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没SS2・暴風ハロー注意報



 私たちは呪われている。
 殺し合いをしていたかと思えば、また別の世界に呼ばれ。
 そこでもまた、殺し合い。
 人を傷つけ傷つけられて、命を絶っては絶たれ合う。
 どうして。どうしてなのだろう。
 こうしてまた刃を振り上げることしか私にできないのはなぜなのだろう。

『知っています。わたしはそれを、知っています。
 この世界だけじゃないんです。
 世界はもともと、人を傷つけなければ生き残れない。そういう世界だったんです』

 戦闘の中。
 交錯する視界の中で、”辻斬りハロー”は私にこう告げた。
 ううん、ほんとうは彼女はただ、「はろー」と言っただけだった。でも私には、そう聞こえた。
 彼女の「はろー」は挨拶なのだ。
 これから殺す人への、そして自分への、そして世界への。
 たった一つの単語にたくさんの意味を含んで、彼女は刃を振りかざしている。

『だから世界を壊すって? とっても滑稽なお話ね。
 面白くって、涙が出てしまうわ。私もそれに乗りたいくらいよ――でもね』

 彼女の挨拶に、私も挨拶を返す。
 どうせ自らの口は別の言葉をしゃべるのだろうけれど、
 彼女にはこの言葉は伝わらないのだろうけれど。
 それでも私は、呪われた自分にできることを、諦めない。

『私は信じているわ。世界を。人間を。
 人が簡単に死ぬこんな世界でも、優しさは、なくならないんだってことを』

 静かに、ゆっくりと私はまた、”妖刀村正”を振り上げた。
 私はこの刀に呪われた。そして彼女もきっと、私の知らない何かに呪われている。
 でも信じてる。
 彼女はきっと、おそらく偶然、私をこの呪いから解放してくれるのだ。
 だから私もそのときは、あなたを助けようと思う。
 たとえそれが私の世界を終わらせることになろうとも、諦めることなんて出来ない。
 人間だから。
 私は、人間だ。


◆◆◆◆


 そのとき守屋彩子は、大きな赤い鳥居にもたれかかるようにして、自らが配置された神社の境内を眺めていた。
 森に囲まれた朝の神社はそう広くはない。
 もたれかかれるほど大きな鳥居は立派だが、肝心の本殿は中規模か、ともすれば小規模で、
 数人が入ればいっぱいになるだろう大きさだ。
 境内は静寂、空気はそよぐこともなく固定され、風をなびかせて彼女の長い黒髪を揺らすこともない。
 気温も朝らしい涼しさで、着ている服で十分に体温を調節できている。

「そう。神様は、寝てるのね。好都合だわ。罰当たりなことをしても、誰も見ていないんだから」

 彼女はぎゅっと右手に力を込め、おぞましいことを呟いた。
 でも、表情はにやけているのに、声のトーンはどこか悲しげだ。
 彩子の言葉の意味は、右手に握っている刀にあった。
 ”妖刀村正”――彼女がもともといた世界で握っていた、血を求め、所有者を強制的に殺人へと導く刀。
 元の世界で彼女はこの刀を握ってしまい、着ている水色のパーカーを返り血に塗れさせた。
 殺したのは、三人。
 ある時は浴びせられた銃弾を全て弾き返し。
 またある時は、多人数を相手にしながら一人の銅を分断した。
 彩子自身にそんなことをする力はない。”妖刀村正”が彼女を操って、超人的な力を与えたのだ。

「もう終わったと思ったのに……また、あなたに血を吸わせることができるのね」

 最終的に彩子は、いいや、”妖刀村正”は、
 青年とマッチョ二人のグループとの交戦の末に死んだはずだった。
 しかし今、彼女は蘇り。なぜかまた、忌まわしき妖刀を右手に携えてこんなところにいる。
 こんな仕打ちを行うほど、神様は非道なのだとは信じたくなかった。
 ゆえに彼女は「神様は寝ている」と言おうとしたのだが、”妖刀村正”に”修正”され、言葉はおぞましく変わってしまう。
 ”妖刀村正”は、彼女に本心を語ることさえ許さない。彩子の意思は関係ないのだ。
 だから今も……必死に彼女が抑えようとも、
 柄を握る手はカタカタと震え、血を求めて彼女を戦場へ駆り立てようとする。

 彩子は、一部ではもう疲れていた。
 だから背後から聞こえる「ざり、ざり」という砂利の音にも、耳を傾けこそすれ、振り返りはしなかった。

「はろー」
「今は朝よ。言うならぐっどもーにんぐじゃない?」

 間の抜けたあいさつに当てずっぽうな皮肉を返した”妖刀村正”は、彩子の体を遭遇者と対面させた。
 こんなふうに、どうせ勝手に振り返って、迎撃態勢を整えるのだ。自分は動く必要もない。
 またどうせ殺してしまうのなら、いっそ目でも瞑っていようか――。
 しかし、そう思っていた彩子は目の前の少女を見て、少なからず驚いた。

「はろー」

 銀の髪にフリルつきのヘッドドレスを纏い、黒を基調としたゴシック衣装に身を包んだ少女の目。
 そこに鏡のようにして映る彩子の目よりも……少女の目は暗く澄んで、機械のように無機質だったのだ。

「はろー」「はろー」

 少女、柄部霊歌は「はろー」を繰り返しながら、それが掟であるかのようにぶん、と片手を振った。
 すると小さな手に折りたたまれていたバタフライナイフが開き、中の刃を露出させる。
 片手でこれを行うにはある程度の修練かセンスが必要だということを、一般人の彩子は知らない。
 しかし感覚で分かった。あるいは”妖刀村正”が、彩子にそれを気づかせた。

「あなた。私よりも殺し慣れてるわね……?」
「はろー」「はろー」「はろー、はろー!」

 ざっ、と。境内に巻かれている砂利が数個、宙に浮かんで、
 強く地面を蹴ったのは霊歌。 
 残像が見えるほどのスタートダッシュで彩子へ歩を詰める。
 戦闘の開始。
 表情は変えない、まだ嗤うには早い。
 相手の呼吸の隙をついた初動の一撃、迎撃されなければ肋骨を裂き、心臓を一撃で抉る。
 はずだった。

「でも無理よ」

 バタフライナイフは受け止められた。
 相手は刀の鍔、丈夫な金属で出来たそれに空いている細い装飾穴に差し込むようにしてナイフの刃先を止めた。
 速い。
 見えなかった。
 霊歌が、そして行った本人の彩子が驚く。
 ”妖刀村正”は、鍔での防御と同時に刃を突き、霊歌の心臓を狙い返していたのだ。
 突きに、突きでのクロスカウンター。業物の形状の違いを利用した高度な技。

「はろー……!」
「上手く避けたわね。でもまだよ」

 霊歌はこれを体をひねって避けていた。
 相手がパーカーを真っ赤に血で染めていることから、これくらいの反撃は予想の範囲内だ。
 しかし無理な体勢の回避は隙を生み、”妖刀村正”はこれを見逃さない。

「ふふっ」

 装飾穴にナイフの刃先を引っかけたまま、力任せに妖刀を振り上げる。
 同時に刀を両手持ちへ。妖刀につられ、ナイフが自然と跳ね上げられ、さらに霊歌の体勢は崩れる。
 対して彩子は”妖刀村正”を大上段に構えた攻撃態勢、

「貴方の血を、貰うわ!!」
「はろー! はろーはろー!」
「何がハローよ! 私は! 死ぬ予定の奴に挨拶なんかしないわよ! ほらほら!」
「くっ……はろー! はろーはろーはろーはろー!」

 慌てて腕を引き、ナイフの峰で霊歌は防御。
 しつつ後ろに下がるも、追撃は止まない。修羅のごとき妖刀の連撃を彩子は浴びせ続ける。
 一撃が重い。二撃が腕をしびれさせる。三撃、四撃、五撃が脳を揺らす!
 止まらない!

「はろー!!」

 ひときわ大きく声を張り上げ、霊歌はどうにか、刃の軌道を逸らすことに成功する。
 冷静に”妖刀村正”は刃の向きを変え、横に薙ぐ。が、霊歌はナイフ片手にバク転で回避。
 スカートがめくれる暇もない速さで距離を取り、置いてあった自らのデイパックの位置まで戻った。
 戦場に、遅れて風が吹き始める。

「へぇ。体操選手になれるわよ、貴方」
「はろー。トクベツなのはあなただけではないということです」

 黒髪と銀髪が揺らめいた。
 両者はここで初めて、会話らしい会話を交わした。
 そしてこれは、一度きりだった。

「はろー!」 「はははっ!」

 今度は彩子が仕掛ける。
 走る速度は霊歌にも負けない。
 戦場に吹く風を切るように、一歩で彼我の差をぐんと詰めていく。
 これに対し霊歌は、デイパックの中から、支給されていたもう一つの武器を取り出す。
 トカレフTT30。――安全装置のない、不退転の拳銃。
 そのまま直線的に高速で迫ってくる彩子に向かって片手で連続発砲する。
 少女のもう片方の手にはいまだバタフライナイフが握られていた。
 故に彼女の”特別”たる所以、サイキック能力、《刃物を持つと身体能力が向上する》が発動し、
 不安定な片手でも狙いを確実にする。
 しかし霊歌にとって予想外、
 いや、予想内ではあったが……信じられない出来事が起こる。

 彩子は、”妖刀村正”は、銃弾を弾いた。

 瞳は霊歌を見据えたままなのに――刀がひとりでに動き、銃弾をはるか彼方へ飛ばしてしまったのだ。
 射撃音と、きぃんという金属と金属のぶつかる音のみが響いた。
 妖刀が止まらない。止まらない。接近を許す……。
 数秒後。
 地面に尻餅をつき、苦悶の表情を浮かべながら、
 押し込まれる刃に対してナイフの刃を当てているのは、霊歌だった。

「はろー……っ」
「……ふふっ」

 刃を押し込みながら、彩子は艶やかな表情で笑う。

「おチビちゃんには、まだ”私”は早かったかな? おかーさんやおにーちゃんにでもおぶって貰って、出直してきなさいな」

 そして、口から無作為な罵倒の言葉を吐いた。
 ……守屋彩子が、”妖刀村正”がしてしまった、唯一にして致命的なミスはここにあった。
 瞬間。
 柄部霊歌の目の色が、変わった。


「――――――兄さんを、侮辱するな」


 はろー。
 少女はバタフライナイフをあえて閉じ、競り合っていた”妖刀村正”の刃をそれに巻き込みながらその場で横に回転。
 華奢な体躯のどこにそんな力があるのか、と思わせる勢いで彩子ごと妖刀を大きく弾いて、
 次いで、回転の合間に地面から拾い上げていたトカレフを勢いのままに投擲する!
 トカレフはくるくると飛んだ――彩子の方ではなく、まるで見当違いの空へ。

 はろー。
 瞬時、彩子は仰天し、そして疑問を呈した。ナイフを投げるならまだしも銃を投げるとは何事か?
 とにかく体勢を立て直さねば。
 彼女は両足を開き、片手で砂利を撫でて低く重心を取り、その瞳が、空中のトカレフの異変に気付いた。
 引き金が――引かれている。銃弾は発射していないのに、

 はろー。
 霊歌はといえば片手でデコピンの形を作り、”何か”を弾いて銃の方へ飛ばしていた。
 それは、神社の境内に敷き詰められた、砂利だった。
 それは、トカレフの撃鉄に挟んでおいたもう一つの砂利に当てるための――小さな小さな、勝利への輝石。
 小石よりも小さいそれが、おはじきにおはじきを当てる遊びみたいにこん、と当たり、

「はろー。」
「うそ、でしょ!」

 人為的に挟まれたストッパーが取れ、撃鉄が降りる。
 銃弾が空中から彩子めがけて発射される。
 いや、いくら霊歌のサイキックでも、こんな方法で発射した銃弾を的確に相手の体に当てることは不可能だ。
 だがおおよそでいいなら話は別だった。完全ではないものの、彩子の方に銃弾が向かえばよかった。
 少女の読み通り。
 ”妖刀村正”はオートマシンのように、自らの近くに着弾しようとしていた銃弾を弾き返してしまう。
 そして。

「はろー……」
「あ、ちょっと、やめ――」

 ……このために”妖刀村正”は、霊歌の攻撃に対してこの一瞬のみ無防備と化す!

「はろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろー
 はろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろーはろー!!」

 バタフライナイフが羽ばたいた。
 鮮血が舞い、そして、”妖刀村正”が彩子の身体から離れる。
 ただし、彩子の手首ごと。

 ――神様が寝ているのなら絶対に起きるだろう、大音量の絶叫が神社の境内に響いた。
 しかしまだ神は現れない。
 霊歌は。そして彩子は思った。
 やはりこの世界に、神様なんていないのだ。
 勝負は、決した。

「はろー」
「う……あぁ……、あ……!」

 血がどくどくと流れる手首を呆然と見つめながら地面に膝をつく彩子を、無感情に霊歌は見下ろした。
 内心で、52回か、とだけ思った。仕留めるまでにかかった「はろー」の回数。
 これは一回の殺戮としては多かった。
 目の前の女性が……いや、”あの刀”が強敵だったことを、霊歌は認めた。
 だから終わりは、苦しまずに与えてあげよう。

「……?」

 そう思って、”辻斬りハロー”の名を持つ彼女には珍しく、トカレフを拾おうと横を見やったときだった。
 呼吸が止まったかと思った。
 視界の隅。神社から出る道の向こうに、”神様”が弓を構えているのが見えて。
 きらびやかな軽装の鎧を纏ったその女性が、霊歌のほうに向かって数本の矢を射ったのが、見えて。
 そして、視界が揺らいだ。
 どん、と。

「――――なんで」
「ふふ。あり、がと。いや、貴方的にいえば、せんきゅー、か、なぁ?」

 突き飛ばされた霊歌がその光景を理解するのには、一秒以上の時間が必要だった。
 自分を殺そうと放たれた矢は全て、守屋彩子の身体に刺さっていた。
 頭に、首に、肩に、腰、太もも、足首まで、
 まるで仁王立ちのまま死んだ武蔵坊弁慶のようで――。
 逃げて。
 戦闘が始まる前と違った優しい目が霊歌にそう語りかけているのだけが理解できて、あとは、無理だった。

 柄部霊歌は本能的に、デイパックを持って森へと駆け込んだ。
 そこで矢が一本、自分の太ももにも浅く刺さっていることに、ようやく気付いた。


◆◆◆◆


「なんで。なんであんた、庇ったんや……? 殺されようとしてたんと、違うんか!?」

 神社の鳥居をくぐった三人目の女性は、”神様”――ではなく正確には”精霊”。
 そのクラスは憤怒。真名は巴御前
 彼女は最初、自らのクラスを知った時、「つまり短気ってことかいな!」と怒ったというが。
 それを差し引いても、怒りたくなる状況だった。
 悲鳴が聞こえ、駆けつけてみたら不思議な服装(巴御前はゴスロリ衣装に馴染みがなかった)の少女と一緒に、
 手首から血をどくどく流す血まみれの女性がいた。
 だから巴御前は「ゴスロリ少女」に「血まみれの女性」が襲われたのだと思い、
 支給されていた弓を張って、固有能力『最強の矢』にてゴスロリ少女を仕留めようとしたのだが……。

「自分を殺そうとしてるやつを庇うなんて! どういうことなんや!?」
「ふふ。……違う、の。あの子は確かに、私を殺そうとしてたけど。
 それ以上に、私を助けてくれた、の……そこの、”妖刀”から、ね……」
「”妖刀”やと? 意味がわからんわ! もう喋るな、近くに学校がある、そこなら治療も」
「……でもね、私、わかったんだ」
「だから喋るな、て」
「あの子、闘ってるとき――辛そうだったんだよ。顔は氷みたいだったけど、きっと、あの子も、げぼっ」
「喋るな言うとるやろ!」

 慌てて巴御前は彼女を抱えた、
 が、そのお陰で逆に、血を吐く彩子の身体がだんだん軽くなっていくのをはっきりと感じた。
 最初から全開で攻撃なんてしなければ。もっと様子を見ておけば。
 巴御前の頭の中にたくさんの「もしも」が浮かんでは消えるが、それは現実を変えることにはならない。
 そして……血まみれの黒髪をだらりとさせながら、彼女は最期にこう言った。

「あの子も、呪われてるんだよ。助けてあげて、お姉さん」

 目を閉じて。
 守屋彩子は息を引き取った。
 巴御前は溢れる感情の行き場を失い、砂利の地面を殴りつけた。
 地面には、流れ弾ならぬ流れ矢によって、本来の機能をなさなくなった壊れたトカレフが一つ。
 ――それだけだった。
 この場にあるべき”あるもの”が、この場からは消失していた。
 巴御前はまだ、それに気づいていない。


【守屋彩子@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ 死亡】


【E-6/神社/一日目/朝】


【巴御前@夢オチだったロワのキャラでバトルロワイアル】
[状態]:行き場のない怒り
[服装]:軽鎧
[装備]:弓
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:もっと落ち着いて行動していれば……。
2:あの子(ゴスロリ少女・柄部霊歌)を助けろ、やと?
3:妖刀ってなんや?
[備考]
※夢オチロワ「怠慢な革命家」より登場。傷は主催により治っています。
※柄部霊歌の外見を記憶しました。


※トカレフTT30(柄部霊歌の支給品)は壊れました。
※守屋彩子のデイパック(基本支給品、不明支給品×2)が神社に放置されています。


◆◆◆◆



 じじじ、と。
 バタフライナイフで、服の布地の一部を裂く。
 黒いその布を包帯代わりに、柄部霊歌は、太ももの傷を応急処置していた。
 森の中、木の幹に寄りかかり。
 弾のような汗を額に浮かべながら、太ももに布を、きつく、きつく巻きつけていく。
 きつく。
 もう二度と、変な気を起こさないように、きつく。

「ええ。分かっています。知っていますとも。”辻斬りハロー”は終わらない。
 殺そうと思っていた愚者に助けられた程度では、わたしを止めるには値しません」

 ”辻斬りハロー”柄部霊歌はぶつぶつと言葉を重ねながら、
 先の理解できない出来事を、「自分を動揺させるための意趣返し」として処理しようとしていた。
 そうする以外に心を鎮める方法がなかったのだ。
 殺そうとした対象に感謝されることは、”辻斬りハロー”の数少ない弱点なのだから。

沖崎翔。あの男を殺し。優勝してあの主催も殺して。――そしてわたしは、世界を壊す」

 いつもと同じだ。そう霊歌は感じた。
 殺して、殺して、世界を壊す。沖崎翔も殺す。自分の非日常な日常は、ここに連れてこられる前と変わらない。
 だから動揺する必要もないのだと、少女は自分に言い聞かせ続けた。
 病的なまでに、言い聞かせ続ける。
 ――そして少女は、”辻斬りハロー”の再構築に成功した。

「はろー」

 立ち上がり、脇に置いたデイパックから地図を取り出そうとした。
 地図はすでに一度見ていた。
 だから目的地は西の市街地と頭の中では決めていたが、確認のためにもう一度地図を見ようと思ったのだ。
 そして柄部霊歌は、デイパックの中に混入している異物に気付く。

「……はろー?」

 ”妖刀村正”と、守屋彩子の手首が。
 入れたはずのないそれらが、霊歌のデイパックの中で異様な存在感を放っている。
 霊歌は”辻斬り”時にしては珍しく、年相応の少女らしい行動を取った。
 こてんと首をかしげて。
 しかし数秒後には、もとどおり、狂った少女らしい言葉を小さな口から紡いだ。

「――――手伝ってくれるの?」

 鬼に金棒。
 そんなのはおとぎ話の摂理だと少女は改めて思う。
 より現実的にこのことわざを表現するならこうだろう。
 辻斬りに妖刀、だ。
 こいつがいちばん、こわいのだ。


【E-6/神社の西の森/一日目/朝】


【柄部霊歌@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:太ももに怪我(中)、辻斬りハロー
[服装]:ゴスロリ衣装
[装備]:バタフライナイフ
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、妖刀村正
[思考]
基本:辻斬りとして世界を壊す。
1:沖崎翔を殺す。
2:兄さんを侮辱したやつは丁寧に殺す。
3:妖刀村正を持つか、持たないか。どうしようかな……。
4:西の町にでもいこうか?
[備考]
※サイキッカーロワ開始前から登場。
※巴御前の外見を記憶しました。




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最終更新:2012年06月28日 15:16