に縋る資格などないのだと律する自分が何時だって鬩いでいる。
ウォーリアオブライトはきっと許すだろう。「構わない」と笑ってガーランドを受け入れてくれるだろう。
真であれ偽であれ、ガーランドがそれに救われる事は違いあるまい。だが。
…駄目だ。
そんな甘えが許されるようなものではない。
「……」
「……」
不器用ながらも慣れた手付きでガーランドの掌に包帯を巻いてゆくウォーリアオブライトのつむじが揺れている。
薬はとうに尽きた。包帯といっても彼の腰巻の布は随分と草臥れている。
あと少しで別れが来る。
そう思えば目の前の体を抱き締めてしまいたくなる。
わしはただお前を喪いたくなかっただけなのだ、そう言って逃げを打ちたくもなる。
けれどそんな事は決して言えない。言ってはならない。ガーランドはまた揺らぎ揺らぐ。
近付きたい。近付いてはならない。
分かっているのだ。
ガーランドがウォーリアオブライトに歩み寄ったところで、それは全て彼自身が免罪符を得る為だけの所作になる。
胸の裡を明かせば泣き言になるだけだ。
お前の為に反旗を翻しこの世界を見捨てたなど言えたものではない。彼を傷付けるだけなら言葉など形にしない方がずっといい。
ウォーリアオブライトはきっと全て許す。
それが分かるからガーランドは黙る。
ただ柔らかく白い掌が動く姿を眺めている。捨置いても治るような傷を献身的に看護する様を咎めるでもなく眺めている。
しかしウォーリアオブライトが動く度、地に染みた血液はどんどんと生臭さを増して行った。
ウォーリアオブライトが思い出したかのように呼吸を繰り返すと、今更になって肺がちりちりと痛んだ。
呼吸をする度に締め付けられるような痛みと、無数の針で甚振られる神経を撫でる衝撃がなかを荒らす。
咳を数度した途端にじくじくとした鈍痛が激しく渦巻き、内臓が傷付いている事が知れた。
水で咽喉の汚れを洗い流せたらと思う。しかし今水を飲めばどうなるか、わからない。
力を少しでも込めれば胸から血が溢れてきた。
勢い良いその熱さだけは未だ自分が命を燃やしている事実をウォーリアオブライトに教えてくれる。


「 ああ …思ったより、手間取ってしまった。すまない、不恰好で。」
照れたように笑って顔を上げる仕草が好きだ。
豊かな白銀の髪が跳ねたように揺れる姿が好きだ。
…すまない。
わしはただ、お前が
生きていてくれればよいと
そう思って
「もう あんな無茶はするな。いい… な?」
わしは、
お前が死んでゆく様を見るなど、耐えられぬ
恐ろしい
「… い…い、な ?… 」
恐ろしい
お前が死ぬと云うことが
恐ろしい
「 ……… 」
そのわしの恐怖が為に
結局はお前をこのような目に遭わせて
すまない
今こうしてお前が笑ってわしに触れてくれることが
浅ましく、身勝手だと分かっているというのに、共に逝きたいとまで願う。  
「何か言え…、ガーランド 」
傷付いたガーランドの手をきゅうと握り傷口を柔らかくそしてひんやりと包み込む。
血の気が完全に失せ、真っ青になったウォーリアオブライトの顔は聖者のような静謐さを湛えている。
思えばガーランドが崇拝していたのはこの青年であったというのに。
「光の戦士よ、わしは… お前を … 」
視力が奪われつつあるウォーリアオブライトは確かめるようにガーランドの唇を指先でなぞる。
ガーランドが血を噛むような思いで懺悔しようと、それでも尚ウォーリアオブライトは純然として在るのである。








あなたはいいこだからこの飴玉をあげようね。

私の人生などこの下らぬ台詞に集約されるのだ。
とどのつまりそう云う事なのだ。
しかし私はお前を愛していたし、その情愛だけで私は成り立っていた。
もし私がそれすら忘れ、抜け殻のようになろうものなら
お前が私を見つけてくれ。私は其れを待っている。




恐れることはもう棄てた、わしは恐れより怒りを選ぶ。

寂寥と悔恨の狭間で過ちを犯し世界の理を曲げるようと
恐れることなど何一つない。
こうも非常識な世界に秩序など必要なものか。混沌すら必要無い。
其れをわしが示しお前を庇護してみせよう。
例えお前を殺すことになろうとも。




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最終更新:2009年05月20日 23:53