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第四章 「出逢い」

「さあ、本格的に仲間探しをはじめようぜ。」

今日もアウスラは無駄に元気だ。
この世界を問わず各地を放浪していた順応性からか、ちゃっかり師匠を作って崑崙鏡に溶け込んでしまっている。いろんな情報を集めてくるのは彼らしいが、時折調子に乗って無茶をすることもあって、見ていてとても危なっかしい。

僕ら三人はフェルの来る日に時間を合わせ、この長陽の広場に集まっていた。

「女性の扱いなら任せてくれ。運命的な出会いが待っているかも知れないしな。」

「ナンパはフェルの特殊能力として期待しよう。」

アウスラはすかさず相槌をいれた。

フェルも相変わらずのようで少しホッとしている。
はじめて会った時に聞いた傷心の想いも、今ではすっかり立ち直っているようだ。

僕はと云うと未だわからない事だらけのこの世界で、少しづつではあるが医者として力を付けてきている。

「三人で手分けして探すか?」

フェルが僕に合意を求めてきた。

「いや、南区で妖魔を倒しながらソロで戦っている連中を誘ってみるのはどうかな?」

「いい判断だ。確かに、この近くで魔物を狩ってる時点で相手の力量がわかるだろうしな。」

「いいんじゃね?フェルの得意な、魔物に襲われた美女を華麗に助けて恋人ゲッツ、みたいなフラグ立つかもしれないし(笑)」

アウスラがすかさず茶化してきた。無視しよう…。

「じゃあいくか。フェル」

「ちょっ、待ってくれよ~冬架ぁ」

馬鹿ばかり云っているアウスラを放っておいて、僕らは手始めにウガププの群れる南区に向かった。

この辺りの妖魔は比較的下級でソロでも狩れないことはない。無論、大勢で狩ったほうが早いが、僕も医者になる前はよく一人で此処に来たものだ。

見渡すと遠くのほうでウガププの群れが一点に集まっている。
目を凝らすと中心に何かいるようだ。

「いま助けに行くぞ!お嬢さん~」

フェルが疾風の如くその群れに駆け寄った。

「え?この距離で性別までわかるのか!?」

「恐るべし美女センサー(笑)」

僕らは呆れる前にその能力に感服した。ウガププの群れを薙ぎ倒すフェルの雄姿をただ眺めているわけにもいかない。皆で助けよう。

妖魔を一掃すると、そこには天人の女の子が一人、確かに存在している。体力もだいぶ削られているようだ。

「大丈夫か?」

ともかく回復術で傷を癒す。医者として当然の処置だ。

「ありがとう…。」

「ケガはないかい?お嬢さん。」

彼女がお礼を云うと同時にフェルが手を差し出した。

「うぉ!?天人だ~。かぁわいぃ~」

「アウスラ…。お前って奴は…。」

アウスラが横から割り込んでフェルのせっかくの決め台詞を台無しにする。

崑崙鏡には異なる種族が多数存在する。僕ら三人と同じ現世と変わらぬ容姿を持つ「人族」、獣の血が交ざった「修羅」、天界から舞い降りた「天人」、小柄の体を持つ「鏡童」の四つだ。
この世界に来るとき、現世での行いが影響するのかは定かではないが、初めて足を踏み入れる瞬間までどんな種族で転生されるのかは誰にも判らない。

「ちょっ、ジロジロ見ないでよ。変態!スケベ!!」

アウスラのみぞおちに彼女から会心の一撃が飛ぶ。
まぁ当然と云えば当然の結果か。

「ぐはぁ…!」

堪らず地面に倒れこんでぴくりとも動かない。

「誰か医者を…」

アウスラは苦渋な表情でこっちを見ている。

「悪いが馬鹿に付ける薬はない。」

僕ははっきりと言い放って隣でうなずいているフェルと顔を見合わせた。
せっかくの出逢いに水を差された僕らは、彼女の元気な姿に取り敢えずホッとして話を先に進めた。

「君はこの世界に来て間もないの?よかったら僕らと共に行動しないかい?」

「う~ん。変態が一人交ざってるからどうしようかな…。」

「変態とはなんだ!変態とは!!」

アウスラがまたしても口を割って出た。

「変態だから変態って云ったのよ!エロい目でこっち見ないでよ。この変態!」

「ちょっ、変態って三度も言った…orz」

さすがのアウスラも半泣き状態だ。少し気の毒すぎるかもしれないな。

「まぁまぁ、アウスラが変態なのは置いといて君の名前を聞かせてくれないか?」

フェルが堪らずあいだに立った。そういえば自己紹介もまだだったな…。さっきからちっとも話が前に進まない。

「私の名前はシェリル・ノームよ!面倒だからシェリルでいいわ。」

やれやれ、気の強いお嬢さんだ…。フェルの顔は心が読み取れるくらい判りやすい笑みを浮かべていた。

「シェリルか、良い名前だ。私はフェルグス、隣にいるのが冬架で…」

一通り自己紹介を終えるとフェルが本題を云えとばかりに肘を突いてきた。

「シェリル、僕らは流派を創りたいんだ。君さえよければ僕達と一緒に新しい流派を作らないかい?」

シェリルはぽかんとした目で僕を見ている。心なしか頬が赤らんでいる気がした。
暫らく動かない彼女に僕は何か変な事云ってしまったのか?と、ふと考え込んでしまった。

「ん~。どうしようかな~。丁度いい暇潰しになるかも知れないし、やってもいいかなぁ」

彼女は照れながら思案しているようだが、どうやら万更でもないらしい。

「ちょっと姉さん達に聞いてみるね。街に戻るわ。」

「え?姉さん達?」

僕は突然の返答にもう一度聞き返してしまった。

「あら?云ってなかったっけ?わたし、三姉妹の三女なの。」

「聞いてない。聞いてない(笑)」

アウスラが此処ぞとばかりに突っ込んだ。

街に戻ると人族の女の子が二人駆け寄ってきた。

「シェリル、また一人でフラフラ狩りに行ったのね?あれほど危ないって云ったのに。」

面倒見の良さそうな彼女はシェリルの前で説教をはじめた。その一歩後ろで落ち着いた雰囲気の女の子が笑みを浮かべながら二人を宥めている。

「あ、皆さんに妹を助けて頂いたみたいですね。ありがとうございます。」

「いぁいぁ。彼女、ウガププに襲われて、ちょっと打ち所が悪かったみたい。かなり口が悪くなってるみたいだから気を付けて。」

アウスラがまた余計な事を言い出した。

「うるさい!変態!!姉さん、変態が移るといけないから離れたほうがいいよ。」

まさに売り言葉に買い言葉だな…。この二人は前世からの天敵なのかも知れないと心の中で思った。

「シェリル、初対面のひとに失礼でしょ?謝りなさい!」

「うぅ…」

さすがのシェリルも姉さんには頭が上がらないようだ。

「ごめんなさい。シェリルったら素直じゃなくて。わたしがこの三姉妹の長女の天蛍と申します。隣にいるのが次女のメイリーナ。この世界は来たばかりで、ご迷惑お掛けして本当にすいません。」

次女のメイリーナも物静かに頭を下げた。

なるほど三姉妹だけあって長女はしっかりしてる。三人とも個性的だが仲の良い姉妹なのだと想像はついた。

フェルが小声で三人共を流派に誘っていいか?と打診が来た。此処はフェルに任せるとしよう。

「いや、困っている女性を助けるのは当然のことさ。実は私たちは流派を立ち上げようと仲間を探していたところだったんだ。君たちに仲間に加わって貰えると美女が一気に増えて大歓迎なんだが考えてくれないかな?」

姉たちは少し驚いたようだったが悪い気はしないらしい。目の前で姉妹会議を始めだした。

やがて討議を終えると長女のほうから結果が届いた。

「お待たせしました。わたし達で良ければ是非仲間に入れてください。」

「わたしの事はこれから蛍(ほたる)と呼んでくださいね。」

「わたしもメイで構いません。」

「しょうがないな~。姉さん達がどうしてもって云うから入るんだからねっ!」

「これで流派を立ち上げられるな。」

フェルが満足そうにこちら見て親指を立てた。

「やった~!これからみんなで頑張ろうなっ!!」

アウスラは歓喜の声をあげて辺りを飛び回っている。

僕も言い様のない達成感で柄にもなく熱いものが込み上げてきた。

流派としての未来に期待と不安を胸に抱きながら、僕たちは広霊鎮を目指して歩きだした。

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最終更新:2008年10月08日 02:11