キラーおなまう エピローグ




 ゆにゅんが目を開けると、そこは真っ白な壁で覆われた場所だった。窓から、一陣の爽やかな風が流れ込んできた。

「……病院?」

 ゆにゅんはそう呟いた。

「目が覚めたか」

「……うへーさん?」

 窓の傍にうへーが立っていた。右腕には包帯が巻かれていた。体のあちこちに傷が見られた。ゆにゅんは自らの体も、節々が痛むのを感じた。

 その瞬間、ゆにゅんは全て思い出した。あのゲームのこと、死んでいった人達のこと、そして、自分が殺した、珊瑚のこと……

 全て終わったのだ……しかし、結局僕は誰一人守れなかったのだ……。彼の目から涙が零れ落ちる。

 泣き崩れるゆにゅんを横目に、うへーは独りごちる。

「気付けば俺達はここにいた。どうやら船で周遊中に大事故に会い、大怪我を負ってこの病院に搬送されたということになっているらしい。その賠償金として、一人2億5千万ずつ、口座に振り込まれていた。ふざけた奴らだ、本当に」

 その声はゆにゅんにほとんど届くことは無かったが、一つだけ、彼は引っかかる点に気が付いた。賞金は2億5千万?生き残った者で10億を山分けするんだから、一人5億じゃないのか?他に生き残った者がいるのか?

 その時であった。

「ゆにゅんさん!良かった!目を覚ましたんだね!」

 電動車イスに乗った少女が、ゆにゅんのいる病室に入ってくる。彼のベットまでくると、ぽんと倒れこむようにして彼に抱きついた。両腕の無い、小さな体の子だった。

「お、おわたちゃん!?」

 間違いない、それは死んだと思っていたおわただった。

「なんだその顔は?勝手に死んだことにしてもらっては困るな」

 聞き覚えのある声。おわたに続いて男が病室に入ってくる。

「J、JJJさん……」

 それは確かに、JJJだった。身体中に包帯を巻き、松葉杖を突き、満身創痍であったが、確かに生きているのである。

 どうしてと呟くゆにゅんに、JJJは説明する。

 さくらに手榴弾を投げ入れられた時、駄目元で首輪にPDAを差し込むと、何と首輪が解除されたこと。そして手榴弾を投げ返し、さくらを首輪ごと吹き飛ばしたこと。おわたを助け、二人で進入禁止エリアの中でゲームが終わるのを待っていたこと。その後、二人のもとにうへーが来て、情報を提供する代わりに、ゆにゅん達を助けてくれるよう頼んだこと。

 ゆにゅんは、JJJ同様、気付いた。何故彼の首輪が解除されたのか。

 珊瑚さんだ。珊瑚があの時既に、JOKERを5回発動させてくれていたのである。

「珊瑚さん……」

 ゆにゅんは思う。珊瑚さんは、僕達3人の命を助けてくれたのだ。最初から僕達のことをずっと考えて、行動してくれていたのだ、と。

 うへーがゆにゅんに何かを手渡した。壊れたJOKER PDAだった。ゆにゅんはそれを大事そうに受け取った。

「俺は行く。傷は大方直った。もう会うこともないだろう」

 うへーが病室を出て行く。

「ゆにゅんさんはこれからどうするの?私は、ううん、私達家族は、JJJさんと一緒に暮らすことになったんだだ」

 おわたが嬉しそうにそう言うと、JJJはわずかに顔を赤らめた。

「そういうことだ。ゆにゅん、お前はどうする?」

 ゆにゅんは壊れたJOKER PDAを見た。それは大事な大事な、珊瑚の存在した意味だった。

「僕は生きるよ。珊瑚さんと、ずっと一緒にね」



                fin





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最終更新:2008年09月14日 01:09