青と赤が幾度となく交差する。軌跡は何重にも重なり、色の違う壁が圧し合っている様だ。
夜中、住宅街のはずれで二騎のサーヴァントが戦闘を行っている。
禍々しい三叉の剣を振るうのはセイバー。鎧は血塗れたように赤く、白髪の下は喜悦に歪んでいる。
鍔の青い直剣で連撃をいなすのはランサー。蝙蝠をモチーフにした甲冑を身に纏い、その表情は面甲に覆われて窺えない。
大きく広げた翼を象った装甲は青と金できらびやかに彩られ、ヒロイックなイメージを騎士に与える。
槍兵でありながら長柄武装や刺突攻撃を見せないのが、凶相の剣士には不思議だった。
ランサーが一気に距離を詰め、袈裟懸けに斬りかかった。曲剣がそれを受ける。
金属が打ち鳴らされる音。そして躱し、弾き、また躱す。両者は少しでも有利な位置を制するべく動き回る。
最初に有効打をとったのは青い騎士だった。
突きが燃えるような赤を捉え、刀身が引き抜かれた胴から甲冑と同色の液体が噴き出す。
≪三村、宝具を使うぞ≫
≪あぁ、やってくれ。令呪は?≫
≪任せる…≫
ランサーが左腕の小ぶりな盾に剣を収める。
空いた右手でベルトの留め金からカードを一枚引き抜くと、慣れた手つきで鍔を展開させて、宝具の鍵となる切り札を装填した。
『ファイナルベント』
無機質な男の声が止むと上空から蝙蝠の怪物が現れ、青い騎士の周囲を飛び回る。
ランサーがその頭上に跳び、両耳を掴むと異形に劇的な変化が起こった。空を掻いていた巨大な翼が左右非対称に形を変え、成人男性のそれと変わらないサイズの両足が小さく折り畳まれていく。
さらに頭部を軸にして胴体が90度回転、怪物は瞬く間に巨大なバイクに変形した。
蝙蝠の皮膜をモチーフにした車体にランサーは騎乗し、目前のセイバーに轢き殺さんばかりの猛スピードで迫る。
みるみる距離を縮めていく紺碧の衝角から逃れようとした敵を、一筋の閃光が捉えた。
真紅の鎧が縫いとめられた様にその場から動かなくなる。活動を諦めた肉体を鼓舞するセイバーの視界に、大きく翼を広げたランサーの姿が映る――いや、それは2枚に分かれた外套だった。
背後の景色を覆い隠すように広がったマントが螺旋を描きながら一点に集束。青い騎士の姿が消える。
あとには青白い光輝を放ちながら硬直した敵を狙う、黒一色の鮫に似た物体が残された。
騎乗したランサーが鈍く見える勢いで近づく大樽並みの太さを持つ杭を、セイバーはポージングを続けたまま唇を噛んで迎え入れる。
――これがヤツの『槍』か。
と彼は今生の最期に納得した。夜も眠れぬ程の苦悩あるいは疑問が解決したように、晴れ晴れとした気持だった。
――周囲が轟音に包まれる。火炎が舞い、あたりが昼間のように明るくなった。
まもなく炎の壁を突き破ってきたのは、青色のバイクに跨ったランサーだ。
消失を始めたセイバーを一瞥すると、騎士はシートから腰をあげる。
そのまま停車した無機の魔獣にも、先ほどまで剣を交えていた戦士にも背を向けて何処かへ歩き去った。
☆
「疲れたのか」
ランサーの鎧が割れた鏡のように消え、黒コートの青年が中から現れた。
彼は物陰に座り込んだ学生服の少年――三村信史の前まで歩くと、平坦に言い放つ。
信史は整った顔に疲れを滲ませていたが、ランサーに気付くと笑みを作った。
「魔力を持たないお前に、サバイブの負担は重すぎる―」
「―どうってことないさ。こんな初っ端から切れる訳ないだろ」
「だったら、もっと考えて動け」
右手をぶらぶらと振っておどける信史にランサーは厳しい口調で応じる。
ぶっきらぼうな言葉に無愛想な態度が加わって、もはや喧嘩腰ですらあった。
信史の濡れた感じに持ち上げた前髪から汗が筋を一つ引いた。
曖昧に笑うマスターに眉を寄せたまま、青年は無言で実体化を解く。
険しい視線から解放された信史は大きく息を吐いた。
赤鎧のセイバーを透視能力で観察したところ中々のステータスだったものだから、初っ端からナイトサバイブに変身させてみた。
こちらから与えられる魔力に限りがある以上、長期戦は望めない。
ついでに一戦闘における消費がどれほどのものか体感で覚えようとしたのだが、流石に無鉄砲すぎた。
両足に力を込めて立ち上がると、信史は住宅街を目指して歩きはじめる。
ランサーの念話を受け取って間もなく、全身から血液を抜かれるような脱力感に襲われた。今も気怠さが残っている。
とはいえ行動に支障はなく、例えるなら試合後の帰り道、といったところだ。しかしこれが続けば症状も段々重くなっていくのだろう。
そうなったら自分は戦いから脱落せざるを得ない。
199 :三村信史&ランサー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/06(水) 13:30:05 ID:.nnZTC.20
自他共に認める頭脳派の信史だったが、今はその思考も精彩を欠いている。端的に言うと彼には余裕が無かった。
――戦闘実験第六十八番プログラム。
彼の暮らす大東亜共和国では、中学生3年生同士を殺し合わせる殺人遊戯が罷り通っていた。
政府主導で毎年50クラス。信史のクラスも今年―招かれる前の話だが―その枠に入ってしまった。
もちろん素直に従ってやる気はなく、プログラムが開始すると信史は脱出に向けて直ちに行動を開始。
その為には参加者の動向を把握する首輪を無力化せねばならないのだが――今は外れている。
喉元から絞首の縄に似た圧迫感が消え、自由になった首にかかる微風が心地いい。
これは催眠ガスとかそんな話じゃない。冬木なんて街に見覚えはなかったし、日付を確認すれば17年も時を遡ってしまったことがわかる。
普段なら「どんな願いでも叶う」など見向きもしないが、この地に眠る聖杯に限っていえば信史の常識は通用せず、またクソッタレな政府に勝る力を持っているらしい。
――豊。
別れてしまった親友を思う。
あの島から自分が消えてどうしたろう。パニックになっていやしないだろうか。
連絡を入れようとも思ったが、ここは大東亜ではなく日本だ。恐らく意味はない。
(どうせなら一緒に連れて来てくれればよかったのにな……チクショウ)
殺し合う相手がクラスメイトから赤の他人に変わっただけであり、死ぬ危険だけならプログラム以上の分の悪い戦い。
だが信史が姿を消せば豊は孤立してしまうし、あの状況で自分が欠ければ生存確率は坂を転がるように落ちるだろう。
七原――七原秋也に拾われていればベスト。
いささか能天気な所があるヤツだが極限状況下でもペースを保ち、いざという時の度胸と抜群の運動神経は当てにできる。日頃から交流がある事も含めて七原なら問題ない。
それにアイツは親友の国信を、政府の人間に殺されている。仮に豊を保護しても悪い扱いはしないだろう――がそんな楽観は通るまい。
豊は運動が苦手なんだ。おまけに身体も弱いし、争い事も苦手だ。
周囲をうろつく殺人者の目をかいくぐり、七原や、杉村と合流できたとは…向こうでも同じだけの時間が経過したと成れば……豊は………。
瞼をきつく閉じると、悪い想像を打ち消す様に二度三度と頭を振る。
自分は聖杯を使う。そして豊を救う。
クラスメイト達も救う、という―何せどんな願いでも叶う魔法のランプだ―願いも考えたが、そこまでの力はないんじゃないか、と信史は疑っている。
公約通りの代物ならそうしよう。だがもし叶える力に限りがあるなら…。
非道い話だ、とは我ながら思うが、こっちにだって優先順位というものがある。
願いが不完全に叶えられる恐れを抱えるくらいなら、親友一人を完全な形で救い出したい。とにかく速攻で決着をつけるためにサバイブの使用を強行した……結果は芳しくなかったが。
マスター適性の乏しさが軽くないと理解できた以上、魔力の確保についても何か考えなくては。
歩いて行くうちに頭が冷えた信史は、明日からに備えて家路を急ぐ。救うために、殺すために。
【クラス】ランサー
【真名】秋山蓮
【出典作品】仮面ライダー龍騎
【性別】男
【ステータス】筋力E 耐久D 敏捷E 魔力E 幸運D 宝具C+
仮面ライダーナイト 筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具C+
仮面ライダーナイトサバイブ 筋力B 耐久B 敏捷A 魔力D 幸運D 宝具C+
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:E(C、B)
状態によって変化する。
通常はダメージ数値を削減するのみで、魔術の無効化は出来ない。
ナイト時は、第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
サバイブに変身すれば、魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化できる。こうなると大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
【保有スキル】
勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
心眼(真):C
蓄積された戦闘経験によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
騎乗:D(A)
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
サバイブ時のみカッコ内のランクに修正。幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
飛行:-(B)
平時は発揮されない。ナイトに変身中、ダークウイングが合体する事でカッコ内のランクに修正される。
飛行中の敏捷値はスキルランクで計算する。
【宝具】
『翼手の黒螺旋(飛翔斬)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~70 最大捕捉:1人
仮面ライダーナイトのファイナルベント。
大型の槍「ウイングランサー」とダークウイングが変化した外套「ウイングウォール」を装備した状態で空中に舞いあがり、竜巻のように回転するウイングウォールに包まれたまま、急降下して対象を貫く。
ウイングランサーは本来、「ソードベント」で呼び出す必要があるが、宝具発動時に限り自動で装備される。
『破砕する紺碧の破城槌(疾風断)』
ランク:C+ 種別:対城宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:20人
仮面ライダーナイトサバイブのファイナルベント。
バイクに変形したダークレイダーのカウルから拘束効果を持つビームを放ち、動きの止まった対象をナイトサバイブのマントに包まれたダークレイダーで貫く。
ビームで目標の動きを止めない場合は命中率が低下するが、複数の敵をまとめて攻撃できる。
車体は極めて頑丈であり、並の相手なら普通に突進するだけで粉砕可能。宝具発動時に限り、ダークレイダーが自動召喚される。
【weapon】
「ナイトのデッキ」
蝙蝠型モンスター「ダークウイング」と契約したカードデッキ。
Vバックルに装填することで、仮面ライダーナイトに変身することができる。生前とは異なり正面にデッキを掲げるだけでバックルを召喚可能。
ナイトはスピーディな格闘戦を得意とし、豊富なアドベントカードを活用することで敵を攪乱する。
「SURVIVE-疾風-」
黄金の翼が描かれたアドベントカード。ナイトのデッキに納められている。
これを翼召剣ダークバイザーが変化したダークバイザーツバイに装填することで、仮面ライダーナイトサバイブに強化変身できる。
能力上昇に加え、ダークアローやダークブレードを得た事で戦闘における決定力が大きく上昇した。
「闇の翼ダークウイング」
蝙蝠型のミラーモンスター。エサを捕食する必要が無くなった代わりに、召喚の発動・維持にランサーの魔力を要求する。
ファイナルベントの魔力消費には、これも含まれる。
ランサーがナイトサバイブに変身すると、「疾風の翼ダークレイダー」にパワーアップされる。
【人物背景】
恋人の小川恵理の意識を取り戻すために、ライダー同士のバトルロイヤルに身を投じた青年。
頑固で好き嫌いが激しく、孤立しがち。
士郎の妹である優衣と行動する中で城戸真司と出会い、幾度となくぶつかり合ううちに固い友情を結ぶ。
目的のために冷徹に振る舞っていたが、優しく直情な城戸に感化されていき、その行動にも変化が現れていった。
【聖杯にかける願い】
?
【マスター名】三村信史
【出典】バトル・ロワイアル(小説版)
【性別】男
【Weapon】
爆弾の雷管を仕込んだ左耳のピアス。
【能力・技能】
「ザ・サードマン」
バスケットボール部の天才ガード。
由来は一年の頃に試合で残り5分の20点差という瀬戸際をあっさり撥ね返した活躍と、その姓から。
「雑学」
反政府活動に身を投じていた叔父から叩き込まれた様々な知識。
中学生ながらハッキングやパソコンの組み立て、爆弾作成を可能とする。
【ロール】
中学3年生
【人物背景】
準鎖国体制を敷く国家「大東亜共和国」で暮らす少年。城岩中学校3年B組男子19番。
文武両道の美少年だが既に3人の女性と関係を持ったプレイボーイで、クラスの女子からはあまり評判が良くない。
反政府活動に従事していたと思しき叔父に心酔しており、中学生離れした思考力を持つ。
西暦1997年、政府が主催する殺人ゲームに自分のクラスが選ばれてしまう。
顔馴染み同士が殺し合う地獄と化した沖木島で小学校からの親友である瀬戸豊と再会できた彼は、島からの脱出を試みるが……。
首輪の解除に失敗した直後から参戦。
【聖杯にかける願い】
瀬戸豊を救う。/クラスメイト全員を救う?
【把握媒体】
ランサー(秋山蓮):
テレビシリーズ全50話、『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』、『仮面ライダー龍騎スペシャル 13RIDERS』。
DVD、Blu-ray、ニコニコチャンネルなどで視聴可能。
三村信史:
原作小説。
最終更新:2016年07月13日 17:56