第十章…「冬架の独り言」
流派を興してから早いもので2ヶ月の月日が経過していた。井戸で出会った鏡童達は勿論、そこで助けてくれた天人の吼竜も仲間に加わり賑やかな毎日が続いている。長陽城での名声も挙がってきたせいか流派に入りたいと声がかかる様になってきた。今では流派員も30名を超えて僕にとってはかなりの大所帯と思う。新たな仲間の朱昴は、術式系の天人で歳が近いせいもあってよく話す仲になっていた。
「あいつとは集会の時しかまともに会わないな。いるとベタベタしてくるから正直困る」
「でも恋人なんですよね?」
「う…」
長陽城には恋人認定所なるものがある。初めてのころ奴に騙されて恋人であることを認定してしまったのだがアウスラが面白がって云いふらすものだから恋人関係の件は流派内では知らない者はいない。
あの頃は全てが物珍しく軽い気持ちで承諾してしまったが、まさか飛天世界は同姓婚が認められていたとは思いもよらなかった。
「ほら、あいつは女好きだしネタとして楽しんでいるだけで本気ではないよ=x=;」
「そうなんだ…ちぇっ(ボソ」
「ぇ?今の『ちぇっ』て…どうゆう意味@@?」
「あ、いやっ!深い意味は無いから気にしないでください>x<;」
「いや、大いに気にするだろ?!それって@@;」
「それより蒼海さんのコトはどうするつもりなんですか?あんまりハッキリしないと、またソルさんが怒りますよ^^;」
「いや、それならハッキリしてるぞ。蒼海と俺は幼なじみってだけでそれ以上の感情は持ち合わせていない」
「冬さんはそうでも蒼海さんはどうなんですかね~(笑)」
「それより朱昴のほうこそどうなんだよ?新しく入った舜翼さんやナノさんとは良い感じらしいじゃないか@@」
「それについてはノーコメントで(笑)」
フェルやアウスラの勧誘が偏ってるのか、どうゆう訳か未来永劫には女の子の入隊が多い。男同士での会話でも、ついそういう話題に花が咲いた。僕はと云うとアウスラと一緒に恋人関係を結んだ卑鳥(ひよどり)という女の子がいたのだが流派に入って間もなく現実世界が多忙になったせいで暫らく姿を見ていない。アウスラさえいなければ唯一の恋人なのに…。そういえば吼竜が連れてきた咲望という娘も竜さんの恋人なのだろうか?フェルもいつの間にか新人の桜蒼と恋仲になったみたいだし、鏡童のらんでぃは
うーにゃんこと固い絆があるらしい。秋から冬に差し掛かる季節だというのに流派内では春真っ盛りなのだ。元々恋愛には疎いほうだから僕自身は冬が近づこうが春になろうが人恋しくなる訳でもない。でも相手がアウスラだけってのは正直情けない気がしてきた。朱昴との雑談を終えた僕は長陽城の広場にひとり腰を下ろした。
落葉舞う長陽の城下町は冬の訪れを告げている。雪の舞う街並みもさぞかし美しい事だろう。ふと広場を見渡すとやけに寄り添うカップルが目についた。微笑ましい光景をぼんやり眺めながら物思いに耽った。
卑鳥は元気にしているんだろうか…。男勝りな関西弁でいつもアウスラとやりあってたっけなぁ…。僕と二人のときは甘えん坊で可愛い一面も魅せてくれたんだけど。ふと卑鳥との思い出を回想してクスクスと苦笑していると目の前で誰かが足を止めた。
「なにひとりでにニヤニヤしてんねん…気持ち悪い」
…そうそう、いつもこんな感じの関西弁で…
「ぇ?本物@@?!」
「久しぶりに会ったのにご挨拶やなぁ~(笑)元気にしとるみたいやね~冬架」
「卑鳥こそ元気そうだなw現世(リアル)のほうは落ち着いたのかい?」
「相変わらずやけど、こっち来る余裕はできたさかい、ちょくちょく顔出そう思うてな。ところで冬架~@@;なにひとりでニヤニヤしとったん?まさかウチがおらん間に恋人でもできたんちゃうか?(笑)」
「いや、ちょうど卑鳥のこと考えててさ^^;いきなり目の前に現れるから驚いたよ」
「え…?恥ずかしいこと真顔で云わんといて~(*/ω\*)でも…ウチもずっと冬架と会いたかったんやで(照)」
卑鳥は恥じらいながらも嬉しそうに僕の手を握る。暖かな温もりを感じて少し赤らんだ頬が照れ臭くて仕方なかった。
「冬架~ウチとの約束覚えとる?」
「恋愛成就の噂話?」
恋人関係を結んだあと城内ではヴァルナの谷に住むチェンアンと花匠ホアンの恋愛を成就させたカップルは永遠に幸せになるという噂話が持ちきりになっていた。恋人たちは噂の真相を確かめようと谷に押し寄せ、人で溢れかえっていた程だ。
「うん…。もしかして、もう他の娘とやってしもた?」
「アウスラに誘われたが断固として断った(笑)それに…卑鳥と約束してたしな^^」
「よかった~ウチず~っと冬架とやりたかったんよ。ウチのこと待っててくれたんやね…。これ…今まで待たせたお詫び…」
卑鳥の唇がゆっくりと間近まで近づいてくる…あまりの唐突な事態に驚く間もなく、そのやわらかな感触が僕の頬にそっと植え付けられた。身体中が沸騰するほど熱くなった。僕は耳の先まで真っ赤にさせて呆然と卑鳥を見つめてしまう。
「…そんなに見つめんといてっ(/_\;)めちゃくちゃ恥ずかしぃからっ!」
はっ、と我に帰った僕はキスされた頬を軽く掻きながら平常心を取り戻そうと繕った。初めての体験に心もカラダも思うようには動かないが、なんとか会話をするまでに持ち直す。
「じゃ、じゃあこれから一緒に谷へ行ってみようか?」
「うん!」
卑鳥の手を取り僕らはヴァルナの谷へと歩きだした。
続く…かも(笑)
最終更新:2008年12月04日 03:49