その昔、彼は『正義』だった。
人と社会に害を成す存在を許さないと息巻いて、どこまでも突き進んでいく刑事だった。
今でも彼は、正義の二文字を信じている。
最後に勝って笑うべきなのは『正義』であって『悪』ではないと、心よりそう思っている。
一言では語り尽くせない、色々なことがあった。
一度人間として死に、サイボーグとして蘇ってからというもの、すっかり人生が変わってしまった。
……変わったのは人生だけじゃない。
自分の中の正義もまた、少しずつ形を変えているのが分かる。
「それでも」
鋼鉄探偵と呼ばれた男は、鋼の体が軋むほどの力で拳を握る。
変わってしまったことは山程ある。
それは何も、自分に限ったことじゃない。
世界が、社会が、時代が、熱病に浮かされたように胡乱げな足取りで、どことも付かない方向に疾走し続けている。
それでも、
柴来人は信じていた。
世界が変わっても、人が変わっても、国が変わっても、自分が変わっても、……超人が変わっても。
「……勝つのは、正義だ。そうでなければならない」
正義とは、幾つもの側面を持った概念だ。
大衆にとっての正義……つまり国家が定めた正義というものが、必ずしも正しいとは限らない。
現に来人は、この鋼鉄探偵は、国家の押し進める正義など毛ほども信じちゃいない。
昔は信じていた。それが正しいと思っていた。いや、そう思うようにしていたのかもしれない。
だが、それには限界があった。
昔の自分を鏡に写したような異星からの使者を殺害した時に、柴来人の中で何か、重大なものが切れてしまった。
時は神化47年。国旗は日の丸。
大戦から時が流れ、新たな文明が芽吹き出して久しい現代。
来人は、遂に母国に弓を引いた。
看過できなかったのだ、これ以上の堕落が。
国を愛し、守りたいと思うからこそ……一度、鞭を打って目覚めさせる必要がある。
そう考えた彼が手を組んだのは、自分と同じく反政府を掲げて社会の裏側で活動する、革命派の人間達だった。
世界を敵に回して、どれだけの時間が過ぎたろうか。
一口に革命と言っても、その道はあまりに険しく、長い。
自分が進んでいるのか、それとも戻っているのかも分からない暗中模索の日々。
焦燥と苛立ちばかりが募っていく。現状は、やはり何も変わらない。
柴来人は熱意の人だ。
自分の信じる正義を遂行するためならば、どんな悪評や不利益にも耐えられる人物だ。
そんな彼にとって、正義を行うための手段はもはや問題ではなかった。
例えば、自分の思うがままの正義を元に、世界を変える手段があると聞いたなら―――
彼は躊躇うことなく、貪欲にそれを求める。
周りの制止など振り切って、これが答えなのだと信じて突き進み、そうして此処まで辿り着いた。
「俺は聖杯を手に入れる。それが、俺に成せる最善の正義だ」
機械の体にも、どうやら令呪は宿るらしい。
魔術回路など備わっている筈もないこの体で何故サーヴァントが使役できるのかは見当も付かないが、少なくとも今のところは、英霊の運用に不便を感じたことはない。
聖杯戦争。人類史の彼方から英霊を呼び出して殺し合わせる、願望の成就を懸けた血塗られた戦い。
英霊の力は、超人のそれをも遥か置き去った域にある。
もはや、一個の戦略兵器と言っても過言ではない勢いだ。
鋼鉄探偵の真の姿を開帳しても、恐らく来人では太刀打ち出来ないだろう。
そもそも彼の体のどこにも、英霊を傷付けられるような大層な神秘は宿っていない。そんなものの入り込む余地がそもそもない。
「……俺が聞くことでもないかもしれんが一応聞かせろ。アーチャー、お前は何故聖杯を欲さない?」
「奇跡を起こしてまで叶えたい願いが、私にはありませんから」
微笑みを浮かべながらそう答える自身のサーヴァントに、来人は唇を噛む。
大和撫子。和風美人を地で行くような淑やかな容貌をしたこの女性こそ、来人の召喚したサーヴァントだ。クラスはアーチャー。だが、弓は使わない。
彼女はそもそも、弓なんて古典的な武器を使って戦うような時代の英霊ではないのだ。
新しい時代の英霊の例に漏れず、彼女の神秘はごく薄い。
しかしその強さは歴戦の英雄や、神秘が溢れていた時代の出身者にすら匹敵する。―――この国の中が戦場である限り。護るべき祖国がある限り。
だからこそ、来人は解せない。
真に祖国を想って戦った英霊ならば、なおさら願いを持たないなんてことはあり得ない。
もしも自分が彼女の立場だったなら、抱く願いは容易に想像がつく。
何故なら彼女の生き様は、ある決定的な事実を以って後世で否定されているからだ。
「歴史を変えたいとは思わんのか。聖杯の力ならば、あの大戦の結果を覆すことも可能だろう」
第二次世界大戦という戦争が、かつてあった。
来人の世界とアーチャーの世界は異なる発展を遂げた別世界だが、この戦争があったことについては共通している。
人類史に間違いなく残る、その名の通り全世界規模の大戦争。
国際社会全体の大きなターニングポイントとなったその戦いの結末は、今日び子供でも知っている。
日本は、負けた。
彼女達の奮戦は、圧倒的な戦力差を覆すには至らなかった。
国土は蹂躙され、数えきれないだけの民が死に、復興には長い時間を要した。
今後も何十年、何百年と語り継がれていくであろう、近代最大の悲劇。
来人が当事者だったなら、絶対にこの歴史を変えたいと思う。
にも関わらず、やはりアーチャーは首を横に振った。願いはないと、桜色の唇でそう言う。
「確かに、痛ましい戦いでした。多くの仲間が海の底に沈み、多くの命が失われた。あの戦いを快く思っているかと問われれば、もちろん否です」
「なら変えればいいだろう、その歴史を! 護国の象徴たるお前が、何故そうしない! それが……それが、お前にとっての正義ではないのか!!」
「……仮に」
アーチャーは、護国の象徴だ。
国の名を背負って戦った、海原の大英傑。
それなら確かに来人の言う通り、護れなかったものを護るために、歴史を改変するのが筋だろう。
「仮にあの戦争に勝利したとして、それで何もかもが良くなったとは……私は思いません」
アーチャーは、真に国を愛していた。母であり父である母国を愛していた。
愛していればこそ、彼女は歴史を変えないと決めたのだ。
……あの時代の日本は、暴走していた。軍部を筆頭に国中が歪な熱に浮かされて、脇目も振らずにあらぬ方向へと突っ走っていた。
アーチャーがこうして事実上の蘇りを果たすのは、これが初めてではない。
大戦の遥か後の時代に、深海棲艦という敵を討つために今の肉体で再建造され、戦いを終えて、一人の人間として生涯を閉じた。
彼女は知っているのだ、平和な国を。
知っているからこそ、アーチャーは聖杯に願わない。祖国の救済という名の歴史改変を望まない。
「でも、どうかご安心を。私は私、貴方は貴方です。
貴方に召喚されたサーヴァントとして……必ずや、貴方に勝利の二文字を捧げてみせましょう」
「……改めて言われるまでもない!」
苦手な女だ。
踵を返して歩き始めながら、来人は苦々しげにそうこぼした。
彼女は来人の目的を肯定も、否定もしていない。
だが、来人には分かってしまった。彼女の思うところの正義は、自分の追い求める正義とは異なる正義なのだと理解してしまった。
―――それでも。鋼鉄探偵ライトは止まらない。
心に刻んだ正義のために、昭和の街で戦い続ける。
【クラス】
アーチャー
【真名】
大和@艦隊これくしょん
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具C
筋力A 耐久A+ 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具B+ (改)
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【保有スキル】
艦娘:A+
人類の敵、深海棲艦を滅ぼすために建造された少女型兵器。
過去の大戦で沈んだ艦船の記憶を有しており、その転生体として扱われる。
水上での戦闘時、各種判定にプラスの補正を受ける。
護国の象徴:A+
彼女は大日本帝国最強の超弩級戦艦であり、空前絶後の重武装と大火力を持つ。
聖杯戦争の舞台が日本である限り最大級の知名度補正を受け、陸地にありながら水上戦時と同等のスペックを発揮することが可能。
砲撃:A
46cm三連装砲と12.7cm連装高角砲による砲撃行動を行う。
その威力は非常に高く、英霊化したことと上記のスキルが合わさって、近代兵器の破壊力を優に超えている。
これによる魔力の消費はかなり小さいため、惜しまずに使用できる。
【宝具】
『改装』
ランク:C 種別:対艦宝具 レンジ:- 最大補足:-
自身を『大和改』へ改装する対艦宝具。
これによって各種ステータスの数値が上昇し、砲撃の威力も同様に上昇する。
『非理法権天』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
改装を行い、大和改になった瞬間から使用が可能になる宝具。
彼女が最期に出撃した天一号作戦で掲げられていたという、『非理法権天』と書かれた幟。
艦娘としての彼女の場合、足の装飾として装備されている。
無理は道理に、道理は法に、法は権威に、権威は天道に及ばず。
非理法権天とは、天皇陛下をいただく我らに負けは無し、という意気込みを意味する。
自身の知名度が最高となる日本で戦闘を行う際、彼女は対魔力、砲撃、護国の象徴スキルのランクが1ランク上昇し、Aランクの戦闘続行スキルを得る。
【weapon】
各種装備
【人物背景】
日本国最強の超弩級戦艦。
創作の題材としても有名で、戦争をろくに知らない世代の人間でも、この戦艦については知っているというほど。
そのため、日本国内での聖杯戦争ではトップクラスの知名度補正を受けることが出来る。
【サーヴァントとしての願い】
マスターのために戦う
【マスター】
柴来人@コンクリート・レボルティオ~超人幻想~
【マスターとしての願い】
正義を成すために、聖杯を手に入れる
【weapon】
マシンガンや肘の小型ミサイルなど、様々な兵器を内蔵している。
【能力・技能】
彼は正確には人間ではなく、柴来人という男の記憶と人格を電脳頭脳に移植したサイボーグである。
ロボット形態に変化することで超高速での駆動が可能となり、超人にも匹敵する戦闘能力を手に入れることが出来る。
時折、電子頭脳の加熱を抑えるために放歌することがある。これは高まった熱を音波に変換する行為らしい。
【人物背景】
悪の組織に拉致され殺害されるも、某天才科学者の手で蘇らされた刑事。
かつては超人を化物として敵視していたが、自身の矜持と相反した行為を続けることに悩み始め、遂には腐敗した母国を目覚めさせるべく反政府活動に手を染めた。
【把握媒体】
アーチャー(大和):
原作ゲーム。ただし台詞や性能はwikiで全て把握可能。アニメは見る必要なし。
柴来人:
原作アニメ全二十四話。
最終更新:2016年07月27日 17:47