あれは何だと、男は問う。
工場からたなびく排気で汚れた、夜の豪雨を受けながら、男は胸中で繰り返す。
ざあざあと響く雨音も、服と身にまとわりつく不快感も、彼の疑問をかき消すには、それですらも不足だった。
男はマスターの一人だった。
神話のサーヴァントを与えられ、聖杯という奇跡の器を、奪い合う争いに乗った参加者だった。
悪くないステータスではあったものの、飛び抜けてもいない手駒に対して、彼が最初に取ったのは、魂喰いという手段だった。
人の魂を取り込ませ、サーヴァントの魔力とすることにより、発揮できる力を増幅させる。
少数ではさしたる効果は得られずとも、繰り返し魂を食わせ続ければ、やがては大きな力に変わるはずだ。
そう考えた男とサーヴァントは、慎重に、足跡を残さないように、昭和の町の人々を、少しずつ犠牲にしていった。
しかし彼は不運にも、その存在に出会ってしまった。
運悪く手はずを誤って、雑な仕事に甘んじた日に、たまたま他のマスターに、存在を気取られてしまったのだ。
マスターの顔を見てはいない。されどその者が引き連れているであろう、サーヴァントならばそこにいる。
少し高いビルの上で、雲の向こうの朧月を背負い、冷たい目でこちらを見下ろしている。
あれは一体何だというのだ。
魂喰いで強化されたはずの、自身のサーヴァントであっても、あれの前ではゴミ屑だ。
奴は先制攻撃に出たこちらの手駒を、顔色一つ変えることなく、滅多打ちにしてのけたのだ。
これは勝てないと判断し、諸共に撤退することを選んでも、こうして追いつかれてしまっている。
行き止まりという五文字が、頭の中に何度も浮かび、これ以上は逃げられないのだと、生きることを諦めかけてる。
あれは何だ。
あのサーヴァントは何者だ。
駄目だ、いけない。考えてはいけない。
あの月を背負うサーヴァントの、その名を思い出してはいけない。
どこからともなく聞こえてきた、敵マスターの攻撃命令――それと同時に発せられた、あの真名のことを考えてはいけない。
思えばあそこからおかしくなった。
もともと纏っていた刺すような殺気が、奴の名前を耳にした瞬間、何倍にも膨れ上がったように感じた。
その名の重みと言うべきだろうか。その言霊に押し潰されて、己のサーヴァントですらも、満足に戦えなくなったのだ。
ああ駄目だ、深読みするんじゃない。これ以上考えてはいけない。
奴の名前を思い出すほど、生が一歩ずつ遠のいていく。
奴の名前を思い返すほど、死が足に纏わりついてくる。
あれは死だ。死の化身だ。
恐怖によって身を縛り、十三階段へと引きずっていく、鎌持つ死神そのものだ。
何とかしなければ。でなければ死ぬ。
痛みと恐怖に震えながら、前衛に立っているサーヴァントと、諸共にあの世へ突き落とされる。
あの男が。
あの存在が。
己の首に縄をかけ、存在しない十四段目を、踏み外させようとするあの名前が――
「――殺ったれ、■■■■■■」
モノクロは死の色。
月は死の星。
熱持つ太陽の対極に座し、冷たく光る天の月は、亡者を招く死出の門。
額に三日月を輝かせ、朧を背負いし白き者、天より降りてその命を断つ。
「……わぁあああああああっ!」
◆
悲しみを招くもの全てを、悪と断じるというのなら。
秩序を乱し恐怖をもたらす、彼の生き様と在り方は、なるほど確かに悪なのだろう。
ミズシロ火澄は、己が呼び寄せたサーヴァントを、そのような存在だと解釈していた。
(アヴェンジャー、か)
我ながら呆れるほどの悪運だと、火澄は内心で自虐する。
曰く、通常サーヴァントというのは、合計7種類の中から、自動的に割り当てられるものなのだそうだ。
しかしながら、火澄には、その前提が通用しなかった。
彼の目の前に現れたのは、騎士でも暗殺者でも魔術師でもない、復讐者などという肩書きの持ち主だった。
世に仇なす者、秩序を乱す者。
何かしらの不平を世界に叫び、己の有り様を認められないと、叫び抗い続けた者。
旧人類を駆逐するため、この世に降誕した悪魔の血筋には、ある意味でお似合いかもしれない。
「因果なもんやな」
「気に入らなかったか?」
独りごちる火澄へ、アヴェンジャーが問う。
用意された彼の自室で、静かに佇むサーヴァントは、全身白ずくめの少年だった。
細身の体躯だが、体にフィットしたスーツの下からは、くっきりと筋肉のラインが浮かび上がっている。
黒い前髪の下から覗くのは、海のように深く、そして、氷の怜悧さを宿した瞳だった。
「ま、それは死ぬ前のあんたが、何を考えとったかにもよるわな」
軽く笑みを浮かべながら、火澄が椅子に背を預ける。
身を反らしたミズシロ火澄の笑顔は、悪魔のそれとは思えないほど、屈託のない穏やかなものだ。
「結局何がしたかったん? 息を吹き返しかけた荒れ野の世界で、もう一度死を蒸し返したあんたは」
火澄は彼を知っていた。
アヴェンジャーの在り方を、ある程度その口かた伝えられてきた。
そしてそれ以上に細かな部分を、夢の中で見せられてきた。
魔力パスによる記憶混線――ミズシロ火澄が見てきたものは、恐るべき死神の記憶だ。
元いた時代において、彼は、死と恐怖の象徴だった。
高度に技術が発展し、意思を持ったロボット達が、群れなし王国を築いた世界。
ナノハザードがもたらした崩壊を、癒やしをもたらす女神の力で、何とか立て直した世界。
しかし、そこにアヴェンジャーは現れた。
抵抗するロボット達を殺し尽くし、女神の前に歩み寄り、恐るべき呪いをかけて立ち去ったのだ。
皆が死を忘れたら、自分は再び現れて、皆を殺しにかかる――と。
「……全て、知ったんだな」
「全部は知らへんて。せやったらこないなこと、わざわざ聞かんでもええやんか」
「………」
未だ謎に満ちたビジョンには、まだ隠された真実が眠っている。
なればこそ火澄が知りたいのは、そういう秘された部分なのだと。
そう言われたアヴェンジャーは、しばし沈黙すると、ややあってベッドの上に腰掛けた。
長い話になるかもしれない。そんな言葉にならない声が、彼の視線から聞こえた気がした。
「命は、ただ与えられただけでは、生きていくことはできないらしい」
ややあって、アヴェンジャーは口を開く。
低く、しかしよく通ることで、自身の道筋を物語る。
幸福に生きられるはずだった世界に、再び恐怖をもたらした、忌むべき死神の神話を。
「世界は救われたと、君はそう言ったな」
「事実、良くはなったはずやろ? 理不尽に命を脅かす病は、さっぱりと消え去ったんやから」
「全て消え去ったわけではないんだ。たとえ良くなったとしても、それは最善には、程遠かった」
アヴェンジャーは真実を語る。
火澄の知り得なかった事実を語る。
滅びた世界を救うために、荒野に降り立った女神は、心に病を抱えていた。
一度その身に死を味わい、死に恐怖した彼女の行いは、結局はそこから逃避するために、死を消していただけに過ぎなかったのだ。
救済など建前に過ぎない。なればこそ、死が恐怖を揺り起こすのなら、彼女は平気で切り捨てる。
救いきれない末期の命を、かつての己を思わせる命を、彼女は容赦なく見放した。
無差別に死が蔓延る世紀末は、理想など取り戻したはずもなく、女神の機嫌が生死を分かつ、暗黒郷へと変わっただけだったのだ。
「求めたのは死そのものやなく、死から目を逸らさへんっちゅうことか」
「彼女は……彼女の国の人々は、皆ただ生きているだけだった。死者を哀れむ心も、こう生き抜きたいという心も、どこにもありはしなかったんだ」
そういう意味では、己は確かに、死という概念そのものを、彼らに求めたのかもしれない。
死というタイムリミットがなければ、ロボット達は漫然と、変わらぬ怠惰の中に囚われ続ける。
死という恐怖を理解しなければ、その恐怖に苛まれる者に、同情も慈しみも抱かなくなる。
なればこそアヴェンジャーは、死神として、彼らを脅かさなければならなかった。
生と死が不可分であるならば、絶対の生たる女神の影には、絶対の死が必要だったのだ。
それは彼らよりも遥か昔に、絶対の存在となった者――決して死ぬことを許されない、不死の牢獄に囚われた、アヴェンジャーにしか為せないことだった。
「見捨てられた者の無念を晴らす……か」
故に、彼は復讐者なのだ。
冷たい光を放ちながらも、悪意や害意は感じられない、この静かな男には、似つかわしくないと思っていた。
しかし、社会から弾かれた者の、痛みと悲しみを一身に背負い、義憤と共に立ち上がった彼は、紛れもなく復讐の執行者だったのだ。
火澄はそのように理解した。
「君にとって、この答えが、満足に値するものなのかは、僕には分からないけれど」
サーヴァントはそう締めくくる。
彼が自らをそう語っても、これこそがミズシロ火澄の求めた、アヴェンジャーの真実だ。
人々の幸福を叶えるために、反逆者の汚名を自ら被って、彼は死神と成り果てたのだ。
自らが尊いと思ったもの、こう在りたいと願ったものを、永遠にその外側から、傍観し続ける罪を背負ったのだ。
「……神は与え、神は奪う」
ややあって、火澄はぽつりと呟く。
一瞬口を噤んだうちに、胸に浮かんできた言葉を、そのまま声にして口に出す。
「アヴェンジャーは知っとるか?」
「いや。本当を言うと、神がどういうものなのかも、僕は詳しくは知らない」
「せやろな」
ロボットは神の存在を知らない。
人から教えられることがなければ、教えようという考えを持たなければ、彼らは宗教を理解しない。
偏見かもしれないが、そうであるなら、救いを忘れた荒野の世界で、彼が聖書など学ぶはずもなかった。
「ちゃっちい喩え話やと、飴と鞭なんて言い方もあってな。
人が良き人たらんとするには、褒めて与えるだけやのうて、叱って罰する必要もあるっちゅうこっちゃ」
神の存在は二律背反。
時には善行の見返りを与える、豊穣の権化となることもある。
しかし時には、悪行を裁く、祟り神となることもある。
善人が報われるだけの世界なら、たとえ善行を怠っても、あるいは悪行に走ったとしても、その実損失を受けることはない。
なればこそ、何も奪われないのなら、何をしても構わないはずだと、無軌道に悪を為す者も現れるのだ。
「あんたは世を乱したかもしれん。せやけどそれは、あってはならない、歪で狂った世の中や。
それを憂い、正そうとした心は……多分、間違ってはおらんかったと思う」
我欲にまみれた悪意だけで、彼が戦ったわけではないのなら。
誰もがそうあるべきと理解して、然るべきはずの在り方に、世を戻そうとしたのなら。
彼の復讐は、不正ではあっても、悪行と呼ぶべきではないはずだ。
彼は死神であり祟り神であっても、悪魔と呼ぶべきではないはずなのだ。
であるなら、そんなアヴェンジャーとなら、肩を並べて戦える。
自分はその答えに満足した――それが火澄の答えだった。
「……それでも君は、抗うんだな」
そして今度は、アヴェンジャーが、マスターに問いかける側だった。
死をもたらす祟り神の存在を、必要なものだと認めながらも、自らは死を認めないのかと。
そう問われたミズシロ火澄は、静かに微笑んでいた顔つきを、一瞬、ぴくりと引きつらせた。
「君はいずれ、多くを巻き込み、滅びを迎える命だと言った。
その運命を覆すため、犠牲を強いるのが聖杯戦争……それを理解しながらも、君は、抗い戦うんだな」
意志を問うているのだ、この男は。
中途半端な殺戮には、自分は決して加担しない。
他者の願いと命とを、その手で踏みにじるというのなら、相応の覚悟を見せてみろ。
この、誰よりも命を尊んだ、心優しい死神は、それ故にミズシロ火澄の殺意に、誠意と決意を求めているのだ。
遂に一人のマスターの命を、その意志その命によって葬らせた、目の前の殺人者に対して。
「……神が命を奪ったんは、神だけが法の時代だったからや。人の裁き以上の死が、今の世の中に要ると思うか?」
この文明社会で生きたお前に、分からないはずもないだろう。
表情を引き締めたミズシロ火澄は、アヴェンジャーに問いかける。
「俺はな、アヴェンジャー。何も俺一人だけが、助かりたいと思てるわけやない。
俺の運命が覆るなら、それがその運命に巻き込まれた、大勢の死なんでもええ命も、諸共に救われることを知っとる」
ミズシロ火澄は本物の悪魔だ。
旧人類を駆逐して、より優れた能力を授かった、ブレード・チルドレンだけが繁栄を築く。
そうした筋書きを達成するため、魔王によって産み落とされた、滅びと支配の導き手だった。
そしてその存在は同時に、人の敵を討ち滅ぼす神が、最後のとどめの引き金とすべく、盤上に仕立てあげた駒でもある。
野望に巻き込まれた悪魔の子供が、真っ当に人として生きていく。
死によって終局を招く火澄の、その死をなかったことにするには、彼らを巻き込む運命そのものを、全て破壊するしかないのだ。
「一度は手を伸ばそうとしても、その手は届かへんと言われ、諦めるしかなかった未来や。それをまた諦めきれるほど、俺は人間できてへん」
世界を救うには時間がない。
真っ当な手段で道を拓くには、火澄の授かった命には、あまりにも問題が多すぎた。
それでも手を伸ばせば、その先には、一時の間に全てをなしうる、常理を超えた奇跡がある。
サタニスト達に崇められながら、それでも人でしかない火澄には、成し遂げられない偉業ですらも、達成できる力がある。
であれば、犠牲を求める器だからといって、そこに手を伸ばさないというのは、かえってブレード・チルドレンへの裏切りになるはずだ。
それは自分と同じ人として生まれた、あの根暗な神の弟とやらよりも、縋るに足るものであることは間違いない。
一度は目指したその道を、再び歩むことに対して、ミズシロ火澄に迷いはなかった。
それを諦めるしかないことに、葛藤と絶望を感じていたのなら、なおさらそうせずにはいられなかった。
「死の神よ。断罪者『キャシャーン』よ。お前は死の運命を乱す俺を、罪人として罰するか?」
故に、火澄はサーヴァントに問う。
自分は間違っているかと。
己の決意は、お前の眼鏡に、かなうものであってくれているかと。
キャシャーン――復讐者の肩書きの奥に隠れた、彼の真名を口にして。
彼は己の使い魔にでなく、死神として生きた英霊の、その生き様に答えを求めた。
「……間違っていないと言ったのは、君だ」
それがキャシャーンの答えだった。
過ちであり、罪であっても、それを背負うと心に決めた、アヴェンジャーの在り方を、悪意ではないと認めたのは火澄だ。
なればこそ、認められたキャシャーンに、彼を拒絶することなど、できるはずもなかったのだ。
「サンキューな」
少し緩んだ顔をして、ふうっと息をつきながら。
胸を撫で下ろしたといった様子で、火澄は感謝の言葉を述べた。
正直、本気で殺されるかもしれないと、心のどこかでは思っていたのだ。
悪魔級に往生際が悪い、ミズシロ火澄の豪運と言えど、本物の奇跡を前にしては、通用するとは限らない。
それほどまでに、キャシャーンという男は、強く、恐ろしい男だった。
だとしても、彼の素顔を知った意味では、不思議と彼に対する恐怖も、薄れていったようには感じた。
「……死の実感が欲しくても、決して理解を許されへん牢獄か」
だからこそ、見えてきたことがある。
この不死身の超人を前にして、認めてはならないと思いながらも、湧き上がってしまう感情がある。
「それでもやっぱ、妬いてまうな」
死に脅かされることのない、完成された純白の命。
それは狂った遺伝子の内に、自滅のプログラムを仕組まれた火澄が、望んでやまなかったものだ。
世界を救えるというのなら、それでようやく等価になると、それほどに呪った宿命だった。
だからこそ。
口では二の次のように言いながらも、どうしても思ってしまう。
同じように生きられたなら、どれほどよかったことだろうと。
刻一刻と迫り来る、全く長くない寿命に怯えず、生きていくことができたなら、どれほど素晴らしいことだろうと。
それがキャシャーンの在り方を、心底から侮辱する考えだと知りながらも、火澄は、思わずにはいられなかった。
張り詰めた緊張を解いて、きょとんとした顔をする英霊に対し、火澄は苦笑混じりに言った。
【クラス】アヴェンジャー
【真名】キャシャーン
【出典】キャシャーン Sins
【性別】男性型ロボット
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:A 耐久:C+ 敏捷:A 魔力:E 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
復讐者:C
あらゆる調停者(ルーラー)の天敵であり、痛みこそがその怒りの薪となる。
被攻撃時に魔力を増加させる。
忘却補正:-
正ある英雄に対して与える“効果的な打撃”のダメージを加算する……のだが、キャシャーンはこのスキルを有していない。
その名が消えることはあり得ない。死を司る神の名が、世界から忘れられた時、秩序を失った死は、再び世界を脅かすだろう。
自己回復:EX
この世から怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
自動的にダメージが回復される。後述した宝具により、そのランクは規格外の領域まで跳ね上がっている。
【保有スキル】
戦闘続行:A+
基本的に死ねない。他のサーヴァントなら瀕死の傷でも、戦闘を可能とする。
不死殺し:B
死と再生を司る、太陽を堕としたことに基づく逸話。
アンデッドや不死者などに対して、与えるダメージがアップする。
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。
【宝具】
『月という名の太陽を殺した男(カース・オブ・ルナ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
女神を殺した罪の証。
永劫に死ぬこともない代わりに、真に生きるということも実感できない生の牢獄。
どれほどの傷を負ったとしても、それに比例した苦痛を伴い、瞬時に再生する自己修復能力である。
キャシャーン自身の意志でも、マスターが令呪を使ったとしても、オンオフを切り替えることはできない。
このサーヴァントを殺すには、亜空間にでも追放するか、分子レベルまで完全消滅させるかしかない。
仮に前者を行ったとしても、マスターに令呪がある限りは、
強制転移によって帰還させることができるため、基本的には後者以外の攻撃は意味をなさない。
ただし肉体の再生には、当然マスターの魔力消費が伴う。
復讐者スキルによる回復も、度が過ぎれば追いつかなるなるので、過信は禁物。
規格外の再生能力を誇るが、科学技術に由来する宝具であるため、神秘性はさほど高くない。
『最悪の存在(テラー・オブ・デス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~40 最大補足:100人
自らが背負った血の罪科。
世界の恐れと憎しみを背負った、最悪の死神の称号。
このサーヴァントの真名は、彼が生きた世界において、極めて特殊な意味を持つ。
「キャシャーン」の名はそれを聞く者に、死の恐怖を想起させ、身と心を縛り萎縮させる。
キャシャーンと相対し、その真名を聞いた相手は、恐怖により大きく精神を揺さぶられる。
その上、一度刻まれた恐怖心は、容易く拭い去れるものではない。
戦闘終了後も、その恐怖はトラウマとなって残留し、再び顔を合わせることがあれば、即座に効力が蘇る。
この宝具の効果を抹消するには、Aランク級の解呪の魔術を使うか、あるいはマスターを倒しキャシャーンを脱落させるしかない。
同ランク以上の精神耐性系スキルがあれば、効果を軽減させることは可能。
また、死神としてのキャシャーンの逸話が具現化したものであるため、彼の人となりを理解したものに対しては、効果が激減する。
【weapon】
腰部にはブースターが搭載されており、瞬間的な加速が可能。
【人物背景】
月という名の太陽を殺し、世界を滅びへと導いた男。
取り返しのつかない罪を贖うため、尊い命を守るために、死神の忌み名を背負った男。
選ばれなかった弱者を救いながらも、選ばれた強者の秩序を破壊したために、反英霊の十字架を科せられた男である。
再び昇った太陽は、世界に蔓延した死を消し去るため、再生の力を振るい始めた。
しかし死への恐怖を芽生えさせた彼女は、次第に癒やす相手を選り好みし、死へと大きく近づいた者を、遠ざけ切り捨てるようになった。
怒れる男は悲しみを胸に、選ばれなかった命を背負い、再び太陽の王国に現れる。
襲い来る敵を皆殺しにし、玉座へとたどり着いた男は、再び太陽に呪いをかける。
いたずらに命を奪うことは許さない。人々が再び死を忘れ、傲慢に振る舞うようになれば、何度でもこの地へ舞い戻り、同じ死と滅びをもたらす――と。
本質的には、限りある命の儚さと、命を全うしようとする姿勢の尊さを知った、優しく思いやりのある人物である。
その優しさ故に、彼は命を脅かす者、粗末に扱うことを許さず、冷酷な死神にもなり得るのである。
死ねない呪いをかけられた彼が、いついかなるタイミングで死んだのかは不明だが、
満足に死ぬことが出来ない彼にとって、限りあるが故の「生の実感」は、何よりも羨むべきものであったという。
【聖杯にかける願い】
???
【運用】
自らの真名が知れ渡ることが、有利になることに近づくという、極めて特異なサーヴァント。
高い戦闘能力に、恐怖による相手の萎縮が重なれば、極めて戦闘を有利に運ぶことができるだろう。
ただし、過度な再生能力の乱用は、即座にマスターの首を締め、魔力切れへ一直線に転がり落ちることへと繋がる。
徒手空拳以外の攻撃手段を一切持たず、戦術自体はかなり限られてくることにも注意したい。
【マスター】
ミズシロ火澄@スパイラル~推理の絆~
【マスターとしての願い】
神と悪魔の運命に打ち勝つ
【weapon】
なし
【能力・技能】
天才
万能の天才。あらゆる分野において、並外れた才能を有している。
スポーツをやれば全国クラスの猛者とも渡り合い、学問を修めれば高校生にして、専門家も舌を巻く論文を披露するほど。
その出自から、遺伝子工学分野に強い関心を持っており、13歳で一度大学に進学し、研究を行っている。
悪魔の豪運
呪いじみた悪運の強さ。
決められた役割を演じきるまでの間、火澄は基本的に死ぬことができなかった。
何者に襲われても幸運が彼を救い、自ら命を絶とうとしても運命が彼の邪魔をする。
……ただし、運で全てを切り抜けられるのは、あくまでも人の世の話。
人を超えた力を持たない火澄にとって、超人同士の戦いは、運だけでどうこうできるものではないだろう。
クローン人間
火澄はミズシロ・ヤイバの本当の弟ではない。
彼の体は、ヤイバの遺伝子情報から生み出されたクローン人間である。
……しかし、不完全な技術で生まれた体には、致命的な欠陥が存在する。
本聖杯戦争で表層化することはないが、彼の体は成人する以前に、劣化による死を迎えると言われている。
【人物背景】
かつて政財界を陰日向に操り、世界を己が血脈で満たそうとした「悪魔」ミズシロ・ヤイバ。
彼の歳の離れた弟として、世界に姿を現したのが火澄であり、同時にヤイバの志を引き継ぐため、彼の血と才を受け継いだクローンでもある。
しかし火澄は、現行人類の世界を滅ぼすことを良しとせず、ヤイバの構築したプログラムを破壊する術を探していた。
だがその過程で、自らの寿命による限界を知った彼は、絶望し逃避の道を選ぶようになる。
先に生まれたオリジナルと、自身との能力差を見せつけられず、健全に育てられたため、性格は至って朗らか。
しかしその仮面の下では、抗えない死の運命に対する恐怖と、それを分かち合えない孤独に震え続けていた。
そんな火澄を殺すために、火澄と同じ条件で生を受けた、「神」の弟・鳴海歩に対して、火澄は使命を捨て共に生きていくことを望むのだが……
今回は、彼との決定的な決別を招く、ある少年の殺害よりも、早い時点から参戦している。
【把握媒体】
アヴェンジャー(キャシャーン):
テレビシリーズ全24話。
レンタルDVD、およびバンダイチャンネルでの視聴が可能。
ミズシロ火澄:
漫画単行本全15巻。
11巻の最終ページで初登場するため、全巻の読破がほぼ必須となる。
最終更新:2016年06月30日 23:41