水素

水素

水素は原子番号1、元素記号Hの元素である。


性質

融点

-259.14℃

沸点

-253.87℃

密度

0.08988g/L

原子量

1.00794

電気陰性度

2.20

酸化数

1,-1

 

水素は周期表において、1族1周期に分類される元素である。単に水素という場合は水素分子(H2)を表わすことが多い。

水素は、常温、常圧下では無色無臭の非常に軽い気体である。融点は-259℃、沸点は-253℃である。

水素の電子数は1であり、1s軌道には2つまで電子が入ることができるので水素はアルカリ金属とハロゲンとの両方の性質をもち、それゆえ酸化数は1と-1を取りうる。電気陰性度が2.2というところからもわかる。

上記に示した理由から、水素は陽イオン、陰イオンの両方になりうる。

水素の陽イオンはアレニウスの定義によると、酸の本体でもある。

水素の陰イオンは水素がナトリウムなどの電気陰性度が小さい金属との化合物に見受けられる。この場合は水素はハロゲンに近い性質をもっていると考えられる。

水素分子は反応性に富み、とくに空気中で燃え、酸素中では爆発を起こすことは大変有名である。(水素と酸素を体積比2:1で混ぜた混合気体を水素爆鳴気という。)

他にも、塩素と水素の混合気体は塩素爆鳴気と呼ばれ、光にさらすだけでも爆発を引き起こす。

水素にはオルト水素、パラ水素と呼ばれる水素が存在している。これらの違いは原子核の核スピンの配向の差であり、化学的性質はほとんど変わらない。


反応

水素が空気中で燃焼すると、水(H2O)が生成される。

2H2+O2→2H2O

 

水素と塩素が反応すると、塩化水素(HCl)が生成される。

H2+Cl2→2HCl

 

水素中でナトリウムが燃焼すると、水素化ナトリウム(NaH)を生じる。

2Na+H2→2NaH

 

適切な条件下で、アセチレン(HC≡CH)と水素を反応させると、エチレン(H2C=CH2)を生じる。さらに反応させると、エチレンはエタン(H3C-CH3)を生じる。

HC≡CH+H2→H2C=CH2

H2C=CH2+H2→H3C-CH3

この反応において、触媒にはニッケルなどが用いられる。


製法

実験室において、最も簡単な水素の作り方は、水素よりもイオン化傾向の大きい金属を酸と反応させることで作られる。

(例)

亜鉛(Zn)と塩酸(HCl)を反応させる。

Zn+2HCl→H2+ZnCl2 

 

ほかに、水酸化ナトリウム水溶液などの電気分解によっても作られる。

工業的には、直鎖アルカンを水蒸気と反応させることで大量に生成している。

(例)

エタン(H3C-CH3)と水蒸気(H2O)を反応させる。

C2H6+4H2O→7H2+2CO2 


化合物

水素の化合物は数多く知られており、有機物まで範囲を広げると、その数は膨大なものとなる。そもそも有機物とは、一般には炭素、水素が含まれていることが条件なので、有機物は当然、水素の化合物である。

水素の無機化合物については、水素が陽イオン、陰イオンのどちらにでも働くため、数多くある。

また、地球上に最も多く存在する水素の化合物は水(H2O)である。


同位体

水素の同位体は7つ知られており、1Hから、7Hまで知られている。

同位体

 中性子数

半減期 

 崩壊モード

天然存在比(%)

1H

 0

安定 

なし

99.990%

2H

1

安定

なし

0.010%

3H

 2

12.32年

β- 

ほぼ0

4H

 3

1.39×10-22秒 

NE

0

5H

 4

9.1×10-22秒 

NE 

0

6H

 5

2.90×10-22秒 

NE 

0

7H

 6

2.3×10-23秒 

NE 

0

天然に存在するのは1Hと2Hおよび、ごくわずかな3Hであって、4H以降は実験室でのみ作られている。

2Hと、3Hには特別な名前がつけられており、それぞれD(ジュウテリウム、重水素)、T(トリチウム)と呼ばれている。

1Hは私たちの周りにもっとも多く見られる水素の同位体であり、全ての核種の中で唯一、中性子を持たない核種である。それに対し、2Hは安定同位体であるにも関わらず、わずかにしか存在していない。

2Hは1Hと同じようにH2Oの形、すなわち2H2O(D2O)もしくは、2HO1H(DOH)として存在している。これらは1H2Oを軽水というのに対して、重水と呼ばれている。

重水は主に原子核反応の中性子の減速材として使われたり、トレーサーとしても使われる。

2Hは放射能を持たないため、放射線による被害はないが、2H2O等の形で体内に吸収されると、浸透圧などの物理的な1Hとの違いにより、若干の毒性を持つ。(一般には、同位体の差による物理的な違いは大きくないが、水素の場合、1Hと2Hの間には約2倍もの質量の差がある。これが直接の物理的性質の差異を示す要因の1つとなっている。)

3Hはもともと環境中にはほとんど存在しなかったが、核実験などによってフォールアウトトリチウムとして存在している。3Hは半減期が約12年で、β-崩壊をおこして、3Heになる

4H以降は半減期が非常に短く、自然界には全く存在しない。4H以降は全て中性子を複数個放出して3Hになる。ちなみに、5Hと7Hは理化学研究所で初めて合成された。


歴史

水素は1766年にイギリスの物理学者キャベンディッシュによって発見された。

しかし水素(Hydrogen)と名付けたのはラボアジェである。

ただし、ボイルによって1671年に「鉄を希硝酸に溶かすと燃える気体」が発生すると記載しており、すなわちこれは水素であるため、水素の最初の発見者は、ボイルだと言うこともできる。

2006年に、周期表上での水素の位置を、1族ではなく、ハロゲンの要素も持つことから、1族と17族の間におくべきでは、という提案がされているが、いまだに水素は1族のままである。


存在 

水素は宇宙で最も多い元素である。なぜならば、水素の原子核は1つずつの陽子と電子からなり、もっとも構造が単純であったために、ビッグバンのときに多く作られたからである。(4Heよりも1Hの方がはるかに多く作られた理由は、宇宙が原子を作れるほどに温度が下がったときに、中性子よりも、陽子の方が多かったからである。) 

しかし、地球の大気中には単体水素は非常に少なく、わずか3ppmほどである。

地球における水素は、ほとんどが水として存在し、海に多い。

また、単体水素は天然ガスの中にある程度存在しており、地球上では単体水素はほとんどこれによってのみ得られる。

ちなみに水素のクラーク数は6番目である。


リンク

 

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    ↓

    リチウム

 

 

1

2

3

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5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

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17

18

1

H

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

He

2

Li

Be

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B

C

N

O

F

Ne

3

Na

Mg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Al

Si

P

S

Cl

Ar

4

K

Ca

Sc

Ti

V

Cr

Mn

Fe

Co

Ni

Cu

Zn

Ga

Ge

As

Se

Br

Kr

5

Rb

Sr

Y

Zr

Nb

Mo

Tc

Ru

Rh

Pd

Ag

Cd

In

Sn

Sb

Te

I

Xe

6

Cs

Ba

*

Hf

Ta

W

Re

Os

Ir

Pt

Au

Hg

Tl

Pb

Bi

Po

At

Rn

7

Fr

Ra

**

Rf

Db

Sg

Bh

Hs

Mt

Ds

Rg

Cn

Uut

Fl

Uup

Lv

Uus

Uuo

8

Uue

Ubn

*** 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     

 

 

 

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La

Ce

Pr

Nd

Pm

Sm

Eu

Gd

Tb

Dy

Ho

Er

Tm

Yb

Lu

 

 

 

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Ac

Th

Pa

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Pu

Am

Cm

Bk

Cf

Es

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Md

No

Lr

 

最終更新:2014年07月07日 03:17