俺の名前は霧生 真近(きりゅう さだちか)。
この秋の新学期から清龍高校に通うことになった。
さっき家を出てきたばかりだ。
親の仕事の関係で学校を転々としている。そのため、引越しをするときは編入試験に合格すべく猛
勉強しないといけない。
今回も無事編入することが出来、晴れて通学することになった。
これで、今年は3回目か……
知らず知らずのうちにため息が出たようだ。
折角友達が出来てもすぐに転校になってしまう。
大好きなデュエルも相手がいないからそうは出来ない。
そういえば、しばらくあのデッキ調整してなかったっけ。
真近はいろいろと考えている間に校門を抜けた。




先生に連れられ俺はクラスのみんなの前に立った。
中学生のころから編入は慣れている。
いつも通り自己紹介を済ませると先生が席を指定した。
窓際だ。廊下側ではない。
俺は席に着いた。
そして、いつも通り休み時間にあれこれ質問攻めを喰らった。
出来るだけ無愛想にしないようにしているが、あまり自分から話さないタイプであるため質問にた
だ答えているだけだった。
みんなは俺に飽きてしまったのか、その日は誰一人囲い込むことが無くなった。
……かと思われた。
突然、隣の席で大爆睡していた女子が俺に話しかけてきた。

「……ふぇ? いま、なんじげんめ?」

この女子はかなり寝ぼけているらしい。
眠け眼の視線をこちらに向けていた。長い髪が散らばっていてさらにだらしなく見えた。
今日は平常授業じゃないというのに。
俺はそう思いつつ、丁寧に始業式のあとのHR(ホームルーム)が終わって次が3時限目と答えて
やった。
その女子は、ありがとーと言ったはずなのだが呂律が回らずなんだか変な言葉に聞こえてしまった。
まだ、机に顔を伏せてやがる。
思えば、中学校時代からずっと学校を転々としているがこのような女子に会うのは初めてだった。
このとき、真近はこの女子と深い関わりを持つこととなることをまだ知らなかった。





始業式から2日経った放課後。
俺は教科書などの購入などで忙しかった。
もっとも、買わなくても隣のあいつに見せてと言えば教科書まるごと貸してくれるが。
遅くなったので早々帰宅しようとしていたそのとき、すごい音が聞こえた。
何かが爆発したような音――
確かに聞こえた。あれは……
デュエリストの血が騒いでいるようだった。
あれだけの音だ。相当凄いダメージを相手に与えたのだろう。
……いた。
デュエル真っ最中だった。
学年が2年ぐらい上の男子と女子――あれは、隣でいつも爆睡している女子じゃないか!
彼女は授業中隣でいつも大爆睡していた。
その度に教師に注意され、目をさますのだが寝ぼけて意味不明な発言をしていた。
そのおかげで教室の空気が一気に軽くなる。
彼女は我に返って周りを見渡すといったような感じだ。
両フィールドを見ても明らかに爆睡少女の方が有利だった。
フィールド上にペンギン・ソルジャーとペンギン・ナイトメアが一体ずつ。
両方とも攻撃表示だった。
さらにリバースカードがセットされていた。

「どうしましたか? 私のライフはまだ4000ですが?」

ライフが4000!
全くの無傷でここまで追い込んでいるのだ。
相手の先輩のターンだった。
アステカの石像を表側守備表示で召喚しターン終了した。
そして、爆睡少女のターンに入った。

「もう、終わらせますね。2体のモンスターを生贄に捧げ――アイス・ブリザード・マスターを攻撃
表示で召喚!」

アイス・ブリザード・マスター
攻2500/守2000

「アイス・ブリザード・マスターの効果発動!
アステカの石像にアイス・カウンターを一つ乗せます。
そして、リバースカードオープン!魔法カード『アイス・ブレイク』!
このカードはモンスターにアイス・カウンターが乗っているときに発動可能。アイス・カウンターが
乗っているモンスターを一体選択し、そのモンスターを破壊します!」

アステカの石像が少し霜がかかったかと思うと、すぐに凍りついた。
そして、モンスターを纏っていた氷にひびが入ったかと思うと砕け散った。
先輩は目を見開いていた。
勝負があった。

「アイス・ブリザード・マスターでダイレクトアタック!」

先輩の絶叫みたいなのが聞こえた。
俺はデュエルが終わるとそそくさにその場を立ち去った。

「あいつ、見てたんだぁ……明日誘ってみるかな」

彼女は真近が見ていることに気がついたらしい。
爆睡少女は意味深な言葉を呟いた。






次の日の放課後。
俺はさっさと家に帰ろうとしていた。
街とかあんまり知らないし。
教室を出る間際、俺は女子に呼び止められた。
……隣の席の爆睡少女だ。
いろいろとまくし立てるように喋っていたが俺はほぼ無視して歩いた。
彼女は怒ったのか、俺の腕をつかみグイグイ引っ張っていった。
なぜか、抵抗ができないような……というかこいつ力強ッ!
俺が連れさられたのはデュエル部という所だった。
正確には扉の前に居るのだが。
というか、部活であったのか。
なんでここにという目で彼女を見た。
彼女は視線に気が付いたのか、こう言った。

「掃除時間の時、デュエルディスクが見えてたよー」

俺はがっくりしてしまった。
たしかにデュエルディスクは毎度のこと学校に持ってきている。
昼休みでも誰かやっていたらやろうと思っていたところだ。
しかし、なぜかこの高校はデュエルをしている人が少ないように思えた。
彼女は俺に向き直った。

「単刀直入に言うね。この部活に入って♪」

彼女は扉を指していった。
突然すぎた。
俺の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいた。
なんで俺が……
しかし、彼女は全く気にせず続ける。

「いやーうちの学校、以前は結構強かったらしいんだけど今じゃ弱小の弱小。
今じゃ廃部寸前なんだー。だからお願いっ」

腰を曲げて顔の前で合掌するような頼み方だ。
……そういえば、こいつどのぐらい強いんだろう。
昨日のデュエルを見る限りでは圧倒的だった。
相手が弱すぎるだけなのかもしれないが、
それでもライフの変動が無いってことはそれなりに強いということだろう。
俺は少し息を吐いて言った。

「デュエルしてくれたら考えてもいいが」

彼女はニコニコしながらあー、そうなのぉーと言いたそうな目を向けてきた。
……メッタメタにしたい気分になった。

「私結構強いよ。町内のカード屋の大会で結構上位に入ってるんだー……そういえば勢いで連れて
来ちゃったけど……あなたの名前は?」

俺は滑りこけそうになった。
そういえば、こいつは俺の自己紹介のときも寝てなかったか?
とりあえず、俺は簡単な自己紹介をした。
彼女はうんうんと頷くと言った。

「私、福留 雪奈っ よろしくねー♪ ……それじゃ、デュエルしましょうか」






デュエル部の中に入った。
部室だけあっていろいろなカードが散乱していた。
……掃除ぐらいしといたほうがとも思う。
雪奈は準備を済ませると、グラウンドに出ると言った。
野球部やらサッカー部やら練習しているはずなのに何処にそんな場所が……
と思ったのだが、意外にもここの学校には陸上部が無かった。
それ故、トラックが空いているのでそこで毎日練習していると言った。
俺と雪奈は十分な距離を取るとデュエルディスクを構えた。

「こっちは準備いいぜ」
「私も準備いいよ~ よろしくお願いするね~」

カードを5枚引く。
手札はそんなに悪くはない。

「「デュエル!!」」

真近 LP4000
雪奈 LP4000

「先攻はもらうね。私のターン!ドロー!!」

ぴっとデッキからカードを1枚引くと、確認するなり、そのカードを裏側守備でセットして
ターン終了した。
……そういえば、こいつペンギン・ソルジャーとか使ってたな。
バウンス効果を持つリバースモンスターには気をつけないといけない。

「俺のターン、ドロー!」

俺はフィールド上を見た。
最初のターンにモンスターをセット……
おそらく、攻撃を誘ってモンスターをバウンスさせるつもりだろう。
ならば俺は……

「『ミスティック・ソードマンLv2』を攻撃表示で召喚!」
「え……ミスティック・ソードマン!?」

ミスティック・ソードマンLv2
攻 900/守   0

これには彼女は意外そうな顔をしていた。
ミスティック・ソードマンには裏側守備表示に対する効果がある。
Lv2~Lv4にはそのままの状態で破壊する効果があるのだ。
俺はにやりとした。

「『ミスティック・ソードマンLv2』で裏側守備表示モンスターに攻撃!
モンスター効果は適用し、そのままの状態で撃破!!」

ミスティック・ソードマンは相手カードの所まで走っていくと一刀両断にした。
爆発が起きる。
雪奈は顔を腕で覆っていた。

「俺はカードを2枚伏せて――ターン終了!」

俺はカードを2枚伏せた。
攻撃力が貧弱なのでしっかり守ってやらないと大ダメージを受けるからだ。
まぁ、始めらへんのターンなので上級モンスターとかはそんなにこないとは思うが……
……思ったのだが。
次のターンに奴は仕掛けてきた。

「私のターンドロー!……私は魔法カード、『ブリザード・コーリング』を発動!」

ブリザードだと!
性格に似合わないとかはおいといて、そのデッキは……
対策を考えないとまずい。
そのデッキの展開力は凄まじいものだからだ!

「――手札を1枚捨て、デッキからブリザードと名の付く守備力2000以下のモンスターを
手札に加える!」

雪奈はデッキからモンスターを1枚選択し、俺に見せ付けた。
案の定のカードだった。

「私は『アイス・ブリザード・マスター』を選択するわ!」

奴のマイフェイバリットか……
攻撃力2500。この状況で出されたらかなりまずい。
しかし、奴を召喚するには2体の生贄が必要だ。
だが、ブリザードの怖いのはここからだ。

「『ブリザード・サモナー』を攻撃表示!
『ブリザード・サモナー』は召喚に成功したとき、デッキから攻撃力500以下の
水属性モンスターを1体攻撃表示で特殊召喚する!」

ブリザード・サモナー
攻1100/守1700

これは、まずい……
このターンに召喚するつもりだ!
だが、ミスティック・ソードマンを破壊されてもライフは十分に残る。
攻撃力が2500ならまだ十分反撃のチャンスを……

「私は『アイス・ボール』をデッキから特殊召喚!『アイス・ボール』はデッキから特殊召喚に
成功したとき、手札、デッキから同名カードを2体まで召喚するわ」
「な、なにぃっ!」

アイス・ボール
攻 300/守 200

雪奈はにやりと笑った。

「2体の『アイス・ボール』を生贄に捧げ、『アイス・ブリザード・マスター』を特殊召喚!」

ついに出やがった。
氷の女魔術師。
水属性の魔法使い族モンスターでは最強クラスのモンスターだ。

アイス・ブリザード・マスター
攻2500/守2000

「まだよ。『アイス・ブリザード・マスター』のモンスター効果発動!
ミスティック・ソードマンにアイス・カウンターを一つ乗せるね」

ここまでならまだよかった。
反撃のチャンスが残っていたからだ。
しかし

「墓地の『アイス・ボール』の効果発動!
アイス・カウンターを乗せる効果が発動したとき、このカードをゲームから除外することで
アイス・カウンターを乗せたモンスターを1体破壊する!」

足が凍りついたミスティック・ソードマンに氷塊が振ってくるとそのまま直撃。
爆発が起きた。

「ミ、ミスティック・ソードマン!」
「『アイス・ブリザード・マスター』『ブリザード・サモナー』『アイス・ボール』でダイレクト・アタック!!」

冷気が襲い掛かった。
ソリッド・ビジョンのはずなのになぜか冷気を感じるような感じがしたがそれは気のせいだろう。

真近LP4000→LP100

こんなに序盤のターンなのにラッシュを掛けてくる。
相当な腕のデュエリストだ。
だが、俺だって負けてはいられない!

「トラップ発動!『神秘の円陣-ミスティック・サークル』!
このカードはフィールド上のミスティックと名の付くモンスターが破壊され墓地に送られたター
ンに発動可能。破壊されたモンスターを特殊召喚条件とするミスティックと名の付いたモンスタ
ーをデッキから1体召喚条件を無視して特殊召喚する!」

俺が選んだのは……これだ!

「来い、『ミスティック・ソードマンLv4』!」

さっきよりさらに成長したミスティック・ソードマンが現れた。

ミスティック・ソードマンLv4
攻1900/守1600

しかし、『アイス・ブリザード・マスター』を倒すのには攻撃力が足りない。
俺のターンだ。
カードを1枚引いた。
お、このカードは……

「俺は、魔法カード『魔力活性化』を発動!
攻撃力1500以下の魔法使い族モンスターを1体手札に加える!」

レベル指定の変わりに攻撃力の制限のついた『増援』と思えばいいだろう。
俺は、『ミスティック・マジシャンLv3』を選択し、そのまま手札から召喚した。

ミスティック・マジシャンLv3
攻1200/守500

「ミスティック・ソードマンで『ブリザード・サモナー』、ミスティック・マジシャンで
『アイス・ボール』を攻撃!」

2体のモンスターがそれぞれの対象に走る。
攻撃が終わると攻撃対象は軽い爆発と共に消え去った。

雪奈LP4000→LP2300

「まぁ、このぐらいならどうってことないわ。まだブリザード・マスターがいるし」
「そいつはどうかな?」
「え……」

俺はリバースカードをオープンした。
そのカードに彼女は目を見開く。
発動したカードは速攻魔法『ディメンション・マジック』!
フィールド上に魔法使い族モンスターが存在している場合のみ発動可能。
1体のモンスターを生贄に捧げ手札から魔法使い族モンスターを特殊召喚する。
その後フィールド上のモンスターを破壊することができる。
俺は『ミスティック・マジシャンLv3』を生贄に『ミスティック・マジシャンLv5』を召喚
した。

ミスティック・マジシャンLv5
攻2300/守2200

「さらに、『ディメンション・マジック』の効果発動。フィールド上のモンスターを1体破壊する。
俺が選択するのは当然『アイス・ブリザード・マスター』だ!」

ミスティック・マジシャンが杖から魔力を解放すると『アイス・ブリザード・マスター』は
粉々になり消え去った。

「『ミスティック・マジシャンLv5』でダイレクトアタック!」

しかし、攻撃をしなかった。
それどころか、ミスティック・ソードマンもろとも、フィールド上のモンスターが
全滅していたのだ。
彼女はリバースカードをオープンしていた。

「なに!」
「トラップカード『終焉の氷棺』
レベル7以上の水属性モンスターが相手のカードの効果によって破壊されたときに発動できる。
相手フィールド上のモンスターを全て破壊し、その後お互いにデッキからカードを1枚引く」

なんという、タイミングだ。
ミスティック・マジシャンのダイレクトアタックが決まれば俺の勝ちだったのに。
やっぱり、強い。
そう思ったとき、あいつはおどけたように言った。

「いやー、危なかったよー。死ぬかと思った~」

にっこりと笑顔を作る。出し抜いたような感じだ。
その笑顔がたまらなくムカつく……
俺は復讐心に燃えながらカードを1枚引いた。
確認するなり、魔法・罠ゾーンにセットしてそのターンを終了した。
ライフはたしかに、俺のほうがまずい。
次で何を引くかにかかってるな。

「私のターン!」

雪奈はカードを1枚引いた。
それを手札に加えると、

「『コールド・エンチャンター』を攻撃表示!
そのままプレイヤーにダイレクト・アタック!」

コールド・エンチャンター
攻1600/守1200

やはり、モンスターをまだ持っていたか!
だが、リバースカードを気にしていない。

「リバースカードオープン。トラップカード『ドレインシールド』!」
「うっ、ライフ回復かよ~」

俺にバリアがかかり、『コールド・エンチャンター』がそれに攻撃すると、
バリアが力を吸収した。

真近LP100→LP1700

「私はカードを2枚伏せてターン終了!」

相手の手札は0枚だ。
リバースカードに何か仕組まれているのか……?
しかし、俺もこのターンでモンスターを引けないと負けてしまう。

「俺のターン!ドロー!」

俺の引いたカードは……
これは……!

「俺は魔法カード『トレード・イン』発動!
手札の『ミスティック・ソードマンLv8』を墓地に捨て、デッキからカードを
2枚ドローする!」

俺はさらにカードを引いた。
そして、1枚のカードに目が止まった。
今まで破壊されたモンスターの枚数を数えてみる。
『ミスティック・ソードマンLv2』が相手モンスターの効果で破壊。
『ミスティック・マジシャンLv3』が『ディメンション・マジック』の生贄に。
『ミスティック・ソードマンLv4』と『ミスティック・マジシャンLv5』が
『終焉の氷棺』で全滅。
そして、さっき『トレード・イン』で捨てた、『ミスティック・ソードマンLv8』で……
モンスターカード5枚!

「俺は魔法カード『貪欲な壺』を発動!
墓地の5体のミスティックモンスターをデッキに戻し、カードを2枚ドローする」

さらに、ドロー。
手札がこれで4枚。
手札には、『ミスティック・ソードマンLv2』がある。
しかし、この状況で召喚しても何の意味も無い。
攻撃力が欲しい。
ならば、俺はこのカードにかける。

「魔法カード『神秘の絶景』を発動!
手札のミスティックと名の付くモンスターを1体デッキに戻し、その後カードを
1枚ドローする。
ドローしたカードが効果モンスターだった場合、自分フィールド上に特殊召喚する!」

もっとも、この方法で召喚したモンスターの効果は無効だけどな。
意を決してドローする。
引いたカードは……

「引いたカードは『ミスティック・ソードマンLv4』だ!
よって、フィールド上に特殊召喚!」

『ミスティック・ソードマンLv4』の攻撃力は1900。
『コールド・エンチャンター』を倒すことができるが……
なんか、嫌な予感がする。

「ミスティック・ソードマンで『コールド・エンチャンター』に攻撃!」
「トラップ発動!」

やはりトラップか!

「トラップカード。『猛吹雪の幻影』発動。フィールド上の水属性モンスターを1体デッキに
戻し、カードを1枚ドローできる。
そのカードがブリザードと名の付くモンスターだった場合、召喚条件を無視して特殊召喚する。
この効果で召喚されたブリザードと名の付くモンスターはエンドフェイズ時に破壊される」

雪奈はそして……といい置いた。
さらにリバースカードがオープンされる。

「チェーンでトラップカード、『アイシクルキャプチャー』
水属性モンスターが攻撃対象になったとき発動できる。
デッキから水属性モンスターを1体選択してデッキの一番上に置く。
……私は、レベル9の『フロスティング・ブリザードマジシャン』を選択するよ。
さらに、『猛吹雪の幻影』の逆順処理。
『コールド・エンチャンター』をデッキに戻し、カードを1枚ドローする。
引いたカードがブリザードと名の付くモンスターなので召喚条件を無視して特殊召喚」
「だが、そのモンスターはエンドフェイズに破壊されるぞ」
「『アイシクルキャプチャー』の効果。
デッキの一番上に置いた水属性モンスターがこのターンに召喚・特殊召喚に成功したとき、
このターンのエンドフェイズまでカードの効果によって破壊されない」
「まさか……」
「そのとおりよ。『フロスティング・ブリザードマジシャン』は完全召喚となるんだよ」

フロスティング・ブリザードマジシャン
攻2900/守2600

攻撃力2900!?
この場でこのような上級モンスターを召喚するなんて……!

「『フロスティング・ブリザードマジシャン』のモンスター効果発動!
ミスティック・ソードマンLv4にアイス・カウンターを2つ乗せるよ。
もっとも、『フロスティング・ブリザードマジシャン』には相手モンスターにカウンターを
乗せても意味無いんだけど……
でも。このカードを忘れてない!?
墓地の『アイス・ボール』の効果発動!
1枚除外し、ミスティック・ソードマンを破壊する!」
「ちっ、速攻魔法『ミスティック・ヴェール』!
フィールド上のミスティックと名の付くモンスターを1体選択する。
そのカードを生贄にささげ、デッキからレベル6以下のミスティックと名の付くモンスターを
攻撃表示で特殊召喚する。そのカードの効果は無効にされ、守備表示になったとき破壊される」

俺はカードを1枚伏せてターン終了した。

結構やるわねー
まー、次引くカードでどうなるかが楽しいんだけど……
できれば負けたくないなー
雪奈はそんなことを思いつつカードをドローした。
このカードか。
少し、鼻で笑ってしまった。

「更なる極寒の世界に連れてってあげる」

彼女は笑った。
氷のように冷たい微笑だった。

「フィールド魔法『ブリザード・ホール』発動!!」

周りの景色が変わっていく……
さっきまでここは学校のグラウンドだったのが、俺は雪原の丘のに立っていた。
雪が降っている。
秋というのに身震いしてしまった。

「『ブリザード・ホール』の効果発動。
発動時、ブリザードと名の付くモンスター以外のモンスターにアイス・カウンターを1個乗せる。
このカードがフィールド上に存在している限り、アイス・カウンターが乗っているモンスターは
表示形式を変更できない」
「戦闘はできるよな」
「まー、戦闘は出来るね。戦闘を行えないだったらどれだけ強いか……」
「いや、さっきのコンボもかなり鬼畜だと思うが」
「それはカードを作った人に言ってくださいっと。アイス・カウンターが乗る効果を発動した
ので、墓地の『アイス・ボール』の効果発動!」

これで3枚目!
どうにか切り抜ければ勝ちは見えてくる!
俺はリバースカードをオープンした。

「っ! 速攻魔法『守るべき者への想い』!
自分フィールド上のLvと名の付いたモンスターを1体選択し墓地に送る。そのモンスターと
同名でレベルが高いモンスターを1体デッキから召喚条件を無視して特殊召喚できる!
だが、この方法で召喚したモンスターは攻撃ができず、
エンドフェイズにプレイヤーは召喚したモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける。
俺は『ミスティック・ソードマンLv6』を墓地に送り、
『ミスティック・ソードマンLv8』を召喚条件を無視して守備表示で特殊召喚!」

ミスティック・ソードマンLv8
攻2800/守1700

「それ、ギャグのつもりかなー?
守備力が低いのに、守備表示なんて……まぁ、いっか。『フロスティング・ブリザードマジシ
ャン』で攻撃!」

しかし、ミスティック・ソードマンが破壊されない!

「え、えぇっ!?」
「『ミスティック・ソードマンLv8』のモンスター効果。このカードが表側守備表示で存在
する限り、このカードは戦闘で破壊されない」
「うっ……ターン終了」

真近LP1700→LP100

なんとか凌ぎ切った。
しかし、次のターン破壊カードや蘇生カードが来るとかなりまずい状況になる。
レベル4のモンスターを引くことができれば――!

「俺のターン!ドロー!!」

来た!

「魔法カード『戦士の生還』発動!
俺は墓地の『ミスティック・ソードマンLv4』を手札に戻す。
そして、手札から『切り込み隊長』を攻撃表示で召喚!
『切り込み隊長』のモンスター効果発動。
自分の手札のレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚できる。
俺はさっき手札に戻した『ミスティック・ソードマンLv4』を特殊召喚!」

しかし、相手の手札は0……。
モンスターを破壊できるカードなんてあるわけない。

「いくらモンスターを並べても、攻撃力が足りないんじゃモンスターを破壊できないよ!」
「あわてるな、俺の召喚している『ミスティック・ソードマンLv8』はチューナ。つまり、シンクロ召喚ができるんだ」
「え、それって……」
「そういうことだ。『ミスティック・ソードマンLv8』と『ミスティック・ソードマンLv4』をシンクロ!」

2体のモンスターが天空に向かって飛んだ。
空が一瞬煌いた。
新たなミスティック・ソードマンが真近のフィールドに降り立った!

「『ミスティック・ソードマンLv12』、召喚!」

ミスティック・ソードマンLv12
攻4000/守2700

「攻撃力4000!?」
「そのとおり。この攻撃力なら『フロスティング・ブリザードマジシャン』を破壊できる。
……いけ、ミスティック・ソードマン!」

ミスティック・ソードマンがブリザードマジシャンに走っていくところまでは見えた。
ただ、通り過ぎたような感じだった。
しかし、そう思った瞬間ブリザードマジシャンは切り刻まれていたのだ!

「う、うそぉ……」

雪奈LP2300→LP1200

「勝負あったな。『切り込み隊長』でダイレクトアタック!」

『切り込み隊長』雪奈を切り裂いた。
雪奈はあまりの見幕に退き、しりもちをついてしまった。

「いったー……」

雪奈LP1200→LP0



デュエル終了後。
真近の第一声がこれだった。

「あー……こんな心臓に悪いデュエルをしたのは生まれて始めてだったぜ……」
「ちょっと、倒れている女の子に手を差し伸べるとか紳士的なことはしないわけ!?」

さっさとその場を去ろうとしていたが、対戦相手の少女にが猛烈に叫んでいたため
振り向かざるおえなかった。

「あー……俺、そんな趣味無いんd」

ドゴッ!っといい音がした。
俺の鳩尾辺りに雪奈の拳が入っていたのだ。
あまりの衝撃に俺はうずくまった。
むちゃくちゃ痛い。というか、自分で立ち上がれるじゃねーか……

「男ならいつまでも蹲ってないでさっさと立ち上がるっ」

誰のせいだと思いながら立ち上がる。
多分、さっきのはデュエルに負けたことも含めてのパンチだろう。
……この暴力女が。

「それで、どうだった。入部のこと考えてくれた?」

そういえば、入部を誘われてこいつの実力を見たかったからデュエルしたんだっけ。
……なんでだろう。断ったら、今度は身体で決闘を挑まれそうな気がする。
でも、彼女の実力は本物だ。
ここまで心臓に悪いデュエルは初めてだった。

「まー、別にいいが……部員に当てがあるのか?」

彼女は笑って言った。
まぁ、なんとかなるでしょーと。
俺はげんなりしてしまった。
変える間際に彼女は言った。

『じゃ、部員集めよろしくっ!』

……いつか殴り飛ばしてやりたいと思った。
というか、転校してきて間も無い奴にいきなりそれはないだろう。
俺はさんざん愚痴を頭に思い浮かべながら帰り道を行くのであった。

(第1話終)








あとがき
はいはい、どーも。月光です。
デュエルって、誰かの視点で書かないと難しいんだよねー
第三者からの視点で書こうと思ったけどそれは無謀だった。
さて、主人公は霧生 真近です。
ミスティック系のカードを使います。
「さだちか」って人本当に居るけど「真に近い」っていう字はそんなにいないそうです。
……所謂オンリーワン!(笑)
性格は結構無口なようですが、まさにそのとおりですね。
……デュエル以外の彼の口数の少なさは凄いでしょー
まぁ、そう書いてあるだけなのかもしれませんが。
ヒロインの福留 雪奈
彼女に萌える人はいるのだろうか……
真近君が名前の知らないときにつけたあだ名みたいなのは『爆睡少女』。
授業中に寝たらダメだぞ!
性格は積極的、強引、我侭の三項目が揃っています。
まさに自分勝手!
ブリザード系のカードを使います。
アイス・カウンターを使うデッキは使いたいランキング上位に入っているのでネタがぽんぽん浮か
んできます。
ノリ的にはGBCの「メダロット5」ってゲームやGBAの「パワプロクンポケット1」とか4と
かに近いイメージがあります。
それでは、ネタが固まり次第執筆しますので時間はかかるかもしれませんが宜しくお願いします。

追記。
チューナーは白枠じゃないことを知ったので、それに合わせて変更。
あと、途中の雪奈のライフ増減がなかったので追加。




2人の切り札級のカードが2枚出たのでご紹介~
……両方ともたいして効果発動して無いから見たいでしょ。

フロスティング・ブリザードマジシャン
星9/水属性/魔法使い族/攻2900/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在するブリザードと名の付くモンスターが5種類存在している時のみ
手札から特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚に成功したとき、ブリザードと名の付くモンスター以外のカード
にアイス・カウンターを2つ乗せる。
このカードに乗っているアイス・カウンターが一定の個数のとき以下の効果を得る。
●2個  元々の攻撃力は4500となる。
●4個  守備表示モンスターを攻撃したとき、その守備力を超えていればその数値分
     ダメージを与える。
●6個  バトルフェイズ中2回攻撃できる。
●8個  このカードはカードの効果によってフィールド上から離れることはない。
●10個 プレイヤーの勝利が決定する。

このカードの効果はアイス・カウンターがぴったり乗っていないと発動しないのですよ。
この話ではアイス・カウンターをブリザードと名の付くモンスターに乗せる効果のカード
は出ていませんが、そこのところも考えています。

ミスティック・ソードマンLv12
星12/地属性/戦士族/攻4000/守2700
シンクロ/効果モンスター
『ミスティック・ソードマンLv8』+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがフィールドに存在している限り、相手はカードをセットできず、
カードを表側にすることができない。
このカードは戦闘で破壊されない。
守備表示モンスターを攻撃し、攻撃力が守備力を上回っていればその数値分ダメージを 与える。
守備表示モンスターを破壊し、墓地に送ったときデッキの一番上に戻すことができる。

やっちゃったZE!
いきなりレベル12でしかもレベルモンスターのシンクロって(笑)
先取りしすぎたかなー
生贄をリリースと言い換えるかどうかは迷ってます。
《ダーク・シムルグ》より酷い効果を持っています。
ただし、チューナーが決まっているので召喚しづらいのも難点ですね。

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最終更新:2008年03月16日 02:27