第六章…「未来永劫」
広霊鎮、此処は天人の故郷とも呼ばれる神秘的な都市だ。湖の上に浮遊する数々のブロックを繋ぎあわせ、ひとつの街を構成している。水に囲まれた街並みは、せせらぎが音楽のように奏でていて時折流れる風がとてもやわらかで心地いい。
中心の広場には大きな噴水があり、そこから西に少し降りたところにたくさんの蓮が浮かぶ綺麗な池がある。そこに咲く蓮の花を眺めている人物というのが流派先生らしい。
らん丸と
ひまにゃのお陰で無事ここまでたどり着いた僕らは流派先生の元へ急いだ。
「ところで冬架~流派の名前ってもう考えているのかい?」
「ふふ~ん。そりゃあ勿論考えているさ。当ててみなよ」
アウスラが珍しく確信をつく質問を投げてきた。僕は意地悪くアウスラに問い掛けてみると皆も一緒に考え込んでいる。
「仕方ないな~ヒントは四文字熟語!」
「わかった!酒池肉林!!」
「ん~絶対絶命とか危機一髪かな?」
アウスラが閃いたままを間髪入れずに云いだした。ほたるの輪を掛けるような回答で更に頭が痛くなる。本気で云ってるのか…?そんな名前を考えられる二人のセンスを疑わずにはいられない。
「いや、もういい…。流派先生に会うまで楽しみにしといて」
そうこうしている間に僕らは蓮の池に着いた。流派先生は穏やかな顔で蓮の花を眺めている。流派を興すためには六人以上の仲間を連れてこなければならない。あとは僅かばかりの飛銭と流派の名前さえ決めればいいだけだ。準備はすべて整っている。僕は流派の名前を先生に告げた。
「『未来永劫』…これがそなた等の流派名でよいのだな?」
流派先生の問い掛けに皆の反応を伺う。満足そうな笑顔が同意を得たことを語っていた。異存を唱える者は誰一人としていない。
「僕らは『未来永劫』としてココに流派を結成します!」
仲間たちの歓喜の声が高らかにあがった。まるで祭りのようだ。ひとつの目標を達成した極みが心底胸を熱くさせる。でも浮かれてばかりはいられない。すべては此処から始まるのだから…。
「みんな~これからもよろしくな!」
蓮の池でひとしきり挨拶を終えると広霊の街を見物したいとの皆の要望で、それぞれに別れて探索することになった。
興奮を抑えるため一人残った僕は中央広場の噴水に腰を落とした。流派でやらなきゃならないコトは山ほどある。アウスラからある程度のプランは聞いたが初めての経験だ。うまく皆を纏められるだろうか?。
これからの流派について考え込んでいると突然、背中に悪寒が走った。何故か、そこはかとない鋭い視線を感じる。背後にいる誰かが殺気を放っているのは間違いないようだ。僕はわざと気付かない素振りで様子を伺った。
「貴方が冬架さん?」
いつの間にか修羅の女の子が目の前に立っている。後ろにばかり気を取られていたせいか、思わず声を挙げそうになった。殺気はまだ背後から感じられる。彼女が原因ではないことは明らかだろう。声を掛けてきた修羅の女性は獣との混血だけに少し妖美で怪しげな魅力を兼ね備えている。腰から大きな刀を下げているのを見る限り刀客に間違いない。「そうだ」と答えて見上げると碧い右目と真紅の左目を持つ彼女は眉をしかめて一歩後ろに退いた。オッドアイの瞳も険しい眼差しに変わっていく。
「冬架さん…ある人からの依頼で命を頂戴にあがりました。貴方に恨みはありませんが、いざ尋常に勝負願います」
すらりと刀を抜き彼女は語りだした。
「ちょっと待ってよ!?俺は君のこと知らないし恨みを買うような覚えはまったくないんだけど」
「問答無用です。さあ、貴方が来なければこちらから行きますよ。」
刀を構えた彼女は闘志を込めて一直線に襲い掛かった。
続く…
最終更新:2008年10月18日 17:27