ベリリウム
ベリリウムは原子番号4、元素記号Beの元素である。
性質
ベリリウムは周期表において、2族2周期に分類される元素である。
ベリリウムは、常温、常圧下では硬く、もろい銀白色の軽い金属である。融点は1287℃、沸点は2469℃である。
融点 |
1287℃ |
沸点 |
2469℃ |
密度 |
1850kg/m3 |
電気陰性度 |
1.57 |
酸化数 |
3,2,1 |
ベリリウムは2族に属する金属である。しかしながら、アルカリ土類金属としての性質をほとんど持たず、分類上はアルカリ土類に分類されないでマグネシウムとともにただ単に2族とよばれる。
それは、ベリリウムが常温の水や熱湯と反応しないこと、炎色反応を示さないことや、化合物ががイオン結晶ではなく共有結合結晶としての性質が強いことが理由である。
単体のベリリウムは硬く、かつもろいので加工に適さないが、熱すると延性、展性が増す。
常温において、反応性はあまり高くなく、酸や塩基とは反応するが、沸騰した水とは反応しない。空気中の酸素とは反応するものの、表面に酸化皮膜を形成し、内部まで侵されない。硝酸とは、ベリリウムは不動体を形成するため、ベリリウムは溶けない。
ベリリウムは電子が少なく、放射線を透過させることができ、また、α線を照射すると、中性子線を放出する。
金属ベリリウムおよびベリリウム化合物には毒性が知られており、肺に入ってしまうと、ベリリウム肺症と呼ばれる重度の肺炎を引き起こす。
反応
ベリリウムが空気中で燃焼すると、酸化ベリリウム(BeO)が生成される。
2Be+O2→2BeO
ベリリウムを塩化水素(HCl)と反応させると塩化ベリリウム(BeCl2)が生成される。
Be+2HCl→BeCl2+H2
ベリリウムとヨウ素(I2)を500℃以上で反応させるとヨウ化ベリリウム(BeI2)が
生成される。
Be+I2→BeI2
ベリリウムを濃水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に入れるとベリリウム酸ナトリウム(Na2[Be(OH)4])が生成される。
これは以下のイオン式で表わされる。
Be+2OH-+2H2O→[Be(OH)4]2-+H2
製法
ベリリウムは単体で産出されることはほとんどない。
酸化ベリリウム(BeO)をリチウムで還元する。
BeO+2Li→Be+Li2O
ベリリウムを緑柱石のような鉱石から生成したい場合は、鉱石を強酸、強塩基で処理し、一度ベリリウム塩やベリリウム酸塩にしてから、加熱することで、酸化ベリリウムを得た後に上記の方法でベリリウムを得る。
ベリリウムは上記のとおり、イオン結合性の化合物よりも、共有結合性の化合物を多く作るため、融解塩電解による単離はあまり望めない。
化合物
ベリリウムはほかの2族の元素と比べると反応性に劣るが、金属一般にいうと決して反応性は低くない。ベリリウムには多くの化合物があるため、その一部を下に示す。
ハロゲン化物
フッ化ベリリウム(BeF2)
塩化ベリリウム(BeCl2)
臭化ベリリウム(BeBr2)
ヨウ化ベリリウム(BeI2)
酸化物系(BeX)
酸化ベリリウム(BeO)
多原子イオン塩
硫酸ベリリウム(BeSO4)
硝酸ベリリウム(Be(NO3)2)
水酸化ベリリウム(Be(OH)2)
ベリリウムのオキソ酸塩
ベリリウム酸ナトリウム(Na2[Be(OH)4])
ベリリウム酸カリウム(K2[Be(OH)4])
同位体
同位体 |
中性子数 |
半減期 |
崩壊モード |
天然存在比(%) |
5Be |
1 |
不明 |
? |
0 |
6Be |
2 |
5.0×10-21秒 |
? |
0 |
7Be |
3 |
53.22日 |
γ,EC |
0 |
8Be |
4 |
6.7×10-17秒 |
α |
0 |
9Be |
5 |
安定 |
なし |
100 |
10Be |
6 |
1510000年 |
β- |
0 |
11Be |
7 |
13.81秒 |
? |
0 |
12Be |
8 |
0.02149秒 |
? |
0 |
13Be |
9 |
5.0×10-9秒 |
NE |
0 |
14Be |
10 |
0.00484秒 |
? |
0 |
15Be |
11 |
2.0×10-7秒 |
? |
0 |
16Be |
12 |
2.0×10-7秒 |
? |
0 |
天然のベリリウムはほとんど9Beであり、モノアイソトピック元素のひとつである。
7Beと10Beは大気圏内に突入した宇宙線によって生成され、地上にも見出され、14Cと同様に年代測定に用いられる。
また、8Beは半減期は非常に短いものの、ビッグバンが起きたとき、12Cを作るために、すなわちトリプルアルファ反応に重要な役割を果たした。
鉛よりも少ない電子数でかつ偶数で安定な原子核がひとつしかない元素はベリリウムのみである。
歴史
1797年にボークランが、緑柱石から酸化ベリリウムを見出したのが最初。これを塩酸で処理すると、甘みを持った塩化ベリリウムを与えることから、ギリシャ語で甘みを意味するglucusより、グルシニウムと命名した。
しかし、酢酸鉛など、甘みをもつ塩はほかにも多く存在したため、緑柱石にちなんで、ベリリウムと名づけられた。
その後、1828年にウェーラーが金属ベリリウムを単離した。
存在
ベリリウムは原子番号1~5までの中では最も少なく、地球上に豊富ではなく、広く分布しているわけでもない。
ベリリウムは緑柱石やフェナサイトなどの鉱石に含まれており、事実それらが最も大きい供給源となっている。
しかし、ベリリウムは銅と合金にすると、ベリリウム-銅合金として、飛躍的に性質が向上するなどの理由より、需要が多く、生産が追いつかないためにベリリウムは一般的にコストが高い。また、ベリリウムの高い毒性によって、加工設備が高くなることも、ベリリウム生産の向上を妨げている一要因である。
リンク
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