[[【Wol】光の戦士にハァハァするスレ1…フリオニール×wol]],
「なぁ、明日こそ退院してもいいと思うんだ。」
フリオニールが倒れてから四日後の今日、彼は病院のベッドの上で健常な体(飽くまでフリオニールの主観では、だ。)を持て余していた。
「駄目だ。」
「平熱に戻った。」
「駄目だ。」
「本当にもう何ともないんだって」
「医者に言えばいいだろう。 扁桃線は 」
「あ?、あぁ、少し腫れてるが、この程度なら」
「痛みで寝付けないのにか」
「それは、まぁ、少しの我慢というか……」
「……」
正直、怒った時のウォーリアオブライトほど恐ろしいものはこの世に無いとフリオニールは思っている。声を荒げて何かを叫んでくれている間は未だ良いのだが、最悪なのが無言になった時だ。無言の威圧も然る事ながら、終始冷ややかな視線でこちらを見ようともしないあの態度には心底困る。しかも筋金入りの頑固さを併せ持っているものだから中々機嫌も直さない。よもやまたあの悪夢の再来なのか、とフリオニールはベッドから立ち上がりウォーリアオブライトの様子を伺った。バランス良く拡がった肩からなだらかに伸びている背中は、矢張り普段の雰囲気とは少し違うようだ。いや、でも、怒って…いるのではないのか?
「…う、ウォル、」
恐る恐ると云った様相でフリオニールが声を掛ける。
「………」
しかし返答は無い。しゃりしゃり、と包丁を滑らす規則正しい音だけが聞こえてきて無償に怖い。
何だ?やっぱり怒ってるのか?
でも、一体何に?
彼を避け続けてきたことに対してか?でもそれは、ウォルからの熱烈な告白で、思いがけずもあっさりと水に流されてしまったし、『今居るアパートを引き払って私と一緒に暮らせば許してやる』なんて横暴にも思える彼の条件を呑んだら、眼福としか言い様の無い笑顔を曝してくれてたのだけど。
「ウォル、」
正面に回り込むと、テーブルの上には綺麗に皮むきされたリンゴが準備されている。ああ、そういえば俺、腹が減って目が覚めたんだった。
しかしこの状況では空腹も吹っ飛ぶと云うものである。
「ウォルっ 」
意を決し、ウォーリアオブライトの顔を覗き込む。包丁を置いたことを確認して、青いワイシャツに包まれた細作りの肩を掴んだ。しかし表情に出さないながら内心冷や冷やとしているフリオニールに向けられたのは、ウォーリアオブライトの、いや愛しい人の異星人を見たかのような驚きの表情だった。
「何だ。急に、 」
目を丸くして見つめてくるウォーリアオブライトに、フリオニールは思いきり脱力した。俺の焦りは一体何だったんだ、と思いながら、彼の膝上に広げられている雑誌に素早く目を走らせる。
「それ、カタログか…? あぁ。」
膝上に納まっている物は家具のカタログである。そう知ってフリオニールは瞬時に事態を把握した。成程、家具を物色しながら、更にリンゴを剥いていたりしたものだから俺との話が片手間になったのか。ウォルは熱中すると周りの事が目に入らなくなったりするから、俺はそれを敏感に感じ取ってしまったと云う訳か。
全く、ちょっとした異変を感じ取り過ぎてしまうのも考え物だ。
取り越し苦労だと判ると、どっと疲れの出るフリオニールだ。
病室の片隅にあるもう一つの椅子を持ってきて、ウォーリアオブライトの隣に座ってテーブルの上に肘をつきながら小さな溜め息を一つ吐く。
「どうかしたのか?」
「気にしないでくれ。それより、そんなに欲しい物が載ってたのか?」
「そうではないが、目星を付けておいた方が買い物もスムーズに進むというものだろう。」
「まぁ、そうだな…」
自分との会話を疎かにさせた原因、カタログとリンゴに微かな嫉妬を覚えたフリオニールの気も知らず、大きい買い物だしな、とウォーリアオブライトはまだカタログに目を奔らせている。
彼等はフリオニールの体調が回復し次第デート…もとい買い物に出掛ける予定でいるのだ。二人一緒に暮らす事を決め(られ)た日から四日後の今日で本当に気の早いことではあるが、
「こんなに沢山あると目移りしてしまうな。」
等と、至極はりきったことを言うのだ。ウォーリアオブライトは。
「男二人には狭いもんだぞ、2DKっていっても。…これ、食べてもいいのか?」
ほっとしてしまうと何処かへすっ飛んでいた筈の空腹感も戻って来る。合図地を打ちながらリンゴを指で示し、フリオニールは聞いた。するとウォーリアオブライトは「君の為に用意したんだから当たり前だろう。」などとカタログを捲りながらさも当たり前のように言うので、フリオニールは無自覚の口説き文句にどうにもこうにも困ってしまう。
「い…、いただきます。」
皿を引き寄せラップを取ると、愛らしくむかれたうさぎの形をしたリンゴと、その隣には家から持ってきたらしいフルーツサンドが顔を出す。『甘い物かぁ、』なんて昨日の夕食時に、テレビを見ながら物欲しいそうに言ったからだろうか。ごわごわした耳をしっかり取り除いてあるそれに、もぐ、と齧り付くと生クリームと苺とナッツの良い香りが口一杯に拡がって行く。世辞抜きで美味い。
「ソファなんだが、柔らか過ぎない物にしないか? あまりふわふわしたのに座ってると疲れるんだ。」
なのにウォーリアオブライトときたら、フリオニールがそうやって自分の手料理を食べる事になど慣れ切ってしまっているものだから、当たり前のように話を先に進めてしまうのだ。美味しいとか、ありがとうとか、云う言葉を伝えそびれてしまう。それと、カタログを真剣に眺めてる君の横顔がとても綺麗だとか、俺と買い物に行ける日を実は楽しそうにしている君が凄く可愛いだとか、そう云ったことが言えないのは全部彼のせいなのだ。(飽くまでフリオニールが思うには、だ。)
「…ん。ウォルの好きにしていいさ。」
ぺろりと一つ腹の中に収めてしまって、次のサンドイッチに手を伸ばす。
「共同の物なのだから面倒臭がらずにちゃんと見たほうがいいぞ。」
ウォーリアオブライトは席を立ちながら言った。そうして当たり前のようにグラスを取って、当たり前のように添え付けの冷蔵庫から水を出して注ぎ、当たり前のようにフリオニールの前に出して来る。
「飲み物。 飲むだろう?」
全て本当に、あんまりにも当たり前で自然な仕草だからフリオニールは聊か狼狽した。それが惚れた弱味だと云う事は最早兄弟二人して判ってなどいないだろう。こくこくと頷いてグラスを受け取りフリオニールはそれを勢い良く胃の中に流し込んだ。ウォーリアオブライトはそんな事など知らず、わざわざフリオニールの隣に戻って座りカタログをぺらぺらと捲り始めるのだ。
「あの、さ…」
「君は何が必要なんだ?」
「あ、いや…、」
「今自分の部屋にあるものだけで足りそうか?」
「俺は……机と椅子と布団さえあればいいんだけど。」
執着の無い物言いだ。その辺りは兄弟揃って良く似ている。「そうだな、私もそのくらいしか必要ないが」と言いつつウォーリアオブライトは何かのカタログを開き、既に物色を始めているらしい。手持ち無沙汰なフリオニールは、サンドイッチを片手に数あるパンフレットの中からリビングルームのカタログを抜き出し何となく捲ってみた。
「ランプなんて小物も載ってるのか…。あ、無駄な買い物は無しだな。経済的に余裕無いし」
「あぁ。」
「この本棚、安い割りに機能性があっていいな。」
「あぁ。」
「なぁ、こっちにもソファが載ってるぞ。俺はブラックが好きだけど、ウォルは汚れが目立つからアイボリー派だろ? 」
「あぁ。」
「…………」
全く適当な相槌である。
ウォーリアオブライトは最後にもう一度「あぁ。」と言った後、ぺらりとカタログを捲った。気も疎空な彼の返答に、フリオニールは複雑な気持ちになりながら、止まらない手元をひょいと覗き込んだ。
「で、今度は何を見てるんだ?」
するとウォーリアオブライトは然も当たり前だと謂わん許りの口調で「ベッド。」と答えた。
「いや、それは判るが…見てるところが、その…、全部ダブルだ。」
ページを改めてやろうとフリオニールが指を伸ばすと、ウォーリアオブライトの手がそれを制する。驚いたフリオニールがウォーリアオブライトを思わずと云った具合に見ると、彼は何時も通りのしれっとした顔で「判ってる」と自分用にむいていた乱雑に切ってあるリンゴを口に放って言った。
「君も私もよく育ったものだから、二人で寝るならこのくらい必要だろう。」
そして止めがこれだ。
開いた口が塞がらないフリオニールに、ウォーリアオブライトは首を傾げ不思議そうな顔をしている。信じられない、天然にも程がある……ダ、ダブルベットを買ったとして一体それをどう使うつもりなんだ?それは俺への拷問かさもなくば誘惑…いやいやいや落ち着けウォルに限ってそんなことはいやでも俺が見てこなかった間にどんな経験を積んできたか分かったものじゃない(性的に)
別にそうだからといって身構えることはないんだがウォルが積極的だった場合俺の方にも色々と心の準備とかそういうものが…
等と、フリオニールが先ほどから戦っていた理性の限界という奴に負けそうになっていた時だった。
「大丈夫か?」
なんて、すっかり引きつってしまったフリオニールの顔に、吐息もかかりそうな至近距離でウォーリアオブライトが詰め寄ったものだから、ライオンに生肉をちらつかせるのと等しく。大体にして、思いの通じ合った愛しいウォーリアオブライトと二人きりになった時点でフリオニールの敗北は最初から決まっていたのだが、なけなしの努力でここまで耐えた彼がそれを理解したくなかったのも事実である。
「待て … フリオ…待てと 言ってる、」
ぼそぼそと潜めた声でフリオニールを糾弾するウォーリアオブライトの声は低く細い。男二人が、しかもいい歳した男二人が縺れてベッドの上で攻防戦を繰り広げる様はいっそ滑稽だ。そんなのはフリオニールだって分かっているだろうに、彼の指は自重を忘れてしまっているようだ。
「外に聞こえる!」
「場所さえわきまえればいいのか? 個室だから心配いらないと思うけど」
「そういう問題ではない 」
ワイシャツのボタンを外そうとするフリオニールと、それを死守しようとするウォーリアオブライト。彼らの指は奇妙に互いの腹の上で絡まりのたくっている。
「血迷ったか、フリオニール」
病院のベッドの上で自分は一体何をやっているのか。ウォーリアオブライトは胡乱な気持ちになりつつも覆い被さっている男から顔を逸らした。
しかし、何が何でもどうあっても、フリオニールは此処でセックスに踏み切るつもりらしい。自分の腕を押さえつけてくるフリオニールの腕の力強さがそう言っている。
「何故こんな…性急にっ、」
「どうして今じゃ駄目なんだ?」
鬱陶しそうなウォーリアオブライトに、フリオニールは唇を綻ばせて笑っている。普段なら「悪かった」と言うべきところを、だ。そうして可愛くてしょうがないとでも言うかのような手付きでウォーリアオブライトの髪を撫で、額に唇を押し当てる。
「声を抑える自信が無いとか」
「……」
「それは恥かしいな。」
信じられない、非常識にもほどがある。済し崩し的になりそうなこんな場所で致すなどインモラルだ。そもそもフリオニールは私が知る限りでは誠実を好む常識人であったはずなのに一体何があったというんだ。…あれか私と暮らしていない間に嘆かわしくもふしだらな交際遍歴を繰り返してきたのかしかしだからといって臆することはないのだが付き合うと決めたなら手を握るところから始めてその後二人で出かけてよく互いを知った上で(もう殆どのことを知り尽くしてるが)自宅のベッドの上で私が主導権を握ってフリオニールをリードするというのがセオリーな流れ…
等と、ウォーリアオブライトが考えていると、シャツの前を確実に肌蹴られ、ひんやりとした空気に肌が冷えてゆく感触に息を詰めた。
「ん、」
室内は服を脱がされ身体を擦り付けられている衣擦れの音と、キスの粘ついた音に早々に陥落した。くちゃくちゃと馬鹿げた音を立てながら舌を絡め、吸い付き合い、フリオニールは何処か爽やかな香りのするウォーリアオブライトの肌に耽溺している。
「…、んむ ん、 」
ちゅ、 ちゅっ と何度も啄ばまれ、直後に深い口付けを与えられる。舌を擦り付け合い過ぎて根元がじんと痺れている。唾液が混ざり合い、息もどろどろに溶けてしまってウォーリアオブライトは頭がぼうっとするのを感じた。その腫れぼったく熱を持った肉をフリオニールは更にねぶり、しゃぶりつき、ウォーリアオブライトの頬をそっと、しかし逃さぬようにやんわりと抑え付け、そして撫でた。
「本気で逃げないなら、続けていいか」
ちゅ、と軽くキスをしながらフリオニールは燃えるような瞳で問うた。最早それは是非など問うている物ではなかった。正直ウォーリアオブライトは「私がリードしたかったのに」なんてことを、思っていたのだけれど、仕草の一つ一つに愛情と呼ばれるのであろうものが溢れている事はウォーリアオブライトにも分かっていたので、だから、彼の手を跳ね除ける替わりに、押し殺した声で言ったのだ。
「甘んじたわけではないぞ。」と、
ひたむきなまでの熱をアイスブルーの瞳に宿らせ、自分だけを見つめてくるこの双眸にフリオニールが背を押されたことは確かだった。
くったりとした腕を持ち上げて、指先にキスをする。几帳面に切られた爪先の丸味がとても嬉しくて、フリオニールは綺麗なままの皮膚に歯を立てた。ぴくん、と肩を揺らすのは未だ余韻が残っている所為だ。達き着けないまま体内に取り残されているフリオニールはキスをしながら次第に妖しい仕草でウォーリアオブライトの指の股まで舐めてゆく。
「…は、…っ、…はぁ、… 」
思いあって、繋がり合って、ウォーリアオブライトは蕩けるように身体を撓らせて精を吐いた。一度目はフリオニールの手の中で。二度目はフリオニールを受け入れながら。
「この状態のままは…、結構、辛い」
ウォーリアオブライトの身体は決して頑なな訳ではなく、寧ろ身体は快感に対する感受性が比較的豊かであった。だから、フリオニールが丹念に愛撫を施すと、彼は最早縋る藁さえ持たず濁流の中に飲み込まれてしまった。先程もフリオニールが己自身を埋め込んで、数度揺さぶっただけで頂点を迎えてしまった。その所為でフリオニールは今、中途半端な状態でウォーリアオブライトの中に取り残されているのだが、抱いても声一つ挙げない、と云う状況を覚悟していただけにフリオニールにとって僥倖と言えた。
「すまない、私だけ、… 」
そんな一層煽るような事を言われると、フリオニールは自信が無くなってしまう。吐精故の引き攣るような収縮に煽られて、異物を包み込み確かめ
るようにぴくぴくと痙攣する体内は熱くて柔らかくて、本当なら今直ぐにでも強く貫き擦り付けてしまいたかった。
「君だけ遂情させないと云う訳にはいかないな。」
「事務的なことを言うなぁ。」
「……」
三度目となると多少恐れも付いて回る。続ける事に異論は無いが、無体だけはしてくれるなとウォーリアオブライトは思ったが、口に出すのは憚れた。
その無言の苦言がフリオニールに伝わる事は無かった。
「 っ ん 」
彼は酷く熱っぽい、情熱的な仕草でウォーリアオブライトの体を啄ばみ始めたのだ。正常位の体制で、太股を抱えたフリオニールは深く腰を押し込んで内側を捏ね回すように腰を動かす。
「あっく、ばっ、 ばかも、 の… ッ 」
びくびくと震える足をするりと撫でて、ウォーリアオブライトの疾うに知ってしまった甘い場所を執拗に攻め立てる。唇を噛み締め、眉を切なげに寄せるウォルを、可愛がってやりたいのは山々だが、荒々しく踏み躙りたいとも思っている。それはもう男として産まれ落ちたからにはどうしようもないものだ。
「フリオ、…そ、 こ、 嫌だ、 …っ、 」
感じる部分を擦られると、堪らなさそうにぎゅっ、ぎゅっ、と締め付けてくる粘膜にフリオニールは熱を孕んだ溜め息を吐いた。こんな明るい時間に、隣の部屋に人がいるのに男同士で。絶対にいけない事だと分かっているのに、昂ぶりが抑えられない。軽く突き上げると「あ、 あ、 」と浮ついた声を漏らすウォーリアオブライトに堪らずフリオニールは口付けた。だがもうお互いに巧く唇を吸い合う事も出来なかったので、勢いに任せてフリオニールは腰を動かし始めた。ぢゅっ、ぢゅっ、と中で粘膜と肉、そしてフリオニールの先走りが擦れ合う音がする。もう隣の部屋だとか、声だとか、そんな事は気にしてなどいられなかった。
「 あっ、ぁっ ぁ、 っ …! 」
深く深くウォーリアオブライトと繋がり合って、彼が長い嬌声を挙げるのと同時にフリオニールは己の欲望も解き放つ。引き攣った声を漏らしながら、ウォーリアオブライトはフリオニールの激情を受け止めた。と言うよりは、受け止めざるを得なかった。じんわりと中が熱くなり、ああ終わったのか、と思ったら、どろどろになってしまった腹を省みる暇もなくフリオニールが再び動き始めたからだ。
荒い息と熱に浮かされ、けれどその中でフリオニールが端正な顔を快楽に歪め、何処か泣くのを我慢している子供のような表情で「好きだ」等と言うので、文句を言おうとして開いた唇は、その大役を果たす事無く蕩けて消えた。この愛しい男が満たされるならもう何だって良いかとさえ恐らく思ってしまった。
「 フリオ、 」
フリオ、ともう一度名前を呼ぶと、フリオニールは獰猛な獣のような綺麗な瞳で余す事無くウォーリアオブライトを見た。
「 …、 は、 … ウォル … 」
快感にフリオニールが呻いている。
瑞々しい健康的な褐色の肌はほんのり赤く染まり、唇は眩い程に濡れ光っていた。ウォーリアオブライトは一気に酩酊したような気分になる。
「 ひっ、 ひっ…、 ぅ く、… 」
ぞわぞわと腰の辺りに血が集り、身体は一層落ち着きを失くしてしまう。摩擦され続けた粘膜がひりひりしている。もう痛いのか気持ち良いのか判らない。原始的な感覚が綯い交ぜになってウォーリアオブライトの身体を満たしている。がり、とフリオニールの背中に爪を立てると愛おしさが一層募ってしまう。まるで世界中を原色で塗り潰されたかのような感覚だ。唯気持ちが良くて、気持ちが良過ぎて痛いのかも知れなくて、痛いのにフリオ
ニールが身体の中でのた打っていると思うと幸福で、幸福だと思うと気持ちが良い。
ウォーリアオブライトは訳の分からないループの中で、らしからぬ怠惰な想いに身を任せている。
何度も掠めるようなキスをされ、細い糸で繋がれていた風船を手放すように瞼を閉じた。そうして糸の切れた意識と云う名の風船は、ふらふらと覚束無く闇の向こうへ飛んで消えてしまった。
「 … ごめんなさい」
「 ……… 」
「 … すみません 」
「 ………… 」
「 … もうしない とは 言え ません が 」
「 …………… 」
午後八時
…結局。聞いた話では、意識を失うまで三時間以上も抱き合っていたらしい。漸う目を覚ましたウォーリアオブライトは無言だった。
「 …別に 怒ってなど いない 」
口を開いてみれば喉が潰れたと来た。
水を軽く口に含み、重怠くて起き上がれない自分の身体にウォーリアオブライトはうんざりとする。何があれって、ここの面会時間は九時までであるのに、それでも帰り支度をしなくてはならないことがあれである。
「その、何か、して欲しいこととかあるか?」
本当に怒ってなどいない(むしろ先に寝てしまったことに心苦しさを感じていた)のだが。
そういえば、夕食の時間にこの部屋に配給に来たであろう看護士を、フリオニールがどう言って誤魔化したのかが気になる。
服を着せていたにしても、やり過すに無理があるような。
対面切って嘘をつけない君が、そんなことに挑んでいたなんて……なんだか、面白いな。
等とウォーリアオブライトがずれた事を考えていると、フリオニールは捨てられる前の子犬のような目をしてウォーリアオブライトを呼んだ。
まあ、しかし
「…そうだな、 とりぁえず、 」
柄にも無く、不誠実で人の悪い笑みを浮かべたウォーリアオブライトは、フリオニールの腕の中でころりと寝返りを打って口を開く。
「柔らかすぎないものを買ってくれ。 ダブルベッド」
そうして三日後、二人で出掛けた家具店でフリオニールが終始俯き無言であったのは言うまでもない。
最終更新:2009年09月06日 00:06