D-1に掛かる鉄橋の、西側の入口。
「……タクマさんが、死んだのか」
少年、
紆余曲折は放送を聞いて愕然とする。
21人も死んでいるのもそうだが捜していた
切磋琢磨の名前が呼ばれた。
出来れば生きて再会したかったが、もうどうにもならない。
デパートで遭遇した
香坂幹葦、
大崎年光、
愛崎一美の名前は呼ばれる事は無かった。
三人とも、危険人物である。
禁止エリアはいずれも
現在位置からは離れているので、当面は気にする事は無いだろう。
「……行こう」
荷物を纏め、紆余曲折は立ち上がる。
目の前には大きな鉄橋、これを今から渡ろうと紆余曲折はしていた。
◆◆◆
映像が再生される。
大昔のビデオテープを、大昔のビデオデッキで再生したような掠れた映像。
どこかの住宅地と思われる場所。
自分はどうやら、ランドセルを背負って学校へ行こうとしているらしい。
誰か、少女の姿が見える。
酷く色褪せた、特に、少女の顔の辺りは酷く白んでいて全く見えない。
「おす! おはよう■■■■!」
これは自分の声のようだ。少女の名前を呼んでいるようだが、名前の部分はノイズでかき消された。
少女も何か言っているようだが、ほとんど聞こえない。
音が遠く、小さすぎる。
しかしこの少女は誰だろう。
以前に会った事があるだろうか。
それとも、ただの夢で、この少女も夢の産物に過ぎず、別に誰でも無いのだろうか。
分からない。
分からない――――。
……
……
「ん……」
目を覚ました愛崎一美が最初に見えたのは、太陽が高く昇った青空。
その次に、鉄橋の主塔とそこから張られたケーブル。
「……」
頭の痛みに耐えながらゆっくりと一美は上半身を起こす。
周囲を見渡すと、どうやらここは橋の上のようだった。
なぜ橋に自分はいるのだろう、と、一美は記憶を手繰り寄せる。
「確か……ああそうだ、あたしは、白崎を刺した後、
酒々落々の奴も刺そうとして……。
そこからどうしてここに? うーん、わかんないな」
結局自分がなぜデパートから橋に移動しているのか分からない。
だが、現に自分はこの橋にいるのだから、それで納得するしか無いだろう。
立ち上がろうとした時、一美はある物を見付けた。
自分のすぐ隣に男が倒れて意識を失っていた。
「……」
なぜこの男が意識を失っているのかは知らない。
自分に原因があるような、ないような気もするが、そんな事はどうでも良い。
気を失っているなら、完全にこちらが優利。
すぐ近くに自分が持っていたナイフも転がっていた。
一美はナイフを拾って立ち上がり、うつ伏せに倒れる男の傍に立つ。
柄を両手で持ち刃を下に向けた。
これを男の背中に向け一気に振り下ろせば、男の命は容易く奪える。
気絶している無防備な人間を無慈悲に襲う、何と悪人らしい事か。
そして一美は、男の背中に向けナイフを――――。
「待つんだ!!」
「……?」
聞き覚えのある声で一美は動きを止める。
声の方向へ顔を向けると、やはり見覚えのある顔が。
確か――――そうだ、夢の中に出てきた少年とそっくりだ。
◆◆◆
「待つんだ!!」
今にもその少女がナイフを、倒れている男へ振り下ろそうとするのを見て紆余曲折は思わず叫んだ。
その少女には見覚えがある。
デパートで出会った愛崎一美に間違い無い。
いつの間にこの橋に移動していたのか。
「愛崎ちゃん……だよな?」
「……あー」
紆余曲折は愛崎の名前を呼ぶ、向こうも自分の事は覚えている筈だと思ったゆえに。
だが。
「おにーさん、あたしの夢に出てきた奴に似てんなぁ」
「……え?」
一美の言葉が一瞬、紆余曲折には理解できなかった。
彼女の言う「夢」が一体何の事なのか分からないが、まるで一美は最初から自分の事など知らなかったように話している。
数時間前に確かにデパートで遭遇し会話もした筈だが。
「デパートで会っただろ? 熱帯魚の店で会った紆余曲折だよ」
「……熱帯魚……紆余曲折……あー、確かそんな夢だったなー」
「夢……? 一体何を言っているんだ?」
ますます一美が何を言っているのか紆余曲折には分からなかった。
デパート一階の熱帯魚売り場での出来事を夢だと思い込んでいるのだろうか。
いや、良く見るとその時と今では一美の雰囲気が違うように見える。
自分と別れた後、彼女の身に何かあったのだろうか。
(いや、今はそんな事考えてる場合じゃないな)
今しなければならない事を紆余曲折は考える。
何はともあれ愛崎一美は倒れている男性を殺そうとしていた、何としても止めなければならない。
「おにーさん、あたしの邪魔するなら、おにーさんから殺しちゃうよ」
ナイフを突き付け一美は紆余曲折を威嚇する。
「駄目だ愛崎ちゃん、悪い事は言わないから人殺しなんて真似はよせ」
「しょっぱい言葉だなァありがちだ……」
「君は、結局、殺し合いに乗ってしまったのか?」
「結局ってゆーか、あたしは最初から悪人目指してるからなぁ」
「……あの時言ってたじゃないか、『ひとみん』に一番近い『
榎本瞳』は殺したくはないって」
「……おにーさん、あたしの見た夢の内容そのまんまの事言ってるな」
「……ッ」
このままでは埒が明かない。
だが、男性を見捨てて逃げるのも後味が悪すぎる。
ここで男性を見捨てれば間違い無く愛崎一美は男性を殺すだろう。
「愛崎ちゃ――――」
尚も説得を続けようとした紆余曲折の言葉は中断させられた。
一美が突然持っていたナイフを紆余曲折に向けて投げ付けた。
ナイフは紆余曲折の肋骨のすぐ下辺りに刺さった。
突然の事に彼は能力を発動させる暇も無かった。
「ヴッ!?」
「あーもうめんどくさいから、おにーさんから殺すよ」
一美はデイパックに手を突っ込み、ある物を取り出す。
それは釘抜きと金槌が一体となったネイルハンマー。
一気に紆余曲折に近付き左足をハンマーで殴りつける。
「ぐあぁ!!」
左足に走った衝撃に耐え切れず、苦鳴をあげ紆余曲折は片膝をつく。
丁度、一美の視線より下に紆余曲折の頭部が来る体勢となった。
好機なり――――笑えを浮かべる一美。
「じゃあな、おにーさん」
一美は紆余曲折の後頭部に向け、ハンマーを振り下ろす。
ガンッ
「……!」
後頭部に強い衝撃を受け、紆余曲折の身体が痺れる。
衝撃で地面にうつ伏せになるように倒れ込む。
ズブッ
「が、あ」
紆余曲折の胸元に浅く刺さっていたナイフが奥まで差し込まれ、心臓に達してしまった。
既に致命傷になっているが一美はその事に気付かず、もう一発、紆余曲折の後頭部をハンマーで殴り付ける。
血が飛び散り紆余曲折の頭部が陥没する。
頭蓋骨は愚か脳にも相当な損傷を負っている事は誰が見ても予想がつくだろう。
目の前が頭から流れる血で赤く染まっていき、意識が遠のいていく。
(身体が、動か、な――――しぬ、のか――――ぼく――――は――――――――)
消えていく視野で、最期に紆余曲折が見たものは、楽しそうに笑う少女の顔だった。
【紆余曲折@四字熟語バトルロワイアル 死亡】
◆◆◆
沖崎翔が意識を取り戻した時、妙な音が聞こえた。
何かを殴りつけるような鈍い音と、男の短い悲鳴。
はっきりしない頭を無理矢理働かせ、音のする方向に顔を向ける。
ツインテールの少女。
その右手には血塗れのハンマー。
足元には頭と胸元から血を流し倒れる少年。
とても生きているとは思えない。
少女は少年の胸に刺さっていたナイフを引き抜き、少年の身体を足蹴にする。
「死んだか? まあ、こんだけやりゃあな……ん?」
少女が翔に気付いたようで振り向いた。
「何だ起きちまったのか……おにーさんが邪魔しなけりゃ今頃……まあいいや。
運が良かったな大きい方のおにーさん、こっちのおにーさんに感謝しなよ、それじゃ」
「お、おい待て……!」
翔が止める間も無く、少女は中央分離帯を乗り越え走って逃げて行ってしまった。
中々に早く追い掛けるのは徒労だと翔は判断し追跡をすぐに諦める。
地面に伏した少年の元に寄るが既に息絶えていた。
「……あのガキ、小学生ぐらいに見えたがとんでもねぇな」
少年は胸を刺された上頭を鈍器で何度も殴られ惨殺されていた。
小学生の少女がこんな事をするとは信じ難い。
だが、状況からして先程の少女が下手人なのは間違い無いだろう。
「……そういや俺、何で気絶してたんだ」
橋の上で気絶していた理由を翔は記憶から探す。
しかしどうも思い出せない。
先程の少女も、見覚えがある気がしてそれが気絶した理由にも関わっているように思えるが、思い出せない。
何か頭に強い衝撃を受けたような気がするが、思い出せない。
「まあいいか……」
気絶した理由を追求するより、この少年の荷物を探る方が良いだろうと翔は判断する。
死人に荷物は必要無い。
翔は少年の所持品を漁り、小型自動拳銃と予備弾倉を手に入れた。
その際、地図と名簿に何か書き込まれているのを発見する。
「これは……そうか、俺が気絶している間に第一回放送やっちまったのか」
自分が気絶している間に重要な放送がなされてしまっていたようだ。
だが、この少年の地図と名簿にはその放送の情報が書き込まれている、これは幸運だと翔は思う。
周囲に人の気配が無い事を確認し翔は自分の地図と名簿に情報を書き写し始める。
既に死者は大勢出ているらしい。
何人もの名前が消されている。
「……」
その内の「
心機一転」と言う名前を見た時、翔の動きが止まる。
心機一転の名前は線が引かれ消されている。
つまりこの心機一転なる人物も死んでいると言う事。
一瞬、何か引っかかるようなものを感じた。
違和感と言った方が良いだろうか。
「……んー」
その違和感の正体は、分からなかった。
自分の性格の根本にも関わるような事のような気もするが。
「まあ、良いか」
引き続き、翔は情報を書き写し続けた。
【D-1/鉄橋/一日目/日中】
【沖崎翔@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:頭部にダメージ(小)、スタンス反転
[服装]:特筆事項無し
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、救急セット(消毒薬、ガーゼ消費)@オリジナル、ランダム支給品(1)、
コルトM1908ベストポケット(5/6)、コルトM1908ベストポケット弾倉(1)
[思考・行動]
基本:独善的に、自己犠牲の精神で人を助ける。
1:主催者は必ず打倒する。
2:さっきのあのガキ(愛崎一美)はやべえな……。
[備考]
※サイキッカーバトルロワイアル参加前からの参加です。
※能力に関しては『自殺願望』を与えることを禁止とします。
※放送の情報を紆余曲折の地図と名簿より得ました。
※放送後に初めて心機一転の死を知りましたが顔と名前が一致していないためスタンス反転は治っていません。
※愛崎一美の容姿のみ記憶しました。
◆◆◆
加賀咲は橋を西に向かって渡る。
放送は橋の上で聞いた。
既に21人死んでいる事にショックは隠せず、自分が生きている事は奇跡なのだと思った。
「ん……」
前方に人影を発見する。
小学生ぐらいのツインテールが可愛らしい少女。
だが、良く見ればその衣服には返り血らしきものが付着しており、右手にはナイフ、左手にはハンマーを、それぞれ持っていた。
しかも、どっちも血塗れであった。
「え……!?」
咲は吃驚する。
あのような小さな女の子が、殺し合いに乗っていると言うのか。
信じられなかったが、両手に血塗れの武器を持っているのはどう見ても尋常では無い。
少女の方もどうやらこちらに気付いたようで、足を早めている気がする。
踵を返して逃げようかと思ったが追いつかれたらそこまでだし、元来た道を戻る事になってしまう。
そうこうしている内に。
「なあ、おねーさん」
「ひっ!」
少女が声を掛けてきた。
「あたしのお願い聞いてくれるか? そしたらおねーさん、今回は何もしないでいてやる」
少女は、いきなり交換条件を出してきた。
咲は悩んだが、相手に比べ自分はまともな武器を持っていない。
お願いを聞いたところで本当に何もしないかどうかは分からないが、賭けてみる事にした。
「な、何?」
「おねーさんの服くれ」
「え?」
「あたしの武器、血で濡れたから、拭くものほしーんだ」
「あ……あ」
「嫌ならいいよ、おねーさん殺して奪えば良いし」
「ま、待って! 待って! わ、わかったよ、待って、待ってて……」
背に腹は代えられない。
咲は羞恥心を押し殺し、上着を脱いだ。
ブラジャーに包まれた豊満な乳房が晒され、揺れ動く。
脱いだ上着を、咲は少女に手渡す。
「おっぱいでけー」
「……うるさい」
「何か言った?」
「何も! ……はいこれ」
「ありがと」
「……」
「もう行って良いよ。って言うか早く言った方が良いよ。あたし、心変わりしちゃうかもよー」
「ひ、ひいい!!」
一刻も早くこの少女から離れたかった。
咲は全速力で駆け出し少女の横を通り過ぎた。
走る度に、大きな乳房は激しく縦に揺れ動き、見る者によってはとても眼福な光景だっただろう。
少女――――愛崎一美は渡された咲の上着で、血に濡れたナイフとハンマーを拭き始めた。
【D-1/鉄橋/一日目/日中】
【加賀咲@DOLバトルロワイアル4th】
[状態]:恐怖
[服装]:上半身裸(ブラジャーのみ)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、漫画雑誌@オリジナル、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:死なないようにする。
1:殺し合いに乗った人物に出会ったら即逃げる。
[備考]
※DOLバトルロワイアル4th参加前からの参加です。
※
川田喜雄への勘違いは彼女の中で自己解決したようですが、苦手意識が若干残っています。
※沖崎翔によって『父親への憎悪』の感覚を引き下げられました。父親のことを許してはいませんが殺したい程の憎悪はありません。他に、男性恐怖症発症の理由が分からなくなっています。
※愛崎一美の容姿のみ記憶しました。
【愛崎一美@数だけロワ】
[状態]:気絶、スタンス反転
[服装]:若干の返り血
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:基本支給品一式、ネイルハンマー、加賀咲の上着(血付着)、ランダム支給品(1)
[思考]
基本:悪人になりたい。
[備考]
※数だけロワ参加前からの参加です
※
古川正人、
カインツ・アルフォードの名前と容姿を記憶しました。
※スタンス反転により「ひとつのことをやり通す性格」に変わりました。
※放送を聞いていません。
※加賀咲、沖崎翔の容姿のみ記憶しました。
※紆余曲折の死体、デイパック(基本支給品一式、お徳用ストロー入り)はD-1橋上に放置されています。
《支給品紹介》
【ネイルハンマー】
愛崎一美に支給。
釘抜きと金槌が一体となったハンマー。某宮田の得物でもある。
《調達品紹介》
【加賀咲の上着】
愛崎一美がD-1鉄橋上にて加賀咲本人より奪取。
加賀咲の上着。加賀咲の巨乳の匂いが(ry
最終更新:2013年02月20日 03:53