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  • 第一章「はじまりの地」

いつになく鳴り止まない雨に空を見上げると、遠く東海平原のかなたから蒼白い閃光が見える。
雨足は強まるばかりで、いつもなら賑わう長陽の城下町も今日ばかりは人も疎らだ。

僕は灰褐色にたたずむ景色をぼんやりと眺めながら崑崙鏡から転生される新しい住人を待ち続けていた。
この世界に転生されて3日、ダユエンの誓いを立て医者として生きることを決めたまではよかったが医者ひとりでの戦いに限界を感じ始めていた。

まだ少年である僕を町の人々は快く歓迎してくれた。
だが、いざ戦いの場となると回復すらまともに出来ない医者では誰も認めてはくれはしない。

共に成長して力となってくれる仲間がほしい。

自ら流派を建ちあげようと決意するまでにさして時間はかからなかった。
そして真っ先に思いついたのがこの「はじまりの地」の崑崙鏡だったのだ。
降りしきる雨のなか疲れ果てた羽根を休めるように僕は其処にたたずんでいた。

どれほどの時間がたっただろうか…

階段の外から木漏れ日が差し込んでいる。
激しかった雨音もいつの間にか途絶え小鳥達のささやきが何処からともなく聴こえていた。
すくと立ち上がり大きく背伸びしていると崑崙鏡から淡い光が立ち込めてきた。

やっと新しい住人のお出ましだ。

黄金色の光中から人影がゆっくりと現れだすのをとても由々しく感じながら抑えきれない衝動を噛み絞めていた。
ふと気付くと僕は挨拶も忘れて無意識のまま彼を旅団に誘い入れていたのだった。
長い時間待ちわびていた焦りもあったのだろう。

「おや?」

彼の第一声はあまりにも当たり前の反応だ。
理由はどうあれ何も言葉を交わさず旅団の誘いを受ける人間などそうはいない。
しかし彼はその誘いをあっさりと受け入れ、そこでこのコトバを発したのだ。
すらりとした長身の男はあどけない笑顔を見せこう続けた。

「こんにちは。君の名はなんて呼べばいいんだい?」

「冬架(とうか)っていうんだ。君の名は?」

アウスラだよ。僕の名は呼び捨てで構わないから君のことも冬架って読んでもいいかい?」

出会ってすぐとは思えないほど会話がスムーズに流れていった。
初めて会ったはずなのに何故か古くからの友人と酌み交わしているかのような錯覚を感じさせる。

「構わないよ。アウスラ、君はこの世界は初めてか?」

身の丈2メートルは超えているであろう彼はその身体に似合わないほどの無邪気さを兼ね備えていた。朱色の髪を掻かきながらアウスラは話しはじめた。

「うん。冬架はこの世界に来てどれくらいだい?」

「ここに来てから3日目だよ。まだ駆け出しの医者さ。ところでクントゥとの誓いはどっちにした?」

この世界は現実との平行世界で成り立っている。
僕らの最終的な使命は鏡王ダユエンによって招き入れられたこの崑崙鏡の世界で混沌が支配する闇の力を抑することだ。
バランスが崩れかけたこの崑崙鏡を放っておけば現実の世界でも影響が出始めるらしい。
たしかに荒みかけてる現実社会もこちらの世界の影響と言われれば納得もいく気はする。

転生する前に僕らは鏡王クントゥと出会い、悪名高い妖魔を討伐する「ダユエンの試練」か、人と妖魔の境界を超え正しき世界に導く架け橋となる「イエンマオの惑い」のふたつの道を選択付けられる。
僕はダユエンの誓いをたて此処にいる訳だが仲間として行動するのであれば当然同じ道で歩みたいと思っていた。
最終的な目的は同じであれ僕の問い掛けに対してイエンマオと発すれば違う立場で行動を進めることになるだろう。

彼は僕の考えなど知るはずもなく、ただ偶然の一致に期待するしかないのだが…。

「ダユエンの試練にしたよ。冬架は?」

ちょっとした運命的なものを感じながら彼となら流派を興してもうまくやれるようなそんな確信が生まれた。

僕は弾んだ声で語り掛ける。

「同じ誓いだな。これから長陽の町を案内するよ。」

こうして僕らの新たなる物語が動き始めた。

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最終更新:2008年10月14日 01:19