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没SS3・決して長続きしない幸福感、安定なんて知ることのない安心感

「あれは……?」
「……?」

ラブホテル後にしたのち、南へ伸びる道路を歩いていた彩子と霊歌はある物を見付ける。
四台ぐらいの車が、まるで重機か何かでやられたように滅茶苦茶になっていた。
道路には路肩に車が停められている事があった(ちなみにどれもロックされ乗る事は出来なかった)が、
このような状況は初めて見る。

「一体何があったの?」
「重機でも無い限りこうはなりませんよ、いやあったとしてもこの状況でこんな事する余裕なんて……ッ!」

霊歌は前方から殺気を感じた。
次の瞬間、草むらからそれは現れる。
体長3メートルはあろうかと言う筋肉隆々の巨人。
デイパックは見当たらないが首輪をしているので、参加者の一人であろう。

「な、何あいつ……!? 人間!?」
「一応人間のようですが、話が通じそうには見えないですね……」
「ゥゥウウウゥウウウウゥウウ……」

呻き声とも唸り声ともつかない声を発しながら巨人は近くにあった道路標識を掴む。
そして、あっさりそれを根元からねじ切ってしまう。
ねじ切った道路標識を槍か何かのように両手に持つ巨人。
振り回されればその攻撃力は計り知れない。人体に当たれば高い確率で致命傷だ。
彩子と霊歌は逃げた方が良いとも考えたが、追い付かれないとは限らないし、
背後から車でも投げ付けられたらそれこそ即死ものである。

「やるしかないみたいね」
「私があいつの背後に回って斬ります、彩子さん援護を……」
「無理しないでね」
「分かってますよ」

フランベルジェを構え、霊歌は走り出す。
刃物を持っている時、彼女の身体能力は高くなる。
陸上選手並の早さで霊歌は巨人の背後に向けて走り、そして彩子はM1ガーランドを構え、
巨人の正面に向け発砲する。
かつての米軍の制式銃と弾薬は、日本人であり民間の女性である彩子にとって使い易いものでは無く、
強い反動が彩子の肩を襲うが、構わず彩子は巨人に向け発砲を続けた。
7.62mmの小銃弾は確実に巨人の身体に食い込む。
そして背後に回った霊歌は巨人の背中に向け、強烈な斬撃を打ち込んだ。
鮮血がアスファルトと、霊歌に降り掛かる。
だが。

「き、効いてない……!?」

巨人は僅かに顔をしかめた程度で、動きを止める気配は無い。

「! 霊歌ちゃん!!」
「ッ!?」

巨人が左腕を思い切り薙ぎ払う。
丸太のような太い腕は、背後にいた霊歌の小さな身体をいとも容易く吹き飛ばす。

「があっ……!」
「霊歌ちゃん!!」

吹き飛ばされた霊歌は巨人の後方に停めてあったトラックの荷台扉にぶち当たり、
そのまま地面に落ちて動かなくなってしまう。
彩子はすぐにでも駆け寄りたかったが、道路標識を持った巨人がそれを許さない。
巨人は彩子に向かってゆっくり歩き始める。

「こ、このっ、近寄るな!」

彩子はガーランドを構え引き金を引く。
銃弾が発射されると同時に、甲高い金属音が鳴り響き空になったクリップが排出された。
弾切れである。

「そんな……!」

慌てて彩子は予備のクリップを取り出そうとする。
M1ガーランドは専用のクリップが無ければ装填出来ない。
そしてようやくクリップを取り出した時。
巨人は彩子目掛けて、道路標識を振り下ろしていた。

ガァン!!!

鈍い音が響く。
道路標識はアスファルトを砕いた。
彩子は咄嗟に、横に跳んで攻撃を回避した。

「あ……あ」

だがその戦意は既に折れ掛かっている。
小便を漏らしそうにもなっていて、身体の震えも止まらなくなる。
逃げたい。とにかく逃げたいと彩子は思ったが、それは霊歌を見捨てる事になる。
それは出来なかった。霊歌の兄――を演じていた青年に、霊歌を頼むと約束したから。
彩子は気力を振り絞り予備の装弾クリップをガーランドに装填する。
そして銃口を巨人に向ける。

「……来るなら、来なさいよ」

震えは止まらなかったがその声には強い意志が籠っていた。
巨人は道路標識を、彩子に向けて薙ぎ払おうとした。

バリン!! ジュゥウウウウゥウ……。

「ガァアアアァアアアァアアアア!!!」
「!?」

何かが割れる音、そして何かが溶けるような音、巨人が紛れも無い悲鳴をあげる。
彩子は何が起きたのか分からなかったが、巨人の動きが止まる。
まさしく好機。

「……っ」

彩子は巨人の頭部に狙いを定め、引き金を引いた。
続けざまに、5発の7.62mmの小銃弾が、巨人の頭部と首を貫く。
いかに強靭な肉体を持っていても、頭部を破壊されてはもはやどうにもならない。

「ぐぉ……ぉお……オオオォオオオオオ……」

呻き声を発し、巨人は倒れ、ついに沈黙した。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……れ、霊歌ちゃん」

彩子は霊歌の元へ駆け寄る。

「う……う」
「霊歌ちゃん……大丈夫!?」
「な、何とか……いっ……」

霊歌は身体中の痛みに顔を歪めるも、どうにか骨折などはしていないようだった。
ほっと胸を撫で下ろす彩子。

「あの、巨人は……?」
「……死んだよ。私が殺した」
「本当、ですか……」
「誰かが助けてくれたみたいなんだけど……」

「おい、大丈夫か?」

青年の声で二人に声が掛けられる。
二人は声の方に視線を向ける。

「え、ええ、大丈夫……」
「……!」

彩子はすぐ礼を述べたが、霊歌が硬直する。
声の主の青年に見覚えがあった。

「……沖崎……翔」

自分の兄を襲った、そして自分が人斬りとなった要因とも言える男、沖崎翔が、そこに立っていた。


【被験体00号@新・需要無しロワ  死亡】


【F-2/道路/一日目/昼】
柄部霊歌@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:全身にダメージ(大)、驚愕
[服装]:特筆事項なし
[装備]:フランベルジェ
[道具]:基本支給品、カレーの材料セット
[思考]
基本:バトルロワイアルを破壊する。
1:沖崎翔……。
[備考]
※登場時期はサイキッカーバトルロワイアル開始後、福沢正也と出会ってからです。
守谷彩子への勘違いは解けました。
※辻斬り思考が消えました。
※辛うじて歩けますが走る事は難しい状態です。

【守谷彩子@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:M1ガーランド(3/8)
[道具]:基本支給品、鍋、皮むき器、調味料一式、M1ガーランド装弾クリップ(2)
[思考]
基本:自分らしくお気楽に生きよう。
1:霊歌ちゃん……?
2:なにか罪滅ぼし的なことは出来ないだろうか。
3:あのAV衝撃的すぎたわ……。
[備考]
※需要なし1st死亡後から登場
※柄部霊歌への勘違いは解けました
稲垣葉月レックスのAVを見てしまいました


◆◆◆


塔を後にした後、草原地帯を歩いていた沖崎翔が見付けたのは、
トラックにでも轢かれたかのように潰された死体。
毛髪や衣服の切れ端などから辛うじて女性だとは分かった。
周囲に重機や大型トラックの通った痕跡は無く、血の足跡らしきものもあったため、
考え難くはあったが、人一人を素手でミンチに出来るような参加者が存在すると翔は考えるしか無かった。
周囲を見てみると、この犠牲者の所持品と思われる物が散乱しているようだった。
まずスタンガン、そしてデイパックの中には基本支給品の他に、濃硫酸の瓶が三個入っていた。
翔はスタンガンと濃硫酸の瓶を入手しその場を後にした。

そしてどれくらい歩いた時だろうか、銃声が彼の耳に届く。
見れば道路の上に、遠目からでも目立つような筋肉隆々の巨人がおり、その巨人に銃を向けている、
若い女性の姿も見えた。

「戦ってんのか……?」

どうやら巨人と女性が交戦しているらしい。
巨人は何やら道路標識のような物を手に持っている。
どちらかが殺し合いに乗っているのか、それとも両方殺し合いに乗っているのか。
翔には分からなかったが――――。

「女の方が不利っぽいな、良し、女の方助けてやろう」

翔は女性の方に助力する事に決めた。
筋肉質の巨人と美しい女性、彼がどちらを援護するかは考えるまでも無かったかもしれない。
翔は先刻手に入れた硫酸瓶を一つ取り出す。

ガァン!!!

「!」

轟音が響く。
巨人が道路標識を振り下ろしたようだ。
どうやら女性はまだ無事のようだが、これでは時間の問題だろう。
翔は巨人に気付かれないよう、しかし急ぎ足で巨人と女性の交戦する場に近付く。
そして巨人が自分に背を向けた。
その背中に向けて翔は硫酸瓶を投げ付ける。
硫酸瓶は巨人の背中に当たって砕け、じゅうううっ、と煙をあげて背中の皮膚を焦がした。

「ガァアアアァアアアァアアアア!!!」

巨人が悲鳴をあげた。どうやら効いているらしい。
元々背中に傷があったのでそれのせいかもしれないが。
間も無く女性が持っていたライフルで巨人の頭部を撃ち抜き、巨人は倒れ動かなくなった。
女性は駆け出して停めてあったトラックの所で座り込む、どうやら同行者がいたらしい。

「放っておく訳にもいかねぇし、行くか」

同行者がいるのなら、女性が殺し合いに乗っている可能性は低いだろう。
翔は道路に出て、女性の元に歩み寄る。
同行者はゴスロリ風の格好をした少女のようだった。

「おい、大丈夫か?」

翔は女性と少女に声を掛ける。
二人共視線を翔の方に向けた。

「え、ええ、大丈夫……」

女性は挨拶してくれたが、少女の方は自分を見るなり硬直してしまう。
そして。

「……沖崎……翔」
「……?」

少女が、自分の名前をフルネームで呟いた。

(……俺の事知ってんのか?)

しかし翔は少女の事を知らない。
いや、知らなかったと言うより思い出せないと言った方が良いだろうか。
その少女が、自分のかつてのクラスメイトであり、自分が殺害した人間の一人、柄部霊貴の妹、
柄部霊歌である事を、沖崎翔は思い出せずにいた。


【F-2/道路/一日目/昼】
【沖崎翔@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]健康、スタンス反転
[服装]特筆事項無し
[装備]日本刀
[道具]基本支給品一式、救急セット(消毒薬、ガーゼ消費)@オリジナル、濃硫酸(2)、スタンガン@現実、ランダム支給品×1
[思考・行動]
基本:独善的に、自己犠牲の精神で人を助ける。
1:主催者は必ず打倒する。
2:こいつ(柄部霊歌)誰だっけ……。
[備考]
※サイキッカーバトルロワイアル参加前からの参加です。
※能力に関しては『自殺願望』を与えることを禁止とします。
※スタンスが反転しています。
※『自分が以前までの自分ではない』ことに薄々感付いています。
※柄部霊歌の事を思い出すかどうかは次の書き手さんにお任せします。
中村アヤの所持品の内、基本支給品以外を回収しました。


≪支給品紹介≫
【濃硫酸】
中村アヤに3本支給。
濃度の高い硫酸が入った小瓶。投げ付けると割れて中の硫酸が撒き散らされる。

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最終更新:2012年10月09日 00:08