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第九章…「迷走の旅団」


ひとり洞窟を歩き続けてどれほどの時間が経過しただろうか。

水の滴る音すら薄気味悪いこの閉鎖的空間で出口を探してみたものの、それらしい場所には一向にたどり着かなかった。アウスラ達は僕を探してくれてるのだろうか…。いや、ダメだ。さっきあんな失態を晒した後では仮に合流したとしても大笑いされるに決まっている。なんとか自力で此処を出て、皆を見返してやらないと気が済まない。僕は半分挫けそうな気持ちを奮い立たせ、行く宛てもなく歩き続けた。

暫らく歩くと何人かの小さな人影が見えた。これで出口を教えてもらえると小走りに駆け寄ると、そこには鏡童の4人組みが何やら話し合っている。どうやらまだ僕の存在に気付いていないようだ。彼らの話に聞き耳をたててみた。

「ねえ、らんでぃ、本当にこの道であってるんだよね?」

「うん…たぶん」

「でも、うーにゃん…この道ってさっき通ったよね?」

「そうだよね~ひーたん、さっきの水溜まり見覚えあるもん!」

「しゃあない。ココは俺に任せとけって(笑)」

「でも…さっきリザーについていって…更に奥の方まで来ちゃったような…」

「細かいことは気にするな!らんでぃ(笑)」

「これって迷ったってコトかな?ひーたん…」

「そうとも云うね~(笑)うーにゃん」

どうやら迷子は僕だけではなかったようだ。これでは頼りになりそうもないが、このまま放っておく訳にもいかない。

「君たちも道に迷ったのかい?」

僕は鏡童の子達に話し掛けてみた。彼らも僕に気付くと一斉に安堵の顔を向けた。しかしそれも自分達と同じ境遇だと聞いて瞬く間に打ち拉がれる。仕方なく自己紹介を始めた彼らの印象を見る限り『しっかり者で医者のうーにゃん』、『口下手な武術家らんでぃ』、『いたずらっ子の盗賊リザー』、『お茶目なパンダ服のひーたん』と云ったところか。

「と、とにかく出口を探そうか(汗)」

「でもお兄ちゃんも道がわからないんでしょ?大丈夫なの?」

「平気さ。きっと仲間も俺を探してるだろうし、結構頼もしい奴らなんだぜ。この洞窟だってそんなに広くはないみたいだし、そのうち合流できると思うよ」

心配するうーにゃんを前に僕は精一杯強がって見せた。とにかく今はこの子達を無事連れ帰ることが先決だ。不思議とさっきまでの恐怖心はどこかに飛んでしまっていた。

迷子旅団として歩きだすこと数分…。洞窟の先に小さな光が見えた。

「出口だ!!」

リザーが勢いよく光の差す方向に駆けていく。僕らも少し遅れて後を追った。

「ここは…?なんなんだろう…」

そこは出口ではなく広い空洞になっていた。大きな水溜まりからは綺麗な水が湧き出ている。その先から明るい光が差し込んで一本の小さな木が生えていた。光は間違いなく地上からのものだが見上げた限りとても登り切れるような高さではない。どうやらかなり下層まで降りて来てしまっていたようだ。途方に暮れていると木の奥から何やら話し声が聞こえた。怪しげな会話に思えた僕は、仲間たちに静止を促しこっそりと覗き込んだ。そこには天人の妖魔と思わしき男と妖虎がふたり密談をしている。僕はそっと息を潜め会話に耳を傾けた。

『妖虎よ、首尾はどうだ?』

『にょほほ~♪町の住人に俺の完璧な変装がバレるわけないにょほ!』

『なら良いが人間を食らうのも程々にするのだぞ。馬鹿な人間共でもさすがに不信な場所を調査し始めているからな。貴様に対して疑いを持つ者もいると聞く。本来の目的を忘れないことだ…』

『俺に指図するんじゃないにょほ!バレたところで町の人間共を皆殺しにすれば済むことよ~。大好物の人肉が目の前をうろうろしてるのに好きなだけ食えねぇのはもう堪らんにょほ!』

なんてことだ…。話の内容から察すると町の住人に妖魔が紛れ込んでることになる。そして少なくとも何人かの犠牲者が出ていると云うことか。目的は判らないがこのままでは更に犠牲者が増えるばかりだ。急いでこの事を仲間に知らせないと…。僕は妖虎が出ていく後を着けて正体を探ってやろうと思い様子を伺った。不意にカラダを引っ張られる感覚で我に返る。

「お兄ちゃん…怖いよぅ」

そこには震えた手で袖を掴むひーたんの姿があった。他の鏡童達も同様に怯えているようだ。この子達まで危険に晒す訳にはいかないな…。

「大丈夫。奴らが気付かないうちにこの場を立ち去ろう」

僕は優しく声を掛けると音を立てず、その場から離れた。妖虎の正体が判らないのは悔やまれるが今はこの子達と無事、地上に帰り着くことだけを考えよう。

なんとか来た道を戻って広い空洞の入り口までたどり着いた僕らはふぅと一息ついた。その瞬間、僕の頭に嫌な予感がよぎった。

こうゆうダンジョンの最下部って普通はボスとかいるよな…。

この手の予感は大抵が的中する。振り向くと水溜まりから水しぶきがあがり、巨大なガマ蛙が姿を現した。その妖魔は大きな目でギョロリと鏡童を見るなり、よだれを垂らして襲い掛かってくる。

まずいな…。

僕は医者で攻撃力は無いし、逃げるにも5人がバラバラになってしまっては更に最悪な状況にもなり兼ねない。果敢にも戦いを挑むリザーとらんでぃが足止めしてくれている間に手を考えなくては…。しかし、何の策も浮かばぬまま追い詰められた僕らは防戦一方となり、為す術を失ってしまった。

すると突然、ガマ蛙に縦一線の閃光が走った。妖魔は真っ二つに裂かれ、ズシンという音と共に崩れ落ちる。妖魔の陰から現れたのは紳士風の天人の姿だった。

「あ…=x=;」

天人が一言発したところで暫らくの沈黙が続いた。やがてその紳士の口から言葉が漏れる。

「ごめん(照笑)まったく人がいたのに気付かなかった。君たちの獲物を横取りしてすまん・w・;」

「いえ、突然襲われて僕らも困っていたところです。助けてくれてありがとうございます」

「そうだったのね…=w=;あまりに邪魔だったんで片付けただけだから気にしないで。では先を急ぐのでまた~・w・;」

吼竜と名乗るその男は「またゴミアイテムが増えた~;w;」と捨て台詞を残し、何かをポイと捨ながら洞窟の更に奥へと消えていってしまった。落ちてるアイテムを拾い上げてみると『破邪印』と書いてある御札のようなモノのようだ。引き止めようとする間もなく、僕らを見付けたアウスラ達が駆け寄ってきた。

「お~い!こんなトコまで来てたのか~」

「冬架、探したぞ~。平気だったか?」

「いや~ん!鏡童がこんなに沢山(≧▽≦)」

アウスラとフェル達が心配そうに声を掛けてきた。シェリルは鏡童の子達を見るなり飛びついてくる。なんにせよ、これでやっと地上に戻れそうだ。安心した途端、腰から崩れた僕はアウスラにもたれかかってしまった。

「おっと…大丈夫か?…ぽっ」

「ぽっ?!」

「あ、いぁ…なんでもないぞ。冬架=w=;」

「いや!今確かに『ぽっ』って言っただろ@w@?!」

「やつれた冬架もちょっとかわぃいな~って思って(照笑)」

「まさか…アウスラ、そんな趣味なんて…無いよな?」

「さあて?それはどうかな~(ニヤリ」

悪戯っぽく笑うとアウスラは回復薬を僕の口に押し込んだ。

まったくもう…。

なんて掴みドコロの無い奴だ。だけど万更悪い気もしない。仲間との再会を喜ぶと、僕はやっとの思いでこの井戸の恐怖から解放された。

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最終更新:2008年11月18日 00:47