4.お勧めのカメラ
…といって、お勧めのカメラがあるわけではない。気に入ったカメラならあるが、人によって好みが違うから気軽に人に勧められるわけではない。
何でこんなことを書くのかというと、カメラを扱うサイトの掲示板に「お勧めのカメラを教えてください」という書き込みがよくあるのだ。
そんなことを聞かれても、正直なところ困ってしまう。
これはカメラの価値が機能の多さで決まる現代機(特にデジカメ)の商法がもたらした悪影響とまで思える。
一度誰のお勧めも聞かずに手持ちのカメラ(無ければ何か買って)で撮ってみるべきだろう。写真を撮る前に自分に合ったカメラがどれかなんて分かるはずが無い。
どこぞの質問掲示板に、これからマニュアルカメラを使おうと思うのでお勧めはどれかという質問があり、躊躇無くライカを勧めている人がいた。「高くて性能の高いものを買えば失敗を機材のせいにできなくなる、だから写真が上達する」のだそうだ。そういう考え方もあるだろうが、これから初めてマニュアル機を使う人へのアドバイスとしてはどう考えても不適切だろう。それ以前にライカは高価でも性能が決して優れているわけではない。単に製造コストとブランド価値が高いから高価なのである。
車で言えばAT限定解除したばかりの人にいきなりフェラーリを勧めるに近い(フェラーリは確かにすごい出力のエンジンを載せ、高級な部品を惜しげもなく使い、その結果高価になっている。しかし乗りやすいのかというと、とても乗りにくい部類に入るだろう)。
機材にやたらにお金をかけるより、手ごろなカメラ一台とフィルムをたくさん買い、いろんな所へ行って撮ったほうがいいに決まっている。カメラに不満が出てきたらそこで初めて別のカメラを買えばいい。そうして(自分にとって)いいカメラ・悪いカメラがはじめて分かるのだと思う。
そうやって見つけたカメラが人に安易に勧められないのもわかるだろう。何台作られたカメラでも、それは自分だけのカメラなのだ。
失敗したり、驚くほどうまく撮れたりしているうちに、絞りとシャッタースピードの組み合わせの妙を知り、メンテナンスを覚え、現像を覚え、ようやく写真が「身につく」のだと思う。
時間の少ない現代人はこんなに時間をかけてられないというのはご尤もだが、最初は少し勉強してみるべきである。手っ取り早く良い結果だけ作り上げようなどと姑息な考えをしていても結局納得のいく写真は撮れず悩むことになる。
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最終更新:2009年07月16日 04:15