【Wol】光の戦士にハァハァするスレ1…ガーランド+wol
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その男を救いたいと思った
使命感でも正義感などという綺麗なものでもなく
いつからそんな思いが生まれたのか
ただ永劫の苦しみを巡り続けるその男の運命を、自分が断ち切る事が出来るのならば断ち切ってやりたかった
例え何度その剣で貫かれようとも、何度記憶が消えようとも、私は何度でも甦る
この輪廻を終わらせてやりたいという思いは私の中に残り続けている
そして光は闇と常に共に在る様に、私はあの男の存在を探し世界を巡り、この剣を向けるのだ
………………
その男を殺したいと思った
使命でも憎悪などというものでもなく純粋に
いつからそんな欲望が生まれたのか
決して相容れぬ存在に焦がれ、手を伸ばし、捕らえ、手にしたこの剣で貫けば、その男を手に入れられた様な不思議な高揚感に浸れるのだ
そしてその後に襲う強烈な虚無感に立ちつくしたまま、輪廻は<始まり>へ巻き戻し再び<終わり>へと巡らせる
あと何度繰り返せばこの不毛な運命は終わるのか、その答えは知っている
だが、この輪廻を終わらせたくはないと願う己がいる
故に闇は光と常に共に在る様に、あの男にこの剣を何度でも向け、その胸に突き立てるのだ
廃墟と化した古城の大広間に二つの人影が対峙していた。
激しい剣と剣のぶつかり合い。静かな古城に無機質な金属音が響き合う。鈍い月明かりが照らし出す中、永遠に続くかに思えたその音は不意に止んだ。
静けさを取り戻した広間に浮かびあがったのは、仰向けに倒れた青い鎧を纏う青年と、彼に覆い被さる様にその姿を見下ろす黒い鎧を纏った大柄の男の姿。
「これは輪廻…貴様もわしも永劫に閉じた世界をさまよい続けるのだ」
男の言葉に、青い鎧の青年は端正な顔を歪ませる事なく静かに口を開いた。
「何故…自ら輪廻を望む…?何故永遠を求めるのだ…」
何故?
青年の問いに男は答えず、手にした大剣を振り翳す。
「貴様には…永遠に理解出来ぬ」
兜で表情を隠したまま男はそう呟くと、迷う事なくその大剣を真っ直ぐ振り下ろした。
「…そうか、私には永遠に解らぬか」
その剣が彼の胸に届く寸前、男の耳に青年の凛とした声が響く。
見下ろす先にいるその青年の表情は大剣の先端が迫っているにも関わらず、絶望でも怒りでもなく、ただ哀しげな微笑みを浮かべていた。
「…わしには、貴様が理解出来ぬ」
永遠の邂逅、刹那の静寂。
振り下ろした剣は止まれない。
「何故貴様は幾度となくわしの前に立つ?何故逃げぬ?何故そんな表情を浮かべる?
…何故我等は繰り返す?
何故…」
月明かりが差し込む古城の大広間に響く男の問い掛け。その問いに返事を返す者はなく、男の言葉ただ静寂にかき消されていった。
そして輪廻は再び光と闇を<始まり>へ巻き戻す。
最終更新:2009年05月20日 23:56